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衝撃試験とは?シャルピー試験のJIS規格と計算

氷点下の極寒環境で、金属部品が前触れなく脆く割れる事故をご存じでしょうか。

静的な引張試験では十分な強度を示す材料でも、低温や高速の衝撃荷重が加わると延性を失い、突然の脆性破壊を起こすことがあります。

このような衝撃荷重に対する材料の粘り強さ、すなわち「靱性」を定量的に評価する手法が衝撃試験です。

中でもシャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に規定された代表的な金属材料評価法であり、製造業の品質管理や溶接部の評価に欠かせない存在です。

圧力容器や橋梁、船舶の構造材には、シャルピー衝撃試験による靱性値の下限が規格で定められています。

本記事では、衝撃試験の基本原理からJIS規格に基づく試験片の仕様、吸収エネルギーの計算方法、遷移温度の評価まで、実務で必要な知識を体系的に解説します。

 

1. 衝撃試験とは

衝撃試験の概要図

衝撃試験とは、材料に瞬間的な荷重(衝撃荷重)を加え、その破壊に要したエネルギーや変形挙動から材料の靱性を評価する試験方法です。

引張試験や硬さ試験と並んで、材料特性を把握するうえで最も基本的な機械的試験のひとつに位置づけられています。

 

静的荷重と衝撃荷重の違い

引張試験やクリープ試験などの静的試験では、荷重をゆっくりと増加させて材料の挙動を観察します。
このとき材料には塑性変形する十分な時間が与えられるため、延性的な挙動を示しやすくなります。

これに対して衝撃試験では、極めて短い時間(数ミリ秒程度)に大きな力を加えます。
材料は塑性変形する時間的余裕がほとんどなく、脆性的な挙動を示す場合があります。

この違いは「ひずみ速度」という指標で整理できます。
ひずみ速度とは、単位時間あたりに材料が受けるひずみの量を表す値です。

静的試験のひずみ速度は毎秒0.0001~0.01程度であるのに対し、衝撃試験では毎秒1~1,000に達することがあります。
ひずみ速度が高くなると、多くの金属材料は降伏応力が上昇し、延性が低下する傾向を示します。

この特性を「ひずみ速度感受性」と呼びます。
衝撃荷重下で材料が脆くなりやすい根本的な原因は、この速度感受性にあります。

例えば、自動車のボディ用鋼板は衝突時の衝撃を吸収するために高い靱性が求められます。
静的試験で得られる引張強さだけでは、実際の衝突環境での安全性を保証できません。

 

衝撃試験が求められる場面

衝撃試験が実務で求められる代表的な場面は多岐にわたります。

第一に、圧力容器や配管の設計が挙げられます。
JIS B 8265やASME Sec.VIIIでは、使用材料のシャルピー吸収エネルギーの下限値が規定されています。
内部に高圧流体を封じる機器では、脆性破壊が発生すると大事故につながるため、材料の靱性確認は必須の工程です。

第二に、溶接部の品質評価があります。
溶接金属や熱影響部(HAZ)は、母材とは異なる微細組織を持つため、靱性が低下しやすい部位です。
橋梁や船舶の溶接構造物では、溶接施工要領の認定時にシャルピー衝撃試験が必ず実施されます。

第三に、低温環境で使用する構造材の選定があります。
LNG(液化天然ガス)タンクや寒冷地の橋梁では、設計最低温度での靱性確保が不可欠です。
マイナス196℃の極低温で使用する9%ニッケル鋼のように、低温靱性に特化した材料も開発されています。

第四に、材料ロットの受入検査があります。
鋼材メーカーのミルシート(材料試験成績書)には、化学成分や引張試験結果とともにシャルピー衝撃値が記載されます。
受入側はこの値が要求仕様を満足しているかを確認し、ロットの合否を判定します。

衝撃試験の結果は、応力-ひずみ曲線から得られる引張強さや伸びとは異なる情報を提供します。
静的試験で「強い」材料が、必ずしも衝撃荷重に強いわけではない点をよく理解しておくことが大切です。

 

衝撃試験の歴史的背景

衝撃試験の重要性が広く認識されるきっかけとなったのは、20世紀前半に相次いだ構造物の脆性破壊事故です。

第二次世界大戦中の米国では、溶接構造の輸送船(リバティ船)が航海中に船体が割れる事故が多発しました。
低温環境下で溶接部近傍の鋼材が脆性破壊を起こしたことが原因であり、この教訓から構造用鋼材にはシャルピー衝撃試験による靱性の保証が世界的に求められるようになりました。

現在では建築基準法や道路橋示方書、圧力容器規格など、さまざまな構造物の設計規格にシャルピー衝撃試験の要件が組み込まれています。
衝撃試験は単なる材料特性の測定ではなく、構造物の安全を守るための社会的な仕組みの一部です。

衝撃試験の歴史的背景

衝撃試験の重要性が広く認識されるきっかけとなったのは、20世紀前半に相次いだ構造物の脆性破壊事故です。

第二次世界大戦中の米国では、溶接構造の輸送船(リバティ船)が航海中に船体が真っ二つに折れる事故が多発しました。
建造された約2,700隻のうち、約400隻に重大なき裂が発生し、うち十数隻が完全に船体を切断されるという衝撃的な被害でした。

原因の調査により、低温環境下で溶接部近傍の鋼材が脆性破壊を起こしたことが判明しました。
この事故を契機に、構造用鋼材にはシャルピー衝撃試験による靱性の保証が求められるようになりました。

現在では、建築基準法や道路橋示方書、圧力容器規格など、さまざまな構造物の設計規格にシャルピー衝撃試験の要件が組み込まれています。
衝撃試験は単なる材料特性の測定ではなく、構造物の安全を守るための社会的な仕組みの一部となっています。

 

2. 衝撃試験の種類

衝撃試験の種類比較図

衝撃試験にはさまざまな方式がありますが、大きく分けて「振り子式」と「落球・落錘式」の2系統に分類できます。
材料の種類や評価目的に応じて適切な試験方法を選択することが重要です。

 

シャルピー衝撃試験

シャルピー衝撃試験は、振り子式衝撃試験の代表格です。
1901年にフランスの技術者ジョルジュ・シャルピー(Georges Charpy)によって考案されました。

ノッチ(切り欠き)を設けた試験片の両端を支点に載せ、ノッチの反対側中央面からハンマーで打撃を与えます。
試験片の両端を支持する「三点曲げ」方式であり、曲げ応力とせん断応力の複合作用で材料を破壊します。

金属材料の衝撃試験としてはJIS Z 2242に規定されており、国際規格としてはISO 148-1に対応しています。
世界的にも最も広く使われている衝撃試験方式であり、鉄鋼材料の品質保証における事実上の標準です。

シャルピー衝撃試験の最大の利点は、試験方法が標準化されているため、異なる試験所間での結果比較が容易な点です。
また、比較的大きな試験片(55 mm長)を使用するため、試験片内の材料特性を代表的に評価できます。

 

アイゾット衝撃試験

アイゾット衝撃試験も振り子式ですが、シャルピー方式とはいくつかの点で異なります。

最も大きな違いは試験片の固定方法です。
アイゾット方式では試験片の片端をバイス(万力)で固定し、ノッチのある側から打撃を加える「片持ち梁」方式を採用しています。

主にプラスチックやゴムなどの樹脂材料の評価に使用され、JIS K 7110やASTM D256に規定されています。
金属材料に対してはシャルピー方式が主流ですが、樹脂材料ではアイゾット方式のほうが広く採用されています。

シャルピー方式との主な違いをまとめると以下の3点になります。

  • 試験片の固定方法:シャルピーは両端支持(三点曲げ)、アイゾットは片端固定(片持ち梁)
  • 打撃方向:シャルピーはノッチの反対側、アイゾットはノッチ側
  • 主な対象材料:シャルピーは金属材料が中心、アイゾットは樹脂材料が中心

 

落球・落錘衝撃試験

落球衝撃試験(デュポン衝撃試験)は、規定の重錘を一定の高さから試験片上に自由落下させ、破壊の有無やくぼみの深さなどで耐衝撃性を評価します。

プラスチックフィルムや塗膜、ガラス製品の評価に多く用いられ、JIS K 5600やJIS K 7211に規定されています。
試験片の形状自由度が高く、実際の製品形状に近い条件で評価できる利点があります。

落錘式の一種であるダートインパクト試験(落下衝撃試験)は、先端が半球状の重錘を落下させ、フィルムやシートの耐衝撃性を評価する方法です。
食品包装フィルムや工業用シートの品質管理に広く活用されています。

 

引張衝撃試験

引張衝撃試験は、試験片に高速の引張荷重を加えて破壊エネルギーを測定する方式です。

振り子式や落錘式とは異なり、引張応力下での衝撃靱性を評価できます。
ISO 8256やJIS K 7160に規定されており、主にプラスチック材料の評価に使用されています。

引張衝撃試験は、ノッチなし試験片でも試験できるため、材料本来の衝撃靱性を評価する目的で利用されることがあります。
ただし、試験結果のばらつきが大きい傾向があるため、十分な試験数を確保することが重要です。

 

3. シャルピー衝撃試験の原理と試験機

シャルピー衝撃試験機の構造図

シャルピー衝撃試験は、振り子の位置エネルギーを利用して試験片に衝撃を加え、破壊に費やされたエネルギーを測定する試験方法です。
その原理はシンプルですが、正確な測定のためには試験機の構造や試験条件を十分に理解しておく必要があります。

 

振り子式試験機の構造

シャルピー衝撃試験機は、以下の主要構成部品で成り立っています。

フレーム(台座)は試験機全体を支える頑丈な構造体で、コンクリート基礎または重量のある鋼製架台の上にボルトで固定されます。
試験時にハンマーの衝撃で試験機自体が振動すると測定精度が低下するため、十分な剛性と質量が必要です。

振り子(ハンマー)は回転軸に取り付けられた重錘付きアームで、試験片に衝撃を与える中核部品です。
ハンマーの先端(ストライカー)はJIS B 7722で形状が規定されており、先端の曲率半径は2 mmまたは8 mmとされています。

アンビル(支持台)は試験片の両端を載せる台で、支点間距離は40 mmに設定されています。
支点の曲率半径は1 mm~1.5 mmと規定されており、試験片を安定して保持できる構造になっています。

角度目盛り盤とエネルギー指示機構は、ハンマーの振り上がり角度を読み取り、吸収エネルギーを直読できるようにするための装置です。
近年の試験機ではデジタルエンコーダーを搭載し、コンピューターで自動計測する機種も増えています。

ハンマーの質量は試験機の容量によって異なります。
JIS B 7722で規定される標準的な試験機では、容量150 J、300 J、500 Jなどのラインナップがあり、試験対象の材料に応じて適切な容量を選択します。

試験機の精度は定期的に校正する必要があります。
間接検証として、認証された基準試験片(標準試験片)を用いたベリフィケーション試験を実施し、表示値が許容範囲内にあることを確認します。

 

試験の基本原理

振り子式試験機の測定原理は、エネルギー保存則に基づいています。

ハンマーを初期角度αまで持ち上げたとき、ハンマーの重心は最下点から高さh₁の位置にあります。
この高さは、回転軸からハンマー重心までの距離Rと初期角度αを用いて次式で表されます。

 

 h_1 = R(1 - \cos\alpha)

 

ハンマーを自由落下させると、位置エネルギーが運動エネルギーに変換されます。
最下点で試験片を破壊した後、ハンマーは残った運動エネルギーで反対側に振り上がります。

このときの振り上がり角度をβとすると、振り上がり高さh₂は次式で表されます。

 

 h_2 = R(1 - \cos\beta)

 

試験片の破壊に費やされたエネルギー(吸収エネルギー)KVは、ハンマーの位置エネルギーの差から求められます。

 

 KV = mgh_1 - mgh_2 = mgR(\cos\beta - \cos\alpha)

 

ここでmはハンマーの質量、gは重力加速度(9.81 m/s²)です。
ハンマーの重量W = mgとおけば、吸収エネルギーは次のように表せます。

 

 KV = WR(\cos\beta - \cos\alpha)

 

試験片が全くエネルギーを吸収しない場合はβ = αとなりKV = 0です。
実際の試験ではハンマーの軸受摩擦や空気抵抗によるエネルギー損失がありますが、JIS B 7722で規定された精度を持つ試験機であれば、この損失は十分に小さくなるよう管理されています。

なお、ハンマーの打撃速度は初期角度αとアーム長さRから計算でき、標準的な試験条件では5 m/s~5.5 m/sの範囲に設定されています。
この打撃速度がひずみ速度を決定し、試験結果に影響を与えます。

 

試験の手順

JIS Z 2242に基づく試験の基本手順を以下に示します。

まず、試験片を所定の温度に調整します。
室温試験の場合は23 ± 5℃が標準です。
低温試験や高温試験の場合は、加熱炉または冷却槽(液体窒素、ドライアイス+エタノールなど)を使用して試験片を所定の温度に保持します。

次に、試験片をアンビル上に正確に設置します。
ノッチの中心がハンマーの打撃中心に一致するように位置決め治具を使って配置します。
この位置決めの精度は試験結果に直接影響するため、細心の注意が必要です。

試験片を設置した後、ハンマーを初期角度まで持ち上げてラッチで保持します。
準備が完了したらラッチを解放してハンマーを自由落下させ、試験片を破壊します。

温度試験を行う場合は、試験片を恒温槽から取り出してハンマーを落下させるまでの時間を5秒以内としなければなりません。
温度管理の精度が試験結果に大きく影響するため、温度計の校正と作業手順の標準化が欠かせません。

ハンマーの振り上がり角度または吸収エネルギーの直読値を記録した後、破断した試験片を回収します。
必要に応じて破面観察を行い、脆性破面率や横膨出量を測定します。

近年の試験機には計装化(Instrumented)シャルピー試験機と呼ばれるタイプも普及しています。
ハンマーのストライカー部にロードセルを内蔵し、衝撃荷重と時間の関係(荷重-時間曲線)を高速で記録する仕組みです。

この荷重-時間曲線から、き裂の発生荷重や最大荷重、き裂の伝播挙動などの詳細な情報を読み取ることができます。
従来の吸収エネルギーだけでは分からなかった破壊のメカニズムを解析できるため、研究開発の現場を中心に活用が広がっています。

 

4. 試験片の形状とJIS規格

試験片の寸法とノッチ形状

シャルピー衝撃試験の結果は、試験片の形状やノッチの寸法に大きく依存します。
そのため、JIS Z 2242では試験片の寸法を厳密に規定しています。

規格に準拠した試験片を使用しなければ、異なる試験所間での結果比較が意味をなさなくなります。
ここでは、標準試験片の寸法からサブサイズ試験片、試験片の採取方向まで詳しく解説します。

 

標準試験片の寸法

JIS Z 2242に規定される標準試験片は、正方形断面(10 mm × 10 mm)で長さ55 mmの角棒状です。

項目 記号 標準寸法 許容差
長さ L 55 mm ± 0.60 mm
W 10 mm ± 0.075 mm
厚さ B 10 mm ± 0.075 mm

寸法の許容差は非常に厳しく、特に幅と厚さは ± 0.075 mm以内に仕上げなければなりません。
この精度を確保するために、試験片は精密旋盤やフライス盤で機械加工されます。

試験片の表面は機械加工仕上げとし、表面粗さが試験結果に影響しない程度に仕上げます。
加工傷やバリが残っていると、そこから意図しない応力集中が発生し、正確な靱性評価ができなくなります。

 

Vノッチ試験片

現在の金属材料の衝撃試験で最も多く使用されているのがVノッチ試験片です。
Vノッチの仕様は以下のとおりです。

項目 記号 標準寸法 許容差
ノッチ深さ a 2 mm ± 0.075 mm
ノッチ底半径 r 0.25 mm ± 0.025 mm
ノッチ角度 45° ± 2°

Vノッチはノッチ底の曲率半径が0.25 mmと非常に小さいため、鋭い応力集中が発生します。
このため、材料の靱性差を高い感度で検出できるという特長があります。

ノッチ底の半径が規定より大きいと応力集中が緩和され、吸収エネルギーが過大に測定されます。
逆にノッチ底に加工傷があると応力集中が過度になり、吸収エネルギーが過小に測定されます。
いずれの場合も正確な靱性評価ができなくなるため、ノッチ加工の品質管理は極めて重要です。

Vノッチ試験片による吸収エネルギーは「KV」と表記されます。
文献によっては「CVN値」(Charpy V-Notch)と呼ばれることもあります。

 

Uノッチ試験片

Uノッチ試験片は、Vノッチより緩やかな応力集中を持つノッチ形状です。

項目 記号 標準寸法 許容差
ノッチ深さ a 5 mm ± 0.09 mm
ノッチ底半径 r 1 mm ± 0.07 mm

Uノッチはノッチ底の曲率半径が1 mmとVノッチの4倍あるため、応力集中が穏やかです。
そのため、同じ材料でもUノッチのほうがVノッチより大きな吸収エネルギーを示します。

Uノッチ試験片による吸収エネルギーは「KU」と表記され、Vノッチの「KV」とは明確に区別されます。
KVとKUの値は直接比較できないため、報告時にはどちらのノッチで試験したかを必ず明記します。

なお、当事者間の協定により、ノッチ深さ2 mm・ノッチ底半径1 mmのUノッチを使用することも認められています。
この場合、標準の5 mmノッチより残断面積が大きくなるため、吸収エネルギーも異なる値を示します。

 

サブサイズ試験片

板厚が薄い材料や小型部品から試験片を採取する場合、標準サイズ(10 mm × 10 mm断面)の試験片を作製できないことがあります。

このような場合には、JIS Z 2242で規定されたサブサイズ試験片を使用できます。
サブサイズ試験片は、厚さBを7.5 mm、5.0 mm、3.3 mm、2.5 mmのいずれかに縮小したものです。

幅W(10 mm)とノッチ深さa(2 mm)は標準寸法のままとし、長さL(55 mm)も維持します。
つまり、厚さ方向のみを縮小した薄板状の試験片となります。

サブサイズ試験片で得られた吸収エネルギーは、標準試験片の値と直接比較できません。
厚さの減少に伴い拘束効果が弱まるため、同じ材料でもサブサイズ試験片のほうが高い吸収エネルギーを示す傾向があります。

結果の報告時には試験片寸法を必ず明記し、どのサイズの試験片で試験したかを明確にする必要があります。

 

試験片の採取方向

圧延材や鍛造材では、試験片の採取方向によって衝撃値が大きく変わることがあります。
これは、圧延や鍛造によって金属の結晶粒や介在物が方向性を持つためです。

圧延方向に平行に採取した試験片は「L方向」(縦方向)と呼ばれます。
圧延方向に直角に採取した試験片は「T方向」(横方向)と呼ばれます。

一般に、T方向の衝撃値はL方向より低くなる傾向があります。
これは、圧延によって引き延ばされた硫化マンガン(MnS)などの介在物が、T方向ではノッチ底と平行に並ぶためです。
介在物に沿ってき裂が伝播しやすくなるため、T方向では靱性が低下します。

溶接部の試験では、溶接金属(WM)、融合線(FL)、熱影響部(HAZ)のそれぞれからノッチ位置を変えて試験片を採取します。
これにより、溶接継手の各部位の靱性を個別に評価することが可能です。

 

5. 吸収エネルギーとシャルピー衝撃値の計算

吸収エネルギーの計算フロー

シャルピー衝撃試験の最も重要な結果は、試験片の破壊に費やされた吸収エネルギーです。
ここでは、吸収エネルギーの理論式と具体的な計算方法について、段階的に解説します。

 

吸収エネルギーの計算式

前章で示したように、吸収エネルギーKV(Vノッチの場合)は、ハンマーの位置エネルギーの差から算出されます。
ハンマーの重量をW(= mg)、アーム長さをRとすると次式で表されます。

 

 KV = WR(\cos\beta - \cos\alpha)

 

各記号の意味は以下のとおりです。

  • KV:Vノッチ試験片の吸収エネルギー(単位:J)
  • W:ハンマーの重量(単位:N)
  • R:回転軸からハンマー重心までの距離(単位:m)
  • α:ハンマーの初期持ち上げ角度(単位:°)
  • β:試験片破壊後のハンマー振り上がり角度(単位:°)

この式は、空気抵抗や軸受摩擦によるエネルギー損失を無視した理論式です。
実際の試験機ではこれらの損失を補正しますが、JIS B 7722で規定された精度を持つ試験機であれば補正量は十分に小さくなります。

 

シャルピー衝撃値の定義

シャルピー衝撃値は、吸収エネルギーを試験片のノッチ部の断面積で除した値として定義されます。

 

 a_K = \dfrac{KV}{A}

 

ノッチ部の断面積Aは、試験片の幅W、ノッチ深さa、厚さBから次式で計算します。

 

 A = (W - a) \times B

 

標準Vノッチ試験片の場合、W = 10 mm、a = 2 mm、B = 10 mmですので、断面積は次のとおりです。

 

 A = (10 - 2) \times 10 = 80 \text{ mm}^2 = 0.80 \text{ cm}^2

 

現行のJIS Z 2242では吸収エネルギーKV(単位:J)を試験結果として報告するのが標準です。
シャルピー衝撃値(単位:J/cm²)は旧JIS Z 2202で使用されていた表記ですが、現在でも実務や教育の現場で広く使われています。

両者の換算は断面積を介して行えるため、どちらの値が提示されていても対応できるようにしておくことが大切です。

 

計算例:構造用鋼のシャルピー衝撃値

具体的な計算例で理解を深めましょう。
以下の条件で試験を実施したとします。

  • 試験機のハンマー重量:W = 255 N(質量約26 kg)
  • アーム長さ:R = 0.75 m
  • 初期持ち上げ角度:α = 150°
  • 振り上がり角度(実測値):β = 124°
  • 試験片:標準Vノッチ試験片(10 × 10 × 55 mm、ノッチ深さ2 mm)

 

Step 1:吸収エネルギーを求める

吸収エネルギーの公式に数値を代入します。

 

 KV = WR(\cos\beta - \cos\alpha)

 

まず三角関数の値を計算します。

 

 \cos 124° = -0.559

 

 \cos 150° = -0.866

 

これらを公式に代入します。

 

 KV = 255 \times 0.75 \times \{(-0.559) - (-0.866)\}

 

 = 191.25 \times 0.307 = 58.7 \text{ J}

 

吸収エネルギーは58.7 Jと求まりました。

 

Step 2:断面積を求める

標準Vノッチ試験片の断面積を計算します。

 

 A = (10 - 2) \times 10 = 80 \text{ mm}^2 = 0.80 \text{ cm}^2

 

Step 3:シャルピー衝撃値を求める

吸収エネルギーを断面積で除してシャルピー衝撃値を算出します。

 

 a_K = \dfrac{58.7}{0.80} = 73.4 \text{ J/cm}^2

 

この73.4 J/cm²という値は、一般構造用圧延鋼材(SS400)の室温における典型的な範囲内にあります。
溶接構造用鋼材SM400Bの場合、0℃での吸収エネルギーが27 J以上(衝撃値約33.8 J/cm²以上)であることが要求されるため、この材料は基準を十分にクリアしていることがわかります。

なお、同じ材料であっても試験片ごとのばらつきが生じるため、通常は3本以上の試験片で試験を行い、個々の値と平均値を報告します。
JIS Z 2242では、試験本数と結果の報告方法についても規定しています。

試験結果のばらつきと統計処理

シャルピー衝撃試験の結果には、同一材料・同一条件であっても一定のばらつきが生じます。
これは、ノッチ底近傍の微細組織(結晶粒の配置、介在物の分布など)が試験片ごとにわずかに異なるためです。

特に遷移温度領域では、ばらつきが顕著になります。
延性破壊と脆性破壊の競合が起きる温度域では、微細な組織の違いが破壊モードを左右するためです。

JIS Z 2242では、通常3本の試験片で試験を行い、個々の値と3本の平均値を報告するよう求めています。
受入検査の合否判定では、3本の平均値が規格値以上であることに加え、個々の値のうち1本だけは規格値の70%まで許容される場合があります。

例えば、SM400Bで0℃における規格値が27 J以上の場合を考えてみましょう。
3本の試験結果が35 J、22 J、31 Jであった場合、平均値は29.3 Jで規格値27 J以上を満たします。
個々の最低値22 Jは規格値27 Jの約81%ですが、70%の下限値(18.9 J)以上なので合格と判定できます。

ただし、個々の値の許容基準は適用する規格によって異なるため、判定時には必ず適用規格を確認する必要があります。
ばらつきの大きい材料では試験本数を増やし、統計的に信頼性の高い評価を行うことも検討すべきです。

 

6. 遷移温度曲線と低温脆性

遷移温度曲線の模式図

金属材料の衝撃特性は温度によって大きく変化します。
特に体心立方格子(BCC)構造を持つ鉄鋼材料は、ある温度以下で急激に靱性が低下し、脆性的な破壊を示すようになります。

この現象を低温脆性(延性-脆性遷移)と呼び、シャルピー衝撃試験はこの遷移挙動を評価する最も一般的な方法です。

 

延性-脆性遷移温度(DBTT)とは

鉄鋼材料のシャルピー吸収エネルギーを試験温度に対してプロットすると、S字状の曲線(遷移温度曲線)が得られます。

高温側では吸収エネルギーが大きく、破面は延性的な繊維状破面を呈します。
この領域の吸収エネルギーを上部棚エネルギー(Upper Shelf Energy: USE)と呼びます。
上部棚では温度を上げても吸収エネルギーがほとんど変化しないため、「棚」(shelf)と表現されます。

低温側では吸収エネルギーが著しく低下し、破面は光沢のある平坦な脆性破面を呈します。
この領域の吸収エネルギーを下部棚エネルギー(Lower Shelf Energy: LSE)と呼びます。
下部棚のエネルギーは数ジュール程度にまで低下し、材料はわずかな衝撃で割れてしまいます。

上部棚と下部棚の間にある急激な遷移領域の中央付近の温度が、延性-脆性遷移温度(DBTT: Ductile-Brittle Transition Temperature)です。
この温度は材料固有の特性であり、材料選定の重要な判断基準となります。

 

破面遷移温度(vTs)とエネルギー遷移温度(vTE)

遷移温度の定義にはいくつかの方法がありますが、JIS Z 2242で主に用いられるのは以下の2つです。

破面遷移温度(vTs)は、破断面の脆性破面率が50%となる温度として定義されます。
すなわち、破面の半分が延性破面、半分が脆性破面となる温度です。

 

 vTs = T \text{ at } \dfrac{S_B}{S_0} \times 100 = 50\text{ %}

 

ここで、S_Bは脆性破面の面積、S₀は全破面の面積を表します。
破面遷移温度は破面の外観から判定するため、比較的簡便に求めることができます。

エネルギー遷移温度(vTE)は、吸収エネルギーが上部棚エネルギーと下部棚エネルギーの平均値となる温度として定義されます。

 

 vTE = T \text{ at } KV = \dfrac{KV_{\text{USE}} + KV_{\text{LSE}}}{2}

 

実用的には、下部棚エネルギーが十分小さい場合、上部棚エネルギーの半分の値となる温度を遷移温度とすることが多くあります。
この簡略化は下部棚エネルギーが無視できるほど小さい鋼材については妥当な近似です。

vTsとvTEは必ずしも一致しません。
一般にvTE(エネルギー基準)のほうがvTs(破面基準)よりもやや低い温度を示す傾向があります。
どちらの定義で遷移温度を評価するかは、適用する規格や発注仕様書に従って決定します。

 

遷移温度に影響する要因

遷移温度は材料の化学成分、結晶粒度、金属熱処理条件などによって大きく変化します。
以下に主な影響因子とその効果を解説します。

炭素量は遷移温度を上昇させる主要因子です。
炭素量が0.1%増加するごとに遷移温度は約14℃上昇するとされています。
このため、低温用鋼ではできる限り炭素量を低減する成分設計が基本となります。

結晶粒度も靱性に大きく影響します。
結晶粒が微細なほど粒界面積が大きくなり、き裂の伝播が抑制されるため、遷移温度が低下(靱性が向上)します。
焼ならしや制御圧延(TMCP)は、結晶粒を微細化して靱性を改善する代表的な方法です。

マンガンとニッケルはいずれも遷移温度を低下させる効果を持つ合金元素です。
特にニッケルは低温靱性の改善に効果が大きく、液化天然ガス(LNG)タンク用の9%ニッケル鋼は、マイナス196℃でも十分な靱性を発揮します。

リンと硫黄は不純物元素として遷移温度を上昇させ、靱性を劣化させます。
現代の製鋼技術ではこれらの元素を極力低減していますが、リサイクル鋼材などでは注意が必要です。

熱処理も靱性を大きく左右します。
焼入れ・焼戻し処理を適切に施すと、マルテンサイト組織がソルバイト組織に変化し、靱性が大幅に改善されます。
焼戻し温度が低すぎると靱性が不十分となり、「焼戻し脆化」と呼ばれる現象が発生することもあります。

なお、面心立方格子(FCC)構造のオーステナイト系ステンレス鋼やアルミニウム合金は、明確な延性-脆性遷移を示しません。
FCC構造はすべり系の数が多く、低温でも十分な塑性変形能を維持するためです。
極低温環境で使用する構造材にFCC構造の材料が選定されることが多いのは、この特性が理由です。

 

遷移温度と材料選定

構造物の設計において、使用温度での靱性確保は安全性の根幹に関わります。

一般的な設計指針として、材料の遷移温度が使用最低温度よりも十分に低いことが求められます。
例えば、寒冷地で使用する橋梁用鋼材では、設計最低温度が-40℃に設定される場合があります。
このとき、-40℃でもシャルピー吸収エネルギーが27 J以上を示す材料を選定します。

JIS G 3106の溶接構造用圧延鋼材(SM材)では、鋼種の末尾記号で保証する衝撃試験温度が区別されています。

鋼種記号 衝撃試験温度 吸収エネルギー下限値
SM400A 規定なし
SM400B 0℃ 27 J 以上
SM400C -5℃ 27 J 以上
SM490YB 0℃ 47 J 以上

末尾が「A」の鋼種には衝撃試験の規定がないため、低温環境での使用には適しません。
「B」は0℃、「C」は-5℃での保証を意味しており、使用環境に応じて適切なグレードを選定する必要があります。

シャルピー衝撃試験の結果は材料規格の適合性判定に直結しています。
設計者は使用環境に応じて適切な材料グレードを選定し、受入検査でシャルピー衝撃値を確認することが不可欠です。

 

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7. 試験結果の評価と実務での活用

破面観察と実務活用の図解

シャルピー衝撃試験の結果から得られる情報は、吸収エネルギーだけではありません。
破断した試験片の破面を詳細に観察することで、材料の破壊メカニズムに関する貴重な知見が得られます。

 

破面の観察と評価

シャルピー衝撃試験で破断した試験片の破面には、延性破面と脆性破面の両方が現れることがあります。
この混在状態を「混合モード破壊」と呼びます。

延性破面は、繊維状(Fibrous)の粗い外観を呈し、灰色がかった色調を示します。
破壊前に大きな塑性変形を伴うため、エネルギー吸収量が大きくなります。
マクロ的には「せん断リップ」と呼ばれる縁取りが観察され、ミクロ的にはディンプル(小さなくぼみ)破面が広がっています。

脆性破面は、光沢のある平坦な外観を呈し、銀白色の色調を示します。
塑性変形をほとんど伴わずに破壊するため、エネルギー吸収量が極めて小さくなります。
マクロ的には「へき開面」と呼ばれる平坦で光を反射する面が観察されます。

破面全体に対する脆性破面の割合を脆性破面率と呼びます。

 

 \text{脆性破面率} = \dfrac{S_B}{S_0} \times 100 \text{ \lbrack % \rbrack}

 

脆性破面率が低いほど延性的な破壊を示しており、材料の靱性が高いことを意味します。
破面遷移温度(vTs)の判定にはこの脆性破面率が使われます。

 

横膨出量(ラテラルエキスパンション)

シャルピー衝撃試験では、試験片のノッチ反対側の面(圧縮側)が衝撃によって横方向に膨張します。
この膨張量を横膨出量(LE: Lateral Expansion)と呼びます。

横膨出量は、試験片の圧縮側の変形量をマイクロメーターで測定して求めます。
横膨出量が大きいほど塑性変形が大きく発生しており、靱性が高いことを示します。

ASME Sec.VIII(圧力容器規格)では、シャルピー衝撃試験において吸収エネルギーだけでなく、横膨出量の最小値も規定しています。
一般的な要求値は0.38 mm(15 mil)以上であり、吸収エネルギーと横膨出量の両方の基準を満足することが求められます。

横膨出量は吸収エネルギーと相関がありますが、完全に比例するわけではありません。
特に遷移温度領域では、吸収エネルギーのばらつきが大きくなるのに対し、横膨出量のばらつきは比較的小さいという特徴があります。
このため、横膨出量は材料の靱性レベルを安定的に評価する指標として有用です。

 

溶接部の衝撃試験

溶接構造物の品質保証において、シャルピー衝撃試験は欠かせない評価手段です。
溶接継手は溶接プロセスによって母材とは異なる組織が形成されるため、靱性の低下が懸念されます。

溶接継手の衝撃試験では、試験片のノッチ位置を変えて以下の3箇所の靱性を個別に評価します。

溶接金属(WM: Weld Metal)は、溶接ワイヤーと母材が溶融凝固した部分です。
溶接条件や溶接材料の選定によって組織が大きく変化するため、施工条件ごとに靱性を確認する必要があります。

融合線(FL: Fusion Line)は、溶接金属と母材の境界付近です。
溶融と非溶融の境界という特異な位置にあり、粗大粒HAZと溶接金属が混在する複雑な組織を呈します。
靱性の最弱部となることが多いため、特に重要な評価箇所です。

熱影響部(HAZ: Heat Affected Zone)は、溶接の入熱によって組織が変化した母材領域です。
入熱量が大きい場合や多層溶接の場合、結晶粒が粗大化して靱性が低下することがあります。
特にFL近傍の「粗粒HAZ」は靱性が低下しやすいため、注意が必要です。

疲労設計においても、溶接部の靱性確認は重要な検討項目です。
疲労き裂が発生した場合、靱性の低い溶接部では不安定破壊(脆性破壊)に至るリスクが高まるためです。

 

主要材料のシャルピー吸収エネルギー

代表的な鉄鋼材料の室温におけるシャルピー吸収エネルギーの目安を以下に示します。
これらの値はあくまで一般的な目安であり、実際の値は化学成分、熱処理条件、板厚などによって変動します。

材料 規格 吸収エネルギーの目安(室温)
一般構造用圧延鋼材 SS400 30 ~ 80 J
溶接構造用圧延鋼材 SM490B 47 J 以上(0℃保証)
機械構造用炭素鋼 S45C(焼入焼戻) 40 ~ 100 J
低温用鋼 SLA325 27 J 以上(-46℃保証)
9%ニッケル鋼 SL9N590 34 J 以上(-196℃保証)
オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304 100 ~ 200 J(明確な遷移なし)

SS400は最も汎用的な構造用鋼材ですが、衝撃試験の規格値は定められていません。
低温環境で使用する場合には、衝撃値が保証されたSM材やSLA材を選定するのが鉄則です。

9%ニッケル鋼(SL9N590)は液化天然ガス(LNG)タンクなどの極低温用途に使用される特殊鋼材で、マイナス196℃でも34 J以上の吸収エネルギーを保証しています。
オーステナイト系ステンレス鋼のSUS304は明確な遷移温度を持たないため、広い温度範囲で安定した靱性を示します。

材料の応力特性や機械的性質とあわせて、衝撃値を総合的に判断することが実務では重要です。

 

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衝撃試験に関連する主要規格

衝撃試験に関連する主要なJIS規格とISO規格を整理しておきましょう。

規格番号 名称 主な内容
JIS Z 2242 金属材料のシャルピー衝撃試験方法 試験片寸法、試験条件、結果の報告方法
JIS B 7722 シャルピー振子式衝撃試験機 試験機の要件、検証方法、校正
ISO 148-1 金属材料のシャルピー衝撃試験 JIS Z 2242に対応する国際規格
ASTM E23 Standard Test Methods for Notched Bar Impact Testing 米国で広く使用される衝撃試験規格

JIS Z 2242はISO 148-1と整合化が進められており、試験片の寸法や試験条件はほぼ同等です。
一方、ASTM E23は試験片の許容差や結果の報告方法に若干の違いがあるため、海外メーカーとの取引では適用規格の確認が特に重要になります。

試験機の規格であるJIS B 7722は、試験機の構造要件、間接検証(基準試験片による確認)の方法、定期校正の周期などを規定しています。
試験機が正確な結果を出すためには、年1回以上の校正とトレーサビリティの確保が必要です。

 

8. まとめ

本記事では、衝撃試験の基本原理からシャルピー衝撃試験のJIS規格、吸収エネルギーの計算方法、遷移温度の評価まで、体系的に解説しました。

衝撃試験は、静的試験では見えない材料の靱性を評価するうえで不可欠な試験方法です。
特にシャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に規定された標準試験として、世界中の製造現場で品質保証の根幹を担っています。

吸収エネルギーの計算式  KV = WR(\cos\beta - \cos\alpha) と、試験片のJIS規格寸法を正しく理解しておくことが、試験結果の解釈と材料選定の基本となります。

遷移温度曲線の評価は、低温環境で使用する構造物の安全設計に直結する重要な知識です。
設計最低温度でのシャルピー吸収エネルギーが規格値を満足するかどうかを確認し、適切な材料グレードを選定しましょう。

溶接構造物の品質保証では、溶接金属・融合線・熱影響部のそれぞれについてシャルピー衝撃試験を実施し、靱性を確認することが安全な構造設計の基盤となります。

衝撃試験の結果を正しく解釈するためには、吸収エネルギーの数値だけでなく、試験温度やノッチ形状、試験片サイズ、採取方向といった試験条件を総合的に考慮することが不可欠です。
ミルシートに記載された衝撃値と自社で実施した試験の値を比較する際には、これらの条件が同一であることを必ず確認してください。

鋼材の選定にあたっては、想定される使用最低温度でのシャルピー衝撃値が規格要求値を上回ることを確認し、安全マージンを確保した材料グレードを採用するのが望ましいでしょう。
特に人命に関わる構造物では、材料の靱性確保に妥協は許されません。
衝撃試験の知識を正しく身につけ、安全で信頼性の高い設計に役立ててください。