Instant Engineering

エンジニアの仕事効率を上げる知識をシェアするブログ/QC統計手法/公差設計・解析/TPS(トヨタ生産方式)

サーボ機構のための機械要素で必須となる「減速機」について

減速機とは

減速機とは、モータなどの動力源とプロペラなどの被動機の間に設置され、歯車等で動力の回転速度を減じて出力する機械装置である。

出力として、減速比(歯数比やプーリー比)に比例したトルクを得ることができる。

減速機 - Wikipedia

 

例えば、下図のような入力側の歯数が10枚、出力側の歯数が20枚という2枚の歯車からなる減速機があるとする。

それぞれの歯数が1:2なので、入力側の回転速度(回転数)が出力側では2分の1となり、得られるトルクは2倍になる。この場合の減速比は2となる。

※Aの回転速度に対して、歯数が倍のBは回転速度が半分になる。

f:id:yuinomi:20210405081100p:plain

(画像:大月精工株式会社)

減速機と歯車 | 高精度歯車・減速機の大月精工株式会社

 

電気モータは回転数を上げやすい一方、大きなトルクは得にくいアクチュエータであるため、ロボットでは回転数を落とし、トルクに変換をすることが必要となり、この変換を行うのが減速機である。

モータには必須といえる減速機であるが、省スペース化の目的で、モータと減速機を最初から一体にしたギアモータという装置もある。これらは産業用ロボットの関節部や工作機械の駆動部等に使用される。

 

減速機の種類について

歯車を使用する減速機の分類としては、入力と出力の回転軸の構造が、平行/直交/同軸のいずれかによって大別される。

 

平行軸

【平歯車減速機】

f:id:yuinomi:20210407071820p:plain

(画像:小原歯車工業株式会社)

KHK 標準歯車選定

 

平行軸歯車減速機とも呼ばれ、円盤形の普通の歯車を組み合わせた、もっとも一般的な機構。歯車、軸、軸受、筐体、潤滑機構で構成される。

1段で減速できる比率が大きくないため、実用する際は何段か組み合わせる必要がある。減速比率によって組み合わせる歯車の段数に違いがあり、市販されているものでは1段から4段のものが多い。

高精度に製造された平歯車は、一段あたり約98%程度の伝達効率を確保できるため変換効率は極めて高い。

 

直交軸

【ウォーム減速機】

f:id:yuinomi:20210407070952p:plain

(画像:工具の通販モノタロウ)

ウォーム減速機の特長 【通販モノタロウ】

 

「ねじ歯車」(ウォーム)と「はす歯(斜歯)歯車」(ウォームホイール)」を組み合わせたもので、入力軸と出力軸が直交している。

減速比が平歯車の10倍程度と大きいものの、出力節に適当な力を加えたとき、その節が可動し、かつそれが入力節側に伝わる性質であるバックドライバビリティが皆無である点はロボットに不利。

ねじ歯車の進み角が小さく、減速比率が高くなるとセルフロックと呼ばれ、はす歯歯車側(出力側)から回すことが困難になることを利用し、昇降装置の落下防止などに利用される。また、入力軸のスラストガタを小さくすることで、バックラッシを抑えることが可能である。

 

同芯軸

【遊星歯車減速機】

f:id:yuinomi:20210408072229p:plain

https://ut-mech.com/programs/monument.shtml

 

遊星歯車減速機は複数の遊星歯車(外周歯車)と太陽歯車(内周歯車)、遊星歯車を固定するキャリア、外周の内歯車から構成される。遊星歯車の数は3,4個の機構が多い。

太陽歯車を中心として、複数の遊星歯車が自転しつつ公転する構造を持った歯車機構で、少ない段数でも大きな減速比が得られるという特徴がある。

また、入力軸と出力軸が同軸になる点も設計上有利である。

 

その他

 

【波動歯車減速機】

f:id:yuinomi:20210408070851p:plain

ハーモニックドライブ - Wikipedia

 

波動歯車機構は、楕円と真円の差動を利用した減速機で「ハーモニックドライブ」として知られている。(ハーモニックドライブは、ハーモニック・ドライブ・システムズ社の商標)

上図のような機構で、サーキュラ・スプライン、ウェーブ・ジェネレータ、フレクスプラインから構成され、特徴として高減速比、軽量、コンパクト、バックラッシュが少ない。同軸で且つ大きな減速ができることから多くのロボットに採用されており、特に二足歩行ロボットには欠かせない減速機となっている。

 

動作原理は、金属の弾性力学を応用したもので、フレクスプラインは、ウェーブ・ジェネレータにより楕円状にたわめられ、長軸の部分でサーキュラ・スプラインと歯が噛み合い、短軸の部分では歯が完全に離れた状態になる。サーキュラ・スプラインを固定し、ウェーブ・ジェネレータ(入力)を時計方向へ回すと、フレクスプラインは弾性変形し、サーキュラ・スプラインとの歯の噛み合い位置が順次移動していく。ウェーブ・ジェネレータが1回転すると、歯数差2枚分だけフレクスプラインは反時計方向へ移動し、これを出力として取り出す。

ハーモニックドライブ®の原理 | 製品情報 | ハーモニック・ドライブ・システムズ

 

【参考書籍】