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ステッピングモーターとは?原理・脱調と選定計算

「パルスを送った分だけ回るから、ステッピングモーターは簡単」と考えていないでしょうか。

確かにステッピングモーターは、サーボモーターのような複雑なフィードバック制御を使わなくても、比較的安価に位置決めできる便利なアクチュエータです。

しかし実務では、速度を少し上げただけでトルクが足りなくなったり、急加速で脱調したり、低速域で共振して大きな振動音が出たりします。

ステッピングモーターとは、パルス信号に同期して一定角度ずつ回転するモーターです。低速・短距離・高頻度の位置決めに強い一方で、脱調、共振、高速トルク低下という弱点を理解して選定する必要があります。

本記事では、ステッピングモーターの原理、種類、制御方法、マイクロステップ駆動、電流値設定、脱調対策、ドライバ選定、サーボモーターとの違い、そして実務で使う選定計算までを一通り解説します。

 

1. ステッピングモーターとは何か

ステッピングモーターは、入力されたパルス信号の数に応じて回転角度が決まり、パルス周波数に応じて回転速度が決まるモーターです。

1パルスごとに一定角度ずつ進むため、「ステップ・バイ・ステップ」で回転するモーターという意味でステッピングモーターと呼ばれます。

別名として、パルスモーターと呼ばれることもあります。

パルス数で位置が決まる

一般的な2相ハイブリッド型ステッピングモーターでは、基本ステップ角が  1.8^\circ のものがよく使われます。

この場合、1回転  360^\circ 1.8^\circ ずつ分割するため、1回転に必要なパルス数は次のようになります。

 \dfrac{360}{1.8} = 200 \text{ pulse/rev}

つまり、200パルス送れば1回転、100パルス送れば半回転、50パルス送れば4分の1回転です。

このように、機械的な位置決めをデジタル信号の数で扱える点が、ステッピングモーター最大の特徴です。

オープンループ制御で使いやすい

ステッピングモーターは、多くの場合、エンコーダで現在位置を確認しないオープンループ制御で使われます。

制御装置は「1000パルス送ったから、モーターは1000ステップ分動いたはず」と考えます。

この仕組みは単純で、PLC、マイコン、CNC制御、3Dプリンタなどと相性が良く、低コストな位置決め装置を作りやすいメリットがあります。

一方で、実際に負荷が重すぎて回れなかった場合でも、標準的なオープンループ構成では制御装置側が位置ズレに気づけません。

この位置ズレや停止を「脱調」と呼びます。ステッピングモーターを実務で使ううえでは、脱調を起こさない選定と制御が最重要です。

ステッピングモーターが向く用途

ステッピングモーターは、低速域で大きなトルクを出しやすく、停止位置を安定して保持できるため、短い距離を細かく動かす用途に向いています。

代表例は、3Dプリンタ、ラベル貼付機、小型搬送装置、医療用ポンプ、検査装置のXYステージ、カメラのパン・チルト機構などです。

反対に、高速で長距離を移動する軸、負荷変動が大きい軸、絶対に位置ズレを許せない安全重要軸では、サーボモーターやクローズドループステッピングの方が適する場合があります。

2. ステッピングモーターの種類

ステッピングモーターは、ロータ構造によってPM型、VR型、HB型に分類されます。

現在のFA設備や3Dプリンタでよく使われるのは、永久磁石と歯付き鉄心を組み合わせたHB型です。

種類 構造 特徴 主な用途
PM型 ロータに永久磁石を使う 安価で構造が単純。ステップ角は大きめ 家電、弁開閉、小型機器
VR型 ロータが歯付き鉄心のみ 磁石を使わず高速応答に向くが、保持力は弱い 特殊用途、高速応答用途
HB型 永久磁石と歯付き鉄心を組み合わせる 高トルク・高分解能で産業用途の主流 FA機器、3Dプリンタ、XYステージ

PM型は安価な位置決めに向く

PM型は、ロータに永久磁石を使ったシンプルな構造です。

ステップ角は  7.5^\circ 15^\circ など比較的大きく、細かい位置決めには向きませんが、安価で扱いやすい点が魅力です。

エアコンのルーバー、給湯器の弁、小型メカの開閉機構など、細かい分解能よりも低コストと簡単な制御を優先する用途で使われます。

VR型は現在では限定用途が中心

VR型は、ロータに永久磁石を使わず、歯付きの鉄心が磁気抵抗の小さい位置へ移動する性質を利用します。

磁石を使わないため高速応答性に優れますが、停止時の保持トルクは小さく、現在の一般的な産業用途では主流ではありません。

HB型は産業用途の標準

HB型は、PM型の磁石による保持力と、VR型の細かな歯構造による高分解能を組み合わせた方式です。

2相HB型では  1.8^\circ、高分解能タイプでは  0.9^\circ のステップ角が一般的です。

FA設備で「ステッピングモーター」と言う場合、多くはこのHB型を指します。

高精度な位置決め、比較的大きな低速トルク、入手性の良さから、実務で最も使いやすいタイプです。

3. ステッピングモーターの動作原理

ステッピングモーターは、固定子のコイルに流す電流の組み合わせを順番に切り替えることで、ロータを次の安定位置へ引き寄せます。

基本原理は、電磁石と永久磁石が引き合う力です。

1相励磁と2相励磁

1相励磁は、A相、B相、反A相、反B相のように、1つの相だけへ順番に通電する方式です。

制御は単純ですが、得られるトルクは大きくありません。

2相励磁は、隣り合う2つの相に同時に電流を流す方式です。

ロータが2つの磁極から同時に引かれるため、1相励磁より保持トルクが大きく、産業用途ではこちらがよく使われます。

1-2相励磁とハーフステップ

1-2相励磁は、1相励磁と2相励磁を交互に使う方式です。

たとえば、A相のみ、A相+B相、B相のみ、B相+反A相という順番に通電すると、ロータは基本ステップ角の半分ずつ移動できます。

 1.8^\circ のモーターであれば、ハーフステップ時は  0.9^\circ ずつ動くことになります。

ただし、1相状態と2相状態でトルクが変わるため、振動やトルクリップルが発生しやすい点には注意が必要です。

回転速度はパルス周波数で決まる

ステッピングモーターの回転速度は、1秒間に何パルス送るかで決まります。

ステップ角を  \theta_s [deg]、パルス周波数を  f [Hz] とすると、回転速度  N [r/min] は次の式で求められます。

 N = \dfrac{60 f \theta_s}{360}

逆に、必要な回転速度  N から必要パルス周波数を求める場合は、次の式です。

 f = \dfrac{N \times 360}{60 \theta_s}

たとえば  1.8^\circ のモーターを  600 \text{ r/min} で回す場合、必要なパルス周波数は次の通りです。

 f = \dfrac{600 \times 360}{60 \times 1.8} = 2000 \text{ Hz}

つまり、2kHzのパルスを出力できるコントローラとドライバが必要になります。

4. サーボモーターとの違い

設備設計でよく迷うのが、「ステッピングモーターで足りるのか、それともサーボモーターにすべきか」という判断です。

両者はどちらが上位というより、得意な条件が異なります。

比較項目 ステッピングモーター サーボモーター
制御方式 オープンループが基本 エンコーダ付きのクローズドループ
低速トルク 強い。停止保持も得意 機種によるが、低速専用ではない
高速回転 速度が上がるとトルクが落ちやすい 定格回転数まで安定しやすい
位置ズレ検出 標準構成では検出しない エンコーダで検出できる
停止時の微振動 ハンチングが少ない サーボロックによる微振動が出ることがある
コスト 比較的安価 モーター・アンプとも高価

ステッピングが有利な条件

短い距離を繰り返し動かす軸、低速で押し付ける軸、停止状態を安定して保ちたい軸では、ステッピングモーターが有利です。

たとえば、小型搬送ローラー、位置決めテーブル、3Dプリンタの送り軸、簡易なインデックス機構などです。

コストを抑えながら十分な位置決め精度を得たい場合にも、ステッピングは非常に強力な選択肢になります。

サーボが有利な条件

高速で長距離を移動する軸、負荷変動が大きい軸、位置ズレを検出して止めたい軸では、サーボモーターが有利です。

サーボはエンコーダで実位置を監視し、位置偏差が大きくなればアラームで停止できます。

人や設備に危険が及ぶ軸、衝突リスクが大きい軸、重量物を高速で動かす軸では、サーボの方が安全側の設計になりやすいです。

迷う場合は脱調リスクで判断する

ステッピングとサーボで迷った場合は、「脱調しても安全に復帰できるか」を考えると判断しやすくなります。

脱調しても原点復帰すれば済む小型装置なら、ステッピングで十分な場合があります。

一方で、脱調した瞬間にワークを壊す、金型へ衝突する、位置ズレが品質不良として流出するような用途では、サーボまたはクローズドループステッピングを検討すべきです。

5. マイクロステップ駆動とは

ステッピングモーターは、フルステップのまま低速で回すと、カクカクとした動きや共振音が目立つことがあります。

この弱点を抑える制御方法が、マイクロステップ駆動です。

電流を正弦波状に変えて中間位置を作る

マイクロステップ駆動では、A相とB相へ流す電流をON/OFFだけで切り替えず、細かく変化させます。

たとえばA相電流を少しずつ減らしながら、B相電流を少しずつ増やすと、合成磁界の向きが滑らかに移動します。

ロータはその合成磁界に引かれるため、基本ステップ角より細かい中間位置で停止できます。

 1.8^\circ のモーターを1/16マイクロステップで駆動すれば、指令上の分解能は次のようになります。

 \dfrac{1.8^\circ}{16} = 0.1125^\circ

マイクロステップは絶対精度を上げる魔法ではない

マイクロステップは、振動低減、騒音低減、低速時の滑らかさ改善に非常に有効です。

しかし、1/16や1/32に分割したからといって、機械の絶対位置精度がその分だけ良くなるわけではありません。

実際の停止位置は、負荷トルク、モーターのディテントトルク、電流誤差、機械摩擦、剛性の影響を受けます。

そのため、マイクロステップは「分解能を上げる技術」というより、実務上は「振動と騒音を抑えて滑らかに動かす技術」と理解する方が安全です。

マイクロステップ設定の目安

高分解能にしすぎると、必要なパルス周波数が増え、PLCやマイコン側の出力能力が足りなくなることがあります。

たとえば  1.8^\circ の200パルス/回転モーターを1/16設定にすると、1回転に必要な指令パルス数は  3200 パルスになります。

600r/minで回す場合、必要パルス周波数は  32000 \text{ Hz}、つまり32kHzです。

高分解能化は魅力的ですが、コントローラの最大パルス周波数、加減速時間、ドライバの応答性を必ず確認する必要があります。

6. 電流値設定とドライバ選定

ステッピングモーターは、モーター単体だけで性能が決まるわけではありません。

ドライバの方式、電源電圧、電流設定、マイクロステップ設定によって、トルク、発熱、振動、高速性能が大きく変わります。

現在は定電流チョッパ駆動が主流

現在のステッピングモータードライバでは、定電流チョッパ駆動が一般的です。

モーターコイルはインダクタンスを持つため、高速で電流を切り替えようとすると、電流の立ち上がりが遅れます。

そこで、ドライバは24Vや48Vなど比較的高い電源電圧を使い、設定電流に達したら高速でON/OFFを繰り返して電流を制御します。

これにより、高速域でも電流を確保しやすくなり、トルク低下を抑えられます。

電流値は大きければ良いわけではない

ドライバの電流設定を上げれば保持トルクは増えますが、同時に発熱も増えます。

停止状態で長時間通電する用途では、モーター表面温度が高くなり、周辺部品や樹脂ブラケットに悪影響を与えることがあります。

設計では、必要トルク、温度上昇、連続運転時間、放熱条件を見ながら電流値を決めます。

多くのドライバには停止時電流低減機能があり、停止中の電流を50%程度に落として発熱を抑えられます。

ドライバ選定で確認する項目

確認項目 見るべき理由 実務上の注意点
定格電流 モーターの相電流に合うか確認する 電流不足はトルク不足、過大設定は発熱増加
電源電圧 高速域のトルクに影響する 高速運転では24Vより48Vが有利な場合がある
マイクロステップ設定 振動・騒音・必要パルス周波数に影響する 細かくしすぎると制御側のパルス周波数が不足する
入力方式 PLCやマイコンとの接続可否に関わる パルス+方向、CW/CCW、通信制御を確認する
保護機能 過電流・過熱・過電圧時の停止に関わる 安価なドライバほど保護機能が少ない場合がある

7. 脱調とは何か:原因と対策

脱調とは、ステッピングモーターが指令パルスに同期できなくなり、意図した位置からズレたり停止したりする現象です。

オープンループ制御では、制御装置が脱調を検出できないため、発生を未然に防ぐ設計が重要です。

脱調が起きる主な原因

脱調の原因は、単純なトルク不足だけではありません。

加速時間が短すぎる、負荷イナーシャが大きすぎる、共振域を通過している、電源電圧が低い、機械側の摺動抵抗が増えているなど、複数の要因が重なって発生します。

原因 現象 対策
トルク不足 加速時や押し付け時に停止する 大きいモーター、減速機、安全率追加
加速が急すぎる 始動直後にガクッと止まる 加減速ランプを長くする
負荷イナーシャ過大 停止時に振動し、再始動でズレる 減速機、軽量化、加速時間延長
共振 特定速度だけ大きく鳴る・止まる マイクロステップ、速度回避、ダンパ追加
電源電圧不足 高速域だけトルクが不足する 高電圧ドライバ、速度条件見直し

速度-トルク特性を見る

ステッピングモーターのカタログには、回転速度に対するトルク曲線が掲載されています。

選定では、必要トルクがプルアウトトルク曲線の内側に十分収まっているかを確認します。

停止時の保持トルクだけを見て選ぶと、高速域でトルクが不足して脱調する危険があります。

特に「低速では問題ないが、速度を上げると突然止まる」というトラブルは、速度-トルク特性を見落としている場合が多いです。

安全率は2倍以上を目安にする

ステッピングモーターは、サーボのように短時間ピークトルクで一時的に踏ん張る使い方がしにくいです。

そのため、実務では必要トルクに対して2倍程度の余裕を持たせることがよくあります。

摩擦、温度上昇、経年劣化、組付けばらつき、ワーク重量の変動を考えると、理論計算ぴったりの選定は危険です。

8. 選定計算の進め方

ここでは、ステッピングモーターを脱調させないための基本的な選定計算の流れを整理します。

実際のメーカー選定では、カタログや選定ソフトを使いますが、計算の考え方を理解しておくと、条件の妥当性を判断しやすくなります。

Step 1:動作条件を整理する

まず、移動距離、移動時間、加減速時間、負荷質量、機構効率、ねじリード、プーリー径、摩擦条件を整理します。

ここが曖昧なままモーターを選ぶと、後から「思ったより重い」「速度が足りない」「停止時に揺れる」といった問題が発生します。

Step 2:必要回転速度を求める

ボールねじ駆動の場合、移動速度  v [mm/s] とリード  L [mm/rev] から、必要回転速度  N [r/min] を求めます。

 N = \dfrac{60v}{L}

たとえば、リード  10 \text{ mm/rev} のボールねじで、テーブルを  100 \text{ mm/s} で動かす場合、必要回転速度は次の通りです。

 N = \dfrac{60 \times 100}{10} = 600 \text{ r/min}

Step 3:必要パルス周波数を求める

 1.8^\circ モーターをフルステップで使う場合、1回転は200パルスです。

 600 \text{ r/min} で回すなら、必要パルス周波数は次の通りです。

 f = \dfrac{600 \times 200}{60} = 2000 \text{ Hz}

1/16マイクロステップなら、1回転は3200パルスになるため、必要パルス周波数は32kHzです。

この値が、PLCやマイコンの最大パルス出力能力を超えていないかを確認します。

Step 4:加速トルクを求める

回転体を加速するために必要なトルクは、慣性モーメントと角加速度から求めます。

 T_a = J \alpha

ここで、 J はモーター軸換算の総慣性モーメント、 \alpha は角加速度です。

角速度  \omega は次の式で求めます。

 \omega = \dfrac{2\pi N}{60}

たとえば  600 \text{ r/min} まで  0.2 \text{ s} で加速する場合、角速度は  62.8 \text{ rad/s}、角加速度は  314 \text{ rad/s^2} です。

総慣性モーメントが  2.0 \times 10^{-4} \text{ kg m}^2 なら、加速トルクは次の通りです。

 T_a = 2.0 \times 10^{-4} \times 314 = 0.063 \text{ N m}

これに摩擦トルクや外力トルクを加え、さらに安全率を掛けて必要トルクを決めます。

Step 5:トルクカーブで確認する

最後に、求めた回転速度でモーターが必要トルクを出せるかを、メーカーの速度-トルク特性図で確認します。

保持トルクが大きいモーターでも、600r/minや1000r/minではトルクが大きく落ちることがあります。

選定では「停止時に持てるか」ではなく、「目標速度で加速しながら持てるか」を見ることが重要です。

9. 用途別の設計ポイント

ステッピングモーターは幅広い装置で使えますが、用途によって注意すべきポイントが異なります。

3Dプリンタ・小型XYステージ

3Dプリンタや小型XYステージでは、低コストで多軸の位置決めを行う必要があります。

ステッピングモーターはGコードやパルス指令と相性が良く、ベルト駆動やリードスクリュー駆動で広く使われます。

注意点は、加速度を上げすぎると脱調し、造形ズレや寸法不良につながることです。

造形速度を上げたい場合は、モーターサイズだけでなく、ベルト張力、プーリー径、可動部質量、ドライバ電圧まで含めて見直します。

搬送ローラー・定寸送り

ラベル、紙幣、チケット、フィルムなどを一定量送る用途では、ステッピングモーターのパルス位置決めが有効です。

ローラー径と必要送り量からパルス数を決められるため、制御が直感的です。

ただし、ゴムローラーでは滑りが発生するため、モーター軸の回転量と実際の搬送量が完全には一致しません。

高精度な送り量が必要な場合は、エンコーダ付きローラーや画像検査との組み合わせを検討します。

医療機器・シリンジポンプ

シリンジポンプのように、低速で一定量の液体を押し出す用途では、ステッピングモーターがよく使われます。

低速域での安定した回転と細かなパルス制御により、吐出量を制御しやすいからです。

ただし、共振による脈動や、ねじ機構のバックラッシ、摩擦変動が吐出精度に影響します。

医療用途では、オープンループのまま使うのではなく、センサーや異常検知を組み合わせる設計が必要です。

カメラ・光学機器

監視カメラや光学ステージでは、停止時のハンチングが少ない点がメリットになります。

サーボモーターの微小な補正動作が画像ブレにつながる用途では、ステッピングモーターの静止安定性が有利に働きます。

一方で、低速回転時のコギング感や音が問題になるため、マイクロステップ駆動や防振構造が重要です。

10. クローズドループステッピングという選択肢

通常のステッピングモーターは安価で扱いやすい一方、脱調検出ができないという弱点があります。

この弱点を補う方式が、クローズドループステッピングです。

エンコーダで位置ズレを監視する

クローズドループステッピングでは、モーター後端にエンコーダを取り付け、指令位置と実位置のズレを監視します。

通常時はステッピングモーターらしく高応答に動作し、過負荷時には位置ズレを検出して補正したり、アラーム停止したりできます。

これにより、ステッピングの低コスト・高応答と、サーボの安心感を中間的に得られます。

通常ステッピングとサーボの中間に位置する

クローズドループステッピングは、完全なサーボモーターほど高速性能や過負荷追従性に優れるわけではありません。

しかし、通常のオープンループステッピングでは怖いが、サーボほどの性能やコストは不要という用途には非常に有効です。

たとえば、検査装置の位置決め軸、小型プレスの送り軸、医療・分析装置の精密送りなどです。

11. ステッピングモーター選定でよくある失敗

最後に、実務でよくある失敗例を整理します。

ステッピングモーターは「動くかどうか」だけなら簡単に確認できますが、量産設備で安定して使うには余裕設計が欠かせません。

保持トルクだけで選んでしまう

最も多い失敗は、カタログの保持トルクだけを見て選ぶことです。

保持トルクは停止時の値であり、回転中、とくに高速域では大きく低下します。

「停止時は十分持てるのに、動かすと脱調する」というトラブルは、この見落としが原因です。

マイクロステップを位置精度向上と誤解する

1/32マイクロステップに設定すれば、指令分解能は細かくなります。

しかし、機械精度や負荷変動を無視して、1ステップ未満の絶対位置精度を期待するのは危険です。

マイクロステップは、主に振動・騒音・滑らかさを改善するための設定と考えるべきです。

発熱を軽視する

ステッピングモーターは、停止中でも電流を流して保持するため発熱しやすい部品です。

樹脂部品に近い場所、密閉された筐体内、長時間通電する装置では、温度上昇を必ず確認します。

触れないほど熱い状態が続く場合は、電流低減、放熱板、モーターサイズ見直し、停止時励磁OFFなどを検討します。

12. まとめ

ステッピングモーターは、パルス数で位置が決まり、パルス周波数で速度が決まる、デジタル制御と相性の良いモーターです。

低速高トルク、停止時の安定性、低コストという強みがあり、3Dプリンタ、小型搬送装置、検査装置、医療機器など多くの場面で使われています。

一方で、脱調、高速域のトルク低下、共振、発熱という弱点もあります。

選定では、保持トルクだけでなく、必要パルス周波数、速度-トルク特性、加速トルク、負荷イナーシャ、安全率、ドライバ電流値を確認することが重要です。

高速・長距離・安全重要軸ならサーボ、低速・短距離・コスト重視ならステッピング、その中間ならクローズドループステッピングという判断軸を持つと、実務で迷いにくくなります。

ステッピングモーターは単純に見えて、使いこなしに差が出る部品です。原理と計算を押さえて選定すれば、低コストでも安定した位置決め装置を実現できます。