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動粘性係数とは?求め方・単位換算・温度別一覧表まとめ

配管流量の見積りやレイノルズ数の算出など、流体計算の現場で必ず必要になる物性値が「動粘性係数」です。

粘度(粘性係数)と名前は似ていますが、密度で割った量であるため単位も意味もまったく異なります。

動粘性係数は温度に強く依存するため、ハンドブックの一覧表を参照せずに20℃の値だけで計算してしまうと、レイノルズ数や摩擦係数に大きな誤差を生むおそれがあります。

特に水と空気とでは温度変化の方向が逆であり、液体と気体の違いを理解しないまま計算を進めると見当違いの結果になりかねません。

この物性値を正しく理解しておけば、配管径の選定・ポンプ動力の見積り・層流乱流判定などが、手計算でも素早く実行できるようになります。

本記事では、動粘性係数の求め方・単位換算・温度別一覧表について徹底解説します。

 

 

1. 動粘性係数とは何か

動粘性係数(kinematic viscosity、記号  \nu、ニュー)とは、流体の粘度  \mu を密度  \rho で割った量を指す物性値のことです。

粘度そのものが「流体の動きにくさ」を表す指標なのに対し、動粘性係数は「粘性による運動量の拡散しやすさ」を表す指標として扱われます。

レイノルズ数の計算や境界層理論など、流体力学の式には粘度そのものではなく動粘性係数の形で登場する場面が多く、実務上の計算では動粘性係数の値を直接参照する機会が圧倒的に多くなります。

定義式と物理的なイメージ

動粘性係数の定義式は非常にシンプルで、次のように書けます。

 \nu = \dfrac{\mu}{\rho}

ここで、 \mu は粘度 [Pa·s]、 \rho は密度 [kg/m³] を表します。

単位を代入すると  \nu の単位は [m²/s] となり、長さの二乗を時間で割った量、すなわち「拡散係数」と同じ次元を持つことが確認できます。

動粘性係数の物理的なイメージは、流体中で渦や流速変化が伝わっていく「広がりやすさ」と理解すると掴みやすくなります。

なぜ動粘性係数が設計で重視されるのか

流体力学の多くの基礎方程式には、粘度  \mu と密度  \rho がセットで現れます。

例えばレイノルズ数は  Re = \rho v D / \mu と書けますが、分母分子を整理すると  Re = v D / \nu という動粘性係数を使った形に変形できます。

この形の方が変数が一つ少なく、ハンドブックから値を引いてそのまま代入できるため、実務の計算では動粘性係数ベースの式が好まれています。

 

2. 動粘性係数と粘度(粘性係数)の違い

動粘性係数と粘度(粘性係数)は、名前が似ているため混同されがちですが、物理的な意味も単位もまったく異なります。

粘度が「流体のせん断応力と速度勾配の比」として定義されるのに対し、動粘性係数は「粘度を密度で割った量」という定義になっており、一段抽象度が上がった量であるといえます。

粘度(粘性係数)の定義

粘度  \mu は、ニュートンの粘性法則によって次のように定義されます。

 \tau = \mu \dfrac{du}{dy}

ここで、 \tau はせん断応力 [Pa]、 du/dy は速度勾配 [1/s] を表します。

この式から、粘度の単位は [Pa·s] となり、「せん断応力を速度勾配で割った量」として扱えることが分かります。

粘度そのものは「流体が流れに抵抗する強さ」を直接表す量であり、水飴のようにドロドロした液体では大きく、水やガソリンのようにサラサラした液体では小さくなります。

動粘性係数との関係と使い分け

粘度と動粘性係数の関係は、密度で割るかどうかという一点に集約されます。

 \nu = \dfrac{\mu}{\rho}

粘度が同じでも、密度が大きい流体では動粘性係数は小さくなります。

例えば水銀は粘度自体は水と大差ないものの、密度が水の13.5倍もあるため、動粘性係数は水のおよそ1/10程度という小さな値になります。

実務では、せん断応力そのものを計算する場面では粘度を使い、レイノルズ数や拡散現象を扱う場面では動粘性係数を使う、というのが基本的な使い分けになります。

 

3. 動粘性係数の計算式と単位換算

動粘性係数の単位には、SI系と慣用的に使われるCGS系の2種類があり、実務資料ではこれらが混在しているため、換算関係を正確に把握しておく必要があります。

SI単位(m²/s)とCGS単位(St・cSt)

動粘性係数のSI単位は [m²/s] ですが、この値は実用上非常に小さな数値になるため、古くから使われているCGS単位「ストークス(St)」が今でも多用されています。

両者の換算関係は次の通りです。

 1 \mathrm{St} = 10^{-4} \mathrm{m^2/s}

 1 \mathrm{cSt} = 10^{-6} \mathrm{m^2/s} = 1 \mathrm{mm^2/s}

特に潤滑油の世界ではISO粘度グレード(ISO VG)がすべてcStで表記されているため、cStとmm²/sが同じ値であることを覚えておくと、表記揺れに惑わされずに済みます。

よく出てくる単位換算まとめ

実務で参照する機会が多い単位換算を、表形式でまとめておきます。

単位 備考
1 m²/s = 10,000 St = 10⁶ cSt SI基準
1 St(ストークス) = 100 cSt = 10⁻⁴ m²/s CGS系
1 cSt(センチストークス) = 1 mm²/s = 10⁻⁶ m²/s 潤滑油で多用
1 mm²/s = 1 cSt = 10⁻⁶ m²/s ISO VGの単位

粘度から動粘性係数を求める計算例

粘度  \mu = 1.0 \times 10^{-3} Pa·s、密度  \rho = 998 kg/m³の水について、動粘性係数を求めてみます。

 \nu = \dfrac{\mu}{\rho} = \dfrac{1.0 \times 10^{-3}}{998} \approx 1.00 \times 10^{-6} \mathrm{m^2/s}

この値をcStに換算すると、およそ1.00 cSt となり、後述する水の温度別一覧表の20℃付近の値と一致します。

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4. 水の動粘性係数(温度別一覧表)

水は流体力学の計算で最も扱われる流体ですが、その動粘性係数は温度に強く依存します。

温度が上がると分子の熱運動が活発になり、流体内部の粘性抵抗が下がるため、水の動粘性係数は温度上昇とともに単調に減少していきます。

0℃〜100℃の水の動粘性係数

大気圧下における水の動粘性係数を、温度10℃刻みで一覧にまとめました。

温度 [℃] 動粘性係数 [×10⁻⁶ m²/s] 動粘性係数 [cSt]
0 1.787 1.787
10 1.306 1.306
20 1.004 1.004
30 0.801 0.801
40 0.658 0.658
50 0.553 0.553
60 0.475 0.475
70 0.413 0.413
80 0.365 0.365
90 0.326 0.326
100 0.294 0.294

0℃から100℃までの変化幅はおよそ6倍にも達しており、実務設計では温度条件を明示しないまま20℃の値だけを使うと、大きな誤差を生むおそれがあります。

実務で押さえておきたい代表値

水の動粘性係数で最も頻出する代表値が、常温(20℃)付近の値です。

 \nu_{water,20} \approx 1.0 \times 10^{-6} \mathrm{m^2/s} = 1.0 \mathrm{cSt}

配管流量の概算計算では、この「20℃で1.0×10⁻⁶ m²/s」という値がよく使われますが、冷水配管(5℃程度)や温水配管(60℃以上)では動粘性係数が1/2〜2倍程度ずれるため、精度が必要な場合は温度に応じた値を使う必要があります。

 

5. 空気の動粘性係数(温度別一覧表)

空気の動粘性係数は、水とは逆に温度上昇とともに増加していきます。

気体の粘度は分子間の運動量交換によって決まるため、温度が上がるほど分子の熱運動が激しくなり、粘度・動粘性係数ともに大きくなる傾向があります。

液体と気体でこの温度依存の方向が逆であることは、実務計算で必ず押さえておきたいポイントです。

0℃〜100℃の空気の動粘性係数(大気圧下)

標準大気圧(101.325 kPa)における空気の動粘性係数を、温度10℃刻みで一覧にまとめました。

温度 [℃] 動粘性係数 [×10⁻⁶ m²/s] 動粘性係数 [cSt]
0 13.3 13.3
10 14.2 14.2
20 15.1 15.1
30 16.0 16.0
40 17.0 17.0
50 17.9 17.9
60 18.9 18.9
70 19.9 19.9
80 20.9 20.9
90 21.9 21.9
100 23.0 23.0

空気の動粘性係数は水の約15倍あり、同じ流速・同じ代表長さでは空気の方がレイノルズ数が小さくなる、ということを意味しています。

圧力依存性への注意

空気の動粘性係数を正確に扱うには、圧力依存性にも注意が必要です。

 \nu = \dfrac{\mu}{\rho}

気体の粘度  \mu は圧力にほぼ依存しませんが、密度  \rho は圧力に比例して増加します。

そのため圧縮空気や高圧ガスの配管では、動粘性係数が大気圧下の値よりも小さく(1/5〜1/10程度)なる場合があり、ハンドブックの大気圧表をそのまま使うと誤差の原因になります。

高圧ガス配管を扱う場合には、圧力と温度の両方を考慮した補正が必要となります。

 

6. 動粘性係数とレイノルズ数の関係

動粘性係数が実務で最もよく使われる場面が、レイノルズ数の計算です。

レイノルズ数は流れが層流か乱流かを判定する無次元数であり、動粘性係数を使うことでシンプルな形に書き換えられます。

レイノルズ数の式の導出

レイノルズ数の一般形は、粘度  \mu を使うと次のように書けます。

 Re = \dfrac{\rho v D}{\mu}

この式の分母・分子を密度  \rho で割ると、動粘性係数  \nu = \mu/\rho を使った式に変形できます。

 Re = \dfrac{v D}{\nu}

この形の方が変数が「代表速度  v」「代表長さ  D」「動粘性係数  \nu」の3つだけになり、ハンドブックの動粘性係数表を引いてそのまま代入できるため、実務計算では圧倒的に使いやすくなります。

レイノルズ数の計算例(水の配管流れ)

内径  D = 50 mm の配管を、平均流速  v = 2.0 m/s の20℃の水が流れる場合のレイノルズ数を計算してみます。

動粘性係数は先の一覧表から  \nu = 1.004 \times 10^{-6} m²/s を使います。

 Re = \dfrac{vD}{\nu} = \dfrac{2.0 \times 0.050}{1.004 \times 10^{-6}} \approx 9.96 \times 10^{4}

Re が約10万と、臨界レイノルズ数(2,300程度)を大きく超えているため、この流れは乱流と判定できます。

レイノルズ数の判定基準や等価直径の扱い方については、以下の記事で詳しく解説しています。

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7. 実務設計で動粘性係数を使う場面

動粘性係数は、単にレイノルズ数を求めるためだけの物性値ではなく、配管設計・潤滑設計・熱交換器設計など、さまざまな実務設計の場面で直接的に活用されます。

配管設計における圧力損失計算

配管系の圧力損失は、ダルシー・ワイスバッハ式によって次のように表されます。

 \Delta P = f \dfrac{L}{D} \dfrac{\rho v^2}{2}

ここで摩擦係数  f はレイノルズ数の関数であり、レイノルズ数の算出に動粘性係数が必要となります。

つまり、動粘性係数の精度が圧力損失計算の精度を左右する基礎となっているといえます。

潤滑設計・油圧設計での粘度管理

潤滑油や油圧作動油の分野では、ISO VGという粘度グレードが動粘性係数の40℃値(cSt)を基準にして規格化されています。

例えばISO VG 32 の潤滑油は、40℃における動粘性係数が28.8〜35.2 cStの範囲にあることを示しています。

油温が変わると動粘性係数が大きく変動するため、油圧機器の起動時(低温)と定常運転時(高温)では粘度特性がまったく異なり、設計段階で使用温度範囲における動粘性係数の変化幅を必ず確認する必要があります。

熱交換器設計と無次元数

熱交換器の伝熱係数を求めるヌセルト数の相関式にも、レイノルズ数やプラントル数が含まれるため、背景として動粘性係数が関わってきます。

 Nu = 0.023 Re^{0.8} Pr^{0.4}

この代表的なディタス・ベルター式では、レイノルズ数を介して動粘性係数の値が間接的に反映されており、動粘性係数の精度が伝熱計算の精度にも波及することになります。

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8. まとめ

ここまで、動粘性係数の定義・計算式・単位換算・温度別一覧表・実務設計への応用について解説してきました。

動粘性係数  \nu は、粘度  \mu を密度  \rho で割った量として定義される基礎的な物性値であり、 \nu = \mu / \rho というシンプルな式で表されます。

単位は m²/s が基本ですが、実務では cSt(= mm²/s)が多用されるため、両者の換算関係を押さえておくことが大切です。

水と空気では温度依存の方向が逆(水は温度上昇で減少、空気は温度上昇で増加)である点、そして0℃〜100℃の範囲で水の動粘性係数が約6倍も変化する点は、実務設計で必ず意識したいポイントといえます。

レイノルズ数の計算式  Re = vD/\nu をはじめ、配管の圧力損失計算・潤滑設計・熱交換器設計など、流体を扱うあらゆる場面で動粘性係数は基礎となる物性値として登場します。

温度条件を正しく反映した動粘性係数の値を使うことで、設計計算の精度が一段と高まり、より信頼できる設計判断ができるようになります。