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可用性とは?稼働率との違いと計算式を製造現場向けに解説

設備の突発停止は、製造現場にとって最大の悪夢です。

納期遅延、残業の発生、そして莫大な機会損失。これらを防ぐために管理すべき最重要指標が「可用性(Availability)」です。

「壊れないこと」だけを目指しても、工場の生産性は最大化されません。

 

本記事では、可用性の定義から、信頼性との違い、MTBF・MTTRを用いた計算式、そして設備総合効率(OEE)を高めるための具体的な改善アプローチを解説します。

稼働率を最大化し、止まらないラインを作るための基礎知識を習得しましょう。

 

 

可用性(Availability)とは何か?

可用性(アベイラビリティ)とは、システムや設備が「使用したいときに、いつでも使用できる状態にあること」を示す能力のことです。

製造業においては、「設備が動くべき時間(負荷時間)に対して、実際に動いた時間(稼働時間)の割合」として定義されます。

つまり、「いつでもウェルカム状態」がどれくらい維持されているかを表す指標です。

 

「信頼性」との決定的な違い

よく混同される言葉に「信頼性(Reliability)」があります。

両者は似ていますが、目指す方向性が異なります。

 

信頼性(Reliability)

「故障しない能力」のこと。

一度動き出したら、どれだけ長く動き続けられるか(寿命の長さ)に焦点を当てます。

指標としては、MTBF(平均故障間隔)が使われます。

 

可用性(Availability)

「使いたい時に使える能力」のこと。

故障しないことも重要ですが、万が一故障しても「すぐに直して復旧できる」ならば、可用性は高くなります。

指標としては、稼働率(Operation Rate)が使われます。

 

極端な例を挙げれば、滅多に壊れないが、一度壊れると部品調達に3ヶ月かかる設備は、「信頼性は高いが、可用性は低い(リスクがある)」と言えます。

逆に、頻繁に止まるが、スイッチ一つで1秒で復旧する設備は、「信頼性は低いが、可用性は高い」と言えます。

製造現場が最終的に求めるのは、生産量に直結する「可用性」の高さです。

 

可用性を決定づける2つの要素:MTBFとMTTR

可用性を数値化し、コントロールするためには、以下の2つの指標を理解し、計算式を覚える必要があります。

 

1. MTBF(Mean Time Between Failures)

「平均故障間隔」と訳されます。

修理して使い続けることができる設備において、故障から次の故障までの平均的な稼働時間を指します。

この数値が大きいほど、「信頼性が高い(壊れにくい)」ことを意味します。

 

 \text{MTBF} = \frac{\text{総稼働時間}}{\text{総故障回数}}

 

2. MTTR(Mean Time To Repair)

「平均修復時間」と訳されます。

故障が発生してから、修理が完了し、再び設備が稼働するまでにかかる平均的な時間です。

この数値が小さいほど、「保全性が高い(直しやすい)」ことを意味します。

ここには、修理作業そのものの時間だけでなく、担当者が到着するまでの待ち時間や、部品を探す時間、試運転の時間も含まれます。

 

 \text{MTTR} = \frac{\text{総故障停止時間}}{\text{総故障回数}}

 

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可用性の計算式

可用性  A は、MTBFとMTTRを用いて以下の式で表されます。

 

 A = \frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF} + \text{MTTR}} \times 100 [\%]

 

この式から分かることは、可用性を向上させる(100%に近づける)アプローチは2つしかないということです。

1. 分子を大きくする(MTBFを伸ばす = 壊れなくする)

2. 分母の増加を抑える(MTTRを縮める = すぐ直す)

 

製造業における可用性の重要指標:OEE

製造現場では、単なる可用性(時間稼働率)を一歩進めた、「設備総合効率(OEE: Overall Equipment Effectiveness)」という指標で管理するのが一般的です。

TPM(全員参加の生産保全)活動の中心となる指標です。

 

OEEは以下の3つの要素の掛け算で決まります。

 

 \text{OEE} = \text{時間稼働率} \times \text{性能稼働率} \times \text{良品率}

 

ここで言う「時間稼働率」こそが、今回解説している可用性にあたります。

 

時間稼働率(可用性)

停止ロス(故障、段取り替え)による影響。

 

性能稼働率

性能ロス(チョコ停、速度低下)による影響。

 

良品率

不良ロス(廃棄、手直し)による影響。

 

可用性(時間稼働率)は、これら全ての土台です。

設備が動いていなければ、性能も品質も議論できません。

OEEの目標値は一般的に85%以上とされますが、そのためには可用性は90%〜95%以上を維持する必要があります。

 

可用性を向上させる具体的なアプローチ

では、どのようにして可用性を高めればよいのでしょうか。

計算式の要素であるMTBF(壊れない)とMTTR(すぐ直す)の観点から解説します。

 

1. MTBFを伸ばす(予防保全・予知保全)

故障の頻度を減らす活動です。

 

TBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)

「3ヶ月ごと」「1000時間ごと」といった期間を決めて、部品交換や点検を行います。

確実に故障を防げますが、まだ使える部品を交換してしまう「過剰保全」のコストリスクがあります。

 

CBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)

振動、温度、電流値などをセンサーで監視し、「壊れそうな兆候」が見えたら交換します(予知保全)。

設備の寿命を使い切りつつ、突発停止(ドカ停)を防ぐ、最も効率的な手法です。

近年のIoTやAI活用(DX)の主戦場はここにあります。

 

設計改善(弱点対策)

頻繁に壊れる部品があれば、材質を変える、強度を上げる、構造を見直すといった「改良保全」を行い、設備自体の弱点を潰します。

 

2. MTTRを縮める(保全性の向上)

万が一故障した際に、復旧スピードを速める活動です。

ここは技術力よりも「準備と管理」がモノを言います。

 

予備品(スペアパーツ)管理

故障したときに「部品がないのでメーカー取り寄せ(納期2週間)」となれば、可用性は致命的に低下します。

重要部品や長納期部品は、必ず社内に在庫を持つ必要があります。

 

ユニット交換方式(モジュール化)

現場で細かい分解修理を行うと時間がかかります。

故障したモーターや基板をユニットごと予備品と交換し、故障品は後でゆっくり修理するという運用にすれば、ライン停止時間は「交換時間」だけで済みます。

 

復旧手順の標準化

「あの人じゃないと直せない(属人化)」は最大のリスクです。

トラブルシューティングマニュアルを整備し、誰でも迅速に原因特定・復旧ができるように教育します。

 

3. 冗長化(Redundancy)による可用性の担保

設備の信頼性が低くても、システム全体としての可用性を極限まで高める方法が「冗長化」です。

同じ機能を持つ設備を2台並列に設置します。

 

Active/Standby構成

メイン機(稼働系)が故障したら、瞬時にサブ機(待機系)に切り替えます。

ポンプやファン、サーバー電源などでよく用いられます。

これなら、片方が故障して修理中(MTTRが長くても)であっても、ライン全体としては止まりません。

 

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ITシステムと製造設備の可用性の違い

最後に、IT業界と製造業における可用性の考え方の違いに触れておきます。

ITシステム(サーバーやクラウド)では、「99.999%(ファイブナイン)」といった極めて高い可用性が求められます。

これを実現するために、彼らは徹底的に「冗長化(クラスタリング)」を行います。

 

一方、製造設備(工作機械やロボット)は、物理的なスペースやコストの制約から、本体を丸ごと二重化することは稀です。

「シングルポイントオブフェイリア(単一故障点)」が多く存在するのが製造現場の宿命です。

だからこそ、製造業ではIT以上に、個々の部品の「予防保全(MTBF向上)」と、泥臭い「保全作業の高速化(MTTR短縮)」が重要になるのです。

 

まとめ

可用性とは、製造現場における「健康状態」を示すバロメーターです。

「壊れない機械」を作ることは理想ですが、現実には経年劣化や偶発故障をゼロにはできません。

だからこそ、「壊れにくくする努力(MTBF)」と同時に、「すぐに直す準備(MTTR)」を整えることが重要です。

 

・可用性  = \frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF} + \text{MTTR}} を暗記する。

・信頼性(壊れない)だけでなく、保全性(直しやすい)を設計段階から考慮する。

・予知保全と予備品管理の両輪で、OEE(設備総合効率)の底上げを図る。

 

この可用性の概念をチーム全員が理解し、日々の保全活動に落とし込むことができれば、あなたの工場は「止まらない、稼げる工場」へと進化するでしょう。