
CFDの画面に美しい流線と色分けが出ても、その結果が現実に近いとは限らず、前提確認が必要です。
流体解析は、試作前に空気や水の流れ、圧力損失、温度分布、熱だまりを予測できる強力な手法です。
一方で、メッシュ、乱流モデル、境界条件を誤ると、見栄えのよい誤差結果が簡単に作れてしまいます。
特に圧力損失や温度上昇の判断では、数%の差がポンプ選定、ファン容量、冷却設計や実機評価にも大きく影響します。
本記事では、CFDの仕組み、支配方程式、メッシュ、乱流モデル、境界条件、解析手順、結果検証まで実務目線で解説します。
- 1. CFD流体解析とは何か
- 2. CFDが解く支配方程式
- 3. 離散化と有限体積法の考え方
- 4. メッシュの基礎:精度を決める計算格子
- 5. 流れの種類と乱流モデル
- 6. 境界条件と物性値の設定
- 7. 解析手順と結果の見方
- 8. まとめ
1. CFD流体解析とは何か
CFDは、Computational Fluid Dynamicsの略で、日本語では数値流体力学や流体解析と呼ばれます。
対象は空気、水、油、蒸気などの流体で、速度、圧力、温度、濃度の分布を計算します。
構造解析が部品の変形や応力を見るのに対し、CFDは流れ方と熱の運ばれ方を見ます。
CFDの本質は、流体を小さな計算セルに分け、各セルで保存則を満たす状態を探すことです。
数値流体力学としての位置づけ
流体の運動は、質量保存、運動量保存、エネルギー保存という物理法則に従います。
これらを微分方程式で表したものが、CFDで解く支配方程式です。
ただし、実際の部品形状や乱流を含む流れでは、方程式を紙の上で厳密に解くことはほぼできません。
そこで、解析領域をセルに区切り、連続的な方程式を計算機で扱える代数方程式に変換します。
この変換を離散化と呼び、有限体積法、有限要素法、有限差分法などが使われます。
工業製品の内部流れや外部流れでは、保存則をセル単位で扱いやすい有限体積法が広く使われます。
CFDは単なる可視化ツールではなく、物理法則を近似して設計判断に使うCAEの一分野です。
CFDで得られる結果と設計判断
CFDでは、流速ベクトル、圧力分布、温度分布、乱流量、壁面せん断応力などが得られます。
流線やコンター図を見ると、流れの合流、渦、はく離、よどみ領域を直感的に確認できます。
数値としては、圧力損失、流量配分、抗力、揚力、伝熱量、温度上昇などを評価できます。
たとえば、配管では圧力損失が過大でポンプ能力に余裕があるかを見ます。
電子機器では、部品表面温度が許容値を超えないか、熱だまりが発生しないかを確認します。
車両やファンでは、抵抗、騒音の原因になる渦、吸込口の偏流などを事前に把握できます。
| 評価量 | CFDで見る内容 | 実務での判断例 |
|---|---|---|
| 流速分布 | 速い領域、遅い領域、逆流領域 | 偏流、滞留、洗浄不足の確認 |
| 圧力分布 | 圧力降下、局所的な負圧 | ポンプ選定、キャビテーション余裕 |
| 温度分布 | 熱だまり、冷却風の到達範囲 | 電子部品、金型、熱交換器の温度確認 |
| 壁面量 | 壁面せん断応力、熱流束 | 摩擦、汚れ付着、伝熱性能の評価 |
このように、CFDは「流れが見える」だけでなく、設計値を比較して意思決定するために使います。
ただし、結果は入力条件とモデル化の影響を受けるため、実測値や手計算との照合が欠かせません。
2. CFDが解く支配方程式
CFDの計算は、見た目にはソフトウェア操作ですが、中身は保存則の計算です。
どの物理量を保存させるかを理解すると、結果の意味と限界が見えやすくなります。
代表的な支配方程式を整理すると、次のようになります。
| 方程式 | 表す保存則 | 主な出力・関係量 |
|---|---|---|
| 連続の式 | 質量保存 | 流量、密度、速度場のつり合い |
| ナビエ・ストークス方程式 | 運動量保存 | 速度、圧力、粘性力、外力 |
| エネルギー方程式 | エネルギー保存 | 温度、熱流束、対流・伝導 |
連続の式:流量のつり合い
連続の式は、流体の質量が勝手に増えたり消えたりしないことを表します。
非圧縮性流体で密度が一定なら、入口から入った体積流量と出口から出る体積流量がつり合います。
代表的な非圧縮性流れでは、速度ベクトル を用いて次の形で表せます。
配管で断面積が変わると、連続の式により狭い部分では流速が上がります。
これは、流量 が断面積
と平均流速
の積で表されるためです。
入口流量と出口流量が大きくずれる場合、境界条件、メッシュ、収束状態のどこかに問題がある可能性があります。
そのため、CFDの検算では、まず質量収支の誤差を確認するのが基本です。
ナビエ・ストークス方程式:圧力と速度の関係
ナビエ・ストークス方程式は、流体の運動量保存を表す中心的な式です。
速度が変化する原因を、圧力勾配、粘性力、重力などの外力として表します。
非圧縮性ニュートン流体の代表形は、次のように書けます。
ここで、 は密度、
は圧力、
は粘度、
は重力加速度です。
左辺は流れの加速、右辺は流れを動かす力と抵抗を表します。
圧力が高い側から低い側へ流れ、壁との摩擦でエネルギーが失われる様子もこの式に含まれます。
流れが乱流になると、速度の細かなゆらぎまで直接解くことが難しくなります。
そのため、実務CFDでは乱流モデルを使い、ゆらぎの影響を平均場に組み込みます。
エネルギー方程式:温度と熱移動
温度分布を求める場合は、エネルギー方程式も解く必要があります。
熱は、流体に乗って運ばれる対流と、温度差で広がる伝導によって移動します。
簡略化した温度輸送の式は、次のような形で考えられます。
ここで、 は定圧比熱、
は温度、
は熱伝導率、
は発熱量です。
ファン冷却、熱交換器、金型温調、炉内加熱では、この式の扱いが重要になります。
温度が大きく変わる場合、密度や粘度も温度依存にする必要があります。
空気の自然対流では、温度差による密度差が浮力を生み、流れそのものを変化させます。
熱解析を伴うCFDでは、流れだけでなく物性値の設定も結果を大きく左右します。
3. 離散化と有限体積法の考え方
支配方程式は連続的な空間と時間で書かれていますが、コンピュータは有限個の数値しか扱えません。
そのため、解析領域をセルに分け、各セルの代表値として速度や圧力を計算します。
この操作が離散化であり、CFDの精度と安定性を決める土台になります。
セルごとの保存則で解く有限体積法
有限体積法では、各セルを小さな検査体積として扱います。
セル面を通って入る質量、運動量、エネルギーと、出ていく量の収支を計算します。
この考え方は、配管やタンクで入出力のつり合いを見る感覚に近いです。
有限体積法の強みは、セルごとの保存則を明示的に扱いやすい点にあります。
たとえば、あるセルに入る流量が多く、出る流量が少なければ、そのセル内の値は変化します。
反復計算により、すべてのセルで収支のずれが小さくなる状態を探します。
この収支のずれを残差と呼び、収束判定の重要な手がかりにします。
ただし、残差が小さいだけでは、物理的に正しい結果とは限りません。
境界条件や物性値が間違っていれば、計算はきれいに収束しても現実とは合いません。
時間刻みとCFL条件の意味
非定常解析では、時間も小さな刻みに分けて計算します。
時間刻みが大きすぎると、流れの変化を追いきれず、計算が不安定になったり精度が落ちたりします。
時間刻みの目安として、クーラン数と呼ばれる無次元数がよく使われます。
は代表流速、
は時間刻み、
はセル寸法です。
クーラン数は、1つの時間刻みで流れがセルをどれだけ進むかを表します。
陽解法では小さなクーラン数が必要になり、陰解法でも大きすぎる時間刻みは精度低下の原因になります。
周期的な渦や脈動流を見たい場合、時間刻みは現象の周期に対して十分細かく設定します。
定常解析でも、疑似時間刻みや緩和係数が大きすぎると発散しやすくなります。
CFDでは「計算が速い設定」よりも、「物理を追える設定」を優先することが重要です。
4. メッシュの基礎:精度を決める計算格子
メッシュは、CFD結果の精度を左右する最重要要素の一つです。
粗すぎるメッシュでは流れの変化を平均化してしまい、細かすぎるメッシュでは計算時間が過大になります。
メッシュ設計では、全体を均一に細かくするのではなく、変化が大きい場所を重点的に細かくします。
構造格子・非構造格子・ポリヘドラル格子
構造格子は、セルが規則正しく並ぶメッシュです。
計算効率が高く、流れ方向に沿わせやすいため、単純形状や研究用の基礎解析で有利です。
非構造格子は、三角形、四面体、プリズムなどを組み合わせて自由に領域を分割します。
複雑なCAD形状に対応しやすく、実務の機械部品や配管部品ではよく使われます。
ポリヘドラル格子は、多面体セルを使う方式で、同程度のセル数でも安定性や精度が得やすい場合があります。
ただし、どの格子が常に最良というわけではなく、形状、流れ、ソルバーの特性で適性が変わります。
| メッシュ種類 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 構造格子 | 規則的で計算効率が高い | 複雑形状への追従が難しい |
| 非構造格子 | 複雑形状を分割しやすい | セル品質のばらつきに注意する |
| 境界層メッシュ | 壁近傍を層状に細かくする | y+と成長率の管理が必要になる |
| ポリヘドラル格子 | 多面体セルで接続性が高い | 対応ソルバーと生成品質を確認する |
メッシュ品質では、セルのゆがみ、アスペクト比、最小角、体積変化率などを確認します。
流路の急拡大、曲がり、羽根端、狭いすき間では、局所的に細分化する設計が必要です。
境界層メッシュとy+の管理
壁面近くでは、粘性の影響により速度が急激に変化します。
この壁近傍の薄い領域を境界層と呼び、摩擦抵抗や伝熱を決める重要な領域です。
境界層を捉えるため、壁に沿って薄いプリズム層やインフレーション層を入れます。
壁面第一セルの位置を判断する代表指標が、無次元壁距離のy+です。
y+は、摩擦速度 、壁からの距離
、動粘性係数
を使って表されます。
壁関数を使う高レイノルズ数型の解析では、第一セルを対数領域に置くため、y+をおおむね30から300に管理します。
一方、壁面近傍を解像する低レイノルズ数型やSST系の設定では、y+を1前後に近づけます。
y+が不適切だと、摩擦係数、圧力損失、熱伝達率の誤差が大きくなります。
特に伝熱解析では、温度境界層も関係するため、壁面メッシュの粗さが結果へ直結します。
メッシュの基本的な収束確認は、構造解析と同じく段階的な細分化で確認します。
要素サイズと収束判定の考え方は、CAE解析における要素サイズと収束判定でも詳しく整理しています。
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5. 流れの種類と乱流モデル
CFDで結果が大きく変わる要因の一つが、層流と乱流の扱いです。
低速で粘性が支配的な流れは層流になり、速度が高く慣性が支配的になると乱流になりやすくなります。
乱流では大小さまざまな渦が生まれ、混合、抵抗、伝熱が大きく変化します。
レイノルズ数による層流・乱流の判断
流れの状態を判断する基本指標がレイノルズ数です。
レイノルズ数は、慣性力と粘性力の比を表す無次元数です。
代表長さ 、代表流速
、密度
、粘度
を使うと次式になります。
円管内流れでは、目安として で層流、
で遷移域、
で乱流と扱います。
ただし、この境界は円管内の代表的な目安であり、外部流れ、曲がり流路、入口乱れ、表面粗さで変わります。
たとえば、ファン出口や急拡大流路では、局所的なはく離や渦が強く、単純なレイノルズ数だけでは判断できません。
レイノルズ数の基礎と計算方法は、レイノルズ数の判定基準も参考になります。
動粘性係数を使った単位換算は、動粘性係数の求め方と合わせて確認すると理解しやすくなります。
RANS・LES・DNSの使い分け
乱流をどこまで直接計算するかにより、代表的な手法はRANS、LES、DNSに分かれます。
RANSは、乱流の時間平均場を解き、渦の細かなゆらぎをモデル化します。
計算負荷が比較的軽く、ポンプ、配管、車両外流、電子機器冷却などの実務で広く使われます。
LESは、大きな渦を直接解き、小さな渦だけをモデル化する方法です。
非定常な渦構造を見やすい一方、壁近傍や高レイノルズ数流れではメッシュと計算時間が大きくなります。
DNSは、乱流のすべてのスケールを直接解く方法です。
物理的には最も忠実ですが、工業製品サイズの高レイノルズ数流れには計算負荷が大きすぎます。
| 手法 | 考え方 | 実務での位置づけ |
|---|---|---|
| RANS | 乱流を時間平均し、全渦スケールをモデル化する | 実務の標準。速度、圧力損失、平均温度の評価に使う |
| LES | 大きな渦を解き、小さな渦をモデル化する | 非定常渦、混合、騒音評価で有利な場合がある |
| DNS | 乱流の全スケールを直接解く | 研究用途が中心。一般設計では負荷が大きい |
乱流モデルを選ぶときは、平均値が欲しいのか、非定常渦を見たいのかを先に決めます。
RANSで得た滑らかな結果は、乱流の瞬間的な渦をそのまま見ているわけではありません。
圧力損失や平均温度の比較ならRANSで足りることが多く、音や非定常混合を見るならLES系を検討します。
6. 境界条件と物性値の設定
CFDで最も多い失敗は、ソルバー操作ではなく、境界条件と物性値の設定ミスです。
同じメッシュと同じ乱流モデルでも、入口流量、出口圧力、壁面条件が変われば結果は大きく変わります。
解析モデルは、実機の運転条件をどこまで正しく表しているかで価値が決まります。
解析領域の切り方:境界を現象から離す
境界条件は、実物の入口や出口をそのまま切ればよいとは限りません。
境界を渦や逆流の近くに置くと、ソフトが設定した圧力や速度が流れ場を不自然に固定します。
配管やダクトでは、急拡大、曲がり、障害物の直後に出口境界を置かず、下流に助走区間を追加します。
目安として、代表長さDに対して数Dから10D程度離すと、逆流や圧力反射の影響を小さくできます。
外部流れでは、物体前方、側方、後方の境界を十分遠ざけ、壁の近さで抗力が変わらないか確認します。
解析領域の切り方はメッシュ数にも効くため、広げる場所と削る場所を目的量に合わせて決めます。
入口・出口・壁面条件の考え方
入口条件では、流速、流量、質量流量、圧力、温度、乱流強度などを設定します。
たとえば送風ファン出口を入口境界にする場合、単純な一様速度では実機の偏流を表せない場合があります。
出口条件では、圧力出口を使うことが多いですが、逆流が発生する位置に出口を置くと不安定になります。
逆流がある場合は、出口を下流へ延長し、流れが十分発達した位置に境界を置くと安定しやすくなります。
壁面条件では、すべりなし条件が基本で、壁面速度はゼロとして扱います。
伝熱解析では、壁面温度、熱流束、熱伝達境界、固体との連成条件を選びます。
| 境界条件 | 設定する代表量 | よくあるミス |
|---|---|---|
| 入口 | 流速、流量、温度、乱流強度 | 実機の偏流や温度むらを一様条件にする |
| 出口 | 静圧、流出条件、逆流温度 | 逆流領域の直近に出口を置く |
| 壁面 | すべりなし、粗さ、熱条件 | 粗さや接触熱抵抗を無視する |
| 対称面 | 法線方向速度ゼロ、勾配ゼロ | 対称でない流れに安易に使う |
流量を指定した入口と圧力を指定した出口を組み合わせると、圧力損失を比較しやすくなります。
逆に、入口と出口の両方に圧力条件を置く場合は、流量が結果として決まるため、実機条件との整合を確認します。
配管系の圧力損失評価では、圧力損失の計算式による手計算も併用すると、CFD結果の桁違いを早期に検出できます。
密度・粘度・熱物性の影響
物性値は、CFD結果を支配する入力値です。
密度が変われば慣性力と圧力損失が変わり、粘度が変わればレイノルズ数と境界層の厚さが変わります。
空気の密度や粘度は温度で変化するため、高温流れでは一定物性の仮定が誤差原因になります。
水や油の粘度も温度依存が大きく、低温時の圧力損失が想定より大きくなることがあります。
自然対流では、温度差による密度変化を浮力として扱う必要があります。
小さな温度差ならブシネスク近似を使う場合がありますが、大きな温度差では圧縮性や温度依存物性を検討します。
伝熱解析では、比熱、熱伝導率、発熱量、放射率の入力も重要です。
強制対流と自然対流が混在する場合、速度場と温度場が相互に影響するため、単純な境界条件では合わないことがあります。
熱伝達率の基礎は、熱伝達率と熱伝導率の違いを確認すると整理しやすくなります。
7. 解析手順と結果の見方
CFDは、CADを読み込んで計算ボタンを押すだけではありません。
実務では、解析目的、モデル化範囲、境界条件、メッシュ、計算設定、検証方法を順番に決めます。
手順を飛ばすと、後から結果の説明ができず、設計判断に使えない解析になります。
前処理・求解・後処理の流れ
前処理では、解析目的を決め、CAD形状を整理し、流体領域を作ります。
ボルト穴や微小面取りなど、流れに効かない細部は削除して計算を安定させます。
ただし、狭いすき間、羽根端、ノズル出口、急拡大部などは流れに効くため安易に消せません。
次に、メッシュを作成し、入口、出口、壁面、対称面などの境界条件を割り当てます。
求解では、定常か非定常か、層流か乱流か、熱を解くかを設定します。
後処理では、コンター図や流線だけでなく、積分値、平均値、最大値、収支を確認します。
たとえば、入口流量と出口流量、入口全圧と出口全圧、発熱量と放熱量のつり合いを見ます。
流速コンターは見栄えが良いため説得力がありますが、設計判断には数値化した指標が必要です。
ピトー管のように動圧と静圧から流速を考える測定原理は、ピトー管の流速計算と関連します。
残差と物理量モニタの確認
残差は、各方程式の収支ずれが反復計算でどれだけ小さくなったかを示す指標です。
実務では、連続の式、速度成分、エネルギー、乱流量などの残差を監視します。
目安として、流れだけの定常解析では残差が3桁から5桁程度低下しているかを確認します。
ただし、残差だけで収束を判断するのは危険です。
圧力損失、流量、抗力、平均温度、最大温度など、目的の物理量が安定しているかも見ます。
残差が下がっていても、圧力損失がまだ変動しているなら、設計値として採用しにくいです。
非定常解析では、単純に一定値へ収束するのではなく、周期的な変動が安定しているかを確認します。
渦放出や脈動流では、十分な時間を計算し、最後の数周期で平均値や振幅を評価します。
CFDの収束は「計算が止まったこと」ではなく、「目的量が判断可能な状態になったこと」です。
メッシュ依存性と検証の進め方
CFD結果は、メッシュの細かさに依存します。
そのため、粗いメッシュ、中間メッシュ、細かいメッシュの3条件で主要結果を比較します。
圧力損失、抗力、最大温度などの目的量がほぼ変わらなくなれば、メッシュ依存性が小さいと判断できます。
重要部位だけ局所的に細かくしても、上流の偏流や下流の逆流を粗く扱うと全体結果がずれることがあります。
検証では、手計算、経験式、実測値、過去機種のデータと比較します。
たとえば、配管の圧力損失ならダルシー・ワイスバッハ式、流量計ならベルヌーイ式で概算します。
ベルヌーイ式の考え方は、ベルヌーイの定理と合わせて見ると理解しやすいです。
キャビテーションが疑われるポンプや絞りでは、最低圧力と飽和蒸気圧、NPSH余裕を確認します。
流れの局所的な負圧や気泡発生の考え方は、キャビテーションの発生原因にもつながります。
CFDは実験を完全に置き換えるものではなく、実験前の候補絞り込みと原因理解を強くする道具です。
簡易検算:配管流れでCFDの妥当性を見る
CFD結果を信頼するには、代表条件で手計算と比較する習慣が有効です。
たとえば、内径50mm、長さ10mの直管に、20℃程度の水を1m/sで流す条件を考えます。
水の動粘性係数を とすれば、レイノルズ数は約50000です。
これは明らかに乱流域であり、層流モデルのまま計算すると圧力損失を大きく外す可能性があります。
管摩擦係数を仮に0.02と置くと、ダルシー・ワイスバッハ式による直管損失は約2000Paになります。
この条件でCFD結果が200Paや20000Paになるなら、入口発達長、壁面粗さ、メッシュ、乱流モデルを疑います。
もちろん、エルボ、バルブ、急拡大、入口形状がある場合は、局所損失を含めて比較する必要があります。
重要なのは、CFD結果の絶対値を単独で信じず、桁感が合っているかを早い段階で確認することです。
8. まとめ
CFD流体解析とは、流体の支配方程式を離散化し、速度、圧力、温度などを数値的に求める手法です。
連続の式は質量保存、ナビエ・ストークス方程式は運動量保存、エネルギー方程式は熱移動を表します。
実務CFDでは、有限体積法によりセルごとの収支を計算し、反復計算で残差を小さくします。
メッシュは精度を決める重要要素で、特に壁近傍では境界層メッシュとy+の管理が欠かせません。
層流と乱流の判断にはレイノルズ数を使い、実務ではRANS、必要に応じてLESを使い分けます。
入口、出口、壁面、物性値の設定が不適切だと、収束しても現実と合わない結果になります。
解析後は、コンター図だけでなく、圧力損失、流量収支、温度収支、メッシュ依存性を確認します。
CFDを設計に使う価値は、きれいな画像ではなく、根拠を持って設計変更を判断できる点にあります。