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EtherNet/IPとは?三菱と産業Ethernet

「EtherNet/IPは普通のイーサネットと何が違うのか」「三菱PLCでも使えるのか」と迷ったことはないでしょうか。

産業用ネットワークでは、同じLANケーブルを使っていても、事務所のパソコン通信とは求められる役割が大きく異なります。

生産設備では、リモートI/O、インバータ、ロボット、PLC、表示器が決められたタイミングで確実にデータをやり取りしなければなりません。

EtherNet/IPは、標準Ethernetを土台にしながら、CIPという産業用の共通モデルを使って設備機器をつなぐ産業Ethernetです。

本記事では、EtherNet/IPの基本、通常のイーサネットとの違い、三菱系ネットワークとの関係、リモートI/Oでの使い方、導入時の注意点までを実務目線で解説します。

 

1. EtherNet/IPとは何か

EtherNet/IPとは、工場や設備で使われる産業用Ethernetの一種です。

名称の「IP」はInternet Protocolではなく、Industrial Protocolを意味します。ただし、通信の土台としては標準EthernetやTCP/IPを利用します。

ポイントは、単にLANケーブルでつなぐだけの規格ではないことです。

PLC、リモートI/O、インバータ、ロボット、センサなどを、産業機器として扱いやすい共通の考え方で接続するための仕組みです。

標準Ethernetを産業用途に使うための仕組み

EtherNet/IPは、一般的なEthernetの物理層やTCP/IPを活用します。

そのため、スイッチングハブ、ツイストペアケーブル、IPアドレス、サブネットといった一般ネットワークの知識がそのまま関係します。

一方で、設備制御では「どのビットが入力信号か」「どのワードがモータ速度指令か」「異常コードをどのように読むか」が重要です。

EtherNet/IPでは、これらをCIPという共通のアプリケーション層モデルで扱います。

CIPをEthernet上で使うネットワーク

EtherNet/IPの中核にあるのがCIPです。

CIPはCommon Industrial Protocolの略で、産業機器のデータ、サービス、オブジェクト、接続の考え方を共通化するためのプロトコルです。

たとえば、デバイス情報、I/Oデータ、パラメータ、診断情報を、機器ごとにバラバラではなく共通の枠組みで扱いやすくします。

つまりEtherNet/IPは、標準Ethernetの上でCIPを動かすことで、制御・監視・設定・診断をまとめて扱う産業ネットワークです。

産業ネットワーク全体の位置づけを先に整理したい場合は、フィールドバスの記事でフィールドバス、産業Ethernet、通常Ethernetの違いを確認しておくと理解しやすくなります。

 

2. EtherNet/IPと通常のイーサネットの違い

EtherNet/IPはEthernetを使いますが、通常の事務系LANと同じものではありません。

違いは、通信媒体ではなく「上位で何をやり取りするか」「どの程度の周期性や診断性を求めるか」にあります。

比較項目 通常のイーサネット EtherNet/IP
主な用途 PC、サーバ、プリンタ、インターネット接続 PLC、リモートI/O、ロボット、インバータ、センサ接続
重視する点 汎用性、通信容量、接続性 周期通信、機器制御、診断、保全性
通信データ ファイル、Web、メール、業務データ I/O信号、制御データ、パラメータ、異常情報
上位プロトコル HTTP、SMB、FTPなど用途別 CIPを中心に機器データを扱う
設計上の注意 IP設計、セキュリティ、帯域管理 周期、ノード数、I/O点数、スイッチ、ノイズ、停止リスク

ケーブルが同じでも目的が違います

EtherNet/IPでは、市販のEthernet技術を活用できる点が大きなメリットです。

しかし、工場で使う場合は、ノイズ、振動、盤内温度、コネクタの抜け、ケーブル屈曲、アースなども設計対象になります。

事務所LANでは多少通信が遅れても再読み込みすれば済みます。

一方、設備制御では入力信号が遅れると、アクチュエータの動作タイミングや停止判断に影響することがあります。

IP通信と産業用通信を混同しない

EtherNet/IPという名称から、IPアドレスを使うだけの通信だと誤解されることがあります。

実際には、IPアドレスは通信相手を識別するための土台にすぎません。

その上で、CIPの仕組みによって、I/Oデータ、機器パラメータ、診断情報を産業機器として扱います。

この違いを理解しておくと、「Pingが通るのにPLCからI/Oが読めない」といった現場トラブルの切り分けがしやすくなります。

 

3. EtherNet/IPの通信の仕組み

EtherNet/IPの通信は、大きく分けると周期的なI/O通信と、必要なときに行うメッセージ通信に分けられます。

この2つを区別できると、リモートI/O、インバータ、ロボット、表示器との通信設計が整理しやすくなります。

周期的にやり取りするI/O通信

設備制御で最もイメージしやすいのは、PLCとリモートI/Oの通信です。

リモートI/O側の入力信号をPLCに送り、PLCの出力データをリモートI/Oに返す処理を、一定周期で繰り返します。

このような通信では、データ量よりも周期性が重要です。

スイッチやネットワークの設計が悪いと、通信遅れや一時的な途切れが設備停止につながります。

必要なときに読むメッセージ通信

もう一つは、パラメータや診断情報を必要なタイミングで読み書きする通信です。

たとえば、インバータの運転状態、エラー履歴、設定値、機器情報を取得する用途が該当します。

これは常時高速に更新する必要はありません。

その代わり、保全、立上げ、トラブル調査では非常に重要になります。

制御データと情報データを分けて考える

現場では「PLCとつながるか」だけで判断しがちですが、実際には通信の性質を分けて考える必要があります。

数ミリ秒単位で更新したいI/Oデータと、数秒に一度読めばよい診断情報では、ネットワーク設計の考え方が異なります。

通信周期、データ量、異常時の停止条件、復旧方法を分けて決めることで、安定した設備ネットワークになります。

 

4. EtherNet/IPで使われる主な機器

EtherNet/IPは、PLC同士の通信だけでなく、さまざまなフィールド機器の接続に使われます。

機器ごとの役割を理解すると、どの部分でEtherNet/IPを使うべきか判断しやすくなります。

機器 主な役割 EtherNet/IPで扱うデータ例
PLC 制御の中心となるコントローラ I/Oデータ、通信設定、他PLCとのデータ交換
リモートI/O 現場信号をネットワーク経由で入出力する 入力ビット、出力ビット、断線診断、ユニット状態
インバータ モータ速度やトルクを制御する 運転指令、周波数指令、電流値、異常コード
ロボット 工程間搬送、組立、溶接、塗布などを行う 起動指令、動作完了、アラーム、プログラム番号
セーフティ機器 安全入力や安全出力を扱う 非常停止、扉スイッチ、ライトカーテン、安全状態
表示器・SCADA 状態監視や操作画面を提供する 運転状態、アラーム、工程データ、設備情報

リモートI/Oで使う場面が多い

検索意図として多いのが「EtherNet/IP リモートIO」です。

これは、盤内や現場に分散した入力信号・出力信号を、PLCからネットワーク経由で扱うためです。

リモートI/Oを使うと、PLC本体まで全ての信号線を引き戻す必要がなくなります。

設備が大型化したり、工程が分散したりする場合、配線削減と保守性向上の効果が大きくなります。

インバータやロボットでは状態監視にも有効

インバータやロボットとの接続では、単純な起動・停止だけではなく、詳細な状態監視が重要になります。

電流値、速度、負荷率、アラームコード、異常履歴を上位側で読めると、トラブル対応が早くなります。

このような情報を活用すると、設備保全や予兆管理にもつながります。

PLCやセンサの基本構成から確認したい場合は、組込みシステムの記事も参考になります。設備側の制御装置を、入力・処理・出力の流れで理解しやすくなります。

 

5. EtherNet/IPとModbus TCPの違い

産業Ethernetを調べると、EtherNet/IPとModbus TCPを比較する場面がよくあります。

どちらもEthernet上で使われますが、設計思想はかなり異なります。

項目 EtherNet/IP Modbus TCP
標準化団体・背景 ODVAが管理するCIP系ネットワーク ModbusをEthernet上で扱うシンプルな通信
データモデル オブジェクト、サービス、デバイスプロファイルの考え方がある レジスタとコイルを読み書きする考え方が中心
主な強み I/O通信、診断、産業機器連携、ベンダ間接続 仕組みが単純で実装しやすい
理解のしやすさ CIPの考え方を理解する必要がある レジスタマップを読めれば扱いやすい
向いている用途 PLC中心の制御ネットワーク、リモートI/O、ドライブ連携 計測器、温調器、簡易データ収集、上位監視

Modbus TCPは単純さが強みです

Modbus TCPは、レジスタやコイルを指定して読み書きする発想が中心です。

そのため、計測器や温調器など、比較的シンプルなデータ取得では扱いやすい通信方式です。

一方で、機器の振る舞い、診断情報、制御用の周期通信まで含めた統一的な扱いでは、EtherNet/IPのほうが向く場合があります。

EtherNet/IPは制御機器の接続性に強い

EtherNet/IPは、CIPを前提にしているため、産業機器を制御対象として扱いやすいことが特徴です。

リモートI/OやドライブをPLCに接続し、周期的にデータをやり取りする用途では強みを発揮します。

一方で、設定項目やプロファイルの理解が必要になるため、単純なレジスタ通信だけをしたい場合は、Modbus TCPのほうが短時間で立ち上がることもあります。

Modbus TCPとの違いを詳しく確認したい場合は、Modbusの記事でRTU、TCP、レジスタ、ファンクションコードの基本を確認しておくと比較しやすくなります。

 

6. EtherNet/IPとOPC UA・MQTTの違い

EtherNet/IPを理解するときは、OPC UAやMQTTとの違いも押さえておく必要があります。

どれも設備データ連携に関係しますが、制御層で使うのか、情報連携で使うのかが異なります。

方式 主な役割 向いている場面
EtherNet/IP PLCや現場機器をつなぐ産業Ethernet リモートI/O、インバータ、ロボット、制御用通信
OPC UA 設備データを意味付きで上位へ渡す情報連携 SCADA、MES、クラウド、設備データ標準化
MQTT 軽量なPublish/Subscribe型メッセージング IoTデータ収集、クラウド連携、状態通知

制御するための通信か、見える化するための通信か

EtherNet/IPは、現場機器をPLCから扱うための制御寄りの通信です。

OPC UAやMQTTは、設備から上位システムへデータを渡す情報連携寄りの通信として使われることが多くなります。

もちろん、実際のシステムでは両方が組み合わされます。

PLC周辺はEtherNet/IPで接続し、PLCやゲートウェイから上位へOPC UAやMQTTでデータを送る構成が代表例です。

階層を分けると設計しやすい

工場ネットワークは、現場層、制御層、監視層、情報層に分けて考えると整理しやすくなります。

EtherNet/IPは主に現場層から制御層に関係します。

OPC UAやMQTTは、制御層から監視層・情報層へデータを上げる場面で使われます。

この階層を混同すると、制御ネットワークに不要なデータ収集負荷をかけたり、上位システムに現場制御の責任を持たせたりする危険があります。

上位連携まで含めて考える場合は、OPC UAの記事MQTTの記事をあわせて読むと、制御ネットワークと情報連携の役割分担が整理できます。

 

7. EtherNet/IPと三菱PLC・CC-Link系ネットワークの関係

検索では「EtherNet/IP 三菱」というニーズもあります。

ここで重要なのは、EtherNet/IPは三菱独自のネットワークではなく、ODVA系の産業Ethernetであるという点です。

三菱の代表的な産業ネットワークはCC-Link系です

三菱電機の設備ネットワークでは、CC-Link、CC-Link IE Field、CC-Link IE TSNなどの名前をよく見ます。

これらは、三菱系PLCや国内設備で多く使われる産業ネットワークです。

一方、EtherNet/IPはロックウェル系やODVA対応機器でよく使われます。

ただし、現在の設備では、メーカーをまたいだ接続が必要になるため、対応ユニットやゲートウェイを使って接続するケースがあります。

「三菱で使えるか」は機種とユニットで決まります

三菱PLCでEtherNet/IP機器を使えるかどうかは、PLCシリーズ、ネットワークユニット、ファームウェア、設定ツール、接続先機器の仕様によって変わります。

そのため「三菱PLCだから使える」「三菱PLCだから使えない」と単純には判断できません。

実務では、対象PLC、EtherNet/IP対応ユニット、EDSファイル、接続機器の通信仕様をセットで確認します。

特にリモートI/Oやインバータを接続する場合は、I/Oサイズ、接続周期、通信方向、異常時動作を事前に確認することが重要です。

CC-Link IEもEtherNet/IPも、産業用Ethernetとして扱われることがあります。

しかし、同じEthernetケーブルでつながるからといって、相互にそのまま通信できるわけではありません。

通信プロトコル、データモデル、設定ツール、機器プロファイルが異なるため、必要に応じて対応ユニットやゲートウェイを検討します。

「Ethernetだから何でもつながる」という誤解は、設備立上げ時の大きなトラブル原因になります。

 

8. EtherNet/IPのメリット

EtherNet/IPのメリットは、標準Ethernetの使いやすさと、産業用通信としての機器連携性を両立しやすい点にあります。

ここでは、導入時に評価されやすいメリットを整理します。

配線を削減しやすい

リモートI/Oを使うと、センサやソレノイドの信号線を全て制御盤まで引き戻す必要がなくなります。

現場近くでI/Oをまとめ、EtherNet/IPでPLCと接続すれば、長距離の多芯ケーブルを減らせます。

設備が大型化するほど、配線工数、盤内スペース、改造時の手戻りに効いてきます。

標準Ethernet技術を活用しやすい

EtherNet/IPは標準Ethernetを土台にするため、スイッチ、ケーブル、IPアドレス設計などの一般知識を活かしやすい面があります。

ただし、産業用途では耐ノイズ性、温度、コネクタ、固定方法、冗長化、保守性まで含めて選定する必要があります。

事務用の安価な機器をそのまま重要設備に使うと、長期安定性で問題が出ることがあります。

診断情報を活用しやすい

EtherNet/IP対応機器では、単純なON/OFFだけでなく、機器状態や異常情報を読みやすい場合があります。

断線、短絡、通信異常、ユニット故障、過負荷などを上位で把握できると、停止時間の短縮につながります。

生産ラインでは、止まらないこと以上に、止まったときに早く原因へたどり着けることが重要です。

 

9. EtherNet/IPのデメリットと注意点

EtherNet/IPは便利な通信方式ですが、導入すれば自動的に安定するわけではありません。

特に、一般的なネットワーク感覚で設計すると、現場でトラブルが起きやすくなります。

ネットワーク設計の責任が大きくなる

従来の専用フィールドバスでは、配線ルールや接続台数が比較的明確でした。

Ethernet系になると、スイッチ、VLAN、IPアドレス、通信周期、ブロードキャスト、マルチキャスト、帯域などの考慮が必要になります。

ネットワークに詳しくない担当者が、単に空いているハブへ接続していくと、後から原因不明の通信異常に悩むことがあります。

事務系ネットワークと安易に混在させない

EtherNet/IPはEthernetを使うため、事務系ネットワークと物理的につなげること自体は可能です。

しかし、制御ネットワークを社内LANやインターネット接続と安易に混在させるのは危険です。

不要な通信負荷、セキュリティリスク、IPアドレス重複、管理権限の曖昧さが設備停止につながることがあります。

制御ネットワークは、原則としてセグメントを分け、必要な通信だけを通す考え方が重要です。

リアルタイム性を過信しない

EtherNet/IPは産業用通信ですが、全ての用途で絶対的なリアルタイム性を保証するわけではありません。

通信周期、ネットワーク負荷、スイッチ性能、接続台数、上位通信の有無によって挙動は変わります。

高速同期が必要なモーション制御では、対象機器や拡張機能、ネットワーク構成を個別に確認する必要があります。

単純なリモートI/Oと高精度同期制御を同じ感覚で扱わないことが重要です。

 

10. EtherNet/IPのネットワーク構成

EtherNet/IPの構成では、スター型、ライン型、リング型などが使われます。

構成を決めるときは、配線距離、盤配置、停止時の影響範囲、保全しやすさを合わせて考えます。

スター型構成

スター型は、スイッチングハブを中心に各機器を接続する構成です。

構造が理解しやすく、機器追加や切り分けが比較的容易です。

一方で、中心のスイッチが故障すると広範囲に影響するため、重要設備ではスイッチの信頼性や電源系統も確認します。

ライン型構成

ライン型は、機器を数珠つなぎに近い形で接続する構成です。

盤内や装置内で配線しやすい場合がありますが、途中の機器やケーブルに障害が出ると、その先の通信に影響することがあります。

保全時には、どの位置で断線しているかを特定しやすい表示や診断が重要です。

リング型構成と冗長性

リング型は、通信経路を輪のように構成し、途中の断線に対して冗長性を持たせる考え方です。

EtherNet/IPでは、対応機器を使ってデバイスレベルリングのような構成を取る場合があります。

ただし、リング構成は対応機器や設定が必要です。

単にケーブルを輪にすればよいわけではないため、対応仕様を必ず確認します。

 

11. 設定時に確認すべき項目

EtherNet/IPの設定では、IPアドレスを入れるだけでは不十分です。

I/Oサイズ、通信方向、周期、接続方式、異常時動作まで確認しないと、設備として安定しません。

確認項目 確認内容 見落とした場合の問題
IPアドレス PLC、スイッチ、各機器で重複がないか 通信不可、別機器への誤接続
サブネット 同一ネットワーク内で通信できる設定か Pingは通らない、上位だけ見えない
I/Oサイズ 入力・出力のバイト数、ワード数が一致するか 接続エラー、データずれ
通信周期 設備動作に必要な更新周期か 応答遅れ、通信負荷増大
異常時動作 通信断時に出力を保持するかOFFするか 安全上の危険、意図しない停止
EDSファイル 接続先機器の定義ファイルが正しいか 設定項目が合わない、認識できない

I/Oサイズの不一致はよくある失敗です

EtherNet/IPの立上げで多いのが、I/Oサイズの不一致です。

PLC側では16バイト入力として設定しているのに、機器側では8バイトしか出していないようなケースです。

この場合、IPアドレスや物理接続に問題がなくても、I/O接続が成立しないことがあります。

接続先機器のマニュアルで、アセンブリ番号、入力サイズ、出力サイズ、設定データサイズを確認します。

通信断時の出力状態を必ず決める

通信が途切れたとき、出力をOFFにするのか、最後の状態を保持するのかは重要です。

搬送ライン、クランプ、エアシリンダー、ヒーター、モータなどでは、出力保持が危険になる場合があります。

反対に、突然OFFになることでワーク落下や工程不良が起きる場合もあります。

安全設計、設備動作、復旧手順を合わせて決める必要があります。

 

12. トラブル時の切り分け方法

EtherNet/IPのトラブルは、物理層、IP設定、プロトコル設定、PLCプログラム、相手機器状態のどこで起きているかを分けて確認します。

一度に全てを疑うと、原因が見えにくくなります。

Step 1:物理接続を確認する

まず、ケーブル、コネクタ、リンクランプ、スイッチ電源、ポート状態を確認します。

リンクランプが点灯しない場合、プロトコル以前の問題です。

盤内では、コネクタの爪折れ、ケーブルの抜けかけ、屈曲部の断線、ノイズ源との近接がよくあります。

Step 2:IP通信を確認する

次に、IPアドレス、サブネット、重複、Ping応答を確認します。

Pingが通らない場合、EtherNet/IP以前にIP層で通信できていません。

ただし、機器設定によってはPingに応答しない場合もあるため、マニュアル上の仕様も確認します。

Step 3:EtherNet/IP接続条件を確認する

IP通信が成立しているのにI/Oが入らない場合は、EtherNet/IPの接続条件を確認します。

アセンブリ番号、I/Oサイズ、接続周期、ユニット種別、EDSファイル、機器側の動作モードを見直します。

特に、相手機器が設定モードや異常状態のままだと、I/O通信を開始しないことがあります。

Step 4:PLCプログラムとマッピングを確認する

通信が成立しているのに動作しない場合は、PLC側のデータマッピングを確認します。

入力ワードのビット位置、出力ワードの割付、符号付き・符号なし、エンディアンの扱いを確認します。

「通信はできているが、見ているアドレスが違う」というトラブルは珍しくありません。

 

13. 導入時の設計ポイント

EtherNet/IPを導入するときは、通信方式だけでなく、設備全体の設計として考える必要があります。

特に、制御ネットワークと情報ネットワークの境界を明確にすることが重要です。

制御ネットワークは小さく区切る

一つのネットワークに多くの設備や上位システムを混在させると、トラブル時の影響範囲が広がります。

ライン単位、装置単位、セル単位でネットワークを区切ると、保全しやすくなります。

将来の増設を考える場合も、最初からIPアドレス体系とネットワーク境界を決めておくことが重要です。

上位連携はゲートウェイやDMZを使う

設備データをMESやクラウドへ渡す場合、制御ネットワークを直接インターネット側へ開くのは避けるべきです。

PLC、産業用PC、ゲートウェイ、OPC UAサーバなどを使い、必要なデータだけを上位へ渡す設計にします。

情報連携を強めるほど、セキュリティと運用ルールの重要性が高まります。

保全担当者が見てわかる設計にする

ネットワーク図、IPアドレス表、スイッチポート表、機器名、盤内ラベルを整備しておくと、停止時の復旧が早くなります。

通信設計が担当者の頭の中にしかない状態では、夜間停止や休日トラブルで復旧が遅れます。

EtherNet/IPは便利な反面、見えない通信の依存関係が増えるため、資料化が非常に重要です。

 

14. EtherNet/IPを学ぶ順番

初心者がEtherNet/IPを学ぶときは、いきなりCIP仕様書を読むよりも、設備構成から順に理解したほうが効率的です。

以下の順番で学ぶと、現場で使える知識につながりやすくなります。

Step 1:通常のEthernetとIPアドレスを理解する

まず、IPアドレス、サブネット、スイッチ、LANケーブル、Pingの意味を理解します。

ここが曖昧だと、EtherNet/IP特有の問題と一般ネットワークの問題を切り分けられません。

Step 2:PLCとリモートI/Oの関係を理解する

次に、PLCが入力を読み、演算し、出力する基本動作を確認します。

リモートI/Oは、この入出力をネットワーク越しに分散する仕組みだと考えると理解しやすくなります。

Step 3:CIPとI/O接続の考え方を理解する

最後に、CIP、アセンブリ、I/Oサイズ、接続周期、EDSファイルを学びます。

この段階まで来ると、マニュアルの通信設定表を読んで、PLC側の設定に落とし込めるようになります。

Step 4:実機で小さく試す

学習では、いきなり複数台の設備をつなぐより、PLCとリモートI/Oを一対一で接続するのが効果的です。

入力信号をONしたらPLCでどのビットが変わるか、PLCから出力したらどの端子がONするかを確認します。

小さな成功体験を作ることで、通信設定と制御動作の関係がつかみやすくなります。

 

15. よくある質問

Q1. EtherNet/IPのIPはInternet Protocolの意味ですか?

EtherNet/IPのIPはIndustrial Protocolの意味です。

ただし、通信の土台としてIPアドレスやTCP/IPを使うため、通常のネットワーク知識も必要になります。

Q2. EtherNet/IPは普通のLANケーブルで使えますか?

技術的にはEthernetケーブルを使いますが、設備用途では産業用ケーブルやコネクタを選ぶことが重要です。

ノイズ、屈曲、油、温度、振動がある現場では、事務用ケーブルの流用は避けたほうが安全です。

Q3. 三菱PLCでEtherNet/IPは使えますか?

機種、ユニット、ファームウェア、設定ツール、接続先機器の仕様によります。

三菱系ではCC-Link系ネットワークも多いため、EtherNet/IP対応が必要な場合は、対応ユニットやゲートウェイの仕様を確認してください。

Q4. EtherNet/IPとModbus TCPはどちらを使うべきですか?

リモートI/OやドライブなどをPLC中心に制御したい場合は、EtherNet/IPが向くことがあります。

計測器の値を読むだけのような単純な用途では、Modbus TCPのほうが扱いやすい場合もあります。

Q5. EtherNet/IPはリアルタイム制御に使えますか?

周期的なI/O通信には使われますが、全ての高速同期制御にそのまま向くわけではありません。

モーション制御や高精度同期が必要な場合は、対応機器、拡張機能、通信周期、ネットワーク構成を個別に確認する必要があります。

 

16. まとめ

EtherNet/IPは、標準Ethernetを土台にしながら、CIPによって産業機器を接続するための産業Ethernetです。

通常のイーサネットとの違いは、単にLANケーブルを使うかどうかではありません。

PLC、リモートI/O、インバータ、ロボットなどを、制御対象として周期的・診断的に扱う点に特徴があります。

三菱PLCとの関係では、三菱独自規格ではなく、必要に応じて対応ユニットやゲートウェイを確認する通信方式として捉えるのが安全です。

導入時は、IPアドレス、I/Oサイズ、通信周期、異常時動作、ネットワーク分離、保全資料まで含めて設計することが重要です。

EtherNet/IPを単なる「Ethernet機器の接続」と考えず、制御ネットワーク全体の設計要素として扱うことで、設備の立上げ性と保全性を大きく高められます。