
「三菱PLCを使うならCC-Linkでよいのか」「CC-Link IE FieldとCC-Link IE TSNは何が違うのか」「ケーブルや終端抵抗は何を選べばよいのか」と迷ったことはないでしょうか。
産業用ネットワークでは、センサー、リモートI/O、インバータ、サーボ、表示器、ロボットなどを確実につなぐ必要があります。
しかし、同じCC-Linkファミリーでも、従来のCC-Link、CC-Link IE Field、CC-Link IE Field Basic、CC-Link IE TSNでは、使うケーブル、通信速度、得意な用途が大きく異なります。
CC-Linkを単なる「三菱系の通信」とだけ理解していると、設備更新時に既設配線との互換性を誤ったり、TSN対応が必要な用途で古い方式を選んだりするおそれがあります。
本記事では、CC-Linkの基本、CC-Link IEとの違い、CC-Link IE Field、CC-Link IE Field Basic、CC-Link IE TSN、ケーブル、終端抵抗、Ethernet系ネットワークとの使い分けまでを実務目線で解説します。
- 1. CC-Linkとは何か
- 2. CC-Linkファミリーの種類
- 3. 従来のCC-Linkの特徴
- 4. CC-Link IEとは何か
- 5. CC-Link IE Field Basicとは何か
- 6. CC-Link IE TSNとは何か
- 7. CC-LinkとCC-Link IEの違い
- 8. CC-Linkのケーブル選定
- 9. 終端抵抗と通信トラブル
- 10. CC-LinkとEthernet/IP・PROFINETの違い
- 11. CC-LinkとOPC UA・MQTTの違い
- 12. CC-Link導入時の設計ポイント
- 13. CC-Linkでよくある失敗例
- 14. CC-Linkを選ぶ判断基準
- 15. よくある質問
- 16. まとめ
1. CC-Linkとは何か
CC-Linkとは、主に工場の自動化設備で使われる産業用ネットワークの一種です。
PLCとリモートI/O、インバータ、サーボ、表示器、センサー、バルブマニホールドなどを接続し、設備内の信号やデータをやり取りするために使われます。
設備内の機器をつなぐ通信ネットワーク
従来の設備では、PLCと各センサー・アクチュエータを1点ずつ配線する方法が一般的でした。
入力点数や出力点数が増えるほど、配線本数、端子台、盤内スペース、配線工数が増えていきます。
CC-Linkを使うと、複数の機器をネットワークで接続し、通信によって入出力信号や制御データをまとめて扱えます。
これにより、制御盤の省配線化、現地配線の簡素化、ユニット追加時の拡張性向上につながります。
単なるLANではなく制御用の通信
CC-Linkは、事務所のパソコンをつなぐLANとは目的が違います。
事務所LANでは、多少の通信遅れがあってもメールやファイル共有は成立します。
一方、製造設備では「ワークが到着したらシリンダーを出す」「インバータへ速度指令を送る」「異常信号をPLCへ戻す」といった制御に使われます。
そのため、通信の周期性、安定性、診断性、ノイズ耐性が重要になります。
三菱電機だけの閉じた規格ではない
CC-Linkは三菱電機のPLCと組み合わせて使われる印象が強い通信です。
ただし、CC-LinkファミリーはCC-Link協会が普及・認証を行うオープンネットワークとして展開されています。
実務では、三菱PLCを中心に、他社のリモートI/O、センサー、アクチュエータ、ロボットコントローラなどを接続する場面もあります。
三菱PLC側だけでなく、接続先機器がどのCC-Link方式に対応しているかを確認することが重要です。
2. CC-Linkファミリーの種類
CC-Linkを理解しにくくしている原因の一つは、名称が似た規格が複数あることです。
特に、従来のCC-Link、CC-Link IE、CC-Link IE Field Basic、CC-Link IE TSNは混同されやすいです。
代表的な種類の比較
| 種類 | 通信の位置づけ | 主な用途 | 実務上の見方 |
|---|---|---|---|
| CC-Link | 従来型フィールドネットワーク | リモートI/O、インバータ、センサー接続 | 既設設備で多く見かける方式 |
| CC-Link IE Control | コントローラ間ネットワーク | PLC間、制御盤間、ライン間通信 | 上位の制御連携向き |
| CC-Link IE Field | Ethernetベースのフィールドネットワーク | リモートI/O、サーボ、インバータ、モーション制御 | 高速・大容量のフィールド制御向き |
| CC-Link IE Field Basic | 汎用Ethernet活用型 | 小規模装置、簡易I/O、低〜中速制御 | 導入しやすいEthernet系CC-Link |
| CC-Link IE TSN | TSN対応の産業Ethernet | モーション、I/O、情報通信の統合 | 今後の高機能設備向き |
名前だけで判断しない
「CC-Link対応」と書かれていても、従来CC-Linkなのか、CC-Link IE Fieldなのか、CC-Link IE Field Basicなのかは別問題です。
ケーブルも通信速度も設定方法も異なるため、型式、対応プロファイル、接続マニュアルを確認する必要があります。
特に中古設備、海外設備、既設ラインの改造では、盤内のネットワークユニット型式から実際の方式を確認することが重要です。
現場では世代差が混在する
新規設備ではCC-Link IE TSNやCC-Link IE Field Basicを採用していても、既設設備では従来CC-Linkが残っていることがあります。
このため、工場全体では「旧CC-Link」「CC-Link IE」「Ethernet/IP」「PROFINET」「Modbus TCP」が混在することも珍しくありません。
産業用通信全体の考え方を整理したい場合は、フィールドバスとは何かを解説した記事もあわせて確認すると理解しやすくなります。
3. 従来のCC-Linkの特徴
従来のCC-Linkは、長く使われてきたフィールドネットワークです。
PLCの近くにすべてのI/Oを集約するのではなく、設備の各所にリモートI/O局を分散配置し、マスタ局から通信で制御します。
リモートI/Oを分散配置できる
搬送ライン、組立機、検査機、包装機などでは、センサーや電磁弁が設備のあちこちに配置されます。
すべての信号線を制御盤まで個別に引き戻すと、配線量が大きくなります。
CC-Linkでは、現場側にリモートI/Oユニットを置き、そこからPLCへネットワーク接続できます。
盤内の端子台削減、配線経路の整理、増設時の作業性向上に効果があります。
サイクリック通信で制御しやすい
CC-Linkでは、PLCと各局の間で入出力データを周期的にやり取りします。
この周期通信により、リモートI/Oの入力状態や出力指令をPLCプログラム上で扱えます。
設備制御の基本は、センサー入力を読み取り、条件判断し、出力機器を動かすことです。
この流れを理解するには、シーケンス制御の記事で入力・判断・出力の関係を押さえておくと理解しやすくなります。
既設設備での保守性が重要
従来CC-Linkは既設設備で多く使われるため、更新時には保守性が重要になります。
たとえば、通信異常が出たときに、マスタ局、リモート局、ケーブル、終端抵抗、局番設定のどこに原因があるかを切り分ける必要があります。
単に「通信が切れた」と見るのではなく、どの局まで通信できているか、どのタイミングで異常になるかを確認します。
古い設備ほど、コネクタの緩み、ケーブル劣化、盤内ノイズ、追加改造時の配線ミスが原因になりやすいです。
4. CC-Link IEとは何か
CC-Link IEは、Ethernet技術をベースにしたCC-Linkファミリーの上位系ネットワークです。
従来のCC-Linkよりも高速・大容量化し、コントローラ間通信やフィールド制御、モーション制御まで扱えるように発展しています。
IEはIndustrial Ethernetの意味合い
CC-Link IEのIEは、産業用Ethernetを意識した名称です。
ここで注意したいのは、Ethernetケーブルを使うからといって、事務所LANと同じ考え方で扱えるわけではない点です。
産業Ethernetでは、通信周期、局管理、リアルタイム性、異常診断、ノイズ対策が重視されます。
汎用Ethernetと産業Ethernetの違いを比較したい場合は、EtherNet/IPの記事も参考になります。
CC-Link IE Fieldの位置づけ
CC-Link IE Fieldは、フィールド機器を高速に接続するためのネットワークです。
リモートI/Oだけでなく、サーボ、インバータ、モーション制御、セーフティ系の連携など、より大きなデータ量とリアルタイム性が必要な用途に使われます。
設備が複雑になり、単純なON/OFF信号だけでなく、位置、速度、電流、異常コード、パラメータなどを扱う場合に有効です。
CC-Link IE Controlとの違い
CC-Link IE Controlは、主にコントローラ間を接続するネットワークです。
ライン全体のPLC間通信、複数制御盤の連携、設備間のデータ交換などに向いています。
一方、CC-Link IE Fieldは、PLCと現場機器の接続に近い位置づけです。
設計時には「PLC同士をつなぐのか」「PLCと現場機器をつなぐのか」を分けて考えると、選定を誤りにくくなります。
5. CC-Link IE Field Basicとは何か
CC-Link IE Field Basicは、汎用Ethernet技術を活用した、比較的導入しやすいCC-Link IE系ネットワークです。
高速制御が必須ではない小規模装置や、簡易的なリモートI/O接続で使いやすい位置づけです。
ソフトウェア実装しやすい
CC-Link IE Field Basicは、専用ASICや高度なハードウェアを必須とせず、ソフトウェア実装しやすい点が特徴です。
そのため、機器メーカー側にとっては対応製品を開発しやすく、ユーザー側にとっては対応機器の選択肢が広がりやすくなります。
小規模な装置、検査機、搬送補助装置、簡易データ収集などでは、CC-Link IE Field Basicが現実的な選択肢になることがあります。
汎用Ethernetとの関係
CC-Link IE Field Basicは、汎用Ethernet技術を活用します。
ただし、通信の考え方は産業用ネットワークであり、PLC側の設定、局管理、デバイス割付、通信周期を理解して使う必要があります。
「Ethernetポートがあるから何でもそのままつながる」という発想ではなく、対応機器、設定ツール、通信仕様をセットで確認します。
高速モーション制御には向かない
CC-Link IE Field Basicは、導入のしやすさが大きなメリットです。
一方、高速・高精度なモーション制御や、厳密なリアルタイム性が必要な用途では、CC-Link IE FieldやCC-Link IE TSNを検討する必要があります。
「簡単に使えるから全部Basicでよい」と考えるのではなく、制御周期、軸数、同期精度、異常時の停止要件を確認して選定します。
6. CC-Link IE TSNとは何か
CC-Link IE TSNは、TSN技術を取り入れた産業用Ethernetネットワークです。
TSNはTime Sensitive Networkingの略で、Ethernet上で時間を意識した通信制御を行うための技術群です。
リアルタイム制御と情報通信を両立しやすい
従来の産業用ネットワークでは、制御用ネットワークと情報系ネットワークを分けることが一般的でした。
制御用はリアルタイム性を優先し、情報系はデータ収集や上位システム連携を担当します。
CC-Link IE TSNでは、TSNにより時間を分けて通信を制御し、制御通信と情報通信の混在を実現しやすくしています。
これにより、モーション制御、リモートI/O、設備データ収集、予防保全向けデータ活用を同じ方向に統合しやすくなります。
スマートファクトリーとの相性がよい
スマートファクトリーでは、設備を動かすだけでなく、設備状態、品質情報、稼働率、異常履歴、消費電力などを上位へ集める必要があります。
CC-Link IE TSNは、制御と情報の統合を意識したネットワークとして、こうした用途と相性があります。
ただし、ネットワーク全体をTSN対応にすれば自動的にスマートファクトリーになるわけではありません。
データの粒度、収集周期、上位システムとの連携方法、保全で使う判断基準まで設計する必要があります。
導入時は対応機器と設計力が重要
CC-Link IE TSNを使う場合、PLC、リモートI/O、サーボ、スイッチ、通信ユニット、エンジニアリングツールなどが対応している必要があります。
また、制御通信と情報通信をどのように混在させるか、通信周期をどう設計するか、ネットワークをどこで分割するかも重要です。
新規設備では有効な選択肢ですが、既設設備の一部更新では、既存ネットワークとの接続方法を事前に整理する必要があります。
7. CC-LinkとCC-Link IEの違い
CC-LinkとCC-Link IEは、同じCC-Linkファミリーですが、設計思想が異なります。
従来CC-Linkはフィールドネットワークとしての省配線化に強く、CC-Link IEはEthernetベースで高速・大容量・統合化を重視します。
比較表で見る違い
| 比較項目 | CC-Link | CC-Link IE系 |
|---|---|---|
| 主な世代 | 従来型フィールドネットワーク | Ethernetベースの産業ネットワーク |
| 主な用途 | リモートI/O、省配線、インバータ接続 | 高速I/O、モーション、設備データ連携 |
| 通信イメージ | 現場信号を周期的にやり取り | 制御データと情報データをより大容量に扱う |
| ケーブル | 専用ケーブル系 | Ethernetケーブル系 |
| 向く設備 | 既設設備、単純I/Oが多い設備 | 新規設備、高速制御、データ活用設備 |
既設流用ならCC-Linkを理解する
既設設備を保守・改造する場合、従来CC-Linkを避けて通れないことがあります。
局番、通信速度、終端抵抗、ケーブル長、リモート局の占有点数などを確認しながら対応します。
古い設備では、図面と実配線が一致していないこともあるため、現物確認が重要です。
新規設計ならIE系を候補に入れる
新規設備では、将来的なデータ活用、上位連携、保守性を考えてCC-Link IE系を検討する価値があります。
特に、サーボ軸数が多い装置、工程データを収集したい設備、設備更新を長期的に見据えるラインでは、IE系の採用メリットが大きくなります。
ただし、接続機器の対応状況や保守担当者の習熟度も含めて判断します。
8. CC-Linkのケーブル選定
CC-Linkのトラブルでは、ケーブル選定や配線施工が原因になることがあります。
通信規格に合わないケーブルを使うと、立ち上げ時は動いても、ノイズや経年劣化で不安定になることがあります。
従来CC-Linkは専用ケーブルを確認する
従来CC-Linkでは、対応する専用ケーブルや推奨ケーブルを使うことが基本です。
見た目が似た多芯ケーブルを代用すると、インピーダンスやノイズ特性が合わず、通信不安定の原因になります。
特に、盤外の長距離配線、可動部、ノイズ源の近くを通る配線では、ケーブル仕様を軽視してはいけません。
CC-Link IE系はEthernetケーブルのカテゴリを確認する
CC-Link IE系では、Ethernetケーブルを使う方式が中心になります。
ただし、事務所LAN用の安価なケーブルを何でも使ってよいわけではありません。
通信速度、シールド、可動部対応、屈曲寿命、耐油性、難燃性、屋外対応などを確認します。
制御盤内だけなら問題なくても、ロボット周辺やケーブルベア内では可動部対応ケーブルが必要になる場合があります。
配線経路も通信品質に影響する
CC-Linkの配線は、インバータ出力線、サーボモータ線、溶接機電源線などの強ノイズ源から離して敷設します。
やむを得ず交差する場合は、平行配線を避け、できるだけ直交させます。
盤内では、通信線と動力線を同じダクトに詰め込まないことも重要です。
通信トラブルはソフト設定だけでなく、配線設計と施工品質の影響を強く受けます。
9. 終端抵抗と通信トラブル
従来CC-Linkでは、終端抵抗の扱いが重要です。
終端抵抗は、通信線の端で信号が反射して波形が乱れるのを抑える役割を持ちます。
終端抵抗は「とりあえず付ける部品」ではない
終端抵抗は、ネットワークの両端に適切に取り付ける必要があります。
途中の局に誤って取り付けたり、片側だけ抜けていたりすると、通信が不安定になることがあります。
特に、設備改造で局を追加・撤去したあとに、ネットワークの端が変わっているのに終端抵抗位置を変えていないケースがあります。
通信異常の切り分け手順
| 確認項目 | よくある原因 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 局番 | 重複、設定漏れ | スイッチ設定、パラメータ設定を確認 |
| 通信速度 | 一部機器だけ設定不一致 | マスタ局とリモート局の条件を確認 |
| 終端抵抗 | 位置間違い、取り付け忘れ | ネットワーク両端を現物で確認 |
| ケーブル | 断線、シールド不良、代用品使用 | ケーブル仕様、導通、外観を確認 |
| ノイズ | インバータ線・溶接機・接地不良 | 配線経路、アース、発生タイミングを確認 |
「たまに止まる」通信異常ほど厄介
完全に通信できない場合は原因を見つけやすいですが、問題は「たまに通信異常になる」ケースです。
この場合、ノイズ、接触不良、可動部ケーブルの断線しかけ、温度変化、設備動作タイミングとの関係を疑います。
異常発生時刻、動いていた装置、インバータやサーボの動作状態、周辺設備の起動停止を記録して、再現条件を探ることが重要です。
10. CC-LinkとEthernet/IP・PROFINETの違い
CC-Linkは、日本国内や三菱PLC中心の設備でよく使われる産業用ネットワークです。
一方、EtherNet/IPやPROFINETは、海外設備や他社PLCを含む環境で使われることが多い産業Ethernetです。
代表的な違い
| 項目 | CC-Link/CC-Link IE | EtherNet/IP | PROFINET |
|---|---|---|---|
| よく見る環境 | 三菱PLC中心の設備 | Rockwell系、産業Ethernet設備 | Siemens系、欧州設備 |
| 基本思想 | CC-Linkファミリーで制御統合 | CIPベースの産業Ethernet | PROFINET IOを中心とした機器接続 |
| 設備例 | リモートI/O、サーボ、インバータ | PLC、ドライブ、リモートI/O | PLC、リモートI/O、ドライブ |
| 選定の軸 | PLCメーカー、既設資産、対応機器 | 制御機器の対応範囲 | 欧州系設備やSiemens親和性 |
PLCメーカーと保守体制で決まることが多い
産業ネットワークの選定は、技術仕様だけで決まるわけではありません。
保守担当者が扱えるPLC、社内標準、予備品、既設設備、海外拠点の標準などが大きく影響します。
EtherNet/IPとPROFINETの違いを含めて整理したい場合は、PROFINETの記事やEtherNet/IPの記事と比較すると判断しやすくなります。
混在環境ではゲートウェイも選択肢
工場内では、CC-Link系設備とEtherNet/IP系設備、PROFINET系設備が混在することがあります。
この場合、ゲートウェイやプロトコル変換器を使ってデータ連携する方法があります。
ただし、ゲートウェイを入れると、通信周期、データ更新タイミング、異常時の責任分界、診断方法が複雑になります。
制御の中核に入れるのか、監視・データ収集用途に限定するのかを明確にして設計します。
11. CC-LinkとOPC UA・MQTTの違い
CC-Linkは、基本的には設備制御に近い領域で使われるネットワークです。
一方、OPC UAやMQTTは、設備データを上位システムやクラウドへつなぐ場面で登場します。
制御用と情報連携用を分けて考える
CC-Linkは、PLCと現場機器の間で周期的な制御データをやり取りする用途に向いています。
OPC UAは、設備データを意味付きで上位システムへ連携する用途に向いています。
MQTTは、IoTデータを軽量に送るPublish/Subscribe型の通信に向いています。
それぞれ役割が違うため、どれか一つで工場内通信をすべて置き換えると考えるより、階層ごとに使い分けるほうが現実的です。
使い分けの目安
| 通信 | 得意なこと | 注意点 |
|---|---|---|
| CC-Link | PLCと現場機器の制御通信 | 上位連携の意味付けは別途設計が必要 |
| OPC UA | 設備データの標準化、上位連携 | ハードリアルタイム制御の代替ではない |
| MQTT | IoTデータの軽量配信、クラウド連携 | 制御停止に直結する通信には慎重な設計が必要 |
設備データ活用では連携設計が重要
たとえば、CC-LinkでリモートI/Oやドライブを制御し、PLCで集めた状態データをOPC UAやMQTTで上位へ送る構成があります。
このとき、どのデータを何秒周期で集めるか、異常時にどこで判定するか、履歴をどこに保存するかを決める必要があります。
上位連携の考え方を整理する場合は、OPC UAの記事やMQTTの記事もあわせて読むと、制御通信との役割分担が理解しやすくなります。
12. CC-Link導入時の設計ポイント
CC-Linkを導入するときは、対応機器を選ぶだけでは不十分です。
ネットワーク構成、通信点数、更新周期、配線経路、保守方法まで含めて設計する必要があります。
通信点数と局構成を先に決める
最初に決めるべきことは、どの機器をネットワークに接続し、どのデータをPLCで扱うかです。
入力点数、出力点数、ワードデータ、異常コード、パラメータ設定値などを一覧化します。
必要データが見えてから、リモート局の種類、占有点数、局番、通信周期を決めると、後戻りが少なくなります。
制御周期とデータ量のバランスを見る
通信ネットワークでは、接続機器が増えるほどデータ量が増えます。
すべてのデータを高速周期で更新しようとすると、通信負荷が増え、設計が複雑になります。
高速に必要な制御データと、低速でよい監視データを分けることが重要です。
たとえば、停止信号や位置到達信号は高速に扱い、温度履歴や稼働時間は低速周期で十分な場合があります。
保守時に読める設計にする
通信ネットワークは、立ち上げた人だけが理解できる状態にしてはいけません。
局番表、ケーブル接続図、IPアドレス表、ユニット型式、リモート入出力割付、異常時の確認手順を残しておくことが重要です。
保全担当者が夜間停止時に見るのは、理想的な設計思想ではなく、現物と図面が一致するかどうかです。
保守で困らないネットワーク設計こそ、実務では価値があります。
13. CC-Linkでよくある失敗例
CC-Linkの失敗は、規格そのものの問題というより、設計・配線・設定・保守の見落としで起きることが多いです。
代表的な失敗例を知っておくと、立ち上げ時のトラブルを減らせます。
失敗例1:種類を混同する
最も多いのは、CC-Link、CC-Link IE Field、CC-Link IE Field Basic、CC-Link IE TSNを一括りにしてしまうことです。
名称が似ているため、機器が対応していると思い込んで購入したら、実際には別方式だったというリスクがあります。
カタログの「CC-Link対応」という文字だけで判断せず、対応ネットワーク名を最後まで確認します。
失敗例2:ケーブルと終端抵抗を軽視する
通信トラブルでは、ソフト設定ばかり疑いがちです。
しかし実際には、ケーブルの種類、シールド処理、終端抵抗、コネクタの締結、配線経路が原因になることがあります。
特に、設備改造後に通信異常が出る場合は、追加配線や局追加によってネットワーク条件が変わっていないか確認します。
失敗例3:異常時の動作を決めていない
通信が途切れたとき、出力をOFFにするのか、直前値を保持するのか、安全側へ停止するのかを決めておく必要があります。
この設計が曖昧だと、通信異常時に機械が予期しない動きをするおそれがあります。
リモートI/Oやドライブの通信異常時動作、PLC側のインターロック、非常停止回路との関係を確認します。
安全設計では、通信だけに頼らず、必要に応じてハード回路や安全機器でリスクを下げます。
14. CC-Linkを選ぶ判断基準
CC-Linkを選ぶかどうかは、通信性能だけではなく、設備の標準化や保守性を含めて判断します。
特に、三菱PLCを中心にした工場では有力な選択肢になります。
CC-Linkが向くケース
- 三菱PLCを中心に設備を標準化している場合
- 既設設備にCC-Link資産が多い場合
- リモートI/Oやインバータを省配線で接続したい場合
- 国内設備で保全担当者がCC-Linkに慣れている場合
- CC-Link IE TSNを使って制御と情報を統合したい場合
別ネットワークも検討したほうがよいケース
- 海外設備でPROFINETやEtherNet/IPが標準になっている場合
- 既設上位システムとの接続がOPC UA中心の場合
- クラウド連携やIoTデータ配信がMQTT中心の場合
- 接続したい機器がCC-Linkファミリーに対応していない場合
- 社内標準PLCが三菱以外に統一されている場合
最終的には「設備標準」で決める
産業用ネットワークは、単独設備だけで最適化すると、工場全体の保守性が下がることがあります。
ある設備だけ特殊なネットワークを採用すると、予備品、教育、トラブル対応、図面標準が増えてしまいます。
そのため、ネットワーク選定では、通信速度だけでなく、工場標準、既設資産、将来の更新方針まで含めて判断することが重要です。
15. よくある質問
Q1. CC-LinkとCC-Link IEは同じものですか?
同じCC-Linkファミリーですが、同じものではありません。
従来CC-Linkはフィールドネットワークとして長く使われてきた方式で、CC-Link IEはEthernetベースで高速・大容量化した系列です。
ケーブル、通信速度、対応機器、設定方法が異なるため、必ず機器仕様で確認してください。
Q2. CC-Link IE TSNは何が新しいのですか?
CC-Link IE TSNは、TSN技術によりリアルタイム制御と情報通信の混在を実現しやすくした点が特徴です。
モーション制御、リモートI/O、設備データ収集を一つの方向で統合したいスマートファクトリー用途に向いています。
Q3. CC-Linkの終端抵抗はなぜ必要ですか?
通信線の端で信号が反射し、波形が乱れるのを抑えるためです。
終端抵抗の位置が間違っていると、通信が不安定になることがあります。
設備改造で局を追加・撤去したときは、ネットワークの両端が変わっていないか確認します。
Q4. CC-Link IE Field Basicは普通のEthernetと同じですか?
汎用Ethernet技術を活用しますが、普通の事務所LANと同じ意味ではありません。
PLC側の通信設定、局管理、データ割付、対応機器の確認が必要です。
高速モーション制御が必要な場合は、CC-Link IE FieldやCC-Link IE TSNのほうが適することがあります。
Q5. 三菱PLCなら必ずCC-Linkを選ぶべきですか?
必ずではありません。
三菱PLCではCC-Linkファミリーが選びやすい場面は多いですが、接続先機器、既設ネットワーク、海外拠点標準、上位システム連携によっては、EtherNet/IP、PROFINET、OPC UA、MQTTなども検討対象になります。
16. まとめ
CC-Linkは、PLCと現場機器をつなぐ産業用ネットワークとして、国内製造業で多く使われてきた通信方式です。
ただし、現在は従来CC-Linkだけでなく、CC-Link IE Field、CC-Link IE Field Basic、CC-Link IE TSNなど複数の方式があり、名称だけで判断すると選定ミスにつながります。
既設設備では、ケーブル、終端抵抗、局番、通信速度、ノイズ対策を丁寧に確認することが重要です。
新規設備では、CC-Link IE系やCC-Link IE TSNを含めて、制御周期、データ量、上位連携、保守性を考慮して選定します。
CC-Linkを正しく使うポイントは、「三菱系の通信」と雑に覚えることではありません。
従来CC-Link、CC-Link IE、TSN、Ethernet系ネットワーク、上位連携用プロトコルの役割を分けて理解し、自社設備に合ったネットワーク構成を設計することです。