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読書メモ:「機械加工の知識がやさしくわかる本」 西村仁

 

機械加工の知識がやさしくわかる本

機械加工の知識がやさしくわかる本

  • 作者:西村 仁
  • 発売日: 2016/09/25
  • メディア: 単行本
 

「図面の描き方がやさしくわかる本」を読んでこの著者の本をすべて読もう!と決めて以来、自分にとっては3冊目となる西村仁氏の本。相変わらずのわかりやすさと基礎の網羅性の高さは素晴らしいと思う。
今回の本も機械加工の知識ということで旋盤、フライス、穴あけ、研削と基本的な加工技術を紹介し、成形加工では詳細な種類(板金、鋳造、鍛造、射出、圧延)にも各固有技術については少ない頁ながら網羅的に触れられている。基礎の全体を俯瞰するというニーズにこれほど合致する本は他にないだろう。各論についてさらに深く学びたい場合は別途専門書へと進んでいけば良い。広く浅く機械技術を学びたい私には大変満足できる内容だった。

 
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以下、読書での私的メモ。
 
切削工具の材料と特徴
(1)炭素工具鋼と合金工具鋼
安価な汎用材料ですが、温度に弱く炭素工具鋼では200℃前後、合金工具鋼では300℃前後で硬さが低下するので、低速での加工以外には使われていません。
(2)高速度工具鋼(ハイス鋼)
約600℃まで硬さが低下しない耐熱鋼材です。高速加工で高温になっても硬度が落ちないという特徴からこの名称がつけられました。ハイスピード対応なので、略して「ハイス鋼」といいます。耐摩耗性に優れていることから、金型の材料としても広く使われています。
(3)超硬合金
炭化タングステンの細かい粉末を主原料として、結合剤にコバルトなどの粉末を加えて高温高圧で焼き固めた焼結体です。硬くて高温での硬さの低下が少ないので、高速での切削工具によく使われる材料です。ただし、もろいことが弱点です。
添加物の種類や添加量、粒径の違いにより、多くの種類があります。さらに耐摩耗性向上やチッピング対策のために、超硬合金の表面にコーティングを施したものも市販されています。
(4)サーメット
炭化チタンをベースとした焼結体です。超硬合金と比べて、さらに耐熱性や耐摩耗性に優れます。超硬合金とセラミックスの中間的な性質の材料で、超硬合金と同じくコーティング品も市販されています。
(5)セラミック
酸化アルミニウムをベースとした焼結体です。1000℃以上でも軟化せず耐摩耗性が大きいので、高速高温の加工に適しています。
 
 
工具は、切れ刃がひとつの単刃工具と、切れ刃が複数ある多刃工具に分かれます。包丁は単刃工具で、刃がたくさんあるのこぎりは多刃工具です。
単刃工具は1点だけで加工するので、加工精度が出しやすい反面、加工能力は低く寿命が短い傾向があります。一方、多刃工具はその反対で、切れ刃のバラツキにより加工精度は劣りますが、加工能力は高く寿命も長いのが特徴です。
 
 
熱処理
(1)硬く・粘り強くする「焼入れ・焼戻し」
(2)軟らかくする「焼なまし」
(3)組織を標準状態に戻す「焼ならし」
(4)表面だけを硬くする「高周波焼入れ」と「浸炭」
 
制御をするためにとくに重要なのが冷却速度です。焼入れ・焼戻しは一気に冷ます「急冷」を行い、焼ならしは自然放熱で冷ます「空冷」、そして焼なましは炉の中で半日や1日かけてゆっくり冷やす「炉冷」を行います。
 
 
工具の回転方向と工作物の送り方向の関係には、2つのパターンがあります。工具の回転方向すなわち削る方向と工作物の送り方向が向き合うパターンが「アップカット」で、双方の方向が一致するパターンを「ダウンカット」といいます。
アップカットは仕上げ面がなめらかで、ダウンカットは工具の寿命の長いのが特徴です。実務面では、コストの経済性を優先したダウンカットが一般的です。
ただし、この考え方は側面加工の場合に該当します。溝加工する場合には、切れ刃の半分はアップカットで、あとの半分はダウンカットで加工していることになります。
 
 
CAM・・・CADの設計データからNC加工用のプログラムを自動で作成するソフト。
 
 
切削加工で発生する現象として「加工硬化」「構成刃先」「発熱」「びびり」があります。
 
 
さらに高精度な研削加工と研磨
砥石で加工する研削
(1)内面を研削するホーニング
先に紹介した内面研削よりもさらに精密に仕上げる加工がホーニングです。リーマ加工や内面研削を行ったうえで、このホーニングを行います。シリンダの内面や高精度ギアの穴加工の仕上げに用いられており、表面粗さは算術平均粗さRa0.1~0.4umレベルまで仕上げることが可能です。
角形状の砥石を取り付けたホーンという工具を、ばねなどで穴の内面に圧力をかけながら、回転と同時に往復運動をさせます。そのため加工した内面には網目状の細かい筋(クロスハッチ)が入ります。摺動する部品にホーニングを行うと、この筋に潤滑剤がしみ込むことで、低摩擦、耐摩耗の効果が出ます。砥粒や切りくずの除去、また冷却効果のために大量の切削油剤を使用します。
 
 
砥粒で加工する研磨
(砥粒を固めずにそのまま粒子の状態で使う加工を研磨といいます)
(2)バフ研磨
バフ研磨剤を塗布した円盤状の布を高速に回転させて工作物に当てることで、光沢に仕上げます。硬い砥石と異なり、弾性的な面で磨くことで見た目にもピカピカに仕上がります。布や研磨剤の種類を変えることで、研磨の度合いが変わります。
(3)ラップ研磨
工作物をラップと呼ぶ定盤にはさみ込み、砥粒と油を混合したラップ剤を入れて、圧力をかけながら双方に相対運動をさせる加工がラッピングで、この工作機械をラップ盤といいます。砥粒により微量を削るので、高精度でなめらかな面を得ることができます。ブロックゲージやベアリングの玉、レンズなどはこのラッピングで仕上げられています。
 
 
曲げてから力を除くと、ほんの少し戻りが発生します。これを「スプリングバック」といいます。スプリングバックは、硬い材料ほど、曲げる角度が大きいほど、板厚が薄いほど、大きくなります。
 
 
鋳造法の種類
鋳造ー砂型鋳造法
  ー精密鋳造法ーーシェルモールド鋳造法、ロストワックス鋳造法
  ー金型鋳造法ーーダイカスト鋳造法
 
 
世の中の鍛造品の生産量を見ると、熱間鍛造品が9割以上で冷間鍛造品が1割未満になっています。