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接地(アース)とは?種類と目的・接地抵抗を解説

「洗濯機や電子レンジのアース線、つながないと何が危ないのか」

その意味を整理してくれるのが、本記事のテーマである接地(アース)です。

接地は、電気機器を大地につないで、漏れた電気を安全に逃がす仕組みで、感電や火災を防ぐための基本的な安全対策です。

家庭の家電から工場の大型設備まで、電気を安全に使うために欠かせません。

本記事では、接地の目的と種類から、接地抵抗、接地工事、感電を防ぐ仕組み、実務での扱いまでを、図表を交えて体系的に解説します。

 

 

1. 接地(アース)とは|電気を大地へ逃がす仕組み

接地とは、電気機器の金属部分を、電線で大地につなぐことです。

アースとも呼ばれ、電気を安全に使うための基本的な仕組みです。

1-1. 接地の役割

接地の基本的な役割は、万一漏れた電気を大地に逃がすことです。

機器の内部で絶縁が壊れると、本来電気が流れない金属の外箱に電気が漏れることがあります。

 

このとき接地がされていれば、漏れた電気は大地へと流れていきます。
人が触れても、電気は抵抗の小さい大地側へ流れ、感電を防げます。

 

接地がなければ、漏れた電気は機器に触れた人を通って流れてしまいます。
接地は、漏れた電気の安全な逃げ道を用意しておく対策なのです。

 

つまり接地は、見えない漏電に備えた「保険」のような仕組みです。
普段は何の働きもしませんが、異常時に人を守ってくれます。

1-2. なぜ接地が必要か

電気機器は、時間とともに絶縁が劣化したり、故障したりすることがあります。

絶縁が壊れると、外箱に電気が漏れ出す可能性があります。

 

もし接地されていない機器の外箱に電気が漏れていると、触れた人が感電します。
特に、水回りで使う機器は感電の危険が高く、接地が重要になります。

 

接地は、こうした不測の漏電による感電を防ぐための備えです。
絶縁という第一の壁が破られたときの、第二の安全策といえます。

 

このため、危険度の高い機器には接地が法律で義務づけられています。
安全に電気を使ううえで、接地は欠かせない基本対策なのです。

1-3. 接地と絶縁の関係

接地は、絶縁とセットで感電を防ぐ仕組みです。

絶縁は電気を漏らさないための壁、接地は漏れた電気を逃がす道です。

 

絶縁が健全なら、そもそも電気は漏れず、接地の出番はありません。
しかし絶縁が劣化して漏れたとき、接地が人を守る働きをします。

 

絶縁と接地は、感電を防ぐための二重の安全策として機能します。
どちらか一方では不十分で、両方そろって初めて高い安全性が得られます。

 

だからこそ、電気設備の点検では絶縁抵抗と接地抵抗の両方を測定します。
2つの状態を確認することで、感電に対する安全を多重に保証するのです。

 

1-4. 接地の記号と表示

接地は、回路図や機器の上で専用の記号で表されます。

複数の横線を重ねた記号や、斜線を組み合わせた記号が使われます。

 

機器のアース端子には、この接地記号や「アース」「E」といった表示があります。
接地線をどこにつなげばよいかが、記号で示されているのです。

 

記号を知っておくと、図面や機器のどこが接地かをすぐに判断できます。
接地端子を正しく見分けることが、確実な接地接続の第一歩です。

 

接地線の緑色とあわせて、記号は誤接続を防ぐ手がかりになります。
表示を確認する習慣が、安全な施工につながります。

 

2. 接地の目的

接地には、感電防止以外にもいくつかの目的があります。

主な目的を見ていきましょう。

2-1. 感電の防止

接地の最も重要な目的が、感電の防止です。

機器の外箱に電気が漏れても、接地があれば電気は大地へ流れます。

 

大地への経路は抵抗が小さいため、電気はそちらを通ります。
人が触れても、人体より接地側に多くの電流が流れ、危険を減らせます。

 

接地は、漏電時に人体に流れる電流を抑える、感電防止の要です。
家電のアース線は、この感電防止のためにつなぎます。

2-2. 漏電遮断器の確実な動作

接地は、漏電遮断器を確実に動作させるためにも必要です。

漏電遮断器は、漏れた電流を検知して回路を遮断します。

 

接地があると、漏れた電気が大地を通って流れ、漏電電流として検出されます。
これにより、漏電遮断器が素早く動作して回路を切れます。

 

接地がないと、漏電があっても電流が流れず、遮断器が働かないことがあります。
接地と漏電遮断器は、組み合わせて初めて十分な効果を発揮します。

2-3. 雷・静電気からの保護

接地は、雷や静電気から機器を守る役割も果たします。

雷が落ちたときの大電流を、接地を通じて大地に逃がします。

 

避雷針が雷を安全に大地へ導くのも、接地の働きです。
また、たまった静電気を逃がし、機器の誤動作や放電を防ぎます。

 

過大な電気エネルギーを大地に逃がすことで、機器と人を守ります。
感電防止だけでなく、機器保護の面でも接地は重要です。

2-4. 電位の安定

接地は、電気回路の電位の基準を定める役割もあります。

大地を基準(ゼロ電位)とすることで、回路の電圧が安定します。

 

基準がふらつくと、電子機器が誤動作したり、ノイズの影響を受けやすくなります。
接地で電位の基準を固定することで、安定した動作が得られます。

 

特に、精密な電子機器や通信機器では、この基準としての接地が重要です。
安全だけでなく、機器の正常な動作にも接地が関わっているのです。

 

2-5. 等電位ボンディング

接地に関連する考え方に、等電位ボンディングがあります。

これは、近くにある金属どうしを互いに接続して、電位を同じにする方法です。

 

金属どうしの電位がそろっていれば、それらに同時に触れても電位差がなく、感電しません。
浴室や医療現場など、感電リスクの高い場所で重要になります。

 

接地が「大地へ逃がす」対策なら、等電位ボンディングは「電位差をなくす」対策です。
両者を組み合わせることで、より高い安全性が得られます。

 

特に人体が濡れている環境では、わずかな電位差も危険になります。
等電位化は、そうした場所での感電防止に効果的な手法です。

 

3. 接地の種類

接地は、目的や対象に応じて種類が定められています。

日本ではA種からD種までの区分があります。

3-1. A種接地工事

A種接地工事は、高圧や特別高圧の機器に対する接地です。

高い電圧を扱う機器の外箱などに施されます。

 

大きな電圧を扱うため、最も厳しい基準(小さな接地抵抗)が求められます。
万一の漏電時にも、確実に大地へ電気を逃がす必要があるためです。

 

高圧設備の安全を支える、重要な接地です。
扱う電圧が高いほど、接地に求められる性能も高くなります。

3-2. B種接地工事

B種接地工事は、変圧器の高圧側と低圧側の間に施す接地です。

高圧が低圧側に漏れ込むのを防ぐ役割があります。

 

変圧器の内部で絶縁が壊れると、高圧が低圧側に侵入する危険があります。
B種接地は、この高低圧混触による事故を防ぎます。

 

変圧器を介して電気を受ける設備の、安全の基礎となる接地です。
高圧と低圧の境界を守る、特別な目的の接地といえます。

3-3. C種接地工事

C種接地工事は、300Vを超える低圧の機器に対する接地です。

比較的高い電圧の低圧機器の、感電防止のために施されます。

 

D種より厳しい基準が求められ、より小さな接地抵抗が必要です。
電圧が高い分、漏電時の危険も大きいためです。

 

工場の動力機器などで、この接地が使われます。
300Vを境に、求められる接地の基準が変わります。

3-4. D種接地工事

D種接地工事は、300V以下の低圧の機器に対する接地です。

家庭の家電や、一般的な低圧機器に最も広く使われます。

 

洗濯機や電子レンジのアースは、このD種接地にあたります。
身近な機器の感電防止を担う、最も一般的な接地です。

 

4種類の中では基準が最もゆるやかですが、それでも安全には欠かせません。
私たちが日常で接する接地の多くが、このD種です。

3-5. 接地工事の種類のまとめ

4種類の接地工事を、対象とともに表で整理します。

 

種類 主な対象 接地抵抗の基準
A種 高圧・特別高圧機器 10Ω以下
B種 変圧器の高低圧間 計算で決定
C種 300V超の低圧機器 10Ω以下
D種 300V以下の低圧機器 100Ω以下

 

扱う電圧が高いほど、接地抵抗の基準は厳しく(小さく)なります。
対象に応じて、適切な種類の接地工事を施します。

 

4. 接地抵抗

接地の良し悪しを表す指標が、接地抵抗です。

その意味と基準を見ていきましょう。

4-1. 接地抵抗とは

接地抵抗とは、接地した電極と大地の間の電気の流れにくさです。

電気が大地へどれだけスムーズに流れるかを表します。

 

接地抵抗が小さいほど、漏れた電気が大地へ流れやすく、安全です。
絶縁抵抗とは逆で、接地抵抗は小さいほど良いという点が重要です。

 

大地そのものにも抵抗があり、接地極と大地の接触状態で値が変わります。
この接地抵抗を小さく保つことが、接地を有効に機能させる鍵です。

4-2. 接地抵抗は小さいほど良い

接地抵抗が大きいと、漏れた電気が大地へ流れにくくなります。

その結果、機器の外箱の電位が上がり、触れた人が感電する危険が高まります。

 

逆に接地抵抗が小さければ、漏れた電気は素早く大地へ逃げます。
外箱の電位上昇が抑えられ、感電の危険が小さくなります。

 

このため、接地抵抗はできるだけ小さくすることが求められます。
絶縁抵抗(大きいほど良い)と混同しないよう、注意が必要です。

4-3. 接地抵抗の基準値

接地抵抗には、種類ごとに上限値が定められています。

A種とC種は10Ω以下、D種は100Ω以下が基本です。

 

扱う電圧が高い接地ほど、より小さな接地抵抗が求められます。
漏電時の危険が大きいほど、確実に電気を逃がす必要があるためです。

 

点検では、測定した接地抵抗がこの基準を満たしているかを確認します。
基準を超えていれば、接地が十分に機能していない状態です。

4-4. 接地抵抗の測定

接地抵抗は、接地抵抗計(アーステスタ)という測定器で測ります。

補助の電極を地面に打ち込み、接地極との間の抵抗を測定します。

 

測定原理は、電流を流して電圧を測り、抵抗を求めるオームの法則の応用です。
大地に電流を流し、生じる電圧から接地抵抗を算出します。

 

接地抵抗は、土の乾湿などで変化します。乾燥時には大きくなる傾向があります。
定期的に測定し、基準値を保てているかを確認することが大切です。

 

4-5. 接地抵抗を下げる工夫

接地抵抗が基準を満たさないときは、いくつかの方法で下げます。

最も基本的なのは、接地極を深く埋めることです。深い層ほど湿っていて抵抗が小さくなります。

 

また、接地極の本数を増やして並列につなぐ方法も有効です。
複数の接地極を並列にすると、合成された接地抵抗が小さくなります。

 

土の導電性を高める接地抵抗低減剤を、接地極の周囲に使うこともあります。
乾燥した土地や岩盤など、抵抗が下がりにくい場所で用いられます。

 

これらを組み合わせて、基準を満たす接地抵抗を実現します。
土地の条件に応じた工夫が、良好な接地をつくる鍵です。

 

5. 接地工事

接地を実際に施すには、接地極と接地線が必要です。

その施工を見ていきましょう。

5-1. 接地極

接地極は、大地に電気を逃がすために地中に埋める電極です。

銅板や接地棒などが使われ、地中深くに打ち込みます。

 

接地極と大地の接触面積が大きいほど、接地抵抗は小さくなります。
湿った深い地層に届くほど、良好な接地が得られます。

 

接地抵抗が下がらない場合は、接地極を増やしたり深く埋めたりします。
土の条件に応じて、接地極の数や深さを工夫します。

5-2. 接地線

接地線は、機器の金属部分と接地極をつなぐ電線です。

漏れた電気を接地極まで導く役割があります。

 

接地線は、漏電時の電流を確実に流せる十分な太さが必要です。
細すぎると、漏電時に焼き切れて接地の役目を果たせません。

 

接地線の色は、緑や緑黄のしま模様と決められています。
これにより、ほかの電線と区別し、誤接続を防いでいます。

5-3. 施工と接続

接地工事では、接地極・接地線・機器を確実に接続します。

接続が緩むと、そこで抵抗が増えて接地の効果が失われます。

 

緩みや腐食のない、確実な接続が求められます。
特に、屋外の接地極付近は腐食しやすいため、注意が必要です。

 

施工後は、接地抵抗を測定して基準を満たしているかを確認します。
正しく施工し、測定で確認して、初めて接地は機能します。

 

5-4. 接地極の種類

接地極には、いくつかの種類があります。代表的なのが、棒状の接地棒です。

銅や銅めっき鋼の棒を地中に打ち込むもので、施工が容易で広く使われます。

 

より低い接地抵抗が必要な場合は、銅板を埋設する方法も使われます。
板状にすることで大地との接触面積を増やし、抵抗を下げます。

 

建物の鉄筋を接地極として利用する、構造体接地という方法もあります。
大きな鉄筋網が大地と広く接するため、非常に低い接地抵抗が得られます。

 

土地の条件や必要な接地抵抗に応じて、最適な接地極を選びます。
接地は絶縁とあわせて点検する項目で、絶縁抵抗の記事も参考になります。

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6. 感電を防ぐ仕組み

接地が実際にどのように感電を防ぐのか、仕組みを見ていきましょう。

漏電遮断器との連携が鍵です。

6-1. 接地で電位を逃がす

機器の外箱に電気が漏れると、接地を通じて電気が大地へ流れます。

接地抵抗が小さければ、外箱の電位はほとんど上がりません。

 

外箱の電位が低ければ、人が触れても電位差が小さく、感電しにくくなります。
接地は、危険な電位の上昇を抑える働きをするのです。

 

人体より大地のほうが電気を通しやすければ、電流は大地側へ流れます。
こうして、人体に流れる電流を最小限に抑えます。

6-2. 漏電遮断器との連携

接地と漏電遮断器が組み合わさると、より確実に感電を防げます。

漏電で大地へ電流が流れると、漏電遮断器がそれを検知します。

 

検知した漏電遮断器は、素早く回路を遮断して電気を止めます。
接地が漏電電流の経路を作り、遮断器がそれを検知して切るという連携です。

 

接地は電位上昇を抑え、漏電遮断器は電源そのものを切る。
この2つが組み合わさることで、感電に対する高い安全性が得られます。

 

6-3. 接地が不十分なときの危険

接地が切れていたり、接地抵抗が大きすぎたりすると、感電防止の効果が失われます。

漏電しても電気が大地へ逃げず、機器の外箱が危険な電位になってしまうのです。

 

さらに、接地が不十分だと漏電電流が流れず、漏電遮断器も働かないことがあります。
接地と漏電遮断器の両方が機能しなければ、感電を防げません。

 

見た目では接地の良し悪しはわからないため、測定による確認が欠かせません。
接地は「つないであるから安心」ではなく、抵抗値まで確認して初めて信頼できます。

 

アース線をつないでいても、抵抗が大きければ役に立たないこともあります。
確実な接地と定期的な確認が、安全の前提になります。

 

7. 実務での接地

接地は、電気設備の保守で重要な管理項目です。

実務での扱いを見ていきましょう。

7-1. 接地の共用と分離

複数の機器で接地を共用するか、分離するかは、用途によって判断します。

一般的な機器では、接地を共用することが多くあります。

 

一方、精密な電子機器や通信機器では、接地を分けることがあります。
ほかの機器のノイズが、接地線を通じて影響するのを避けるためです。

 

接地のとり方は、安全性とノイズ対策の両面から考えます。
用途に応じた適切な接地系統の設計が、トラブルを防ぎます。

7-2. 接地の点検

接地は、定期的に接地抵抗を測定して状態を確認します。

接地抵抗が基準値を超えていないかをチェックします。

 

接地極の腐食や、接続部の緩みがないかも点検します。
長年のうちに、接地抵抗が上がったり接続が劣化したりするためです。

 

接地は、いざというときに機能しなければ意味がありません。
定期点検で、確実に働く状態を保つことが重要です。

 

接地抵抗の上昇は、接地極の腐食や土の乾燥が原因のことが多くあります。
原因に応じて、接地極の打ち増しや接続部の補修で対応します。

 

接地が切れていたり抵抗が大きすぎたりすると、漏電時に感電や火災を防げません。
絶縁抵抗とあわせて、接地抵抗も継続的に管理することが安全の基礎です。

7-3. アース付きコンセントの活用

家庭でも、洗濯機や電子レンジには接地端子付きのコンセントを使います。

アース線を確実につなぐことで、万一の漏電から身を守れます。

 

面倒に感じても、水回りの機器のアースは必ずつなぐべきです。
感電の危険が高い場所ほど、接地の効果が大きくなります。

 

接地は、専門家だけでなく、私たちの日常の安全にも関わっています。
身近なアースの意味を理解して、正しく活用することが大切です。

まとめ

本記事では、電気を大地へ逃がす「接地(アース)」について、その目的と種類から、接地抵抗、接地工事、感電を防ぐ仕組み、実務での扱いまでを体系的に解説しました。

接地は、漏れた電気を大地に逃がして感電や火災を防ぐ仕組みで、絶縁とセットで安全を守ります。

A種からD種までの種類があり、扱う電圧が高いほど接地抵抗の基準は小さくなります。

接地抵抗は小さいほど良く、絶縁抵抗(大きいほど良い)とは逆である点に注意が必要です。

 

接地は、漏電遮断器と組み合わさることで、感電に対する高い安全性を実現します。
絶縁やブレーカーとあわせて、電気設備の安全技術への理解を深めていってください。