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PWM制御とは?デューティ比と回路を解説

モーターの回転速度を自在に変えたい、LEDの明るさを滑らかに調整したい。

こうした「出力を連続的に制御したい」というニーズに応える技術が、PWM制御です。

PWMとはPulse Width Modulationの略で、日本語では「パルス幅変調」と呼ばれます。
電圧のON/OFFを高速で繰り返し、そのON時間の比率(デューティ比)を変えることで、あたかも電圧そのものを変化させたかのような効果を得る制御方式です。

スイッチング素子を使うため電力損失が極めて小さく、産業用モーター駆動からPC冷却ファン、LED照明まで幅広い分野で採用されています。

本記事では、PWM制御の基本原理からデューティ比の計算、回路構成、周波数と分解能の関係、DCモーターやLED・ファンへの応用、さらにPID制御との組み合わせまでを体系的に解説します。

 

1. PWM制御とは

PWM制御(Pulse Width Modulation)とは、デジタル信号のON/OFFを高速で切り替え、ON時間の幅を変化させることで出力を制御する方式です。

たとえば電源電圧が12Vの回路で、ON時間を全体の50%にすれば、負荷には平均6Vが供給されます。
ON時間の比率を25%にすれば平均3V、75%にすれば平均9Vと、電圧を段階的に調整できます。

 

このON時間の比率をデューティ比(Duty Cycle)と呼び、PWM制御の核心となるパラメータです。

重要なのは、PWM制御では電圧値そのものを変えているわけではない点です。
出力は常に「電源電圧V」か「0V」のどちらかであり、切り替えの時間比率だけを操作しています。

 

この方式には、大きく3つのメリットがあります。

  • 高効率:スイッチング素子(MOSFET等)はONかOFFのどちらかの状態にあるため、素子自体での電力損失が極めて小さくなります
  • デジタル制御との親和性:マイコンのタイマー機能で直接PWM信号を生成でき、ソフトウェアによる精密な制御が可能です
  • 広い適用範囲:モーター、LED、ヒーター、電源回路など、電力制御が必要なあらゆる場面で活用できます

 

たとえば、ArduinoではanalogWrite()関数を呼ぶだけで8ビット分解能のPWM信号を出力できます。
STM32などの高性能マイコンでは、専用タイマーペリフェラルにより16ビット以上の高分解能PWMや、複数チャンネルの同期出力にも対応しています。
このように、ソフトウェアの設定変更だけで制御特性を柔軟に調整できる点が、PWM制御の大きな魅力です。

 

PWM制御とリニアレギュレータの違い

PWM制御と比較されることが多い方式に、リニアレギュレータ(シリーズレギュレータ)があります。
リニアレギュレータは出力トランジスタの抵抗値を連続的に変化させて電圧を調整する方式で、ノイズは少ないものの、余分な電圧を熱として消費するため効率が低くなります。

 

リニアレギュレータの消費電力Plossは、入力電圧Vinと出力電圧Voutの差分と負荷電流Iの積で決まります。

 

 P_{\text{loss}} = (V_{\text{in}} - V_{\text{out}}) \times I

 

たとえば12V入力で5V出力、電流2Aの場合の損失は以下のとおりです。

 

 P_{\text{loss}} = (12 - 5) \times 2 = 14 \quad \lbrack \text{W} \rbrack

 

出力電力10Wに対して14Wもの熱損失が生じ、効率はわずか約42%にとどまります。

 

一方、PWM制御を用いたスイッチング方式では、MOSFETのON抵抗による損失とスイッチング損失のみで済むため、80〜95%の効率を実現できます。
この効率差が、現在の電力制御においてPWMが主流となっている最大の理由です。

 

ただし、PWM制御には高速スイッチングに伴う電磁ノイズ(EMI)が発生するというデメリットもあります。
そのため、ノイズに敏感なオーディオ機器やセンサ回路の電源にはリニアレギュレータが好まれる場合もあり、用途に応じた使い分けが重要です。

 

PWM制御の動作原理

PWM制御の動作原理をもう少し詳しく見てみましょう。

PWM信号は、のこぎり波(三角波)と基準電圧を比較することで生成されます。
のこぎり波の電圧が基準電圧を下回っている期間が「ON」、上回っている期間が「OFF」となります。

 

基準電圧を高くするとON期間が長くなり(デューティ比が増加)、低くするとON期間が短くなります(デューティ比が減少)。
この基準電圧をアナログ的に変化させるか、デジタルカウンタの比較値として設定するかの違いが、アナログPWMとデジタルPWMの差異です。

 

現代のマイコンでは、タイマー/カウンタモジュールに内蔵されたコンペアマッチ機能を使って、ハードウェアレベルでPWM信号を生成します。
CPUの介在なしにPWM信号を出力し続けられるため、CPUは他の処理に専念できるという利点もあります。

 

PWM信号の波形モード

マイコンのPWMモジュールが生成する波形には、大きく分けて「エッジアライン(片斜め)」と「センターアライン(両斜め)」の2種類があります。

エッジアラインPWMでは、タイマーカウンタが0からカウントアップしてTOP値に達するとリセットされる、のこぎり波状の動作を行います。
カウンタ値がコンペア値を超えた瞬間に出力が切り替わるため、パルスの立ち上がりエッジが常に周期の先頭に揃う波形になります。

 

センターアラインPWMでは、タイマーカウンタが0→TOP→0と三角波状にカウントアップ/ダウンを繰り返します。
パルスの中心が常に周期の中央に位置する対称的な波形が生成されます。

 

センターアラインPWMはモーター駆動において重要な利点を持っています。
パルスが対称のため高調波成分が少なく、電磁ノイズの低減やモーターの振動抑制に効果的です。
ただし、同じクロック周波数でもエッジアラインの半分のPWM周波数になるため、用途に応じた使い分けが必要です。

 

これらの波形モードは、ノイズ特性や電磁干渉(EMI)にも影響を与えます。
エッジ整列モードでは立ち上がりタイミングが揃うため、高調波成分が特定の周波数に集中しやすくなります。
一方、中央整列モードでは高調波が分散されるため、EMIの低減に有利であることが知られています。

 

自動車や医療機器などEMC規格が厳しい用途では、中央整列モードの採用が推奨されます。
さらに、スペクトラム拡散(周波数の微小変動)を組み合わせることで、ピークノイズを効果的に低減する手法も実用化されています。

 

2. デューティ比の定義と計算

デューティ比(Duty Cycle)とは、PWM信号の1周期に占めるON時間の割合です。
PWM制御において最も基本的なパラメータであり、出力の大きさを直接決定します。

 

デューティ比の定義式

1周期の時間をT、ON時間をTon、OFF時間をToffとすると、周期Tは次の式で表されます。

 

 T = T_{\text{on}} + T_{\text{off}}

 

デューティ比Dは、周期Tに対するON時間Tonの比率として定義されます。

 

 D = \dfrac{T_{\text{on}}}{T} \times 100 \quad \lbrack \% \rbrack

 

デューティ比が決まれば、負荷に供給される平均電圧Vavgを求められます。
電源電圧をVとすると、平均電圧は次のようになります。

 

 V_{\text{avg}} = D \times V

 

ここでDは0〜1の範囲(パーセント表記ではなく比率)で代入します。

 

平均電圧の式は、1周期にわたる電圧波形の時間平均から導出できます。
ON期間は電圧V、OFF期間は電圧0であるため、積分を用いると以下のように表されます。

 

 V_{\text{avg}} = \dfrac{1}{T} \int_{0}^{T} v(t) \, dt = \dfrac{1}{T} \left( V \cdot T_{\text{on}} + 0 \cdot T_{\text{off}} \right) = \dfrac{T_{\text{on}}}{T} \cdot V = D \cdot V

 

デューティ比の計算例

電源電圧V = 12Vの回路でデューティ比を変化させた場合の平均電圧を計算してみましょう。

 

D = 25%のとき

 

 V_{\text{avg}} = 0.25 \times 12 = 3.0 \quad \lbrack \text{V} \rbrack

 

D = 50%のとき

 

 V_{\text{avg}} = 0.50 \times 12 = 6.0 \quad \lbrack \text{V} \rbrack

 

D = 75%のとき

 

 V_{\text{avg}} = 0.75 \times 12 = 9.0 \quad \lbrack \text{V} \rbrack

 

このように、デューティ比と平均電圧は比例関係にあります。
デューティ比を0%から100%まで変化させることで、平均電圧を0Vから電源電圧Vまで連続的に制御できます。

 

平均電力の計算

負荷に供給される平均電力Pavgもデューティ比から求められます。
純抵抗負荷Rに対する平均電力は次のとおりです。

 

 P_{\text{avg}} = \dfrac{V_{\text{avg}}^{2}}{R} = \dfrac{(D \cdot V)^{2}}{R} = D^{2} \cdot \dfrac{V^{2}}{R}

 

たとえば12V電源、10Ω負荷、D = 50%の場合は以下のようになります。

 

 P_{\text{avg}} = 0.5^{2} \times \dfrac{12^{2}}{10} = 0.25 \times 14.4 = 3.6 \quad \lbrack \text{W} \rbrack

 

注意すべき点は、平均電力はデューティ比の二乗に比例するということです。
デューティ比が50%のとき、平均電力は最大電力(D = 100%時の14.4W)の25%にとどまります。

 

デューティ比と実効値の関係

平均電圧とは別に、実効値(RMS:Root Mean Square)も重要な指標です。
PWM信号の実効値Vrmsは次の式で求められます。

 

 V_{\text{rms}} = V \sqrt{D}

 

たとえば電源電圧12V、D = 50%のとき、実効値は以下のとおりです。

 

 V_{\text{rms}} = 12 \times \sqrt{0.5} \approx 8.49 \quad \lbrack \text{V} \rbrack

 

平均電圧6.0Vと実効値8.49Vは異なる値になります。
モーター駆動のように回転速度を制御する用途では平均電圧が支配的ですが、発熱量の計算には実効値を用いる必要があります。

 

この区別は実務で非常に重要です。
たとえばヒーター制御においては、発熱量は電圧の実効値の二乗に比例するため、平均電圧で計算すると過小評価となり、想定以上に温度が上昇する原因になります。

 

ON時間と周波数からデューティ比を求める

実務では、PWM周波数fとON時間Tonからデューティ比を算出する場面もあります。
周波数fと周期Tの関係は次のとおりです。

 

 T = \dfrac{1}{f}

 

これをデューティ比の定義式に代入すると、次のようになります。

 

 D = T_{\text{on}} \times f

 

たとえば、PWM周波数が20kHz(T = 50μs)でON時間が15μsの場合は以下のように計算できます。

 

 D = 15 \times 10^{-6} \times 20 \times 10^{3} = 0.3 = 30\%

 

マイコンのレジスタ設定では、タイマーのカウント値としてON時間を指定する方式が一般的です。
たとえばタイマーの最大値が255(8ビット)で、比較値を76に設定した場合、デューティ比は次のようになります。

 

 D = \dfrac{76}{255} \approx 0.298 = 29.8\%

 

3. PWM制御の回路構成

PWM制御回路は、信号生成部・ゲートドライバ・スイッチング素子・保護回路の4つの要素で構成されます。
それぞれの役割と選定のポイントを順に見ていきましょう。

 

PWM信号生成部

PWM信号を生成する方法には、主にマイコンのタイマー機能を使う方法と、専用ICを使う方法の2種類があります。

マイコン(マイクロコントローラ)のタイマー/カウンタ機能は、ソフトウェアでデューティ比や周波数を自由に変更できるため、現在のPWM制御で最も広く使われています。
8ビットタイマーなら256段階、16ビットタイマーなら65,536段階の分解能でデューティ比を設定できます。

 

マイコンによるPWM生成の利点は、制御アルゴリズムとPWM出力を1チップで完結できる点です。
PID制御やセンサ読み取りなどの処理と同時にPWM信号を出力できるため、システム全体をコンパクトにまとめられます。

 

一方、タイマーIC 555を使ったアナログ方式もあります。
外付けの抵抗とコンデンサの値で発振周波数とデューティ比が決まるシンプルな構成で、マイコンが不要な簡易的なPWM回路に適しています。

 

555タイマーの発振周波数は、外付け抵抗RA、RBとコンデンサCの値から次の式で求められます。

 

 f = \dfrac{1.44}{(R_{A} + 2 R_{B}) \cdot C}

 

このとき、デューティ比は抵抗比によって決まります。

 

 D = \dfrac{R_{A} + R_{B}}{R_{A} + 2 R_{B}}

 

555タイマーは部品点数が少なく低コストですが、温度変化による特性の変動や、デューティ比の調整範囲に制約がある点がデメリットです。

 

ゲートドライバ

マイコンの出力電圧は一般的に3.3Vまたは5Vですが、パワーMOSFETを完全にONにするにはゲート電圧として10〜15Vが必要です。
この電圧レベルの変換を行うのがゲートドライバICの役割です。

 

ゲートドライバにはもう1つ重要な機能があります。
MOSFETのゲートには寄生容量(ゲート容量)が存在し、この容量を素早く充放電しなければ高速スイッチングが実現できません。

 

ゲートドライバは大きな電流駆動能力(数百mA〜数A)を持ち、ゲート容量を高速に充放電してMOSFETの遷移時間を短縮します。
遷移時間が長いとMOSFETが中間領域(半導通状態)にとどまり、大きなスイッチング損失が発生するため、ゲートドライバの選定は回路の効率に直結します。

 

Hブリッジ回路などハイサイド(電源側)のMOSFETを駆動する場合は、ブートストラップ回路付きのゲートドライバが必要です。
ハイサイドMOSFETのゲート電圧は電源電圧よりも高い電位が必要となるため、ブートストラップコンデンサとダイオードで昇圧する仕組みが採用されています。

 

スイッチング素子(MOSFET)

PWM制御のスイッチング素子には、主にMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が使用されます。

MOSFETが選ばれる理由は、ON抵抗が非常に小さく(数mΩ〜数十mΩ)、高速スイッチング(数十ns〜数百ns)が可能なためです。
ON状態での電力損失(導通損失)はオン抵抗RDS(on)と電流Iの二乗の積で決まります。

 

 P_{\text{cond}} = I^{2} \times R_{DS\text{(on)}}

 

たとえばRDS(on) = 10mΩ、電流I = 5Aの場合の導通損失は以下のとおりです。

 

 P_{\text{cond}} = 5^{2} \times 0.01 = 0.25 \quad \lbrack \text{W} \rbrack

 

わずか0.25Wの損失で5Aの電流をスイッチングできることがわかります。

 

また、スイッチング時にも損失が生じます。
MOSFETがONからOFFへ、またはOFFからONへ遷移する過程で、電圧と電流が同時にゼロでない状態(クロスオーバー期間)が発生し、この期間に電力が消費されます。

 

スイッチング損失Pswは、スイッチング周波数f、電源電圧V、電流I、遷移時間tr(立ち上がり)およびtf(立ち下がり)から次の式で概算できます。

 

 P_{\text{sw}} = \dfrac{1}{2} V \cdot I \cdot (t_{r} + t_{f}) \cdot f

 

スイッチング損失は周波数に比例するため、高周波駆動時には遷移時間の短いMOSFETを選ぶことが重要です。

 

MOSFETの総損失は、導通損失とスイッチング損失の和で表されます。

 

 P_{\text{total}} = P_{\text{cond}} + P_{\text{sw}} = I^{2} R_{DS\text{(on)}} + \dfrac{1}{2} V I (t_{r} + t_{f}) f

 

この式から、低周波数・大電流の用途ではON抵抗の低さが、高周波数の用途ではスイッチング速度の速さがそれぞれ重要となることがわかります。

 

保護回路

PWM回路には、素子の破損を防ぐための保護回路が不可欠です。
とくに誘導性負荷(モーターやソレノイド)を駆動する場合、MOSFETがOFFになった瞬間にインダクタンスに蓄えられたエネルギーが逆起電力として放出されます。

 

インダクタンスLに電流Iが流れているときに蓄えられるエネルギーEは、次の式で表されます。

 

 E = \dfrac{1}{2} L I^{2}

 

MOSFETがOFFになるとこのエネルギーが行き場を失い、逆起電力としてMOSFETのドレイン-ソース間に数十〜数百Vの高電圧スパイクが発生します。
この電圧がMOSFETの耐圧を超えると素子が破壊されます。

 

この逆起電力からMOSFETを保護するのがフライバックダイオード(フリーホイールダイオード)です。
MOSFETのドレイン-ソース間に逆並列に接続し、逆起電力をダイオードを通じて安全に還流させます。

 

フライバックダイオードにはショットキーバリアダイオード(SBD)が適しています。
SBDは順方向電圧降下が0.2〜0.4Vと小さく、逆回復時間が極めて短いため、高周波スイッチング回路に最適です。

 

さらに、電源ラインのノイズを除去し安定動作を確保するために、バイパスコンデンサ(デカップリングコンデンサ)を電源IC付近やMOSFETの近くに配置します。
セラミックコンデンサ(0.1μF〜10μF)と電解コンデンサ(100μF〜1000μF)を併用するのが一般的です。

 

バイパスコンデンサは、高周波ノイズの吸収にはセラミック、電流の瞬間的な供給には電解という役割分担で配置します。
とくにMOSFETのスイッチング時には瞬間的に大きな電流が流れるため、コンデンサの配線長を極力短くする基板レイアウトが重要です。

 

PCB(プリント基板)のレイアウト設計もPWM回路の性能を左右する重要な要素です。
大電流が流れるパワーステージの配線は、太く短くすることが原則です。
配線のインダクタンスが大きいと、スイッチング時にサージ電圧が発生し、MOSFETの耐圧を超えて素子が破壊される危険があります。

 

入力コンデンサはMOSFETの直近に配置し、電流ループの面積を最小化します。
ゲートドライバの電源デカップリングコンデンサも、ICの電源ピン直近に配置することが推奨されます。
グランドプレーンを使用する場合は、パワーグランドと信号グランドを分離し、1点で接続する「スター接地」が効果的です。

 

4. PWM周波数と分解能

PWM制御の性能を決める重要なパラメータとして、PWM周波数分解能(ビット数)があります。
この2つはトレードオフの関係にあり、用途に応じた適切な設計が求められます。

 

PWM周波数の選定

PWM周波数は、スイッチング素子がON/OFFを繰り返す速さを決定します。
周波数が低すぎると負荷の応答に影響が出て、高すぎるとスイッチング損失が増大します。

用途別の一般的なPWM周波数の目安を以下に示します。

 

用途 推奨周波数 理由
LED調光 200Hz〜1kHz 人間の目のちらつき知覚限界(約60Hz)以上であればよい
DCモーター 1kHz〜20kHz 可聴域(20Hz〜20kHz)を超える周波数で騒音を回避
PCファン(4pin) 25kHz(規格値) Intel仕様で25kHz±5kHzが推奨
スイッチング電源 100kHz〜数MHz インダクタ・コンデンサの小型化のため高周波化

 

可聴域(20Hz〜20kHz)内の周波数でモーターを駆動すると、モーターの巻線やコアが振動して「キーン」という不快な音を発します。
このため、モーター駆動では20kHz以上の周波数を採用するのが一般的です。

 

一方で、PWM周波数を上げすぎるとスイッチング損失が増大します。
前述の式  P_{\text{sw}} = \dfrac{1}{2} V I (t_{r} + t_{f}) f が示すように、損失は周波数fに正比例するため、不必要に高い周波数を設定するとMOSFETの発熱が増加して放熱設計が困難になります。

 

分解能(ビット数)と制御精度

PWMの分解能は、デューティ比を何段階に分割できるかを表します。
マイコンのタイマーのビット数によって決まり、nビットの場合は2n段階の分解能が得られます。

 

 \text{分解能} = 2^{n} \quad \text{段階}

 

たとえば8ビットタイマーの場合、分解能は以下のとおりです。

 

 2^{8} = 256 \quad \text{段階}

 

デューティ比の最小変化量は、分解能の逆数で求められます。

 

 \Delta D = \dfrac{1}{2^{n}} \times 100 \quad \lbrack \% \rbrack

 

ビット数 分解能(段階数) 最小変化量 用途の目安
8ビット 256段階 約0.39% 簡易モーター制御・LED調光
10ビット 1,024段階 約0.098% 標準的なモーター制御
12ビット 4,096段階 約0.024% 高精度サーボモーター
16ビット 65,536段階 約0.0015% 超高精度制御・オーディオ

 

周波数と分解能のトレードオフ

マイコンのタイマーを使ったPWM生成では、システムクロック周波数fclk、PWM周波数fpwm、分解能の間に次の関係が成り立ちます。

 

 f_{\text{pwm}} = \dfrac{f_{\text{clk}}}{2^{n}}

 

この式から、システムクロックが一定の場合、PWM周波数を上げると分解能が低下し、分解能を上げるとPWM周波数が下がることがわかります。

 

具体例として、システムクロック16MHzのマイコンで分解能とPWM周波数の関係を計算します。

 

 n = 8 : \quad f_{\text{pwm}} = \dfrac{16 \times 10^{6}}{256} = 62{,}500 \quad \lbrack \text{Hz} \rbrack

 

 n = 10 : \quad f_{\text{pwm}} = \dfrac{16 \times 10^{6}}{1{,}024} = 15{,}625 \quad \lbrack \text{Hz} \rbrack

 

 n = 16 : \quad f_{\text{pwm}} = \dfrac{16 \times 10^{6}}{65{,}536} \approx 244 \quad \lbrack \text{Hz} \rbrack

 

16ビットの高分解能を選ぶとPWM周波数が244Hzまで低下してしまいます。
モーター駆動(20kHz以上推奨)には使えない周波数です。

 

このため、実務では用途に応じて分解能と周波数のバランスを最適化します。
A/D変換のビット数と同様に、必要十分な精度を見極めることが設計のポイントとなります。

 

また、プリスケーラ(分周器)を使うことで、この制約をある程度緩和することも可能です。
たとえば、クロックを4分周してからタイマーに供給すると、周波数は1/4に下がりますが、同じビット数でもより低いPWM周波数を実現できます。
逆に言えば、必要なPWM周波数に対してプリスケーラを調整し、使用可能な分解能を最大化する設計が可能です。
プリスケーラの分周比は通常、1, 2, 4, 8, 64, 256, 1024といった2のべき乗の値が選択でき、マイコンのレジスタ設定で簡単に切り替えられます。

 

 

実際の設計では、必要な制御精度から逆算して分解能を決定し、それに応じたPWM周波数とクロック周波数を選択するアプローチが一般的です。
たとえば、モーターの速度制御であれば8ビット(256段階)で十分な場合が多いですが、高精度な電源制御では12ビット以上の分解能が要求されることもあります。

 

マイコンによっては、PWM専用のハードウェアモジュールを複数チャンネル搭載しているものもあります。
たとえば、STM32シリーズではAdvanced Timer(TIM1/TIM8)が最大4チャンネルの相補PWM出力に対応しており、三相モーター駆動やマルチチャンネルLED制御に活用されています。

 

5. DCモーターのPWM速度制御

 

PWM制御はDCモーターの速度制御に最も広く利用されています。
モーター端子に加わる平均電圧がデューティ比に比例するため、回転速度を連続的に変化させることができます。

 

DCモーターの回転速度Nは、以下のように表されます。

 

 N = \dfrac{V - I_{a} R_{a}}{K \Phi}

 

ここで、Vは端子電圧、Iaは電機子電流、Raは電機子抵抗、Kはモーター定数、Φは磁束です。
PWM制御では端子電圧をデューティ比で調整するため、 V_{\text{avg}} = D \times V_{\text{supply}} を上式に代入することで、速度とデューティ比の関係が得られます。

 

Hブリッジ回路による正逆転制御

 

モーターの正転・逆転を制御するには、Hブリッジ(フルブリッジ)回路を使用します。
4つのスイッチング素子を組み合わせ、通電方向を切り替えることでモーターの回転方向を制御します。

 

スイッチ状態 Q1 Q2 Q3 Q4 モーター動作
正転 ON OFF OFF ON 時計回り回転
逆転 OFF ON ON OFF 反時計回り回転
ブレーキ ON OFF ON OFF 短絡制動
フリーラン OFF OFF OFF OFF 惰性回転

 

Hブリッジの上側と下側のスイッチが同時にONになると、電源が短絡して素子が破壊されます。
これを防ぐため、スイッチの切り替え時にはデッドタイム(不感帯時間)を設けます。

 

実際のHブリッジ制御では、PWMのデューティ比を正転用と逆転用で切り替えるだけでなく、ブレーキの種類を使い分けることで多彩なモーション制御が可能になります。
たとえばロボットアームの関節制御では、位置決め時に短絡制動で素早く停止させ、搬送時にはフリーランで柔らかく減速させるといった制御戦略が取られます。

 

デッドタイムは一般的に数百ナノ秒から数マイクロ秒の範囲で設定されます。
短すぎると短絡の危険があり、長すぎると出力波形が歪んで制御精度が低下します。
MOSFETのターンオフ時間toffよりも長いデッドタイムを確保することが安全設計の基本です。

 

PWM制動の3方式

 

モーターの制動(ブレーキ)方式には、以下の3種類があります。

 

1つ目は短絡制動です。
モーター端子を短絡させ、逆起電力による電流で制動力を得ます。
急速停止に適していますが、発生する電流が大きいため、回路の電流定格に注意が必要です。

 

2つ目は回生制動です。
モーターが発電機として動作し、運動エネルギーを電源に戻します。
エネルギー効率が高く、電気自動車やエレベーターなどで広く使われています。

 

3つ目はフリーラン(惰性運転)です。
すべてのスイッチをOFFにして、モーターを自然に減速させます。
制動力は最も弱いですが、急激な負荷変動を避けたい場合に有効です。

 

フィードバック制御による速度安定化

 

PWMのデューティ比を固定しても、負荷変動や電源電圧の変化によって実際の回転速度は変動します。
安定した速度制御を実現するには、エンコーダーで実際の回転速度を計測し、フィードバック制御を行うことが重要です。

 

フィードバック制御では、目標速度と実測速度の偏差に基づいてデューティ比を動的に調整します。
たとえば、負荷が増加して速度が低下した場合、制御器がデューティ比を自動的に引き上げて速度を維持します。

 

インクリメンタルエンコーダーを使用する場合、一定時間内のパルス数をカウントすることで回転速度を算出します。
分解能が高いエンコーダーを使うほど、低速域での速度検出精度が向上します。

 

また、速度のほかにも電流フィードバックを追加する場合があります。
モーターに過大な電流が流れると巻線の焼損や駆動回路の破壊につながるため、電流センサ(シャント抵抗やホールセンサ)で電流を監視し、制限値を超えた場合にデューティ比を自動的に低下させる保護機能を設けます。

 

産業用モータードライバでは、速度制御ループの内側に電流制御ループを配置する「カスケード制御」構造が一般的です。
内側の電流ループが高速に応答し、外側の速度ループが目標速度を維持するという二重構造により、高い制御性能と安全性を両立しています。

 

 

 

6. LED調光とファン制御への応用

 

PWM制御はモーター以外にも、LED調光やファン制御など幅広い分野で活用されています。
ここでは、それぞれの応用における技術的なポイントを解説します。

 

LEDのPWM調光

 

LEDの明るさを調整する方法には、大きく分けてアナログ調光とPWM調光の2種類があります。

 

アナログ調光は電流値そのものを変化させる方式です。
回路が単純な反面、電流を絞ると発光効率が低下し、色温度(発光色)が変化するという欠点があります。
とくに白色LEDでは、低電流域で黄色味が増す現象が顕著に現れます。

 

これに対してPWM調光は、定格電流でのON/OFFを高速に繰り返す方式です。
LEDが点灯している瞬間は常に定格電流が流れるため、色温度の変化がほとんど発生しません。
デューティ比を下げれば見かけ上の明るさが下がり、上げれば明るくなります。

 

比較項目 アナログ調光 PWM調光
色温度の安定性 低電流で変化大 安定
発光効率 低電流域で低下 定格点灯のため一定
回路の複雑さ 単純 タイマーまたはマイコン必要
調光範囲 限定的 0〜100%まで広い
フリッカーの可能性 なし 低周波数で発生

 

PWM調光で注意すべき点はフリッカー(ちらつき)です。
人間の目は数十Hz以下の点滅を知覚できるため、PWM周波数が低すぎるとちらつきが見えてしまいます。
一般的に、200Hz以上のPWM周波数であれば、ほとんどの人はフリッカーを感じません。

 

映像撮影の現場では、カメラのフレームレートとPWM周波数の干渉により、画面上に暗い縞模様(フリッカー)が映り込むことがあります。
この問題を回避するには、PWM周波数をカメラのフレームレートの整数倍に設定するか、十分に高い周波数(数kHz以上)を使用します。

 

また、人間の視覚は明るさの変化を対数的に知覚します。
デューティ比を線形に変化させると、暗い領域では変化が急激に見え、明るい領域では変化が鈍く感じられます。
自然な調光感を実現するには、ガンマ補正を適用し、デューティ比を指数関数的に変化させることが効果的です。

 

補正後のデューティ比は以下の式で計算できます。

 

 D_{\text{corrected}} = \left( \dfrac{L}{L_{\text{max}}} \right)^{\gamma}

 

ここで  L は目標の明るさレベル、 L_{\text{max}} は最大レベル、 \gamma はガンマ値(通常2.2〜2.8)です。
この補正により、調光スライダーを動かしたときに、人間の目に均一な明るさ変化として知覚されます。

 

ファンのPWM制御

 

PCの冷却ファンや産業用ファンでは、4ピンPWM方式が広く採用されています。
従来の3ピン方式では電圧を変化させて回転数を調整していましたが、低電圧での起動が不安定になるという問題がありました。

 

4ピンPWM方式の各ピンの役割は以下のとおりです。

 

ピン番号 名称 機能
1 GND グランド(基準電位)
2 +12V 電源供給(常時12V)
3 TACH 回転数信号(パルス出力)
4 PWM 速度制御信号(PWM入力)

 

Intelの仕様書では、PWM信号の周波数として25kHzが規定されています。
この周波数は人間の可聴域上限付近にあるため、PWM制御に起因するノイズが聞こえにくいという利点があります。

 

ファンカーブ(Fan Curve)は、温度とファン回転数の対応関係を定めたものです。
代表的な設定例を以下に示します。

 

CPU温度 デューティ比 動作モード
〜40℃ 20% サイレント
40〜60℃ 20〜60% 線形制御
60〜80℃ 60〜90% 冷却優先
80℃〜 100% 最大回転

 

このように、温度に応じてデューティ比を段階的または線形に変化させることで、静音性と冷却性能のバランスをとることができます。

 

ファンカーブの設計で注意すべき点は、ヒステリシスの導入です。
温度が閾値をまたぐたびにファン回転数が急変すると、ファンの回転速度が頻繁に変わり耳障りな騒音となります。
これを防ぐため、温度上昇時と下降時で閾値を数度ずらすヒステリシス制御を実装するのが一般的です。

 

たとえば、60℃で高速回転に切り替える設定の場合、温度上昇時は60℃で切り替えますが、温度下降時は57℃まで下がるまで高速回転を維持します。
この3℃のヒステリシス幅により、閾値付近での頻繁な切り替わりを防止できます。

 

その他の応用分野

 

PWM制御はモーター・LED・ファン以外にも多くの分野で利用されています。

 

電源回路においては、DC-DCコンバーター(降圧型・昇圧型)の核となる技術です。
スイッチング素子のON/OFF比率を制御することで、入力電圧から目的の出力電圧を効率よく生成します。
スマートフォンの充電器やノートPCのACアダプタなど、身近な電源製品の多くがPWM方式のスイッチング電源を採用しています。

 

音声出力の分野では、クラスDアンプ(デジタルアンプ)がPWM変調を利用しています。
アナログ音声信号をPWM信号に変換し、スイッチング増幅した後にローパスフィルタで復元する仕組みです。
スイッチング動作のため理論上の効率は100%に近く、小型軽量で発熱が少ないという特長があります。

 

サーボモーターの角度制御もPWMの代表的な応用例です。
ラジコンやロボットアームで使われるサーボモーターは、パルス幅(通常1〜2ms)によって目標角度が指定されます。
この方式はPPM(Pulse Position Modulation)とも呼ばれ、制御信号がシンプルであることが特長です。

 

 

さらに、ヒーター制御の分野でもPWMは重要な役割を担っています。
電気炉や樹脂成形機の温度制御では、PWMでヒーターへの供給電力を調整し、PID制御と組み合わせて目標温度を精密に維持します。
ヒーターは応答が遅い(時定数が大きい)ため、比較的低いPWM周波数(数Hz〜数十Hz)でも十分な制御が可能です。

 

また、超音波発生器やインダクション加熱(IH)など、共振回路を利用するシステムでもPWMの考え方が応用されています。
これらのシステムでは、スイッチング周波数を共振周波数に合わせることで効率的なエネルギー伝達を実現しています。

 

7. PID制御との組み合わせ

 

PWM制御を産業用途で使う場合、単にデューティ比を固定するだけでは十分な制御性能が得られないことがほとんどです。
外乱(負荷変動や温度変化)に対して目標値を維持するためには、フィードバック制御が不可欠です。
ここでは、最も広く使われているPID制御とPWMの組み合わせについて解説します。

 

PID制御の基本式

 

PID制御は、比例(P)・積分(I)・微分(D)の3つの制御動作を組み合わせた制御方式です。
制御出力  u(t) は、偏差  e(t) に基づいて以下のように計算されます。

 

 u(t) = K_{p} e(t) + K_{i} \int_{0}^{t} e(\tau) \, d\tau + K_{d} \dfrac{de(t)}{dt}

 

ここで、 K_{p} は比例ゲイン、 K_{i} は積分ゲイン、 K_{d} は微分ゲインです。

 

比例動作は現在の偏差の大きさに比例した出力を生成します。
ゲインを大きくすれば応答は速くなりますが、大きすぎると振動が発生します。

 

積分動作は偏差の累積に比例した出力を生成し、定常偏差(オフセット)を除去します。
たとえば、モーターの回転速度が目標よりわずかに低い状態が続くと、積分項が徐々に増加してデューティ比を引き上げ、最終的に偏差をゼロにします。

 

微分動作は偏差の変化速度に比例した出力を生成します。
急激な変化を抑制するブレーキの役割を果たし、オーバーシュート(目標値の行き過ぎ)を軽減します。

 

この3つの動作は、自動車の運転に例えるとわかりやすいです。
比例動作は「目標速度との差が大きいほどアクセルを強く踏む」操作に相当します。
積分動作は「坂道で速度が足りない状態が続くとき、じわじわとアクセルを追加する」操作です。
微分動作は「急に速度が上がりそうなとき、早めにアクセルを戻す」予測的な操作に対応します。

 

PID出力からPWMデューティ比への変換

 

PID制御器の出力u(t)は理論上、正負の無制限な値を取り得ます。
しかし、PWMのデューティ比は0%〜100%の範囲に制限されます。
そのため、PID出力をデューティ比に変換する際には、クランプ(飽和制限)処理が必要です。

 

 D = \min\left(\max\left(\dfrac{u(t)}{u_{\text{max}}}, \, 0\right), \, 1\right)

 

ここで  u_{\text{max}} はPID出力の最大想定値です。
この処理により、PID出力がどのような値であっても、デューティ比は必ず0〜1(0%〜100%)の範囲に収まります。

 

積分ワインドアップ対策

 

クランプ処理を行うと、PID出力が飽和している間も積分項が増加し続ける「積分ワインドアップ」という問題が発生します。
この状態では、目標値に到達しても積分項の蓄積が大きすぎるため、大きなオーバーシュートが発生してしまいます。

 

対策として、アンチワインドアップ(積分器の制限)を実装します。
代表的な方法は、出力が飽和している間は積分の更新を停止する「条件付き積分」方式です。
出力が飽和範囲内に戻った時点で積分の更新を再開します。

 

離散化PIDの実装

 

実際のマイコン実装では、連続時間のPID式を離散化する必要があります。
サンプリング周期  \Delta t で離散化したPID制御器は、以下のように記述できます。

 

 u\lbrack k \rbrack = K_{p} e\lbrack k \rbrack + K_{i} \Delta t \sum_{j=0}^{k} e\lbrack j \rbrack + K_{d} \dfrac{e\lbrack k \rbrack - e\lbrack k-1 \rbrack}{\Delta t}

 

ここでkはサンプリング時刻のインデックスです。
積分項は偏差の累積和、微分項は前回との差分として近似されています。

 

サンプリング周期Δtの選択は制御性能に直接影響します。
一般的な目安として、制御対象の応答時定数の1/10〜1/20程度のサンプリング周期が推奨されます。
たとえば、時定数が100msのモーター制御であれば、5〜10ms程度のサンプリング周期が適切です。

 

ジーグラ・ニコルス法によるゲイン調整

 

PIDゲインの調整(チューニング)は、制御性能を左右する重要な作業です。
ジーグラ・ニコルス法は、実験的にゲインを決定する古典的な手法です。

 

ジーグラ・ニコルス法の限界感度法では、まず積分・微分動作を無効化( K_{i} = 0, \, K_{d} = 0)した状態で比例ゲインを徐々に増加させます。
系が持続振動を始めたときのゲインを限界ゲイン  K_{u}、振動周期を限界周期  T_{u} とします。

 

これらの値から、PIDゲインを以下の式で設定します。

 

 K_{p} = 0.6 K_{u}, \quad K_{i} = \dfrac{1.2 K_{u}}{T_{u}}, \quad K_{d} = \dfrac{0.075 K_{u} T_{u}}{1}

 

この方法は簡便で実用的ですが、一度系を振動状態にする必要があるため、安全上の制約がある用途では注意が必要です。
そのような場合は、シミュレーション上で限界感度法を実施するか、他のチューニング手法(CHR法やCohen-Coon法など)を検討します。

 

実際のPID制御実装では、微分項にノイズが乗りやすいという問題にも注意が必要です。
センサからの入力信号にはノイズが含まれるため、差分演算を行う微分項がノイズを増幅してしまうことがあります。
対策として、微分項の入力にローパスフィルタ(一次遅れフィルタ)を適用する「不完全微分」が広く用いられています。

 

不完全微分のフィルタ時定数は、微分時間の1/10〜1/5程度に設定するのが一般的な目安です。
このフィルタにより、高周波ノイズの影響を抑えながら、偏差の変化傾向を適切に捉えることができます。

 

加えて、マイコンの演算精度にも配慮が必要です。
8ビットマイコンでは整数演算しか利用できない場合があり、ゲインの設定値をスケーリングして実装する工夫が求められます。
32ビットマイコンであれば浮動小数点演算が利用でき、PIDの実装は比較的容易になります。

 

 

 

 

まとめ

 

PWM制御は、デジタル信号のON/OFF比率を変えることで、アナログ的な電力制御を実現する技術です。
リニアレギュレータに比べて電力損失が大幅に少なく、モーター・LED・ファンなど幅広い分野で活用されています。

 

デューティ比は「ON時間÷周期」で定義され、平均出力電圧や平均電力に直結する制御パラメーターです。
回路構成では、PWM信号生成部、ゲートドライバ、MOSFET、フライバックダイオードが基本要素となります。

 

PWM周波数と分解能にはトレードオフの関係があり、用途に応じた最適なバランスの設計が求められます。
DCモーターの速度制御ではHブリッジによる正逆転制御やデッドタイム設計が重要であり、エンコーダーを用いたフィードバック制御が安定運転のカギとなります。

 

LED調光ではPWM方式により色温度を安定に保ったまま広範囲の調光が可能です。
ファン制御では4ピンPWM方式と25kHzの信号周波数が標準仕様となっています。

 

産業用途では、PID制御と組み合わせることで高精度なフィードバック制御を実現できます。
積分ワインドアップ対策やサンプリング周期の適切な設定が、安定した制御性能を得るためのポイントです。

 

回路設計の観点では、MOSFETの導通損失とスイッチング損失の最小化、デッドタイムの適切な設定、フライバックダイオードによるサージ保護が不可欠です。
PCBレイアウトにおいても、大電流ループの面積最小化やグランドプレーンの適切な設計が、安定したPWM制御を実現するための基盤となります。

 

PWM制御の基礎を理解しておくことで、モーター駆動から電源設計まで幅広い電力制御の課題に対応できるようになります。