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共振とは|振動とノイズを防ぐ周波数計算の基礎知識

「ある特定の回転数になると、機械全体が唸りを上げて激しく振動し始める」

「サーボのゲインを上げていくと、『キーン』という高い音が鳴り止まない」

メカトロニクスやFA(ファクトリーオートメーション)の現場において、エンジニアを最も悩ませる現象の一つ。それが「共振(Resonance)」です。

物理学において共振とは、外部からの振動周期と、その物体が本来持っている「固有振動数」が一致した際に、振動エネルギーが蓄積され、振幅が劇的に増大する現象を指します。この現象は、タコマナローズ橋の崩落事故に代表されるように、巨大な構造物を破壊するほどのエネルギーを生み出します。

一方で、電気回路の世界では、特定の周波数信号だけを取り出す「フィルタ」や、正確な時間を刻む「水晶発振子」として、共振現象は不可欠な機能として利用されています。

本記事では、メカトロニクス制御の観点から、機械系における「排除すべき共振」と、電気回路系における「理解すべき共振」の両面について、運動方程式や回路方程式を用いた理論的背景から、現場で役立つ計算事例、そして具体的な抑制対策まで、9,000文字を超えるボリュームで徹底的に解説します。

1. 共振の物理学的定義とメカニズム

固有振動数(Natural Frequency)とは

すべての物体は、その質量(または慣性モーメント)と剛性(ばね定数)によって決まる、「揺れやすい特定の周波数」を持っています。これを固有振動数と呼びます。

最も単純な「1自由度ばね-質量系」を考えます。質量  m の物体が、ばね定数  k のばねで吊るされている場合、減衰(摩擦や抵抗)を無視した運動方程式は以下のようになります。

 m \ddot{x} + kx = 0

この微分方程式を解くと、以下の固有角振動数  \omega_n (rad/s)が得られます。

 \omega_n = \sqrt{\dfrac{k}{m}}

これを周波数  f_n (Hz)に換算すると、以下の有名な式になります。

 f_n = \dfrac{1}{2\pi} \sqrt{\dfrac{k}{m}}

この式は、メカトロニクス設計における最も重要な指針を示しています。

  • 剛性  k を高くすれば、固有振動数は高くなる(振動しにくくなる)。
  • 質量  m を大きくすれば、固有振動数は低くなる(振動しやすくなる)。

共振の発生原理:エネルギーの蓄積

この系に対して、外部から周波数  f の加振力  F(t) = F_0 \sin(2\pi f t) が加わったとします。

外部からの入力周波数  f が、固有振動数  f_n に近づくと、外部からの仕事が効率よく内部エネルギー(運動エネルギー+弾性エネルギー)として蓄積されていきます。

ブランコを漕ぐ動作をイメージしてください。ブランコが戻ってくるタイミングに合わせて背中を押すと、小さな力でも振幅はどんどん大きくなります。これが共振です。逆に、タイミングがずれた(周波数が異なる)状態で押しても、力は相殺され、振幅は大きくなりません。

減衰(ダンピング)とQ値

現実の世界では、振動は永遠には続きません。空気抵抗や材料内部の摩擦などによりエネルギーが消費されるためです。これを「減衰(Damping)」と呼びます。

粘性減衰係数  c を考慮した運動方程式は以下のようになります。

 m \ddot{x} + c \dot{x} + kx = F_0 \sin(\omega t)

共振時( \omega = \omega_n)における振幅の倍率(静的変位に対する比率)は、減衰比  \zeta = \dfrac{c}{2\sqrt{mk}} を用いて、およそ以下のように表されます。

 Q \approx \dfrac{1}{2\zeta}

この  Q「共振倍率(Q値)」と呼びます。減衰が小さい( \zeta がゼロに近い)ほど、共振時の振幅は理論上無限大に近づき、機械破損のリスクが高まります。

 

2. メカトロニクスにおける機械共振の恐怖

サーボモータでボールねじやベルトを介して負荷を駆動する場合、系は剛体(変形しない塊)ではなく、ばね要素を含んだ「2慣性系(Two-Mass System)」として振る舞います。

ここで発生する共振は、サーボシステムの応答性を制限する最大の要因となります。

サーボ系における2慣性モデルの理論

一般的なサーボ機構は、以下の要素でモデル化されます。

  • モータ慣性  J_M: モータロータ自身の回転のしにくさ。
  • 負荷慣性  J_L: ワークやテーブル等の負荷をモータ軸換算した慣性。
  • ねじり剛性  K: カップリングやボールねじ軸が持つばね定数。

この系には、モータと負荷が「逆相(互い違い)」に振動する共振モードが存在します。この共振周波数  f_r は以下の式で計算されます。

 f_r = \dfrac{1}{2\pi} \sqrt{K \left( \dfrac{1}{J_M} + \dfrac{1}{J_L} \right)}

この式から分かることは、「負荷慣性とモータ慣性のバランス」「連結部の剛性」だけで、共振周波数が決定されるという事実です。

 

反共振点と共振点の意味

サーボモータのエンコーダから見た周波数特性(ボード線図)には、特有の「山」と「谷」が現れます。

  • 反共振点(Anti-Resonance): 谷の部分。ここではモータへの入力トルクが負荷側の振動によって打ち消され、モータがほとんど動かなくなる(ゲインが下がる)周波数です。  f_{ar} = \dfrac{1}{2\pi} \sqrt{\dfrac{K}{J_L}}
  • 共振点(Resonance): 山の部分。前述の  f_r です。ここではわずかなトルク指令でモータと負荷が激しく振動します。

サーボ制御において、制御帯域(応答周波数)を上げていくと、まずこの共振点の山にぶつかり、発振現象(ハンチングや異音)が発生します。つまり、機械共振周波数が、その装置の性能限界(タクトタイムの限界)を決めているのです。

 

【計算事例】ボールねじ駆動系の共振周波数予測

具体的な設計パラメータを用いて、機械共振周波数を計算してみましょう。

条件設定:

  • サーボモータ慣性  J_M = 2.0 \times 10^{-4} \, kg \cdot m^2
  • 負荷慣性(ねじ+テーブル)  J_L = 4.0 \times 10^{-4} \, kg \cdot m^2
  • カップリングねじり剛性  K = 15,000 \, N \cdot m/rad

計算プロセス:

まず、慣性の逆数の和を求めます。

 \dfrac{1}{J_M} + \dfrac{1}{J_L} = \dfrac{1}{2.0 \times 10^{-4}} + \dfrac{1}{4.0 \times 10^{-4}}  = 5000 + 2500 = 7500

次に、剛性  K を掛けます。

 K \times 7500 = 15000 \times 7500 = 112,500,000

平方根をとります。

 \sqrt{112,500,000} \approx 10,606 \, rad/s

最後に  2\pi で割って周波数(Hz)にします。

 f_r = \dfrac{10606}{2\pi} \approx 1,688 \, Hz

 

解説: 計算結果は約1.7kHzとなりました。 一般的なサーボシステムの速度応答周波数は数百Hz〜1kHz程度、位置制御帯域は数十Hz〜百Hz程度です。 この1.7kHzという共振点は、制御帯域よりも十分に高い位置にあるため、通常のPI制御(比例・積分制御)を行う分には問題になりにくい「剛性の高い良い設計」と言えます。

もし剛性が1/100の  K = 150 だった場合、共振周波数は1/10の168Hzとなり、位置決め制御の帯域と干渉して激しい振動が発生するでしょう。

 

3. サーボ制御における共振抑制技術

設計段階で十分な剛性が確保できれば理想的ですが、コストや重量の制約で、どうしても低い周波数に共振点を持ってしまう場合があります。その際、制御技術(フィルタ)を用いて共振を抑え込みます。

ノッチフィルタ(Notch Filter)の設計と適用

ノッチフィルタ(帯域阻止フィルタ)は、「特定の狭い周波数成分だけをピンポイントで遮断する」フィルタです。

サーボアンプのパラメータで、「共振周波数」と「減衰量(深さ)」、「帯域幅(Q値)」を設定します。 例えば、500Hzで機械共振が起きている場合、電流指令(トルク指令)に対して中心周波数500Hzのノッチフィルタを挿入します。すると、共振を引き起こす成分だけがカットされ、機械を刺激せずに駆動力を伝えることができます。

ノッチフィルタの伝達関数  G_{notch}(s)

 G_{notch}(s) = \dfrac{s^2 + 2\zeta_1 \omega_n s + \omega_n^2}{s^2 + 2\zeta_2 \omega_n s + \omega_n^2}

ここで、 \zeta_1 を小さく(深く)、 \zeta_2 を大きく(浅く)設定することで、特定の周波数  \omega_n のゲインだけを下げることができます。

機械剛性の向上とイナーシャ比の最適化

制御での対策には限界があります(フィルタを入れると位相遅れが生じ、制御性が悪化するため)。根本対策はやはりメカ側にあります。

  1. カップリングの変更: ゴム製や樹脂製のカップリングを、ディスク式(金属板ばね)やベローズ式などの高剛性タイプに変更する。
  2. 軸径のアップ: ボールねじや駆動シャフトの径を太くし、ねじり剛性  K を上げる(剛性は直径の4乗に比例するため効果絶大)。
  3. イナーシャ比の低減: 負荷慣性  J_L がモータ慣性  J_M に対して大きすぎる(イナーシャ比が大きい)と制御が不安定になります。減速機を使って負荷慣性を見かけ上小さくする等の対策が有効です。

 

4. 電気回路における共振現象(LC共振)

視点を変えて、電気回路における共振を見てみましょう。実は、機械振動と電気振動は、数式上は全く同じ形(アナロジー)をしています。

 

電気振動と機械振動のアナロジー(相似性)

電気回路において、電圧  V と電流  I の関係は以下の要素で決まります。

  • インダクタンス  L(コイル): 電流の変化を妨げる性質。 V = L \dfrac{dI}{dt} → 機械系の「質量  mに相当(慣性)。
  • キャパシタンス  C(コンデンサ): 電荷を蓄える性質。 V = \dfrac{1}{C} \int I dt → 機械系の「ばね  1/kに相当(コンプライアンス)。
  • 抵抗  R エネルギーを消費する性質。 V = RI → 機械系の「ダンパ  cに相当(粘性抵抗)。

したがって、コイルとコンデンサを含む回路(LC回路)は、ばねと質量を持つ機械系と同様に「共振」します。

 

直列共振回路の特性

コイル  L とコンデンサ  C を直列につないだ回路に、交流電圧を加えた場合を考えます。 コイルのインピーダンス(交流抵抗)は  j\omega L、コンデンサは  \dfrac{1}{j\omega C} です。

回路全体のインピーダンス  Z は以下のようになります。

 Z = j\omega L + \dfrac{1}{j\omega C} = j \left( \omega L - \dfrac{1}{\omega C} \right)

ここで、 \omega L = \dfrac{1}{\omega C} となる周波数、すなわち「共振周波数」においては、インピーダンスの虚数部がゼロになります。

 \omega_0 = \dfrac{1}{\sqrt{LC}} \quad \Rightarrow \quad f_0 = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}]

直列共振回路では、共振周波数においてインピーダンスが最小(理論上ゼロ)になり、過大な電流が流れます。これは機械系で言うと「小さな力で大きく動く」状態に対応します。

 

【計算事例】ノイズフィルタの共振周波数設計

メカトロニクス機器では、電源ラインや信号ラインに混入するノイズを除去するために、LとCを用いた「ローパスフィルタ」を使用します。 しかし、設計を誤ると、除去したいノイズ周波数で逆に「共振」してしまい、ノイズを増幅させて誤動作を引き起こすことがあります。

事例:エンコーダ信号線のノイズ対策

  • ケーブルの寄生インダクタンス  L = 10 \, \mu H
  • ノイズ対策用コンデンサ  C = 0.1 \, \mu F

この組み合わせによる共振周波数  f_0 を計算します。

計算プロセス:

 L \times C = (10 \times 10^{-6}) \times (0.1 \times 10^{-6}) = 1.0 \times 10^{-12}

平方根をとります。

 \sqrt{1.0 \times 10^{-12}} = 1.0 \times 10^{-6}

逆数をとり、 2\pi で割ります。

 f_0 = \dfrac{1}{2\pi \times 10^{-6}} \approx \dfrac{1,000,000}{6.28} \approx 159,235 \, Hz \approx 159 \, kHz

解説: 約159kHzに共振点が発生します。 もし、サーボアンプのPWMスイッチング周波数がこの付近(例えば150kHzなど)にあった場合、スイッチングノイズがこのLC回路で共振増幅され、エンコーダ信号に強烈なノイズが乗る可能性があります。

対策としては、抵抗  R を直列に入れてダンピング(減衰)させるか、コンデンサ容量を変更して共振点をずらす必要があります。

 

5. 共振現象の応用と未来技術

ここまで「抑制すべき共振」を中心に解説しましたが、最後に「利用される共振」についても触れておきます。

MEMSセンサと共振の利用

スマートフォンやドローンに搭載されている角速度センサ(MEMSジャイロ)は、微細なシリコン振動子を「共振状態」で駆動しています。 共振状態にある振動子は、外部からのコリオリ力を受けると振動モードが敏感に変化します。この変化を検出することで、回転を高精度に検知しています。Q値が高い(共振が鋭い)ほど、センサの感度は向上します。

ワイヤレス給電と磁界共鳴

電気自動車(EV)や産業用ロボットの充電技術として注目される「磁界共鳴方式」のワイヤレス給電。 これは、送電側コイルと受電側コイルの共振周波数をピタリと一致させることで、数メートル離れた場所でも高効率に電力を転送する技術です。音叉が共鳴するように、磁場を通じてエネルギーが「トンネル」のように移動します。

 

6. まとめ:共振を制する者は制御を制する

共振という現象は、物理法則が支配する世界において避けて通れないものです。 機械設計者にとっては、剛性を高め共振周波数を高域へ追いやることが使命であり、制御設計者にとっては、フィルタや現代制御理論を駆使して共振を手なずけることが腕の見せ所です。

重要なポイントを再確認します。

  1. 固有振動数  f_n = \dfrac{1}{2\pi}\sqrt{k/m}: 剛性を上げ、質量を下げるのが基本。
  2. 2慣性系の共振: 負荷とモータのバランス、連結部の剛性が支配する。
  3. 共振と反共振: 制御系の限界は共振点で決まる。
  4. 電気と機械のアナロジー: Lは質量、Cはばね。回路の共振も同じ数式で扱える。

「唸り音」や「異常振動」に遭遇したとき、単に「何かおかしい」と捉えるのではなく、「どの部分の剛性が不足しているのか?」「どのLとCが共振しているのか?」と、周波数というレンズを通して現象を分析してください。

その先には、より静粛で、より高速で、より高精度なメカトロニクス制御の世界が待っています。