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切削速度とは?周速と回転数の計算方法

「同じ工具を使っているのに、加工面が荒れたり工具がすぐ摩耗したりするのはなぜだろう」と感じたことはないでしょうか。

切削加工では、回転数だけを合わせて切削速度を意識しないと、工具の寿命や加工面の仕上がりに大きな差が出てしまいます。

切削速度とは、工具の刃先が加工物の表面を削っていく速さのことで、単位はメートル毎分で表される基本的な量です。

この切削速度は回転数と直径から計算でき、材料や工具に合った値を選ぶことが、安定した加工の出発点になります。

本記事では、切削速度の意味から計算式、送りや切込みとの関係、適切な値の選び方や加工結果への影響までを順番に解説します。

 

 

1. 切削速度とは:刃先が材料を削る速さ

切削速度とは、工具の刃先が加工物の表面に対して動く速さのことで、周速とも呼ばれる量です。

旋盤では回転する加工物の表面の速さを、フライスやドリルでは回転する工具の刃先の速さを切削速度と呼びます。

単位はメートル毎分(m/min)で表し、刃先が1分間に何メートル分の材料をなでていくかを示しています。

切削速度と回転数の違い

切削速度と回転数は混同されやすい言葉ですが、表している内容はまったく異なるものです。

回転数は1分間に主軸が何回転するかを表す値で、単位は毎分回転(rpm)であり、機械に直接設定する量です。

これに対して切削速度は、刃先が実際に材料の上を進む距離の速さを表していて、加工の性質を決めます。

同じ回転数で削っていても、直径が大きいほど刃先が進む距離は長くなり、切削速度は速くなります。

なぜ切削速度が重要なのか

工具の摩耗や加工面の仕上がりは、回転数そのものではなく、切削速度によって大きく左右されます。

切削速度が速すぎると刃先と切りくずの摩擦熱で温度が上がり、工具の摩耗が急に進んでしまいます。

反対に切削速度が遅すぎると、構成刃先という凝着現象が起こりやすくなり、加工面が荒れる原因になります。

このため、材料と工具に合った切削速度を選ぶことが、加工の良し悪しを決める重要なポイントになります。

直径によって切削速度は変わる

同じ回転数で削っていても、直径が変われば刃先の周速、つまり切削速度は変わってきます。

直径が大きいほど刃先が1回転で進む距離が長くなるため、切削速度はそのぶん速くなります。

旋盤では、太い加工物ほど同じ回転数でも切削速度が速くなるので、回転数の設定に注意が必要です。

段付きの加工物では、直径の違う部分で切削速度が変わってしまう点も意識しておく必要があります。

用語 表す内容 単位
切削速度 刃先が材料を削る速さ メートル毎分(m/min)
回転数 1分間の回転の回数 毎分回転(rpm)
送り 1回転あたりの進み量 ミリメートル毎回転(mm/rev)

 

2. 切削速度の計算式

切削速度は、加工物または工具の直径と回転数から、円周率を使った簡単な式で計算することができます。

この式を使えば、回転数から切削速度を求めることも、目標の切削速度から回転数を逆算することもできます。

切削速度の式と具体例

切削速度は、刃先が1回転で進む円周の長さに回転数を掛けることで、次の式から求められます。

 v_c = \dfrac{\pi D n}{1000}

ここで v_cは切削速度(m/min)、 Dは直径(mm)、 nは回転数(rpm)を表します。

分母の1000は、直径の単位であるミリメートルを、切削速度の単位であるメートルに合わせるための換算です。

たとえば直径50mmの加工物を764rpmで回転させると、切削速度は約120m/minという値になります。

 v_c = \dfrac{\pi \times 50 \times 764}{1000} \approx 120\,\text{m/min}

回転数を求める式

実際の現場では、材料に合った切削速度を先に決めて、そこから回転数を求めることが多くなります。

先ほどの式を回転数について解き直すと、切削速度と直径から回転数を求める次の形になります。

 n = \dfrac{1000 \, v_c}{\pi D}

たとえば切削速度120m/minで直径50mmの加工物を削るなら、回転数は約764rpmと求められます。

 n = \dfrac{1000 \times 120}{\pi \times 50} \approx 764\,\text{rpm}

このように、まず材料に合った切削速度を決めてから、機械に設定する回転数を計算するのが基本の手順です。

旋盤とフライス・ドリルでの直径

計算に使う直径は、加工の種類によって、何の直径を指すのかが変わる点に注意が必要です。

旋盤では加工物が回転するため、削っている部分の加工物の外径を直径として使います。

フライスやドリルでは工具が回転するため、工具そのものの直径を使って切削速度を計算します。

どちらの直径を使うかを取り違えると、切削速度の計算結果が大きくずれてしまうので気をつけます。

加工 回転するもの 直径に使う値
旋盤加工 加工物 加工物の外径
フライス加工 工具 工具の直径
ドリル加工 工具 ドリルの直径

 

3. 送りと切込み:切削の3要素

切削条件は切削速度だけでは決まらず、送りと切込みを合わせた3つの要素によって決まります。

この3つをまとめて切削条件と呼び、加工の能率や仕上がり、工具への負担を大きく左右します。

送りとは何か

送りとは、加工物または工具が1回転するあいだに、刃物が進む量のことを指します。

旋盤では1回転あたり何ミリメートル刃物が横へ進むかを送りと呼び、その単位はmm/revで表します。

送りが大きいほど一度に削り取る量は増えますが、そのぶん加工面は粗くなる傾向があります。

このため、仕上げ加工では送りを小さく、荒加工では送りを大きく設定するのが基本の考え方です。

送り速度の計算と具体例

1分間に刃物が進む量を表すのが送り速度で、送りと回転数を掛け合わせることで求められます。

 v_f = f \times n

ここで v_fは送り速度(mm/min)、 fは送り(mm/rev)、 nは回転数(rpm)です。

たとえば送り0.2mm/revで回転数764rpmなら、送り速度は約153mm/minという値になります。

フライスの場合は1枚の刃あたりの送りに刃数を掛け、 v_f = f_z \times z \times nという式で計算します。

切込みと材料除去率

切込みとは1回の切削で削り取る深さのことで、記号ではapと表され、単位はミリメートルです。

切込みが大きいほど一度に多くの材料を削れますが、そのぶん切削抵抗も大きくなってしまいます。

単位時間にどれだけの体積を削れるかは材料除去率と呼ばれ、 Q = a_p \times f \times v_cで表されます。

ここで Qは材料除去率(cm³/min)、 a_pは切込み(mm)、 fは送り(mm/rev)、 v_cは切削速度(m/min)です。

たとえば切込み2mm、送り0.2mm/rev、切削速度120m/minなら、材料除去率は約48cm³/minになります。

切削抵抗の考え方は、切削抵抗の記事で詳しく解説しています。

要素 意味 大きくしたときの影響
切削速度 刃先が削る速さ 能率は上がるが摩耗が増える
送り 1回転あたりの進み量 能率は上がるが面が粗くなる
切込み 1回で削る深さ 能率は上がるが抵抗が増える

 

4. 適切な切削速度の決め方

切削速度は速ければよいというものではなく、材料と工具の組み合わせに応じた適切な値が存在します。

その適切な範囲を外れると、工具がすぐに摩耗したり、加工面が荒れたりする原因になってしまいます。

加工物の材質で変わる

切削速度の適切な値は、削る材料の硬さや粘り強さによって大きく変わってきます。

軟らかいアルミは高い切削速度で削れますが、硬くて粘いステンレスは低めの速度に抑えます。

硬い材料を速く削ると、刃先の温度が上がりすぎてしまい、工具が急に摩耗する原因になります。

このため、材料ごとに知られている推奨切削速度を目安にして、加工条件を決めていくのが基本です。

被削性という考え方

材料の削りやすさを表す性質のことを、被削性(ひさくせい)と呼びます。

被削性が良い材料は、低い切削抵抗できれいに削れ、工具の摩耗も少なくて済みます。

快削鋼のように、被削性を高めるための成分をあらかじめ加えた材料もあります。

被削性が悪い材料では、切削速度を下げたり、工具を選び直したりする工夫が必要になります。

ステンレスやチタン合金は被削性が悪く、加工が難しい材料としてよく知られています。

工具の材種で変わる

同じ材料を削る場合でも、使う工具の材種によって、設定できる切削速度は大きく変わります。

高速度工具鋼(ハイス)は粘り強くて欠けにくい反面、高い切削速度にはあまり向いていません。

超硬合金は熱に強いため、ハイスに比べて数倍ほど高い切削速度で加工することができます。

工具材種の違いは、高速度工具鋼の記事で詳しく解説しています。

さらに高温に強いサーメットやセラミックを使えば、超硬よりも高い切削速度が可能になります。

推奨切削速度の目安

材料と工具の組み合わせごとに、推奨される切削速度のおおよその範囲が知られています。

この目安を出発点にして、加工の様子を見ながら少しずつ微調整していくのが実務の進め方です。

工具メーカーのカタログにも、材料別の推奨切削速度や送りの条件が具体的に示されています。

サーメット工具の特徴は、サーメット工具の記事も参考になります。

加工物 高速度工具鋼 超硬合金
炭素鋼 約20〜30 m/min 約100〜150 m/min
ステンレス 約15〜25 m/min 約80〜120 m/min
鋳鉄 約15〜25 m/min 約80〜120 m/min
アルミ合金 約60〜100 m/min 約300〜1000 m/min

 

5. 計算例:旋盤とフライスの条件

ここでは実際の数値を入れて、切削速度や回転数、送り速度を具体的に計算してみます。

旋盤、フライス、ドリルのそれぞれについて、条件の求め方を順番に確認していきます。

旋盤の回転数を求める

直径50mmの炭素鋼を、超硬工具を使って切削速度120m/minで削る場合を考えてみます。

回転数は n = 1000 \times 120 / (\pi \times 50) \approx 764\,\text{rpm}と求められます。

さらに送りを0.2mm/revとすると、送り速度は 0.2 \times 764 \approx 153\,\text{mm/min}になります。

この回転数と送り速度を旋盤に設定すれば、狙った切削速度で安定して加工することができます。

フライスの送り速度を求める

直径20mmで刃数が4枚のエンドミルを、切削速度100m/minで使う場合を考えてみます。

回転数は n = 1000 \times 100 / (\pi \times 20) \approx 1591\,\text{rpm}と求められます。

1枚の刃あたりの送りを0.1mmとすると、送り速度は 0.1 \times 4 \times 1591 \approx 636\,\text{mm/min}になります。

フライスでは刃数も掛け合わせるため、旋盤よりも送り速度が大きくなりやすいという特徴があります。

ドリルの回転数を求める

直径10mmのドリルを使い、切削速度30m/minの条件で鋼に穴をあける場合を考えます。

回転数は n = 1000 \times 30 / (\pi \times 10) \approx 955\,\text{rpm}と求められます。

細いドリルでは、同じ切削速度を得るために回転数を高く設定する必要があることが分かります。

ドリル径が小さいほど回転数を高くする必要があるため、折損にも注意しながら加工します。

加工 条件 求めた回転数
旋盤 φ50・120m/min 約764 rpm
フライス φ20・100m/min 約1591 rpm
ドリル φ10・30m/min 約955 rpm

 

6. 切削速度が高すぎ・低すぎると

切削速度には適切な範囲があり、その範囲を外れると加工にさまざまな問題が起こってしまいます。

高すぎても低すぎても不具合が出るため、ちょうどよい範囲を狙って条件を決めることが大切です。

切削速度が高すぎる場合

切削速度が高すぎると、刃先と切りくずの摩擦によって発生する熱で、刃先の温度が大きく上がります。

温度が上がると工具材料が軟らかくなり、摩耗が急に進んで工具の寿命が短くなってしまいます。

特に硬い材料を高速で削ると、刃先が一気に劣化して欠けてしまうこともあります。

能率を上げようと切削速度を上げすぎると、工具交換が増えてかえって工具費がかさむこともあります。

切削速度が低すぎる場合

切削速度が低すぎると、刃先に被削材が凝着する構成刃先という現象が起こりやすくなります。

構成刃先ができると加工面がむしれて荒れ、寸法精度も安定しなくなってしまいます。

また、切削速度が低いと単純に加工に時間がかかってしまい、加工の能率も下がります。

切削速度が低いからといって、必ずしも工具にやさしいわけではない点に注意が必要です。

クーラント(切削油剤)の役割

高い切削速度で加工するときは、クーラントと呼ばれる切削油剤の働きが重要になります。

クーラントは刃先を冷却して温度上昇を抑え、工具の摩耗を遅らせる役割を果たします。

同時に刃先と切りくずの間の摩擦を減らし、構成刃先の発生を抑える効果も持っています。

適切なクーラントを使うことで、より高い切削速度でも安定した加工がしやすくなります。

一方で、鋳鉄の加工などでは、切りくずの排出を優先してあえてクーラントを使わない乾式切削が選ばれることもあります。

状態 起こりやすい問題 主な対策
高すぎる 温度上昇・急な工具摩耗 切削速度を下げる・クーラント
低すぎる 構成刃先・面荒れ・低能率 切削速度を上げる・工具を見直す
適切 安定した加工面と工具寿命 推奨条件を起点に微調整

 

7. 切削速度と加工結果の関係

切削速度は、工具寿命だけでなく、加工面の仕上がりや加工の能率にも影響を与えます。

ここでは、切削速度が加工結果にどのように関わってくるのかを整理していきます。

表面粗さとの関係

加工面の粗さは、おもに送りと工具先端の形状で決まりますが、切削速度の影響も受けます。

切削速度が低くて構成刃先ができてしまうと、加工面がむしれて粗くなってしまいます。

適切な切削速度で構成刃先を抑えると、安定したきれいな加工面を得ることができます。

表面粗さの考え方は、表面粗さの記事で解説しています。

工具寿命との関係

切削速度は、3つの切削条件の中でも工具寿命にもっとも大きく影響することで知られています。

切削速度をわずかに上げるだけでも、工具寿命が大きく短くなってしまうことがあります。

この関係はテイラーの工具寿命式として知られ、最適な条件を求めるために使われています。

工具費まで含めて考えると、最も経済的な切削速度は最高速度より少し低い範囲にあります。

切りくず処理と切削速度

切削加工では、削り取った材料が切りくずとなって連続的に排出されていきます。

切削速度や送りの条件によって、切りくずの形や色、丸まり方が変わってきます。

長くつながった切りくずは、工具や加工物に絡みついてトラブルの原因になりやすくなります。

適切な条件とチップブレーカを使い、切りくずを短く分断することが安定加工につながります。

切りくずが青や紫に焼けている場合は、切削温度が高すぎることを示す目安になります。

高速切削という考え方

近年は、あえて非常に高い切削速度で加工する高速切削という方法も使われています。

切削速度をある領域まで上げると、切削熱の多くが切りくず側へ逃げる現象が起こります。

これにより加工物や工具の温度上昇が抑えられ、高能率と高精度を両立できる場合があります。

ただし高速切削を行うには、高い剛性をもつ工作機械と、つり合いの取れた工具が必要になります。

加工の基本となる旋盤やフライスについては、フライス盤の記事も参考になります。

観点 切削速度を上げると 注意点
加工能率 削れる量が増える 工具交換が増える
工具寿命 短くなる テイラーの式で予測
表面粗さ 構成刃先が減り安定 速すぎると別の問題

 

8. まとめ

切削速度とは、工具の刃先が加工物を削っていく速さのことで、単位はメートル毎分で表されます。

切削速度は v_c = \pi D n / 1000で求められ、直径と回転数の2つから計算することができます。

目標の切削速度から回転数を求めるときは、式を解き直した n = 1000 v_c / (\pi D)を使います。

計算に使う直径は、旋盤では加工物の外径、フライスやドリルでは工具の直径を使う点に注意します。

切削条件は切削速度、送り、切込みの3つの要素で決まり、それぞれが能率と仕上がりに関わります。

切削速度は材料と工具の組み合わせで決まり、高すぎても低すぎても加工に不具合が起こります。

推奨条件を起点にして、工具寿命と加工能率のバランスを見ながら最適な切削速度を選びましょう。