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ラウンドロビン方式とは?公平性を重視した順番制御の仕組み

私たちの身の回りにある多くのシステムでは、「誰を先に処理するか」という順番決めが重要なテーマになります。

そんな中で、公平性を重視した有名なスケジューリング手法の一つが「ラウンドロビン方式(Round Robin)」です。

本記事では、このラウンドロビン方式について、その基本的な仕組みや活用例、メリット・デメリットを解説します。

 

 

ラウンドロビン方式とは?

ラウンドロビン方式とは、順番に均等な時間を割り当てて処理を行う方式です。

「回転木馬(カルーセル)」のように、順番に処理対象をまわしていく様子から、この名前が付けられました。

一般的には以下のような分野で使われます。

・コンピュータのCPUスケジューリング

・ネットワークのロードバランシング

・順番待ちの処理(プリンタ、ゲームのターン制など)

 

ラウンドロビン方式の仕組み

ラウンドロビン方式では、それぞれの処理対象に「持ち時間(作業できる時間)」が均等に与えられます。

この持ち時間のあいだに処理が終わらなければ、いったん順番を次の対象に回し、また次の自分の番が来るまで待ちます。

 

・処理の順番:Aさん、Bさん、Cさん

・一人あたりの持ち時間:10秒

・順番:A → B → C → A(この順番でぐるぐる回る)

Aさんが10秒使ったら、次はBさんにバトンタッチ。Bさんも10秒、次はCさんへ、というように順番に平等に持ち時間が与えられるのが特徴です。

 

メリット

1.公平性が高い

ラウンドロビン方式の最大の特長は、すべての処理対象に平等な順番と持ち時間が与えられることです。

特定の処理だけが優先されたり、他の処理が長く待たされることがなく、全員に順番がしっかり回ってくるという安心感があります。

このような公平性は、複数のユーザーが同時に利用するシステムや、複数のプロセスが競合する場面で非常に重要です。

たとえば、ゲームの順番制や複数人の印刷指示の管理などで、公平に処理を割り当てたい場合に最適な方式です。

 

2. 応答性の改善

一つの処理が長時間コンピュータのリソース(CPUなど)を独占してしまうと、他の処理の応答が著しく遅れてしまいます。

ラウンドロビン方式では、各処理に与える持ち時間があらかじめ決まっており、それを過ぎると強制的に次の順番に進むため、重い処理がシステム全体の遅延を引き起こすことを防げます。

この仕組みにより、すべての処理が適度に進み、利用者側から見てもレスポンス(反応)が良く感じられることが多いです。特にリアルタイム性が求められる分野では、この点が大きな利点となります。

 

3.実装が比較的シンプル

ラウンドロビン方式は、処理対象を順番に並べ、持ち時間ごとに回していくという非常に単純な構造です。

そのため、実装する際のアルゴリズムが複雑になりにくく、設計や保守がしやすいというメリットがあります。

例えば、キュー(待ち行列)の構造を使って順番管理をするだけで基本的な機能が実現できるため、小規模なシステムや教育用のサンプルコードにも適しています。

また、システムの挙動が直感的に理解しやすく、トラブル時の原因分析やデバッグ作業も比較的行いやすい点も魅力の一つです。

 

デメリット

1.持ち時間が短すぎると効率が悪化する

ラウンドロビン方式では、持ち時間(1回あたりに処理できる時間)を短く設定しすぎると、処理の切り替えが頻繁に発生します。

この切り替えには、処理のたびに時間やリソースが余分に使われるため、その分だけ全体の処理速度が遅くなってしまいます。

たとえば、コンテキストスイッチと呼ばれるCPUの切り替え操作が多くなり、実際の作業よりも切り替えに時間を取られてしまうという事態が発生します。

これは特に、多数の処理が同時に走る環境では深刻な問題になり得ます。

 

2.持ち時間が長すぎると応答性が低下する

一方で、持ち時間を長く設定しすぎると、個々の処理が長くなり、後ろに並んでいる処理の待ち時間が増えてしまいます。

これによって、システム全体の応答性が悪くなり、特に短時間で結果を求める処理(例:ユーザー操作への即時応答など)には不向きです。

つまり、持ち時間が長すぎても、待たされる対象にとっては「順番がなかなか回ってこない」という問題が起きやすくなります。

このように、ラウンドロビン方式では持ち時間の設定が非常に重要な調整ポイントとなります。

 

3.処理の重みを考慮できない

ラウンドロビン方式では、すべての処理に同じ持ち時間を与えるという設計上、処理の内容や重さ(処理時間の長さや負荷)を考慮することができません。

たとえば、簡単に終わる処理と、非常に時間がかかる処理が混在していても、両者に等しく同じ時間が与えられてしまいます。

その結果、重い処理はなかなか終わらず、軽い処理は無駄に持ち時間を余らせるなど、全体として非効率になる場合があります。

このような状況では、「優先度付きスケジューリング」など、処理の重みを考慮する方式の方が適している場合もあります。

 

実用例

1.OSのプロセススケジューリング

パソコンでは複数のアプリや処理が同時に動いています。ラウンドロビン方式は、これらの処理に平等な持ち時間を順番に与えることで、どれか一つの処理が長時間リソースを占有しないようにしています。ExcelやZoomなどを同時に使っていてもスムーズに動くのは、この仕組みのおかげです。

 

2.ネットワーク負荷分散(ロードバランシング)

Webサーバが複数台ある場合、ラウンドロビン方式を使ってアクセスを順番に振り分けると、負荷を均等に分散できます。たとえば、最初のユーザーはAサーバ、次はB、さらに次はC…というようにアクセスを回すことで、全体が安定して動作します。シンプルで効果的な負荷分散方法です。

 

3.マルチユーザー環境のプリンタ制御

オフィスで複数人が同じプリンタを使うとき、ラウンドロビン方式を使えば印刷の順番が公平になります。大量印刷の途中でも他の人の短い印刷を先に処理できるため、待ち時間を減らし、業務の効率を高めることができます。

 

まとめ

ラウンドロビン方式は、複数の処理に均等に時間を割り当て、順番に処理を行う方式です。

この方式の主なメリットは、公平性が高く、すべての処理が平等に扱われること、応答性が改善されること、そして実装が簡単である点です。

しかし、持ち時間が短すぎると効率が低下し、長すぎると応答性が悪化するため、適切な設定が重要です。

また、処理内容の重さを考慮できないため、複雑な処理には向かない場合もあります。