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構成刃先とは?発生原因と対策を解説

「仕上げのつもりで丁寧に削ったのに、加工面がザラザラにむしれてしまった」という経験をしたことはないでしょうか。

その原因の多くは刃先にできる構成刃先という小さな金属の塊にあり、この現象を知らないと対策の立てようがありません。

構成刃先とは、切削の最中に被削材の一部が刃先に凝着し、硬く成長して刃先の代わりに材料を削ってしまう現象のことです。

この構成刃先は加工面の品質や寸法精度を大きく悪化させますが、切削条件を工夫することで抑えることができます。

本記事では、構成刃先の意味から発生のメカニズム、悪影響、発生しやすい条件、そして具体的な対策までを順番に解説します。

 

 

1. 構成刃先とは:刃先に被削材が凝着した塊

構成刃先とは、切削加工の最中に、削られる材料の一部が工具の刃先に付着してできる金属の塊のことを指します。

英語ではビルトアップエッジと呼ばれ、その頭文字をとってBUEと略して表されることもよくあります。

この塊は刃先の先端に積み重なり、本来の刃先の代わりとなって材料を削るようになってしまいます。

構成刃先のでき方

切削しているときの刃先の近くは、高い圧力と摩擦による熱によって、非常に高温で高圧の状態になっています。

この厳しい環境のもとで、削り取られた材料の一部が刃先のすくい面に強く押しつけられて凝着していきます。

凝着した材料はさらにその上へ積み重なっていき、やがて目に見えるほどの大きさの塊へと成長していきます。

こうして刃先の上に積もっていった塊が、加工にさまざまな悪さをする構成刃先の正体です。

なぜ硬くなるのか

構成刃先はもとは加工物と同じ材料ですが、刃先で強い力を受けることで加工硬化という変化を起こします。

加工硬化とは、金属が大きく変形することで内部の組織が変わり、もとよりも硬く強くなっていく現象のことです。

この加工硬化によって、構成刃先は元の被削材よりも硬くなり、刃先の代わりに材料を削れるようになります。

つまり構成刃先は、被削材自身が硬くなって、刃物の役目を奪ってしまった状態だと考えることができます。

成長と脱落を繰り返す

構成刃先は一度できると安定して残るわけではなく、成長と脱落を絶えず繰り返すという特徴を持っています。

ある程度の大きさまで成長すると、切削の力に耐えきれなくなって、突然はがれて脱落してしまいます。

脱落した構成刃先は、加工面や流れていく切りくずに巻き込まれて、そのまま運び去られていきます。

その後にはまた新しい構成刃先ができ始めるため、刃先の形が周期的に変化し続けることになります。

構成刃先と切りくずの関係

構成刃先は、切りくずが連続してつながって流れる連続切りくずのときに、とくにできやすくなります。

連続切りくずはすくい面の上を長く流れるため、刃先との凝着が起こりやすくなるからです。

反対に、切りくずが細かく分断される材料や条件では、構成刃先はできにくくなります。

このため、切りくずの形を見ることが構成刃先の発生を予想する手がかりになります。

段階 刃先で起こること 加工への影響
凝着 材料が刃先に付着する 刃先形状が変わり始める
成長 塊が積み重なって硬くなる 寸法が変化する
脱落 塊が突然はがれる 加工面が荒れる

 

2. 構成刃先が発生するメカニズム

構成刃先がなぜできるのかというメカニズムを理解すると、どうすれば防げるのかも自然と見えてきます。

ここでは、凝着から硬化、そして刃先の役目を奪うまでの一連の流れを順番に見ていきます。

高温高圧での凝着

切削では、刃先のすくい面の上を、切りくずが非常に強い力で押しつけられながら流れていきます。

このとき、刃先と切りくずの境目では高温と高圧の条件がそろい、金属どうしが溶着しやすくなります。

とくに粘りのある材料を削る場合には、この凝着が起こりやすく、構成刃先のもとになってしまいます。

逆に言えば、凝着が起こりにくい条件にできれば、構成刃先の発生そのものを抑えることができます。

加工硬化による硬化

刃先のすくい面に凝着した材料は、切削による大きな力を受けて、激しく変形していきます。

この激しい変形によって加工硬化が進み、凝着した材料はもとの状態よりもずっと硬くなっていきます。

硬くなった凝着物は、もはや軟らかい被削材ではなく、硬い刃物のようにふるまうようになります。

こうして、刃先の上に被削材からできた硬い刃が、少しずつ形づくられていくことになります。

刃先の代わりに切削する

硬く成長した構成刃先は、本来の刃先よりも前へ突き出して、材料を削るようになっていきます。

このため、実際に材料を削っているのは工具の刃先ではなく、被削材からできた構成刃先になってしまいます。

構成刃先の形は不安定で大きさも一定しないため、その結果として加工される面も不安定になります。

これが、構成刃先が加工精度や仕上がりの品質を悪くしてしまう、根本的な理由になっています。

構成刃先と切削温度の関係

構成刃先のできやすさは、刃先まわりの切削温度と密接に関係しています。

温度が低すぎても高すぎても凝着は起こりにくく、ある中くらいの温度でもっとも発生しやすくなります。

切削速度を変えると切削温度も変わるため、構成刃先の大きさが切削速度で大きく変化します。

この温度との関係が、後で述べる切削速度と構成刃先の関係につながっていきます。

段階 起こる現象 鍵になる条件
凝着 材料が刃先に溶着する 高温・高圧・粘い材料
硬化 加工硬化で硬くなる 大きな変形
切削 刃先の代わりに削る 不安定な形状

 

3. 構成刃先による悪影響

構成刃先ができてしまうと、加工にはさまざまな悪影響が現れて、品質を落としてしまいます。

ここでは、寸法精度や加工面、そして工具への影響を、それぞれ具体的に見ていきます。

寸法精度の悪化

構成刃先は本来の刃先より前へ突き出すため、加工物が設計よりも余分に削られてしまいます。

しかも構成刃先の大きさは絶えず変化し続けるため、削り取られる量も一定にはなりません。

その結果として、加工した寸法がばらついてしまい、精度の高い加工が難しくなってしまいます。

とくに公差の厳しい仕上げ加工では、この寸法のばらつきが大きな問題になります。

表面粗さの悪化

構成刃先が脱落するとき、加工面に塊の一部がこすりつけられて、むしれたような跡が残ってしまいます。

このため加工面がザラザラと荒れてしまい、表面粗さの値が大きく悪化することになります。

脱落が周期的に起こると、加工面に細かい筋やうろこ状の模様が現れてしまうこともあります。

表面粗さの考え方は、表面粗さの記事で詳しく解説しています。

工具損傷と切削抵抗の変動

構成刃先が脱落するときには、工具の表面の材料を一緒に持ち去ってしまうことがあります。

これが何度も繰り返されると刃先が荒れていき、工具の摩耗や欠けが早く進んでしまいます。

また、刃先の形が周期的に変わるため、切削抵抗が変動して加工そのものが不安定になります。

切削抵抗の考え方は、切削抵抗の記事も参考になります。

びびり振動や突発的な欠け

切削抵抗が周期的に変動すると、機械や工具がびびり振動を起こしてしまうことがあります。

びびり振動が起こると加工面に振動の跡が残り、仕上がりがさらに悪くなってしまいます。

また、大きく成長した構成刃先が脱落する瞬間に、刃先が欠けてしまうこともあります。

このように、構成刃先は加工面だけでなく、工具の突発的な損傷にもつながる厄介な現象です。

悪影響 起こること 困る場面
寸法精度の悪化 削りすぎ・ばらつき 公差の厳しい加工
表面粗さの悪化 むしれ・面荒れ 仕上げ加工
工具損傷 摩耗・欠けの促進 長時間の加工
抵抗の変動 びびり・加工が不安定 精密加工・薄物

 

4. 構成刃先が発生しやすい条件

構成刃先はいつでもできるわけではなく、特定の条件がそろったときにとくに発生しやすくなります。

発生しやすい条件をあらかじめ知っておくと、加工に入る前から対策を立てやすくなります。

中低速の切削速度

構成刃先は、切削速度が中くらいから低い領域で、もっとも発生しやすくなる傾向があります。

この速度の領域では、凝着が起こるのにちょうどよい中くらいの温度になってしまうためです。

反対に切削速度が高くなると温度が上がりすぎ、凝着しにくくなって構成刃先は消えていきます。

このため、低速や中速での加工ほど、構成刃先の発生に注意する必要があります。

軟らかく粘い材料

構成刃先は、軟らかくて粘り強い材料を削るときに、とくに発生しやすくなります。

軟鋼やアルミ、ステンレスなどは凝着しやすく、構成刃先ができやすい代表的な材料です。

反対に、鋳鉄のようにもろくて切りくずが分断されやすい材料では、構成刃先はできにくくなります。

これから削る材料の性質を知っておくことが、構成刃先への備えにつながっていきます。

すくい角と切削油の不足

工具のすくい角が小さいと、切りくずが刃先に強く押しつけられて、凝着が起こりやすくなります。

すくい角を大きくして切りくずがスムーズに流れるようにすると、構成刃先を抑えることができます。

また、切削油が不足していると刃先の摩擦や温度が上がり、凝着が起こりやすくなってしまいます。

適切な切削油を十分に使うことで、凝着を抑えて構成刃先を防ぎやすくなります。

送りや切込みの影響

送りや切込みも、構成刃先のできやすさに少なからず影響を与えます。

送りが小さい仕上げ加工では、切削温度が上がりにくいため、構成刃先ができやすくなることがあります。

これも、仕上げ加工でとくに構成刃先が問題になりやすい理由のひとつです。

条件を変えても改善しないときは、送りや切込みも合わせて見直すとよいでしょう。

条件 発生しやすい 発生しにくい
切削速度 中低速 高速
材料 軟鋼・アルミ・ステンレス 鋳鉄・硬い材料
すくい角 小さい 大きい
切削油 不足している 適切に供給

 

5. 構成刃先と切削速度の関係

構成刃先の発生は、数ある条件の中でも、とりわけ切削速度との関係が深いことで知られています。

切削速度を低いほうから高いほうへ変えていくと、構成刃先の大きさが特徴的に変化していきます。

低速では構成刃先ができにくい

切削速度が非常に低い領域では、刃先の温度が低いため、凝着があまり起こりません。

このため、ごく低速での加工では、構成刃先は大きくは成長しにくくなります。

ただし切削速度が低いと加工能率も低くなるため、実用的にはあまり使われない速度域です。

低速だから安心というわけではなく、加工能率とのバランスもあわせて考える必要があります。

中速で構成刃先が最大になる

切削速度が中くらいの領域になると、凝着にちょうどよい温度になって、構成刃先が最大になります。

この速度の領域では、加工面の荒れや寸法のばらつきが、もっとも大きく現れてしまいます。

一般的な加工の多くがこの速度域に入ってしまうため、構成刃先が問題になりやすいのです。

仕上げ加工でこの中速域をうまく避けることが、きれいな加工面を得るための工夫になります。

高速で構成刃先が消える

切削速度をさらに上げていくと、刃先の温度が高くなりすぎて、凝着が起こらなくなります。

このため、十分に高い切削速度では、構成刃先がほとんどできなくなっていきます。

仕上げ加工であえて切削速度を高めに設定するのは、この性質を上手に利用したものです。

構成刃先を避けるには、発生しやすい中速域を飛び越えて、高速域で削るのが有効な手段になります。

切削速度 構成刃先の大きさ 加工面
低速 小さい 比較的安定だが低能率
中速 最大 荒れやすい
高速 ほぼ消える きれいになりやすい

 

6. 構成刃先の対策

構成刃先は、切削条件や工具をうまく工夫することで、その発生を抑えることができます。

ここでは、実際の加工現場でよく使われる代表的な対策を紹介していきます。

切削速度を上げる

もっとも基本的な対策は、構成刃先が消える高速の領域まで切削速度を上げることです。

中速域で加工面が荒れてしまう場合は、思い切って切削速度を上げると改善することがあります。

ただし、切削速度を上げすぎると工具寿命が短くなってしまうため、両者のバランスが大切です。

使う工具の材種が、その高い切削速度に耐えられるかどうかも合わせて確認する必要があります。

機械の最高回転数によっては、十分な切削速度まで上げられない場合がある点にも注意します。

すくい角を大きくする

工具のすくい角を大きくすると、切りくずがスムーズに流れて、凝着が起こりにくくなります。

切れ味のよい鋭い刃物を使うことも、構成刃先を抑えるうえで効果的な方法です。

とくにアルミのように凝着しやすい材料では、大きなすくい角を持つ工具が向いています。

ただし、すくい角を大きくしすぎると刃先が弱くなってしまうため、加工に合わせて選びます。

切削油とコーティング工具

切削油を十分に供給すると、刃先の摩擦と温度がともに下がり、凝着を抑えることができます。

とくに潤滑性の高い切削油は、構成刃先の対策として大きな効果を発揮します。

また、表面の滑りがよいコーティング工具を使うと、凝着そのものを起こしにくくできます。

サーメット工具なども凝着しにくく、サーメット工具の記事で解説しています。

工具材種の選び方

構成刃先を抑えるには、被削材と凝着しにくい工具材種を選ぶことも大切です。

ステンレスやアルミのように凝着しやすい材料には、専用のコーティングを施した工具が向いています。

工具メーカーは、材料ごとに適した工具材種やコーティングを推奨しています。

加工する材料に合った工具を選ぶことが、構成刃先を防ぐ近道になります。

対策 効果 注意点
切削速度を上げる 高速域で構成刃先が消える 工具寿命とのバランス
すくい角を大きく 切りくずが流れ凝着しにくい 刃先が弱くなる
切削油 摩擦と温度を下げる 供給方法を工夫する
コーティング工具 凝着そのものを抑える 材料に合った膜を選ぶ

 

7. 構成刃先の見分け方と実務

構成刃先そのものは目に見えにくいですが、加工した結果からその発生を見抜くことができます。

ここでは、実務での見分け方と、加工をうまく進めるためのコツを紹介していきます。

加工面の見た目で判断する

構成刃先が出ていると、加工面につやがなく、ザラザラとむしれたような様子が見られます。

削った面に細かい筋やうろこ状の模様があれば、構成刃先が出ていることを疑うことができます。

切りくずの裏側に金属の小さな塊が付着していることもあり、これも判断の手がかりになります。

こうした特徴に気づいたら、切削速度や工具を見直すべき合図だと考えるとよいでしょう。

顕微鏡で刃先を観察すると、すくい面の先端に盛り上がった凝着物として構成刃先を確認できます。

同じ条件でも構成刃先の出方は安定しないため、加工のたびに加工面を確認する習慣が役立ちます。

仕上げ加工での注意

仕上げ加工では、わずかな構成刃先でも加工面の品質を大きく落としてしまいます。

このため、仕上げでは構成刃先が消える高速の領域を選んで加工するのが基本になります。

荒加工と仕上げ加工で切削速度を変えて、仕上げだけを高速にするという工夫も有効です。

切れ味のよい工具と十分な切削油を組み合わせると、より安定した仕上げ面を得ることができます。

荒加工では問題になりにくい

荒加工では、もともと加工面の仕上がりをそれほど気にしないため、構成刃先の影響は小さくなります。

むしろ、構成刃先が刃先を覆うことで、工具の摩耗をわずかに減らす場合もあるといわれています。

このため、構成刃先がとくに問題になるのは、面の品質や寸法精度が重要な仕上げ加工です。

加工の目的に応じて、どこまで構成刃先を気にするかを判断することも大切です。

材料に合わせた対策

軟らかく凝着しやすいアルミでは、大きなすくい角と高い切削速度を組み合わせるのが有効です。

ステンレスは加工硬化しやすいため、切れ味を保ちながら適切な速度で削ることが大切です。

材料ごとに発生のしやすさが違うため、削る材料に合わせて対策を選ぶ必要があります。

同じ装置でも、加工する材料を変えたときは切削条件をあらためて見直すことが大切です。

加工の基本となる旋盤やフライスについては、フライス盤の記事も参考になります。

材料 構成刃先のできやすさ 主な対策
アルミ合金 できやすい 大きなすくい角・高速
軟鋼 できやすい 切削速度を上げる
ステンレス できやすい 切れ味の維持・切削油
鋳鉄 できにくい あまり問題にならない

 

8. まとめ

構成刃先とは、切削中に被削材の一部が刃先に凝着し、硬く成長して刃先の代わりに削る現象のことです。

刃先に凝着した材料が加工硬化によって硬くなり、成長と脱落を絶えず繰り返すのが大きな特徴です。

構成刃先ができると、寸法精度や表面粗さが悪化し、工具の損傷や切削抵抗の変動も招いてしまいます。

中低速の切削速度で、軟らかく粘い材料を削るときに、構成刃先はとくに発生しやすくなります。

切削速度との関係では、中速でもっとも大きくなり、高速まで上げるとほとんど消えてしまいます。

対策としては、切削速度を上げる、すくい角を大きくする、切削油やコーティング工具を使う方法があります。

とくに仕上げ加工では、構成刃先が消える高速の領域を選んで、きれいな加工面を目指しましょう。