
「塗装ブースの近くでは、普通の照明やスイッチを使ってはいけないと言われた。なぜだろう」
その理由を説明するのが、本記事のテーマである防爆です。
防爆とは、可燃性ガスや蒸気・粉じんのある場所で、電気機器が爆発の火種にならないようにするための技術体系です。
化学プラントや塗装工場はもちろん、溶剤や粉体を扱うあらゆる現場に関わる、安全の必須知識です。
本記事では、防爆の基本的な考え方と危険場所の区分(0種・1種・2種)から、耐圧防爆・本質安全防爆など防爆構造の種類、Ex d IIB T4といった記号の読み方、機器選定と実務の注意点までを、表を交えて体系的に解説します。
- 1. 防爆とは|電気機器を「火種」にしない技術
- 2. 危険場所の区分|0種・1種・2種
- 3. 防爆構造の種類
- 4. 防爆記号の読み方|Ex d IIB T4
- 5. 危険場所と構造の対応・設備実務
- 6. 実務での注意点
- まとめ
1. 防爆とは|電気機器を「火種」にしない技術
防爆とは、爆発性雰囲気のある場所で、電気機器が着火源にならないようにする技術と制度の総称です。
防爆構造をもつ電気機器を、防爆機器と呼びます。
1-1. 爆発の3要素と電気機器
爆発が起こるには、3つの要素がそろう必要があります。
可燃性物質・酸素(空気)・着火源の3つです。
溶剤の蒸気や可燃性ガスが空気と混ざると、爆発可能な濃度範囲が生まれます。
そこに着火源が加わった瞬間、爆発が発生します。
現場で可燃物と空気を完全になくすことは、プロセス上むずかしいことが多いものです。
そこで、3つ目の要素である着火源を断つことに重点が置かれます。
電気機器は、接点の火花・静電気・高温部など、着火源のかたまりです。
その電気機器を着火源にしないための仕掛けが、防爆構造なのです。
1-2. 電気機器のどこが着火源になるか
電気機器の着火源は、大きく2種類に分けられます。
電気火花と高温表面です。
スイッチやリレーの接点は、開閉のたびに小さな火花を出します。
モータのブラシ、コネクタの抜き差し、静電気の放電も火花の仲間です。
一方、ヒーターはもちろん、モータや照明も運転中は表面が高温になります。
ガスの種類によっては、炎や火花がなくても高温面に触れるだけで着火します。
防爆構造は、この「火花」と「高温」の両方を管理対象にしています。
後述する温度等級は、まさに高温表面を管理するための仕組みです。
1-3. 防爆が必要な現場
防爆というと化学プラントの印象が強いですが、対象はずっと身近です。
可燃性の気体・液体・粉体を扱えば、どんな工場でも危険場所が生まれ得ます。
塗装工場の塗装ブースやシンナー保管庫は、典型的な危険場所です。
印刷工場の溶剤、ガソリンスタンド、LPガス設備、水素を扱う実験室も対象です。
見落とされがちなのが、粉じんによる爆発です。
小麦粉・砂糖・アルミ粉・樹脂粉など、可燃性の粉体が舞う場所も危険場所になります。
「うちはガスを使っていないから無関係」とは言い切れません。
溶剤の小分け作業ひとつでも、その周囲には爆発性雰囲気が生まれるのです。
1-4. 法的な枠組み
日本の防爆は、労働安全衛生法の体系で義務付けられています。
爆発の危険がある場所では、防爆性能をもつ電気機械器具の使用が求められます。
防爆機器の性能は、国の検定制度によって担保されています。
該当する電気機器は型式検定に合格したものでなければならず、合格品には検定合格標章が付されます。
技術的な基準としては、電気機械器具防爆構造規格や、国際規格と整合した技術指針が整備されています。
現在は、IEC規格にもとづく国際整合の体系が広く使われています。
つまり防爆は、メーカーの自己申告ではなく検定に裏打ちされた制度です。
ユーザー側の責任は、場所の区分に適合した検定合格品を正しく選び、正しく施工・維持することにあります。
2. 危険場所の区分|0種・1種・2種
防爆の出発点は、場所の危険度を区分することです。
ガス・蒸気の危険場所は、0種・1種・2種の3つに分けられます。
2-1. 区分の考え方
区分の物差しは、爆発性雰囲気が「どれだけ頻繁に・どれだけ長く」存在するかです。
濃度の高さではなく、存在の頻度と時間で分けるのがポイントです。
常にガスが充満している場所と、事故のときだけ漏れる場所では、危険の質が違います。
危険度の高い場所ほど、より厳重な防爆構造が要求されます。
区分は、設備の構造・換気・取扱い方法をもとに、事業者側が決定します。
この区分が、使ってよい機器の範囲を決める土台になります。
2-2. 0種・1種・2種の定義
3つの区分の定義を表に整理します。
| 区分 | 爆発性雰囲気の存在状況 | 場所の例 |
|---|---|---|
| 0種場所(Zone 0) | 通常の状態で、連続または長時間存在する | 溶剤タンクの内部・容器の気相部 |
| 1種場所(Zone 1) | 通常の状態で、生成するおそれがある | 充填口・サンプリング口の周辺 |
| 2種場所(Zone 2) | 異常な状態でのみ、短時間生成するおそれがある | フランジ・バルブ周辺、換気の良い屋外設備 |
0種は「いつも危ない」、1種は「ふだんでも危なくなり得る」、2種は「異常時だけ危ない」と読み替えられます。
国際規格のZone 0・1・2と同じ考え方です。
同じ設備の周りでも、距離や高さによって区分は変わります。
タンク内部は0種、開口部の周囲は1種、その外側は2種、と層状に広がるイメージです。
2-3. 粉じんの危険場所
可燃性粉じんにも、同様の区分があります。
粉じん雲が連続して存在する場所から、異常時のみ生じる場所までを段階的に分けます。
粉じんはガスと違い、堆積するという性質があります。
堆積した粉じんは断熱材のように機器の放熱を妨げ、さらに舞い上がれば爆発の原因になります。
そのため粉じん防爆では、表面温度の管理と粉じんの侵入防止が中心になります。
容器の防じん性能と温度上昇の抑制を組み合わせた構造が使われます。
食品・医薬・樹脂加工など、粉体を扱う工場は意外に多いものです。
ガス防爆と粉じん防爆は要求が異なるため、対象に合わせた機器選定が必要です。
2-4. 区分を誤ると何が起こるか
場所の区分は、防爆対策全体の前提条件です。
区分を誤れば、その上に積み上げた機器選定がすべて崩れます。
危険度を低く見積もれば、不十分な機器が危険場所に置かれることになります。
逆に過大に見積もれば、高価な防爆機器だらけになりコストが膨らみます。
区分の根拠(換気条件・放出源の評価)は、文書として残しておくべきものです。
プロセスや換気設備が変わったときは、区分の見直しが必要になります。
「なんとなく1種扱い」ではなく、根拠のある区分図を持つこと。
それが防爆管理のスタートラインです。
3. 防爆構造の種類
着火源を断つアプローチの違いによって、防爆構造にはいくつもの種類があります。
代表的な構造を順に見ていきます。
3-1. 耐圧防爆構造(記号d)
耐圧防爆構造は、「中で爆発しても外に出さない」という発想の構造です。
頑丈な容器の中に機器を収め、内部で爆発が起きても容器が圧力に耐えます。
容器の合わせ目には、火炎が外に逃げる際に冷やされて消える隙間設計が施されています。
内部の爆発が、外部の爆発性雰囲気に引火しないことを構造で保証するのです。
火花を出す機器をそのまま収められるため、適用範囲が広いのが特長です。
照明・スイッチ・モータなど、最も広く使われている防爆構造です。
弱点は、容器が鋳物などで重く高価になることです。
また、ふたのボルト1本の締め忘れが防爆性能を失わせる点も覚えておくべきです。
3-2. 内圧防爆構造(記号p)
内圧防爆構造は、「ガスを中に入れない」という発想の構造です。
容器の内部に清浄な空気や不活性ガスを送り込み、外より高い圧力に保ちます。
内部が常に陽圧なので、外の可燃性ガスは容器に侵入できません。
着火源と可燃物が出会わなければ、爆発は起こり得ないという理屈です。
大型の制御盤や分析計など、耐圧容器に収めにくい機器の防爆化に適しています。
盤全体を丸ごと防爆化できる、スケールの大きい構造です。
運用には、保護気体の供給設備と圧力の監視が必要です。
内圧が失われたときに電源を遮断する保護連動も、セットで構成します。
3-3. 安全増防爆構造(記号e)
安全増防爆構造は、「そもそも火花も高温も出さないように作り込む」構造です。
正常運転で火花を出さない機器を対象に、絶縁・温度上昇・接続部の信頼性を強化します。
適用できるのは、端子箱・照明器具・かご形モータなど、火花性の接点をもたない機器です。
構造が比較的シンプルで、軽量・経済的なのが利点です。
かご形の誘導電動機は火花を出す接点がないため、安全増防爆との相性が良い機器です。
危険場所用のモータとして、耐圧防爆形と並ぶ定番になっています。
ただし「正常状態で火花を出さない」ことが前提の構造です。
故障時の保護(過負荷保護など)を確実に組み合わせることが求められます。
3-4. 本質安全防爆構造(記号ia・ib)
本質安全防爆構造は、「火花が出ても着火できないほどエネルギーを小さくする」構造です。
回路の電圧・電流を制限し、火花や熱のエネルギーを着火限界未満に抑えます。
回路に蓄えられるエネルギーも管理の対象です。
コンデンサに蓄えられるエネルギーや、コイルが放出するエネルギーは、次の式で表されます。
これらの蓄積エネルギーまで含めて、着火に必要なエネルギーを下回るよう設計します。
故障を2つ想定しても安全なものがia、1つ想定がibと区分されます。
センサや計装機器など、小電力の機器に適した構造です。
最も危険な0種場所で使えるのは、本質安全防爆のiaだけです。
3-5. その他の構造と一覧表
主な防爆構造を一覧に整理します。
| 構造 | 記号 | 発想 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 耐圧防爆 | d | 内部爆発を外に出さない | 照明・スイッチ・モータ |
| 内圧防爆 | p | 保護気体でガスを入れない | 制御盤・分析計 |
| 安全増防爆 | e | 火花・高温を出さない設計強化 | 端子箱・かご形モータ |
| 本質安全防爆 | ia・ib | 着火エネルギー未満に制限 | センサ・計装機器 |
| 油入防爆 | o | 火花部を油の中に沈める | 開閉器類 |
| 樹脂充填防爆 | m | 火花部を樹脂で覆い隔離 | 小型電子機器 |
| 非点火防爆 | n | 正常時に着火源とならない | 2種場所専用の機器 |
| 特殊防爆 | s | 上記以外で試験により実証 | 特殊用途 |
どの構造も、目指すゴールは「着火源にならないこと」で共通です。
アプローチが違うだけ、と整理すると覚えやすくなります。
4. 防爆記号の読み方|Ex d IIB T4
防爆機器の銘板には、Ex d IIB T4のような記号が表示されています。
この記号が読めれば、機器の素性が一目で分かります。
4-1. 記号を分解する
Ex d IIB T4を、要素ごとに分解してみます。
Exは防爆機器であることを示す共通の接頭記号です。
続くdは、防爆構造の種類(この例では耐圧防爆)を表します。
前章の表にあったp・e・ia・ibなどが、この位置に入ります。
IIBは対象ガスのグループ、T4は温度等級を表します。
つまり「耐圧防爆構造で、IIBグループのガスに使え、表面温度はT4以下」という意味です。
記号は世界共通の言語のようなものです。
輸入機器でも、この並びを読めば適否を判断できます。
4-2. ガスグループ|IIA・IIB・IIC
ガスグループは、対象となるガスの着火しやすさによる分類です。
IIA・IIB・IICの順に、より着火しやすいガスに対応します。
| グループ | 代表的なガス | 危険度 |
|---|---|---|
| IIA | プロパン・ガソリン・トルエン | 標準 |
| IIB | エチレン・都市ガス成分の一部 | 高い |
| IIC | 水素・アセチレン | 最も高い |
上位グループの機器は、下位グループのガスにも使えます。
IIC対応の機器なら、IIA・IIBのガスにも適合するという関係です。
水素やアセチレンを扱う現場では、IIC対応が必須になります。
自分の現場のガスがどのグループかを、まず確認してください。
4-3. 温度等級|T1〜T6
温度等級は、機器表面の最高温度の上限を表す区分です。
ガスには、炎がなくても高温面に触れるだけで着火する発火温度があるためです。
| 温度等級 | 機器表面の最高温度 |
|---|---|
| T1 | 450℃以下 |
| T2 | 300℃以下 |
| T3 | 200℃以下 |
| T4 | 135℃以下 |
| T5 | 100℃以下 |
| T6 | 85℃以下 |
数字が大きいほど、表面温度が低く抑えられた機器です。
対象ガスの発火温度より低い温度等級の機器を選ぶのが原則です。
たとえば発火温度が200℃前後のガスなら、T4以上(135℃以下)の機器を選ぶと安全側です。
「T4対応」が多くの現場で標準的に求められるのは、幅広いガスをカバーできるためです。
4-4. 適合確認の手順
機器選定時の適合確認は、3点セットで行います。
場所の区分・ガスグループ・温度等級の3つです。
まず、設置場所が0種・1種・2種のどれかを区分図で確認します。
次に、対象ガスのグループと発火温度を物性データで確認します。
そのうえで、区分に使える防爆構造かつガスグループ・温度等級が適合する機器を選びます。
銘板のEx記号と検定合格標章を、現物で確認して完了です。
この手順を飛ばした「とりあえず防爆品」は、適合しない可能性があります。
防爆品なら何でもよいわけではないことを、強調しておきます。
4-5. 機器保護レベル(EPL)という表記
近年の国際整合規格にもとづく機器では、記号の末尾にEPLが付記されます。
EPLとは機器保護レベルのことで、機器がもつ保護の堅牢さを表す指標です。
ガス用では、Ga・Gb・Gcの3段階で表されます。
Gaが最も高い保護レベルで、おおむね0種場所に対応し、Gbが1種、Gcが2種に対応します。
たとえば「Ex db IIB T4 Gb」という表示なら、1種場所まで使える耐圧防爆機器と読めます。
粉じん用には、Da・Db・Dcという同様の段階が用意されています。
従来の「構造の種類から使える場所を逆引きする」方法に比べ、対応が一目で分かるのが利点です。
新しい機器の銘板ではEPLまで確認する習慣をつけると、選定ミスを減らせます。
5. 危険場所と構造の対応・設備実務
場所の区分と防爆構造の対応関係を押さえれば、選定は迷いません。
施工と配線の注意点もあわせて整理します。
5-1. 区分ごとに使える構造
危険場所の区分と、使用できる主な防爆構造の対応です。
| 区分 | 使用できる主な構造 |
|---|---|
| 0種場所 | 本質安全防爆(ia)のみ |
| 1種場所 | 耐圧防爆(d)・内圧防爆(p)・安全増防爆(e)・本質安全防爆(ia・ib)など |
| 2種場所 | 1種で使える構造に加え、非点火防爆(n)など |
0種場所の厳しさが、表からはっきり読み取れます。
タンク内部に入れられるのは、エネルギー制限されたia機器だけです。
危険度の高い場所用の機器は、低い場所でも使えます。
逆方向の流用は絶対にできない、という非対称な関係です。
5-2. 本質安全システムとバリア
本質安全防爆は、機器単体ではなく回路全体で成立します。
危険場所内のセンサと、安全場所側の機器をつなぐ回路全体の設計です。
その中心となるのが、本質安全バリア(安全保持器)です。
安全場所側に設置し、危険場所へ送られる電圧・電流を制限値以下に抑えます。
ツェナーダイオードや抵抗で構成され、故障時も制限を保証する設計になっています。
バリアと現場機器、接続ケーブルの組み合わせまで含めて適合性を確認します。
ツェナーダイオードをはじめとするダイオードの働きは、以下の記事で解説しています。
本安回路の配線は、他の回路と分離し、識別できるように施工します。
「回路全体がひとつの防爆機器」という意識で扱ってください。
5-3. 配線・工事の注意
防爆は、機器だけでなく配線工事にも要求があります。
代表的なのが、電線管のシーリングです。
電線管の内部は、ガスの通り道になり得ます。
危険場所と安全場所の境界などでシーリングフィッチングを設け、管内を仕切ります。
耐圧防爆容器への配線引込部も、専用の引込方式で気密と防爆性能を保ちます。
ケーブルグランドの選定・締付けひとつで、性能が左右されます。
防爆電気工事には、専門の知識と経験が不可欠です。
設計・施工とも、防爆の実績がある業者・有資格者に依頼するのが原則です。
5-4. 静電気と非電気の着火源
防爆機器を整えても、着火源は電気機器だけではありません。
静電気・摩擦熱・衝撃火花などの非電気的な着火源も管理が必要です。
とくに静電気は、溶剤の流動や粉体の搬送で日常的に発生します。
接地・ボンディングや帯電防止対策を、防爆機器とセットで実施します。
人体の帯電も着火源になり得るため、帯電防止服・靴が指定される現場もあります。
工具の材質(防爆工具)まで指定されることもあります。
「機器は防爆品なのに、作業者が火種だった」では本末転倒です。
着火源管理は、電気と非電気の両面から行いましょう。
6. 実務での注意点
最後に、防爆エリアを運用するうえでの注意点をまとめます。
防爆性能は、日々の管理によって維持されるものです。
6-1. 非防爆機器の持ち込み禁止
危険場所への非防爆機器の持ち込みは、厳格に禁止すべき事項です。
最も身近で危険なのが、スマートフォンや一般のカメラ・測定器です。
普通の電子機器は、内部で小さな火花や高温部が生じ得ます。
「ポケットに入れていただけ」でも、危険場所では着火源の持ち込みです。
持ち込みが必要な場合は、防爆仕様のスマートフォンや測定器を使います。
入口に持ち込み禁止の表示を掲げ、ルールとして徹底します。
協力会社や見学者まで含めた周知が、現場管理の要です。
「知らなかった」を作らない仕組みづくりが求められます。
6-2. 改造・修理の制約
防爆機器は、検定に合格した状態がすべてです。
現場での改造や安易な修理は、検定性能を失わせます。
耐圧防爆容器の合わせ面に傷をつける、純正以外のボルトに交換する。
こうした一見軽微な変更でも、防爆性能は保証外になります。
穴あけ加工や部品の流用は論外です。
修理はメーカーまたは認められた方法によることが原則です。
「動けばよい」が通用しないのが防爆機器です。
保全部門には、この特殊性を踏まえた修理ルールの整備が求められます。
6-3. 点検のポイント
防爆機器の点検では、防爆性能に関わる部位を重点的に見ます。
耐圧防爆なら、容器の傷・腐食と締結ボルトの緩み・欠落です。
ガスケットやケーブルグランドの劣化も、性能低下の定番箇所です。
内圧防爆では、保護気体の圧力と警報・遮断の連動を確認します。
本質安全システムでは、バリアの健全性と配線の分離状態を点検します。
銘板や検定合格標章が読めなくなっていないかも、確認しておきたい項目です。
点検記録を残し、異常時は使用を止めて専門家に判断を仰ぎます。
防爆性能は目に見えないからこそ、記録による管理が効きます。
6-4. プロセス変更時の見直し
危険場所の区分は、一度決めたら終わりではありません。
取り扱う物質や設備が変われば、区分も変わり得ます。
新しい溶剤への切り替えは、ガスグループや発火温度の変化を意味します。
換気設備の増減や建屋の改造も、区分の前提を崩します。
プロセス変更の管理フローに、「防爆区分の見直し」を組み込んでください。
変更のたびに区分図を更新し、機器の適合を再確認します。
防爆は、一度の設計ではなく継続的な管理で守られる安全です。
区分図・機器台帳・点検記録の3点セットを、現場の生きた文書として維持しましょう。
まとめ
本記事では、爆発性雰囲気の中で電気機器を着火源にしないための「防爆」について、爆発の3要素と法的枠組みから、危険場所の区分(0種・1種・2種)、耐圧・内圧・安全増・本質安全といった防爆構造の種類、Ex d IIB T4などの記号の読み方、機器選定と運用管理までを体系的に解説しました。
危険場所は爆発性雰囲気の存在頻度で区分され、0種場所で使えるのは本質安全防爆(ia)だけです。
機器選定は、場所の区分・ガスグループ(IIA/IIB/IIC)・温度等級(T1〜T6)の3点で適合を確認します。
非防爆機器の持ち込み禁止、改造禁止、区分の見直しといった運用管理が、防爆性能を維持します。
防爆は、電気設備の知識と安全管理が交わる奥深い分野です。
まずは自分の現場の区分図と機器の銘板を確認するところから、防爆の実務を始めてみてください。