
「電線の太さは、どうやって決めればよいのか」
その判断基準を整理してくれるのが、本記事のテーマである電線・ケーブルの選定です。
電線が細すぎると、発熱して火災の原因になったり、電圧が下がって機器が正常に動かなくなったりします。
適切な太さを選ぶことは、安全で効率のよい電気設備の基本です。
本記事では、電線選定の基準である許容電流と電圧降下から、太さの表し方、選定の手順、ケーブルの種類、実務での注意点までを、図表を交えて体系的に解説します。
- 1. 電線・ケーブル選定とは|太さを決める基本
- 2. 許容電流|流せる電流の上限
- 3. 電圧降下|もう一つの選定基準
- 4. 電線の太さの表し方
- 5. 電線選定の手順
- 6. ケーブルの種類
- 7. 実務での注意点
- まとめ
1. 電線・ケーブル選定とは|太さを決める基本
電線・ケーブルの選定とは、流す電流や使う条件に応じて、適切な太さや種類を選ぶことです。
電気設備の安全性と性能を左右する、設計の基本作業です。
1-1. 電線選定の役割
電線選定の役割は、流す電流を安全に流せる太さを決めることです。
電線には抵抗があり、電流を流すと発熱します。
細い電線に大きな電流を流すと、発熱が大きくなり、被覆が溶けたり発火したりします。
これを防ぐため、流す電流に見合った太さの電線を選ぶ必要があります。
また、電線が細いと電圧降下も大きくなり、機器に十分な電圧が届きません。
安全と性能の両面から、適切な太さを選ぶことが求められます。
つまり電線選定は、火災を防ぎ、機器を正しく動かすための基本設計です。
太ければよいというものでもなく、コストや施工性とのバランスも考えます。
1-2. 細すぎても太すぎても問題
電線が細すぎると、発熱と電圧降下という2つの問題が生じます。
発熱は火災の危険を、電圧降下は機器の不具合を招きます。
一方、必要以上に太い電線を選ぶと、コストがかさみ、施工も難しくなります。
太い電線は重く、曲げにくく、配管にも余裕が必要です。
そのため、安全を確保できる範囲で、過剰にならない太さを選ぶのが理想です。
許容電流と電圧降下という2つの基準で、最適な太さを判断します。
選定は、この2つの基準を両方満たす太さを探す作業だといえます。
どちらか一方でも満たさなければ、その電線は使えません。
1-3. 電線とケーブルの違い
電線とケーブルは、似ていますが厳密には区別されます。
電線は、導体を絶縁物で覆った1本の線を指すことが多い言葉です。
ケーブルは、絶縁した導体をさらに保護の外装(シース)で覆ったものを指します。
複数の電線をまとめて1本にしたものも、ケーブルと呼ばれます。
ケーブルは外装で保護されているため、より過酷な環境でも使えます。
用途や施工場所に応じて、電線とケーブルを使い分けます。
本記事では、両者をまとめて「電線」と呼んで選定の考え方を解説します。
選定の基準となる考え方は、電線でもケーブルでも共通しています。
1-4. 電線の構造
電線は、大きく分けて導体と絶縁体からできています。
導体は電気を流す中心の金属で、主に銅やアルミニウムが使われます。
その導体を覆う絶縁体が、電気が外に漏れるのを防いでいます。
ケーブルでは、さらに外側を保護のためのシース(外装)で覆います。
導体の材料や太さが許容電流を、絶縁体の種類が耐熱性や耐圧を決めます。
電線の性能は、これらの構造によって決まっているのです。
選定では、導体の太さだけでなく、絶縁体の種類も用途に合わせて選びます。
構造を理解しておくと、なぜその電線が必要なのかが見えてきます。
2. 許容電流|流せる電流の上限
電線選定の第一の基準が、許容電流です。
その意味と決まり方を見ていきましょう。
2-1. 許容電流とは
許容電流とは、電線に安全に流せる電流の上限値です。
この値を超えて電流を流すと、発熱で電線が許容温度を超えてしまいます。
電線の絶縁物には、耐えられる温度の上限があります。
許容電流は、この温度を超えない範囲で決められています。
つまり許容電流は、「これ以上流すと危険」という発熱の限界を表します。
選定では、流したい電流が許容電流の範囲内に収まる太さを選びます。
2-2. 太さと許容電流の関係
電線が太いほど、許容電流は大きくなります。
太い電線は抵抗が小さく、同じ電流でも発熱が少ないためです。
また、太い電線は表面積が大きく、発生した熱を逃がしやすいという面もあります。
このため、大きな電流を流すには太い電線が必要になります。
逆に、細い電線では小さな電流しか流せません。
流したい電流の大きさが、必要な電線の太さを決める出発点になります。
2-3. 許容電流の目安
代表的な電線の太さと許容電流の目安を、表で示します。
| 断面積 | 許容電流の目安 |
|---|---|
| 2 sq | 約27 A |
| 3.5 sq | 約37 A |
| 5.5 sq | 約49 A |
| 8 sq | 約61 A |
| 14 sq | 約88 A |
これらはあくまで標準的な条件での目安です。
実際の許容電流は、後述する周囲温度や配線方法によって補正する必要があります。
2-4. 周囲温度と本数による補正
許容電流は、使う条件によって変わります。
周囲温度が高いほど、電線は熱を逃がしにくくなり、許容電流は小さくなります。
また、複数の電線を束ねたり同じ管に通したりすると、互いの熱で温度が上がります。
このため、まとめる本数が多いほど、1本あたりの許容電流は下げて考えます。
表の目安値に、これらの条件に応じた補正係数を掛けて、実際の許容電流を求めます。
暑い場所や、多数の電線をまとめる場合は、特に注意が必要です。
カタログの許容電流をそのまま使うと、過大評価になることがあります。
実際の施工条件を踏まえて補正することが、安全な選定の要点です。
2-5. ブレーカーとの協調
電線の許容電流は、それを保護するブレーカーの定格と組み合わせて考えます。
ブレーカーは、過大な電流が流れたときに回路を遮断して電線を守る役割があります。
そのため、電線の許容電流は、ブレーカーの定格電流以上である必要があります。
もし電線の許容電流のほうが小さいと、ブレーカーが切れる前に電線が過熱してしまいます。
「ブレーカーが電線を守れる」関係になっているかが、安全上の重要なポイントです。
電線とブレーカーは、必ずセットで選定を確認します。
細い電線を太いブレーカーで保護する組み合わせは、火災の危険があり禁物です。
電線が先に焼けてしまわないよう、両者の協調を必ずチェックします。
3. 電圧降下|もう一つの選定基準
電線選定の第二の基準が、電圧降下です。
許容電流を満たしても、電圧降下が大きすぎると使えません。
3-1. 電圧降下とは
電圧降下とは、電線の抵抗によって電圧が下がる現象です。
電線にも抵抗があるため、電流が流れるとその両端で電圧が下がります。
電線が長いほど、また細いほど、抵抗が大きくなり電圧降下も大きくなります。
その結果、配線の末端では電源より低い電圧しか得られません。
電圧が下がりすぎると、機器が正常に動かなかったり、性能が落ちたりします。
長い配線では、この電圧降下が選定の重要な制約になります。
3-2. 電圧降下とオームの法則
電圧降下は、オームの法則で計算できます。
電線の抵抗をR、流れる電流をIとすると、電圧降下は次式で表されます。
電線の抵抗は、長さに比例し、断面積に反比例します。
つまり、長く細い電線ほど抵抗が大きく、電圧降下も大きくなります。
電圧降下を小さくしたいなら、電線を太くして抵抗を下げるのが基本です。
許容電流だけでなく、この電圧降下の計算も選定に欠かせません。
3-3. 電圧降下の計算例
具体的に考えてみます。抵抗0.1Ωの電線に20Aの電流が流れる場合の電圧降下です。
電圧降下は2Vとなります。100Vの電源なら、末端では98Vに下がる計算です。
電線が長くなって抵抗が0.2Ωになれば、電圧降下は2倍の4Vになります。
このように、配線が長くなるほど電圧降下は大きくなります。
長距離の配線では、太い電線を選んで電圧降下を抑える必要があります。
3-4. 許容できる電圧降下の目安
電圧降下は、一般に使用電圧の数%以内に抑えるのが目安とされます。
例えば100Vの回路なら、電圧降下は2〜6V程度までに収めます。
許容できる電圧降下の割合は、配線の長さや用途によって基準が定められています。
幹線と分岐回路でも、目安となる値が異なります。
電圧降下が基準を超える場合は、電線を1段階太くして対応します。
許容電流は満たしていても、電圧降下で太さが決まることも少なくありません。
3-5. 電圧降下を左右する3つの要素
電圧降下の大きさは、電流・配線の長さ・電線の太さの3つで決まります。
電流が大きいほど、また配線が長いほど、電圧降下は大きくなります。
逆に、電線を太くすれば抵抗が下がり、電圧降下を小さく抑えられます。
この3要素の関係を押さえると、どこを調整すべきかが見えてきます。
例えば、配線を短くできるなら、ルートを工夫して距離を縮めるのも有効です。
太くするだけでなく、配線経路の見直しも電圧降下対策になります。
実務では、電流・距離・太さから電圧降下を求める早見表や簡易式が使われます。
これらを活用して、効率よく適切な太さを判断します。
4. 電線の太さの表し方
電線の太さには、いくつかの表し方があります。
選定で混乱しないよう、整理しておきましょう。
4-1. 断面積(sq)
日本でよく使われるのが、導体の断面積で表す方法です。
単位はスケア(sq)で、平方ミリメートルを意味します。
例えば「5.5sq」は、導体の断面積が5.5平方ミリメートルであることを表します。
数値が大きいほど太く、許容電流も大きくなります。
より線では、複数の細い素線を束ねた合計の断面積で表します。
断面積は、許容電流や抵抗を考えるうえで直接的でわかりやすい指標です。
4-2. 直径とAWG
単線では、導体の直径(ミリメートル)で太さを表すこともあります。
「1.6mm」「2.0mm」のように、ミリ単位で示します。
また、海外ではAWG(アメリカン・ワイヤ・ゲージ)という規格も使われます。
AWGは番号が小さいほど太く、数値の感覚が断面積とは逆になります。
輸入機器などではAWG表記が使われるため、換算が必要なことがあります。
表記の違いを理解しておくと、選定で迷いません。
4-3. 単線とより線
電線の導体には、単線とより線があります。
単線は1本の太い導体、より線は細い素線を撚り合わせたものです。
より線は柔らかく曲げやすいため、動く部分や複雑な配線に向いています。
単線は硬く、まっすぐな配線や固定箇所に向いています。
同じ断面積なら、許容電流はほぼ同じです。
施工性や用途に応じて、単線とより線を使い分けます。
4-4. 公称断面積という考え方
より線の太さは、公称断面積という値で表されます。
これは、撚り合わせた素線の断面積を合計した、おおよその値です。
実際には素線の間にすき間があるため、外形は同じ断面積の単線より少し太くなります。
そのため、配管に通す本数を考えるときは、外形(仕上がり外径)にも注意します。
公称断面積は、許容電流や抵抗を考えるうえでの基準になる値です。
カタログには、公称断面積ごとに許容電流や外径が記載されています。
選定では、この公称断面積をもとに必要な太さを決めていきます。
表記の意味を理解しておくと、カタログを正しく読み解けます。
5. 電線選定の手順
これまでの基準を踏まえ、実際の選定の手順を見ていきましょう。
順を追って判断すれば、適切な太さが決まります。
5-1. 必要な電流を求める
選定の第一歩は、流す電流の大きさを求めることです。
機器の消費電力と電圧から、電力の関係を使って電流を計算します。
電流は、消費電力を電圧で割って求められます。
例えば、100Vで2000Wの機器なら、電流は20Aです。
この必要電流が、選定の出発点になります。
まず、どれだけの電流を流すのかをはっきりさせます。
5-2. 許容電流から太さを選ぶ
必要な電流がわかったら、それを安全に流せる太さを選びます。
補正後の許容電流が、必要電流より大きい電線を選びます。
このとき、周囲温度やまとめる本数による補正を忘れないことが重要です。
余裕を持って、必要電流より十分大きい許容電流の電線を選びます。
ブレーカーの定格との関係も確認します。
電線の許容電流は、保護するブレーカーの定格以上である必要があります。
5-3. 電圧降下を確認する
太さの候補が決まったら、電圧降下を計算して確認します。
配線の長さと電流から電圧降下を求め、基準内に収まるかを見ます。
基準を超える場合は、電線をさらに太くして電圧降下を抑えます。
許容電流と電圧降下の両方を満たす太さが、最終的な選定結果です。
長い配線では、許容電流より電圧降下のほうが厳しい条件になることもあります。
2つの基準のうち、より太い電線を要求するほうで決まります。
5-4. 機械的強度と施工性
電気的な基準に加えて、機械的な強度や施工性も考えます。
細すぎる電線は、引っ張りや振動で断線する恐れがあります。
そのため、用途によっては最小の太さが規定されていることもあります。
配管に通せるか、曲げられるかといった施工性も確認します。
電気的に問題なくても、施工できなければ意味がありません。
強度・施工性まで含めて、総合的に太さを決めるのが実務の選定です。
6. ケーブルの種類
電線・ケーブルには、用途に応じたさまざまな種類があります。
代表的なものを見ていきましょう。
6-1. VVFケーブル
住宅でよく使われるのが、VVFケーブルです。
平たい形状で、屋内配線に広く使われています。
絶縁とシースを備え、施工しやすいのが特徴です。
コンセントや照明への配線など、身近な用途で活躍します。
住宅の壁の中を通る配線の多くが、このVVFケーブルです。
低圧の屋内配線の定番といえる種類です。
6-2. CVケーブル
CVケーブルは、架橋ポリエチレンを絶縁体に使ったケーブルです。
耐熱性が高く、許容電流を大きくとれるのが特徴です。
動力配線や、比較的大きな電流を流す幹線に使われます。
工場やビルの電源配線で、広く採用されています。
高い性能から、産業用の配線では標準的なケーブルです。
大電流を扱う用途では、CVケーブルが選ばれることが多くなります。
6-3. 用途による使い分け
ケーブルは、使う場所や環境に応じて選びます。
屋外や地中、水回りなどでは、それぞれに適した耐候性・防水性のケーブルを使います。
移動する機器には、柔軟なキャブタイヤケーブルが使われます。
高温になる場所には、耐熱電線を選びます。
環境に合わないケーブルを使うと、早期に劣化して事故につながります。
電気的な選定だけでなく、使用環境に合った種類選びも重要です。
6-4. 屋外・地中での配線
屋外や地中にケーブルを敷設する場合は、特別な配慮が必要です。
屋外では、紫外線や雨、温度変化に耐える耐候性のケーブルを選びます。
地中に直接埋設する場合は、土の圧力や水分に耐える丈夫な外装が求められます。
必要に応じて、管に通して保護したうえで埋設します。
地中は放熱の条件が屋内と異なるため、許容電流も別に考えます。
土の種類や埋設の深さによって、熱の逃げ方が変わるためです。
敷設環境に合わないケーブルは、早期に劣化して事故の原因になります。
使う場所の条件を踏まえて、適したケーブルと施工方法を選びます。
7. 実務での注意点
電線選定を実務で行ううえでの注意点を見ていきましょう。
計算だけでは見落としがちなポイントです。
7-1. 束ね配線と発熱
複数の電線を束ねると、互いの熱で温度が上がり、許容電流が下がります。
同じ太さでも、単独で配線する場合より小さな電流しか流せません。
多数の電線を1つの管に詰め込むと、放熱が悪くなり危険です。
束ねる本数に応じて、許容電流を補正することが欠かせません。
配線が密集する盤の中などでは、特にこの発熱に注意します。
計算上は問題なくても、束ね方しだいで過熱することがあります。
7-2. 端子接続部の管理
電線の事故は、端子の接続部で起こることが多くあります。
接続が緩むと、その部分の抵抗が増えて異常に発熱します。
緩んだ端子は、発熱から焼損や火災に至る危険があります。
適切な力で確実に締め、定期的に緩みを点検することが重要です。
電線そのものが健全でも、接続部が悪ければ事故につながります。
選定と同じくらい、接続の施工と管理が大切です。
7-3. 余裕を持った選定
電線選定では、ぎりぎりを狙わず余裕を持つのが基本です。
将来の負荷増加や、想定外の使い方にも備えられます。
少し太めの電線を選んでおけば、発熱も電圧降下も小さく抑えられます。
コストとのバランスを見つつ、適度な余裕を持たせます。
電気設備は長く使うものだけに、余裕のある設計が安心につながります。
計算値ぎりぎりではなく、余裕を見込んだ選定を心がけましょう。
7-4. 過負荷による発熱と事故
電線選定を誤ると、過負荷による発熱事故につながります。
細い電線に大きな電流を流し続けると、徐々に温度が上がり、被覆が劣化します。
劣化した被覆は絶縁性能を失い、やがて短絡や漏電、火災に至ります。
テーブルタップに機器をつなぎすぎる「たこ足配線」も、この過負荷の典型例です。
消費電力の合計から電流を計算し、電線とコンセントの容量内に収めることが基本です。
電流の計算には、消費電力と電圧の関係が役立ちます。
電流の計算の基礎となる電力の考え方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。
まとめ
本記事では、電線・ケーブルの選定について、許容電流と電圧降下という2つの基準から、太さの表し方、選定の手順、ケーブルの種類、実務での注意点までを体系的に解説しました。
許容電流は電線に安全に流せる電流の上限で、周囲温度や束ねる本数で補正して考えます。
電圧降下はオームの法則 で計算でき、長く細い電線ほど大きくなります。
選定では、必要電流から太さを選び、許容電流と電圧降下の両方を満たすことを確認します。
電線選定は、火災を防ぎ、機器を正しく動かすための基本設計です。
許容電流と電圧降下の2つの基準を押さえ、ブレーカーや接地といった電気設備の安全技術へと理解を広げていってください。