
「抵抗が何本もつながった回路を、どう計算すればいいのかわからない」
電気回路を学ぶうえで、多くの方が次にぶつかるのがこの壁です。
その鍵を握るのが、本記事のテーマである合成抵抗の考え方です。
合成抵抗とは、複数の抵抗を「1つの抵抗」とみなして扱うための方法で、これがわかると複雑な回路も一気に見通しよく解けるようになります。
本記事では、直列接続と並列接続の合成抵抗の公式から、具体的な計算例、直列と並列が混在した回路の解き方、ブリッジ回路で使うスターデルタ変換、そして実務での使いどころまでを、数式と図表で体系的に解説します。
- 1. 合成抵抗とは|複数の抵抗を1つにまとめる考え方
- 2. 直列接続の合成抵抗
- 3. 並列接続の合成抵抗
- 4. 直列と並列の比較
- 5. 直列と並列が混在する回路の解き方
- 6. スターデルタ変換|ブリッジ回路への対応
- 7. 実務での合成抵抗|分圧回路とセンサ
- まとめ
1. 合成抵抗とは|複数の抵抗を1つにまとめる考え方
合成抵抗とは、回路内にある複数の抵抗を、同じ働きをする1つの抵抗に置き換えたときの抵抗値のことです。
英語では combined resistance あるいは equivalent resistance(等価抵抗)と呼ばれます。
複数の抵抗をまとめて1つとみなせれば、回路全体を「電源と1つの抵抗」という最も単純な形に簡略化できます。
そうすれば、回路全体に流れる電流を一度の計算で求められるようになります。
抵抗のつなぎ方には、大きく分けて直列接続と並列接続の2種類があります。
どちらでまとめるかによって計算方法がまったく異なるため、まずこの2つを区別することが出発点になります。
1-1. なぜ合成抵抗を使うのか
合成抵抗を使う最大の目的は、複雑な回路を段階的に単純化して解くことにあります。
抵抗が10本ある回路でも、直列部分と並列部分を順番にまとめていけば、最終的にはたった1つの抵抗に集約できます。
1つにまとまれば、あとは電源電圧を合成抵抗で割るだけで全体電流が求まります。
そこから逆にたどっていけば、各抵抗に流れる電流や加わる電圧も計算できます。
つまり合成抵抗は、複雑な回路を「解ける形」に翻訳するための基本ツールなのです。
回路解析の第一歩として、必ず身につけておきたい考え方です。
1-2. オームの法則との関係
合成抵抗の計算は、すべてオームの法則が土台になっています。
直列でも並列でも、各抵抗にかかる電圧と流れる電流の関係は、つねにオームの法則で結ばれています。
合成抵抗の公式は、このオームの法則と「電流・電圧の保存則」を組み合わせて導かれたものです。
公式を丸暗記するのではなく、オームの法則から導かれていると理解しておくと応用が利きます。
1-3. 直列と並列の見分け方
計算に入る前に、どの抵抗が直列でどれが並列なのかを正しく見分けることが重要です。
見分けの基準はシンプルで、電流の流れ方に注目します。
1本の道のように、枝分かれせずに電流が一続きに流れるなら直列です。
途中で道が枝分かれし、電流が複数の経路に分かれて流れるなら並列です。
もう一つの見分け方として、2つの抵抗の両端が完全に共通の2点につながっていれば並列、と判断する方法もあります。
回路図が複雑なときは、抵抗の両端がどの節点につながっているかを丁寧に追うと、直列か並列かを確実に判別できます。
1-4. 合成抵抗が変える「全体の流れやすさ」
合成抵抗は、回路全体の電流の流れやすさを一言で表す指標とも言えます。
合成抵抗が大きいほど、同じ電源電圧でも流れる電流は小さくなります。
逆に合成抵抗が小さいほど、大きな電流が流れます。
つまり、抵抗をどうつなぐかは「回路全体にどれだけ電流を流すか」を設計することにほかなりません。
直列で抵抗を増やせば電流を絞れ、並列で増やせば電流を流しやすくできます。
合成抵抗を意識すると、つなぎ方そのものが電流量の調整手段だと見えてきます。
2. 直列接続の合成抵抗
抵抗を一列に、枝分かれなくつないだ接続を直列接続と呼びます。
豆電球を数珠つなぎにした回路が、直列接続の典型的なイメージです。
2-1. 直列の合成抵抗の公式
直列接続では、合成抵抗は各抵抗の単純な和になります。
抵抗を直列に増やすほど、電流にとっての通り道が長くなり、流れにくくなります。
そのため合成抵抗は、つないだ抵抗の中で必ず最大の抵抗より大きくなります。
2-2. 直列の計算例
10Ω、20Ω、30Ωの3つの抵抗を直列につないだ場合の合成抵抗を求めてみます。
このように、直列の合成抵抗は足し算だけで求められます。
計算が最もやさしいのが直列接続の特徴です。
2-3. 直列接続の電流と電圧
直列接続では、すべての抵抗に同じ大きさの電流が流れます。
一方で、各抵抗にかかる電圧は、その抵抗値に比例して分かれます。
この「電圧が抵抗比で分かれる」性質を分圧と呼びます。
2つの抵抗の場合、一方にかかる電圧は次式で求められます。
大きい抵抗ほど大きな電圧を負担することが、この式から読み取れます。
分圧は、必要な電圧を作り出す回路などに広く使われる重要な考え方です。
2-4. 電池やケーブルの内部抵抗も直列で考える
直列の考え方は、目に見える抵抗器だけでなく、電池やケーブルがもつ内部抵抗にも当てはまります。
電池には必ずわずかな内部抵抗があり、これは負荷の抵抗と直列につながっているとみなせます。
そのため、電流を多く流すほど内部抵抗での電圧降下が増え、端子に現れる電圧は下がります。
起電力を 、内部抵抗を
とすると、端子電圧は次式で表されます。
電池を使うと電圧が少し下がって感じられるのは、この内部抵抗による電圧降下が原因です。
合成抵抗の感覚を持っておくと、こうした現象も同じ枠組みで説明できます。
3. 並列接続の合成抵抗
抵抗を枝分かれさせて、両端どうしを共通につないだ接続を並列接続と呼びます。
家庭のコンセントに複数の家電をつなぐのは、すべて並列接続です。
3-1. 並列の合成抵抗の公式
並列接続では、合成抵抗の逆数が各抵抗の逆数の和になります。
抵抗を並列に増やすほど、電流の通り道が増えて流れやすくなります。
そのため合成抵抗は、つないだ抵抗の中で必ず最小の抵抗より小さくなります。
3-2. 2つの抵抗なら「和分の積」
抵抗が2つだけの並列なら、逆数を使わずに計算できる簡略式が便利です。
分子が積、分母が和になることから「和分の積」と呼ばれます。
実務で最も登場頻度が高い形なので、覚えておくと計算が速くなります。
3-3. 並列の計算例
30Ωと60Ωの2つの抵抗を並列につないだ場合を、和分の積で求めてみます。
合成抵抗は20Ωとなり、最小の30Ωよりさらに小さくなりました。
並列にすると合成抵抗が下がる、という性質が計算からも確認できます。
なお、同じ抵抗値をn個並列にした場合は、合成抵抗は1個の抵抗値をnで割った値になります。
例えば30Ωを3個並列にすると、合成抵抗は10Ωです。
3-4. 並列接続の電流と電圧
並列接続では、すべての抵抗に同じ大きさの電圧が加わります。
一方で、電流は各抵抗の抵抗値に応じて分かれて流れます。
この「電流が分かれる」性質を分流と呼びます。
抵抗が小さい枝ほど多くの電流が流れる、という関係になります。
2つの抵抗の場合、一方に流れる電流は次式で求められます。
自分の抵抗ではなく相手側の抵抗が分子に来る点に注意が必要です。
抵抗が小さいほど電流が多く流れる、という直感とこの式は一致します。
3-5. コンダクタンスで考えると並列は足し算になる
並列の逆数計算が面倒に感じる場合は、コンダクタンスという考え方が役立ちます。
コンダクタンス は抵抗の逆数で、電流の流れやすさを表す量です。単位はジーメンス(S)です。
コンダクタンスを使うと、並列回路の合成は単純な足し算になります。
つまり「並列はコンダクタンスの和」と覚えれば、直列の抵抗の和と対称的に理解できます。
最後に合成コンダクタンスの逆数をとれば、合成抵抗に戻せます。
3-6. 3つ以上の並列の計算例
抵抗が3つ以上の並列では、和分の積は使えないため、逆数の和で計算します。
20Ω、30Ω、60Ωの3つを並列につないだ場合を求めてみます。
分母を60にそろえると、右辺は となります。
逆数をとると、合成抵抗は10Ωと求まります。
最小の20Ωよりさらに小さくなっており、並列の性質と一致していることが確認できます。
4. 直列と並列の比較
直列接続と並列接続の違いを、表にまとめて整理します。
| 項目 | 直列接続 | 並列接続 |
|---|---|---|
| 合成抵抗 | 各抵抗の和 | 逆数の和(2個なら和分の積) |
| 合成抵抗の傾向 | 最大の抵抗より大きい | 最小の抵抗より小さい |
| 電流 | どの抵抗も同じ | 抵抗ごとに分かれる(分流) |
| 電圧 | 抵抗値に応じて分かれる(分圧) | どの抵抗も同じ |
| 1つ断線すると | 回路全体が切れる | 他の枝は流れ続ける |
| 身近な例 | 直列つなぎの乾電池 | 家庭用コンセント |
「直列は電流が共通、並列は電圧が共通」という対比が、すべての計算の出発点になります。
この一点を押さえておけば、どちらの公式を使うべきか迷うことはありません。
5. 直列と並列が混在する回路の解き方
実際の回路は、直列と並列が組み合わさっていることがほとんどです。
こうした複合回路も、部分ごとにまとめていけば必ず解けます。
5-1. 解き方の手順
複合回路は、次の手順で内側から順にまとめていきます。
- まず明らかに並列になっている部分を、合成抵抗にまとめる
- 次にその合成抵抗と直列につながる抵抗を、足し合わせる
- これを繰り返し、最終的に回路全体を1つの抵抗にする
- 全体の合成抵抗から、オームの法則で全体電流を求める
ポイントは、必ず「まとめられる部分」から手をつけることです。
一度にすべてを計算しようとせず、部分ごとに段階的に進めるのがコツです。
5-2. 複合回路の計算例
20Ωと30Ωが並列になった部分に、14Ωが直列につながった回路を考えます。
まず並列部分を和分の積でまとめます。
次に、この12Ωと直列の14Ωを足し合わせます。
これで回路全体の合成抵抗は26Ωと求められました。
並列を先にまとめ、その結果を直列で足す、という二段階で解けることがわかります。
5-3. 全体電流から各枝の電流を求める
合成抵抗が求まったら、逆にたどって各部の電流や電圧も計算できます。
先ほどの回路(並列部12Ω+直列14Ω=合計26Ω)に、52Vの電源をつないだ場合を考えます。
まず全体電流は、オームの法則から求まります。
この2Aが14Ωの抵抗と並列部の両方を流れます。並列部にかかる電圧は次のとおりです。
並列の20Ωと30Ωには同じ24Vが加わるため、それぞれの電流は A、
A となります。
2つの電流の合計が全体電流2Aと一致することも、検算として確認できます。
6. スターデルタ変換|ブリッジ回路への対応
直列と並列のまとめ方だけでは解けない回路もあります。
その代表が、抵抗が三角形や星形に組まれたブリッジ回路です。
6-1. 変換が必要になる場面
ブリッジ回路では、どの抵抗どうしが直列でどれが並列なのかを単純に判別できません。
このような回路を解くために使うのが、スターデルタ変換(Y-Δ変換)です。
三角形(デルタ)状の3抵抗を、等価な星形(スター)状の3抵抗に置き換える手法です。
形を変えることで、直列・並列のまとめ方が使える回路に作り替えられます。
6-2. デルタからスターへの変換式
デルタ結線の3抵抗を、スター結線の3抵抗に変換する式は次のとおりです。
各スター抵抗は、その端子につながる2つのデルタ抵抗の積を、3抵抗の和で割って求めます。
残りの2つも、同じ規則で添字を入れ替えて計算します。
少し複雑に見えますが、規則性があるため一度覚えれば機械的に適用できます。
ブリッジ回路を解く際の強力な武器になります。
6-3. スターからデルタへの逆変換
逆に、スター結線をデルタ結線へ変換したい場面もあります。
スターの3抵抗からデルタの抵抗を求める式は、次の形になります。
分子は3抵抗の積の和で共通、分母は注目する辺の「向かい側」のスター抵抗です。
デルタからスターへの変換とあわせて覚えておくと、どちら向きにも対応できます。
これらの変換を使えば、単純な直列・並列に分解できない回路も、解ける形に作り替えられます。
ブリッジ回路や三相回路の解析で、実際に活躍する手法です。
6-4. ホイートストンブリッジの平衡条件
ブリッジ回路の中でも、抵抗測定に使われるホイートストンブリッジには便利な性質があります。
4つの抵抗を菱形に配置し、中央に検出器をつないだ回路で、ある条件のとき中央に電流が流れなくなります。
向かい合う抵抗どうしの積が等しいとき、この平衡状態になります。
平衡時は中央に電流が流れないため、スターデルタ変換を使わずに未知抵抗を求められます。
3つの抵抗の値から、残り1つの未知抵抗を高い精度で測定できるのが、この回路の大きな利点です。
7. 実務での合成抵抗|分圧回路とセンサ
合成抵抗の考え方は、机上の計算だけでなく実際の回路設計でも日常的に使われます。
特に直列の分圧は、必要な電圧を作り出す基本回路として頻出します。
7-1. 分圧回路で基準電圧をつくる
2つの抵抗を直列にして電源につなぎ、その中点から電圧を取り出すのが分圧回路です。
抵抗比を選ぶだけで、電源電圧から好きな大きさの電圧を作り出せます。
マイコンの基準電圧づくりや、センサ信号のレベル調整など、応用範囲はきわめて広い回路です。
分圧の式さえ理解していれば、必要な抵抗値を簡単に設計できます。
7-2. 可変抵抗とセンサへの応用
分圧の一方を可変抵抗にすれば、つまみの位置に応じて出力電圧を変えられます。
この仕組みは、ボリュームつまみや角度・位置の検出に広く使われています。
7-3. 合成抵抗と消費電力の確認
抵抗を組み合わせるときは、合成抵抗だけでなく各抵抗の消費電力にも注意が必要です。
抵抗にはそれぞれ定格電力があり、これを超えると発熱で焼損してしまうためです。
各抵抗の消費電力は、その抵抗に流れる電流と抵抗値から求められます。
とくに直列回路では大きい抵抗ほど、並列回路では小さい抵抗ほど、消費電力が大きくなる傾向があります。
合成抵抗を計算したら、各抵抗が定格電力に収まっているかも必ず確認しておきましょう。
例えば1本では定格電力が足りないとき、同じ抵抗値を得ながら発熱を分散させる方法があります。
抵抗を複数本に分けて直列や並列に組み、1本あたりの消費電力を下げるという設計です。
このように、合成抵抗の計算は単に値を求めるだけでなく、安全な部品選定にも直結します。
値・電流・消費電力の3つをセットで確認するのが、確実な回路設計の基本です。
可変抵抗による位置検出の詳しい仕組みは、こちらの関連記事もご覧ください。
7-4. 直列と並列の使い分け
実際の設計では、目的に応じて直列と並列を意図的に使い分けます。
必要な抵抗値の市販品がないとき、手持ちの抵抗を組み合わせて目的の値を作るのは典型的な使い方です。
抵抗値を大きくしたいときは直列に、小さくしたいときは並列につなぎます。
また、1本では定格電力が足りない場合に、複数本に分けて発熱を分散させる目的で並列にすることもあります。
このように合成抵抗の知識は、計算だけでなく実際の部品選定にも直結します。
直列と並列それぞれの効果を理解しておけば、限られた部品でも柔軟に設計できます。
まとめ
本記事では、複数の抵抗を1つにまとめる「合成抵抗」について、直列・並列の公式から計算例、複合回路の解き方、スターデルタ変換、実務での応用までを体系的に解説しました。
直列接続では合成抵抗は各抵抗の和となり、必ず最大の抵抗より大きくなります。
並列接続では合成抵抗の逆数が各抵抗の逆数の和となり、必ず最小の抵抗より小さくなります。
「直列は電流が共通で電圧が分かれる、並列は電圧が共通で電流が分かれる」という対比を押さえておけば、どんな回路でも落ち着いて計算できます。
複合回路は、まとめられる部分から段階的に1つの抵抗へと簡略化していくのが基本です。
合成抵抗とオームの法則を組み合わせれば、複雑に見える回路も必ず解けるようになります。
まずは直列の和、並列の和分の積という2つの形を確実に使えるようにし、キルヒホッフの法則など次のステップへ進んでいってください。