Instant Engineering

エンジニアの仕事効率を上げる知識をシェアするWeb記事/機械設計/TPS/QC品質管理

DeviceNetとは?CIP通信と終端抵抗

センサを1点ずつPLCへ配線すると、盤内はすぐに線だらけになります。

しかも、信号線だけでなく電源線や共通線も増えるため、改造やトラブル調査に時間がかかります。

DeviceNetは、このような現場機器を1本のネットワークへまとめるための産業用フィールドバスです。

ただし、単なるCAN通信ではなく、CIPを使って機器のデータや診断情報を扱う点が特徴です。

本記事では、DeviceNetの仕組み、CIPとの関係、CANopenとの違い、終端抵抗と配線上の注意点を解説します。

 

1. DeviceNetとは:PLCと現場機器をつなぐフィールドバス

DeviceNetとは、PLCやコントローラとセンサ、アクチュエータ、I/O機器を接続する産業用ネットワークです。

主に工場設備の現場レベルで使われ、複数の機器を1本の幹線にぶら下げる構成を取ります。

従来の個別配線では、センサ1点ごとに入力線や電源線を盤まで戻す必要があります。

DeviceNetを使うと、複数のノードをネットワーク化し、制御信号と診断情報をまとめて扱えます。

この考え方は、設備の配線量を減らすフィールドバスの代表例です。

 

PLC直結配線との違い

PLC直結配線では、入力点数や出力点数が増えるほど端子台とケーブルが増えます。

配線変更のたびに図面修正、導通確認、端子番号の確認が必要になります。

DeviceNetでは、現場側にI/Oブロックやドライブを置き、通信で状態をやり取りします。

盤内配線を減らしながら、現場機器の異常や設定値も取得しやすくなります。

DeviceNetが得意な領域

DeviceNetは、高速なモーション制御よりも、センサやバルブ、リモートI/Oの分散接続に向いたネットワークです。

単純なON/OFF信号だけでなく、機器状態やエラー情報を通信で扱える点が強みです。

現在は新規設備でEthernet系が選ばれる場面も増えていますが、既設設備では今も重要です。

保全担当者にとっては、仕組みを知っておく価値が高い通信方式です。

 

2. DeviceNetの基本構造:CANの上にCIPを載せる

DeviceNetを理解するうえで重要なのは、物理的な通信方式と上位のデータ表現を分けて考えることです。

DeviceNetは、下位層にCANを使い、上位層にCIPを使う構成になっています。

CANは、通信の衝突調停やフレーム送受信を担当する土台です。

CIPは、機器のデータをオブジェクトとして扱うための共通的な考え方です。

つまりDeviceNetは、CANケーブルで信号を運び、CIPで産業機器として意味づける通信といえます。

 

CANが担当する部分

CANは、複数ノードが同じバスを共有して通信する方式です。

メッセージにはIDがあり、IDによって優先順位が決まります。

同時に複数のノードが送信しようとしても、優先度の高いメッセージが残る仕組みがあります。

この性質により、制御系で必要な短いデータを効率よく扱えます。

CIPが担当する部分

CIPは、機器の入出力、設定、診断情報を共通のモデルで扱うためのプロトコルです。

DeviceNet機器は、単なるビットの集まりではなく、通信上の機器オブジェクトとして見られます。

同じCIP系の考え方は、Ethernet上で使うEtherNet/IPにも引き継がれています。

そのため、DeviceNetからEtherNet/IPへ移行する場合も、完全に別世界の通信ではありません。

関連記事

instant.engineer

 

3. DeviceNetとCANopenの違い:同じCAN系でも目的が違う

DeviceNetとCANopenは、どちらもCANを基盤にした産業用通信として説明されることがあります。

しかし、両者は同じ規格ではなく、上位プロトコルと機器モデルの考え方が異なります。

DeviceNetはCIP系のネットワークであり、ODVA系の産業通信と関係が深い方式です。

CANopenは、CiA系で広く使われるCANベースの上位プロトコルです。

そのため、同じCANトランシーバを使う機器でも、DeviceNet機器とCANopen機器をそのまま混在できません。

 

違いを比較表で整理

比較項目 DeviceNet CANopen
基盤 CANを下位層に使います CANを下位層に使います
上位層 CIPを使います CANopenのオブジェクト辞書を使います
主な用途 PLC、I/O、ドライブ、バルブ島などです 組込み機器、モーション、機械装置などです
互換性 DeviceNet対応機器同士で使います CANopen対応機器同士で使います
移行先 EtherNet/IPへ移行しやすいです CANopen系のEthernet拡張を検討します

 

同じCANだから接続できる、は誤解です

現場で注意したいのは、物理層が似ていても通信が成立するとは限らない点です。

ケーブル、電圧レベル、ビットレートが合っていても、上位プロトコルが違うとデータの意味を解釈できません。

これはシリアル通信でも同じで、通信条件だけでなくプロトコルの一致が重要です。

DeviceNet機器を交換するときは、CAN対応ではなくDeviceNet対応であることを確認しましょう。

 

4. 配線方式:幹線と支線でネットワークを作る

DeviceNetの配線は、幹線であるトランクラインと、機器へ分岐するドロップラインで構成します。

幹線の両端には終端抵抗を入れ、途中から各ノードへ支線を出します。

この構成を理解していないと、終端抵抗を支線側に入れたり、幹線の途中で切ったりしやすくなります。

通信トラブルの多くは、機器故障ではなく配線構成や終端のミスから発生します。

 

トランクラインとドロップライン

トランクラインは、ネットワークの背骨になるケーブルです。

幹線の両端には終端抵抗を入れ、信号反射を抑えます。

ドロップラインは、幹線から各ノードへ接続する支線です。

支線は便利ですが、長くしすぎると波形品質が悪化しやすくなります。

信号線と電源線を同じケーブルで扱う

DeviceNetでは、通信線だけでなく機器用の電源もネットワークケーブルで扱う構成があります。

一般的なケーブルには、CAN_H、CAN_L、電源、0V、シールドなどの役割があります。

このため、通信異常に見えても、実際は電源電圧低下や0V配線の問題である場合があります。

電気的な接続は、I/O信号だけを見るのではなく、通信と電源を合わせて確認する必要があります。

 

5. 終端抵抗:121Ωを幹線の両端に入れる理由

DeviceNetの通信品質で最も重要な部品の一つが終端抵抗です。

一般的には、幹線の両端に121Ωの終端抵抗を入れます。

これは、信号がケーブル端で反射し、CAN_HとCAN_Lの差動波形を乱すことを防ぐためです。

終端抵抗は、どこか1か所に入れればよい部品ではありません。

必ずネットワークとしての両端を見極め、幹線の端に入れる必要があります。

 

終端抵抗の位置

終端抵抗は、制御盤の中に2個入れるものとは限りません。

物理的な幹線の端が盤外にある場合は、現場側の末端に入れる必要があります。

途中のノード、分岐コネクタ、ドロップラインの先端に入れると、正しい終端になりません。

配線図だけで判断せず、実際の幹線ルートを追って確認することが重要です。

テスタで見るときの目安

電源を切った状態でCAN_HとCAN_L間を測ると、正常な2終端ではおおむね60Ω付近になります。

121Ω付近であれば、片側の終端が抜けている可能性があります。

極端に低い値であれば、終端抵抗の入れすぎや短絡を疑います。

ただし、機器内部回路の影響を受ける場合もあるため、最終判断はマニュアルと構成図で確認しましょう。

 

6. ノードIDと通信速度:設定ミスが通信異常を生む

DeviceNetでは、各ノードに識別用のアドレスを設定します。

一般にMAC IDと呼ばれ、ネットワーク内で重複しないように設定します。

また、通信速度もネットワーク全体でそろえる必要があります。

ノードIDと通信速度のどちらかが間違っているだけで、機器は正常でも通信に参加できません。

 

MAC IDの重複に注意する

同じネットワーク内でMAC IDが重複すると、どの機器からの通信か判別できなくなります。

交換品を取り付けた直後に通信異常が出る場合は、まずID設定を確認します。

ディップスイッチ式、ロータリスイッチ式、ソフト設定式など、設定方法は機器によって異なります。

既設機器を交換するときは、取り外す前にIDと通信速度を記録しておきましょう。

通信速度と配線長の関係

DeviceNetでは、通信速度を上げるほど許容される幹線長は短くなります。

高速化すれば必ず安定するわけではなく、長い設備では低い通信速度の方が安全な場合があります。

通信速度、幹線長、支線長、ケーブル種類はセットで確認する必要があります。

この考え方は、終端抵抗が重要なRS-485系通信にも通じます。

 

7. DeviceNetとEtherNet/IPの関係:CIP系ネットワークとして見る

DeviceNetとEtherNet/IPは、物理的な通信媒体は異なります。

DeviceNetはCANを土台にし、EtherNet/IPはEthernetを土台にします。

しかし、どちらもCIPを使う産業用ネットワークとして関連しています。

このため、DeviceNetを単独の古い通信として覚えるよりも、CIP系ネットワークの一つとして見る方が理解しやすくなります。

 

DeviceNetからEtherNet/IPへ移行する理由

新規設備では、Ethernet系ネットワークの採用が増えています。

理由は、通信速度、診断性、上位システム連携、汎用部品の入手性にあります。

EtherNet/IPでは、CIPの考え方を維持しながら、Ethernetベースの通信へ拡張できます。

一方で、既設DeviceNetをすぐに置き換えると、配線、I/O割付、プログラム変更の影響が出ます。

他の産業用Ethernetとの違い

EtherNet/IP以外にも、PROFINETCC-Link系のEthernet通信があります。

どれもEthernetケーブルを使う場面がありますが、プロトコルや設定ツールは同じではありません。

既設DeviceNetから移行する場合は、単にEthernet化するのではなく、PLCメーカーと既存資産の相性を見ます。

設備標準、保全部品、担当者の教育まで含めて選ぶことが重要です。

関連記事

instant.engineer

 

8. 実務でのトラブル対策:通信異常の切り分け手順

DeviceNetの通信異常は、マスタ、スレーブ、配線、電源、設定のどこでも発生します。

やみくもに機器交換を進めると、原因を残したまま時間だけが過ぎます。

まずは、発生範囲が全体なのか、一部ノードだけなのかを切り分けます。

そのうえで、電源、終端、配線、ID、通信速度、ノイズ環境を順番に確認します。

 

全体停止と一部異常で見る場所を変える

ネットワーク全体が停止している場合は、電源、マスタ、幹線断線、終端抵抗を優先して確認します。

一部ノードだけが異常であれば、そのノード周辺のドロップライン、コネクタ、電源電圧を確認します。

特定のタイミングで異常が出る場合は、インバータや溶接機などのノイズ源も疑います。

異常履歴を確認できる場合は、PLC側の診断情報も活用しましょう。

チェックリストで確認する

確認項目 見るポイント よくある原因
電源 24Vと0Vの電圧を確認します 電圧降下、電源容量不足、接触不良です
終端抵抗 幹線両端に入っているか確認します 片側抜け、入れすぎ、支線側への誤挿入です
ID MAC IDの重複を確認します 交換時の設定忘れ、スイッチ読み違いです
通信速度 全ノードで同じ値か確認します 新旧機器の設定差、初期値の違いです
ノイズ 動力線との離隔やシールドを確認します インバータ、接地不良、シールド処理不良です

 

設定変更時の記録を残す

DeviceNetの保全で意外に重要なのが、交換前後の設定記録です。

ノードID、通信速度、接続位置、EDSファイル、PLC側の割付をセットで残します。

機器交換だけなら簡単に見えても、スキャナ側の登録情報と一致しないと通信できません。

同じ型式の予備品でも、出荷時設定やファームウェア差で動作が変わる場合があります。

保全記録には、正常時の通信状態と異常時のLED表示も残しておくと役立ちます。

写真でスイッチ位置を残すだけでも、復旧時間を大きく短縮できます。

EDSファイルと設定ツールの役割

DeviceNet機器では、設定ツールが機器情報を読み込むためにEDSファイルを使う場合があります。

EDSファイルは、機器の通信パラメータや入出力サイズをツールへ知らせる説明書のようなものです。

現場で機器を交換したのに登録できない場合は、対応するEDSファイルが不足していることがあります。

古い設備では、当時の設定ツールやファイルを探すだけで時間がかかることもあります。

そのため、PLCプログラムだけでなく、設定ファイル一式も設備資料として保管しておきましょう。

DeviceNetの保全では、配線図、ノード一覧、設定ツール、EDSファイルをひとまとめに管理することが重要です。

 

9. 上位連携と保全:DeviceNetの情報をどう活かすか

DeviceNetは、現場機器の制御信号だけを運ぶものではありません。

機器状態、通信異常、診断情報を取得できる点も重要です。

ただし、上位システムと直接つなぐ用途では、現在はEthernet系やOPC UAの方が扱いやすい場面があります。

DeviceNetは現場レベル、EtherNet/IPやOPC UAは上位連携を含む設備データ活用、と役割を整理すると理解しやすくなります。

 

OPC UAやMQTTとの位置づけ

OPC UAは、PLCや設備データを上位システムへ渡す用途で使われます。

MQTTは、軽量なメッセージ送信を使ってIoTデータを集める場面で使われます。

DeviceNetは、これらの上位連携技術と競合するというより、現場機器側の通信として位置づけると自然です。

現場のI/O情報をPLCで集約し、上位へはOPC UAなどで渡す構成が考えられます。

Modbusとの違い

Modbusは、シンプルなレジスタ読み書きで使いやすい産業通信です。

DeviceNetは、CIPの機器モデルを使い、I/O接続や診断を扱いやすい点が特徴です。

どちらが優れているというより、設備標準、対応機器、保守性で選ぶべき通信です。

既設設備では、通信方式を変えるよりも、保守手順を整備する方が効果的な場合もあります。

新規設計では採用理由を明確にしましょう。

新規設備でDeviceNetを採用する場合は、既設資産との互換性が主な理由になります。

対応機器の入手性や将来保守を考えると、Ethernet系へ寄せた方がよい場面もあります。

一方で、既存ラインに同じ予備品や保守手順が整っている場合は、統一性を優先する判断もあります。

重要なのは、安いから、使ったことがあるから、という理由だけで選ばないことです。

通信方式は、制御盤、現場配線、保全教育、予備品管理に長く影響します。

設備の寿命全体で見て、どの方式が管理しやすいかを確認しましょう。

 

10. まとめ:DeviceNetはCANベースのCIP系フィールドバス

DeviceNetは、PLCとセンサ、I/O、ドライブなどをつなぐCANベースの産業用フィールドバスです。

CANの通信機構に、CIPによる機器モデルを組み合わせている点が大きな特徴です。

CANopenとは同じCAN系でも上位プロトコルが異なるため、互換性を前提にしてはいけません。

配線では、トランクライン、ドロップライン、電源、シールド、終端抵抗の扱いが重要です。

特に終端抵抗は、幹線の両端に正しく入れる必要があります。

通信異常が出た場合は、機器交換の前に、電源、終端、ID、通信速度、配線経路を順番に確認しましょう。

新規設備ではEthernet系へ移行する場面が増えていますが、既設DeviceNetを理解することは保全上とても重要です。

DeviceNetをCIP系ネットワークの一部として理解すると、EtherNet/IPへの移行や上位連携の検討もしやすくなります。

また、DeviceNetの不具合は一度復旧すると再現しにくい場合があります。

原因を記録せずに復旧だけで終えると、次回も同じ確認を繰り返すことになります。

終端抵抗の実測値、通信速度、交換したコネクタ、清掃した端子を残しておくと再発防止に役立ちます。

特に稼働年数の長い設備では、ケーブル劣化やコネクタ緩みが少しずつ進行します。

通信異常を単発トラブルとして扱わず、ネットワーク全体の保全情報として蓄積しましょう。

設備停止時にしか調査できない項目もあるため、点検タイミングを決めておくことも大切です。

予防保全としてコネクタ増し締め、シールド確認、予備抵抗の保管まで決めておくと安心です。

小さな記録の積み重ねが、次の停止時間を短くし、復旧判断をさらに早めます。