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高調波とは?発生原因と対策・ガイドライン

「進相コンデンサがうなる」「リアクトルが異常に熱い」「原因不明の機器誤動作が続く」

こうした症状の裏に潜んでいることが多いのが、本記事のテーマである高調波です。

高調波とは、基本となる50Hzや60Hzの整数倍の周波数をもつ成分のことで、電圧や電流の波形をゆがませる正体です。

インバータなどのパワーエレクトロニクス機器の普及とともに、高調波は現代の電気設備が避けて通れない課題になりました。

本記事では、高調波の正体と発生原因から、引き起こされる障害、国のガイドラインによる規制値、直列リアクトルやフィルタによる対策までを、表と計算を交えて体系的に解説します。

 

 

1. 高調波とは|波形をゆがませる整数倍の周波数成分

高調波とは、基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波成分のことです。

ひずんだ波形は、基本波と高調波の重ね合わせとして表現できます。

1-1. 基本波と高調波の定義

日本の商用電源は、50Hzまたは60Hzの正弦波です。

この本来の周波数成分を基本波(第1次)と呼びます。

 

基本波のn倍の周波数をもつ成分が、第n次高調波です。
50Hz系なら、第5次高調波は250Hz、第7次高調波は350Hzになります。

 

実務で問題になるのは、おおむね第40次程度までの成分です。
それを超える高い周波数の成分は高周波ノイズとして、高調波とは区別して扱われます。

 

きれいな正弦波であるはずの電気がなぜゆがむのか。
その答えは、波形の重ね合わせという性質にあります。

1-2. ひずみ波は正弦波の重ね合わせ

どんなにゆがんだ周期波形でも、周波数の異なる正弦波の足し合わせに分解できます。

これはフーリエ級数と呼ばれる数学の定理で、高調波解析の理論的な土台です。

 

たとえば基本波に第5次高調波を2割ほど混ぜると、波形の頂上がへこんだひずみ波になります。
逆にいえば、ひずんだ波形を観測したら、そこには必ず高調波成分が含まれています。

 

本来の直流と交流の世界では、交流はきれいな正弦波として扱われます。
しかし現実の系統では、さまざまな機器が高調波を注入し、波形を少しずつゆがませているのです。

 

高調波対策とは、このゆがみ成分を一定レベル以下に保つ取り組みといえます。
まず「ひずみ波=基本波+高調波」という見方を押さえてください。

1-3. 問題になるのは奇数次|5次・7次が主役

高調波のうち、実際の系統で大きいのは奇数次の成分です。

とくに第5次と第7次が圧倒的に大きく、対策検討でもこの2つが主な対象になります。

 

交流波形は、プラス側とマイナス側が対称な形をしています。
このような対称波形からは、理論上、偶数次の高調波が発生しません。

 

さらに後述する三相の整流回路では、3の倍数次も打ち消されます。
残るのは5次・7次・11次・13次といった成分で、次数が高いほど小さくなる傾向があります。

 

「高調波対策=まず5次と7次」と覚えておくと、規制値や対策の理解が早くなります。
国のガイドラインの計算でも、通常は第5次と第7次を対象とすれば良いとされています。

1-4. ひずみ率THDという指標

波形のゆがみ具合は、総合電圧ひずみ率(THD)という指標で定量化します。

各次数の高調波電圧の実効値を2乗和の平方根で合成し、基本波に対する比率で表します。

 THD = \dfrac{\sqrt{V_2^2 + V_3^2 + V_4^2 + \cdots}}{V_1} \times 100

 

 V_1 は基本波電圧、 V_2 以降は各次数の高調波電圧です。
たとえば基本波に対して5次が4%、7次が3%含まれていれば、ひずみ率は5%になります。

 

検算すると、√(4²+3²)=√25=5となり、ちょうど5%です。
2乗和で合成するため、最大成分がひずみ率をほぼ支配することが分かります。

 

このひずみ率は、後述する環境目標レベルの判定にも使われる中心的な指標です。
高調波の議論では、必ずこのTHDが物差しになります。

1-5. 高調波と高周波ノイズの違い

高調波とよく混同されるのが、高周波ノイズです。

どちらも本来の信号に重なる邪魔者ですが、周波数帯と対策がまったく異なります。

 

高調波は、基本波の整数倍というきれいに飛び飛びの成分で、対象はおおむね数kHzまでです。
一方、高周波ノイズはインバータのスイッチングなどが生む数十kHz〜MHz帯の連続的な成分です。

 

高調波はリアクトルやフィルタといった電力回路側の対策が中心になります。
高周波ノイズは、ノイズフィルタやシールド、配線分離といったEMC対策の領域です。

 

「コンデンサが過熱するのは高調波、センサ信号が乱れるのはノイズ」が大まかな見分け方です。
症状に応じて、どちらの土俵の問題かを最初に切り分けると対策の迷走を防げます。

 

2. 高調波の発生原因

高調波の発生源は、電気を「ゆがんだ形で」取り込む機器です。

その代表が、半導体で交流を直流に変換する整流回路をもつ機器です。

2-1. 整流回路が高調波を生むしくみ

パソコンからインバータまで、電子機器の電源部は交流を直流に変換しています。

この変換を担うのが、ダイオードを使った整流回路と平滑コンデンサです。

 

平滑コンデンサは、電圧が波形の頂上付近にあるときだけ充電されます。
そのため電流は、頂上付近に集中したパルス状の波形になります。

 

このパルス状の電流こそ、高調波をたっぷり含んだひずみ波です。
電圧は正弦波でも、流れる電流が正弦波でない機器を非線形負荷と呼びます。

 

非線形負荷が増えるほど、系統に注入される高調波電流も増えます。
省エネ機器の普及が、皮肉にも高調波問題を拡大させてきたのです。

2-2. 代表的な高調波発生機器

身の回りの高調波発生機器を一覧にします。

機器 高調波の発生源 主な設置場所
インバータ 入力側の整流回路 工場のモータ駆動・空調
UPS(無停電電源装置) 整流器(充電回路) サーバ室・重要負荷
直流電源装置・充電器 整流回路 通信設備・蓄電池設備
LED照明・OA機器 スイッチング電源 オフィス全般
アーク炉・溶接機 アークの非線形性 製鋼・板金工場

 

1台あたりの発生量は小さくても、台数がそろえば無視できない量になります。
とくに容量の大きいインバータとUPSは、高調波検討の主役です。

 

機器のカタログには、高調波発生機器である旨と換算係数が明示されています。
設備計画では、この情報をもとに発生量を見積もります。

2-3. 6パルス整流と「6k±1」の法則

三相の整流回路では、発生する高調波の次数に法則があります。

標準的な三相ブリッジ整流は、1周期に6回の整流動作を行うため6パルス整流と呼ばれます。

 

6パルス整流から発生する高調波の次数は、次の式で表されます。

 n = 6k \pm 1 \quad (k = 1, 2, 3, \cdots)

 

kに1、2、3を入れると、5次・7次・11次・13次が出てきます。
系統で5次と7次が支配的なのは、この6パルス整流が世の中に最も多いためです。

 

各次数の大きさは、理論上おおむね次数分の1に比例して小さくなります。
5次は基本波の約2割、7次は約14%という見当です。

2-4. 3次高調波と中性線の過電流

単相のスイッチング電源では、第3次高調波も大量に発生します。

3次高調波には、三相回路で特有のやっかいな性質があります。

 

三相の基本波は、120度ずつ位相がずれて互いに打ち消し合います。
ところが3次高調波は3倍の周波数のため、3相とも同位相になってしまいます。

 

同位相の電流は打ち消されず、すべて中性線に集まって流れます。
このため、OA機器の多いビルでは中性線が過熱する事故が起こり得ます。

 

「負荷が三相平衡なら中性線電流はゼロ」という常識は、高調波には通用しません。
中性線の太さ選定では、3次高調波の存在を意識する必要があります。

 

3. 高調波が引き起こす障害

高調波は、発生させた本人ではなく、同じ系統につながる他の機器に被害を与えます。

この「加害者と被害者が別」という構図が、高調波問題の特徴です。

3-1. 進相コンデンサと直列リアクトルの過熱・焼損

高調波被害の代表が、力率改善用の進相コンデンサ設備です。

コンデンサのインピーダンスは、周波数が高いほど小さくなる性質があります。

 

第5次高調波に対しては、インピーダンスが基本波の5分の1になります。
つまり進相コンデンサは、系統の高調波電流を自分から吸い込んでしまうのです。

 

定格を超える電流が流れ続ければ、コンデンサや直列リアクトルは過熱します。
うなり音・ケースの膨れ・異臭は、高調波過熱の典型的なサインです。

 

最悪の場合は絶縁破壊から焼損・破裂に至ります。
高調波障害の多くが、まずコンデンサ設備に現れると覚えてください。

3-2. 機器の誤動作と過熱

高調波で波形がゆがむと、さまざまな機器が誤動作します。

電圧のゼロクロス(ゼロ点通過)を基準に動く機器は、特に影響を受けやすいです。

 

ひずみ波ではゼロクロスの位置やタイミングが乱れるためです。
調光器や一部の制御機器で、ちらつきや動作不良が現れます。

 

変圧器や電動機では、高調波電流が鉄損・銅損を増やして過熱と騒音を招きます。
計器類では、実効値を正しく測れない測定誤差として現れることもあります。

 

保護継電器が高調波で不要動作するケースも報告されています。
「原因不明の誤動作」の調査項目に、高調波測定を加える価値は十分にあります。

3-3. 障害の一覧表

主な高調波障害を機器別に整理します。

対象機器 障害の内容 典型的な症状
進相コンデンサ・直列リアクトル 高調波電流の流入による過熱 うなり音・膨れ・焼損
変圧器・電動機 損失増加 過熱・騒音・効率低下
中性線(単相3線・三相4線) 3次高調波の重畳 中性線の過熱
制御機器・調光器 ゼロクロスの乱れ 誤動作・ちらつき
計器・保護継電器 波形ひずみによる検出誤差 測定誤差・不要動作
通信線 誘導による雑音 通信品質の低下

 

共通するのは、被害がじわじわと進行し、原因の特定が難しいことです。
症状から高調波を疑えるかどうかが、保全担当者の腕の見せどころになります。

3-4. 被害が他の需要家へ広がる理由

高調波電流は、発生した構内にとどまりません。

受電点を通って配電系統へ流出し、系統の電圧そのものをゆがませます。

 

系統インピーダンスに高調波電流が流れると、高調波電圧降下が生じます。
ゆがんだ電圧は同じ配電線につながるすべての需要家に供給されてしまいます。

 

つまりA工場のインバータが、隣のBビルのコンデンサを焼損させることが起こり得ます。
個々の需要家の対策だけでなく、社会全体のルールが必要な理由がここにあります。

 

その社会的ルールが、次章で解説する高調波抑制対策ガイドラインです。
高調波は「自分さえ良ければ」では済まない、系統全体の品質問題なのです。

 

4. 高調波抑制対策ガイドライン

高調波の規制は、国が定めたガイドラインによって運用されています。

高圧・特別高圧で受電する需要家は、その内容を押さえておく必要があります。

4-1. ガイドラインの概要と対象

正式名称は「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」です。

平成6年(1994年)に制定され、平成16年(2004年)に改正されました。

 

対象となるのは、需要設備を新設する場合や、高調波発生機器を新設・増設・更新する場合などです。
該当する需要家は、受電点から系統へ流出する高調波電流を上限値以下に抑えなければなりません。

 

実務の検討手順は、これを補完する技術指針(JEAG 9702)に定められています。
電力会社への申込み時に、高調波流出電流計算書の提出を求められるのはこのためです。

 

なお家電・汎用品については、別途メーカー側を対象とした規制の枠組みがあります。
需要家側で管理するのは、高圧受電以上の構内設備と考えてください。

4-2. 流出電流の上限値

ガイドラインの中心が、高調波流出電流の上限値です。

上限値は、契約電力相当値1kWあたりの電流値(mA/kW)で定められています。

次数 6.6kV受電の上限値
第5次 3.5 mA/kW
第7次 2.5 mA/kW

 

たとえば契約電力相当値220kWの需要家なら、第5次の上限は3.5×220=770mAです。
第7次は2.5×220=550mAが上限になります。

 

構内の高調波発生機器からの流出見込みが、この値を超えてはいけません。
超える場合は、次章の抑制対策によって上限以下に収める義務が生じます。

4-3. 検討フロー|等価容量50kVAの壁

すべての需要家が詳細計算を行うわけではありません。

技術指針には、検討を簡素化する2段階の判定フローが用意されています。

 

第1ステップは、等価容量による判定です。
各機器の定格容量に換算係数を掛けて合計し、6.6kV受電では50kVA以下なら検討終了です。

 

換算係数は、標準的な6パルス整流を1として機器の回路方式ごとに定められています。
コンデンサ平滑の三相ブリッジ(リアクトル付き)は1.8、リアクトルなしは3.4、12パルス整流は0.5といった具合です。

 

等価容量が限度を超えた場合だけ、第2ステップの流出電流計算に進みます。
機器ごとの発生電流に最大稼働率を掛けて合算し、上限値と比較する流れです。

4-4. 環境目標レベル|ひずみ率5%

ガイドラインの上限値には、根拠となる目標があります。

それが、系統の総合電圧ひずみ率を一定以下に保つ環境目標レベルです。

系統区分 総合電圧ひずみ率の目標
6.6kV配電系統(高圧) 5%
特別高圧系統 3%

 

ひずみ率5%は、機器が支障なく動作できる経験的な限界から定められた水準です。
各需要家の流出電流をmA/kWで管理すれば、系統全体としてこの水準を守れるという設計になっています。

 

つまり上限値は、系統という共有財産を守るための「ひとり分の持ち分」です。
自構内に被害がなくても、流出超過は許されないことを理解しておきましょう。

 

5. 高調波対策の実際

流出電流が上限を超える場合は、具体的な抑制対策が必要です。

代表的な手法を、しくみとともに見ていきます。

5-1. 直列リアクトル|6%の理由を計算で理解する

最も基本的な対策が、進相コンデンサへの直列リアクトル設置です。

コンデンサ容量の6%のリアクタンスをもつリアクトルを直列に入れます。

 

狙いは、コンデンサ回路を高調波に対して誘導性にすることです。
第n次高調波に対するリアクトルとコンデンサのリアクタンスは、それぞれn倍と1/n倍になります。

 

回路が誘導性になる条件は、リアクトル側が上回ることです。

 n^2 \times 0.06 > 1

 

これを解くとn>4.08となり、第5次以上のすべての高調波に対して誘導性になります。
つまり6%リアクトル付きのコンデンサ設備は、5次以上の高調波を拡大せず、吸い込み過ぎも抑えられるのです。

 

理論上の最小値は約4%ですが、余裕を見た6%が標準として定着しています。
力率改善設備の考え方は、力率の記事もあわせてご覧ください。

5-2. 多パルス化|12パルス整流

発生源そのものを改善する対策が、整流回路の多パルス化です。

変圧器の結線を工夫して2組の6パルス整流を組み合わせると、12パルス整流になります。

 

12パルス整流の発生次数は12k±1次、すなわち11次・13次・23次…となります。
最大の問題である5次と7次が、原理的に打ち消されるのが大きな利点です。

 

ガイドラインの換算係数でも、12パルスは6パルスの半分の0.5と評価されています。
大容量のインバータや直流電源装置で採用される、王道の発生源対策です。

 

さらに進んだ方式として、PWM整流(正弦波コンバータ)もあります。
入力電流を正弦波に近づける制御で、高調波の発生自体を大幅に抑えられます。

5-3. フィルタ|パッシブとアクティブ

発生してしまった高調波を除去するのが、フィルタによる対策です。

方式は、パッシブフィルタとアクティブフィルタの2つに大別されます。

 

パッシブフィルタは、リアクトルとコンデンサの共振を利用した同調回路です。
第5次なら250Hzに同調させ、その成分だけを低いインピーダンスで吸収します。

 

アクティブフィルタは、高調波を検出し、逆位相の電流を注入して打ち消す電力変換装置です。
複数次数に同時対応でき、負荷変動にも追従できる高機能な対策です。

 

コストはアクティブフィルタの方が高く、効果と費用のバランスで選定します。
リアクタンスと共振の基礎は、インピーダンスの記事で確認できます。

5-4. 対策方法の比較表

主な高調波対策を比較表に整理します。

対策 しくみ 特徴
直列リアクトル(6%) コンデンサ回路を誘導性にする 標準対策・コンデンサ保護が主目的
多パルス化(12パルス) 5次・7次を原理的に打ち消す 大容量機器の発生源対策
PWM整流 入力電流を正弦波化 発生量を大幅低減・コスト高め
パッシブフィルタ 同調回路で特定次数を吸収 安価・系統条件の影響を受ける
アクティブフィルタ 逆位相電流で打ち消す 多次数対応・高価

 

実務では、まず新設機器の方式選定(多パルス・PWM)で発生量を抑えます。
そのうえで足りない分をフィルタで補うのが、経済的な組み立て方です。

 

6. 実務での測定と管理

高調波は目に見えないため、測定と傾向管理が対策の出発点になります。

保全実務での要点を整理します。

6-1. 高調波の測定方法

高調波の測定には、高調波対応の電力品質アナライザやクランプ式測定器を使います。

電圧・電流の波形を取り込み、次数ごとの含有率とひずみ率を表示してくれます。

 

測定ポイントは、受電点と進相コンデンサ回路が基本です。
受電点では系統への流出量を、コンデンサ回路では流入電流の過大を確認します。

 

高調波は負荷の運転状況によって時々刻々変化します。
瞬間値だけでなく、操業パターンを含む一定期間の連続測定が有効です。

 

測定結果は、ひずみ率と各次数の含有率で記録しておきます。
異常時との比較ができるよう、健全時のデータを残すことが重要です。

6-2. コンデンサ設備の点検ポイント

高調波被害の最前線である進相コンデンサ設備は、重点的に点検します。

具体的には、電流値・温度・音・外観の4点です。

 

コンデンサ回路の電流が定格の110%を常時超えるようなら、高調波の流入を疑います。
リアクトルの温度上昇や、普段と違ううなり音も危険信号です。

 

ケースの膨らみや油のにじみを見つけたら、焼損に至る前に更新を計画します。
直列リアクトルのないコンデンサが残っていれば、リアクトル付きへの更新を優先してください。

 

コンデンサの基礎を確認したい方は、以下の記事をご覧ください。

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6-3. 機器の新設・更新時の確認事項

ガイドライン対応は、機器を入れるタイミングで発生します。

インバータやUPSの新設・増設・更新時には、必ず高調波の検討を行ってください。

 

確認の起点は、機器カタログに記載された回路種別と換算係数です。
等価容量を合計し、50kVA以下に収まるかをまず判定します。

 

超える場合は、流出電流計算書を作成して電力会社と協議します。
計算の結果次第で、多パルス機種への変更やフィルタ追加を検討する流れです。

 

設備更新で高効率機器に入れ替えると、高調波発生量が増えることがあります。
「省エネ改修=高調波チェックのタイミング」と覚えておくと漏れを防げます。

6-4. トラブル調査での切り分け

原因不明の機器トラブルでは、高調波の関与を系統立てて切り分けます。

手がかりは、症状の出る時間帯と運転中の機器の組み合わせです。

 

特定の設備が動いている時間帯だけ症状が出るなら、その設備が発生源の候補です。
インバータの運転台数や負荷率と、症状の相関を記録から探します。

 

受電点のひずみ率が運転パターンと無関係に高い場合は、構外からの流入も疑います。
この場合は電力会社に相談し、系統側の状況を確認してもらいます。

 

切り分けの基本は「発生源を止めて症状が消えるか」の確認です。
測定データと運転記録を突き合わせ、原因と対策を一つずつ確定させていきましょう。

まとめ

本記事では、波形をゆがませる整数倍の周波数成分である「高調波」について、その正体とひずみ率の考え方から、整流回路による発生のしくみ、進相コンデンサをはじめとする障害、国のガイドラインの上限値、直列リアクトル・多パルス化・フィルタによる対策までを体系的に解説しました。

高調波の主役は6パルス整流が生む第5次・第7次で、ひずみ率は  THD = \dfrac{\sqrt{V_2^2 + V_3^2 + \cdots}}{V_1} \times 100 で評価します。

6.6kV受電の流出上限は第5次3.5mA/kW・第7次2.5mA/kWで、系統のひずみ率5%を守るための持ち分です。

対策は6%直列リアクトルを基本に、多パルス化やフィルタを組み合わせます。

 

インバータが増え続ける限り、高調波は電気設備の定番課題であり続けます。
まずは自構内のコンデンサ設備の電流と温度から、高調波の気配を確かめてみてください。