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コイルとは?インダクタンスと働き・計算を解説

「コイルはただ導線を巻いただけなのに、なぜ特別な働きをするのか」

抵抗・コンデンサと並ぶ基本部品でありながら、コイルは少しイメージしにくい存在です。

その働きを基礎から整理してくれるのが、本記事のテーマであるコイルです。

コイルは磁気エネルギーをためる部品で、電流の変化を妨げる性質を生かして、フィルタや変圧器など幅広く使われています。

本記事では、コイルの仕組みとインダクタンスから、誘導起電力、ためるエネルギー、交流での振る舞い、RL回路の時定数、種類と用途までを、数式と図表で体系的に解説します。

 

 

1. コイルとは|磁気エネルギーをためる部品

コイルとは、導線をらせん状に巻いた部品で、磁気の形でエネルギーをためる働きをします。

インダクタとも呼ばれ、抵抗・コンデンサと並ぶ受動部品の基本3要素のひとつです。

1-1. コイルの役割

コイルに電流を流すと、その周りに磁界が発生します。

この磁界の形で、コイルはエネルギーをためています。

 

コンデンサが電界(電荷)でエネルギーをためるのに対し、コイルは磁界でためるのが対照的です。
電流を流すとためられ、電流を止めると放出される点は、コンデンサと似ています。

 

この性質を使って、コイルは電流を安定させたり、特定の周波数を選んだりします。
抵抗が電流を消費し、コンデンサが電荷をため、コイルが磁気をためる、と整理できます。

1-2. コイルの構造

コイルは、導線をぐるぐると巻いただけのシンプルな構造です。

巻きの中心に鉄やフェライトなどのコア(磁心)を入れると、磁界が強まり性能が上がります。

 

巻数が多いほど、またコアの性能が高いほど、コイルの働きは強くなります。
空芯のコイルもありますが、コアを使うことで小型でも大きな効果が得られます。

 

このシンプルな構造から、後で述べるさまざまな性質が生まれます。
導線を巻くだけで、電流の変化に逆らう特別な部品になるのです。

1-3. 電流の変化を妨げる

コイルの最も重要な性質は、電流の変化を妨げようとすることです。

電流を増やそうとすると妨げ、減らそうとするとそれも妨げます。

 

このため、コイルに流れる電流は急には変わらず、ゆるやかに変化します。
スイッチを入れても電流がじわじわ立ち上がるのは、この性質によるものです。

 

電流を一定に保とうとする働きから、コイルは電流の安定化に使われます。
変化を嫌うコイルと、電圧変化を嫌うコンデンサは、好対照の関係にあります。

1-4. コイルとコンデンサの対比

コイルとコンデンサは、性質がちょうど鏡写しの関係にあります。

コンデンサは電圧の変化を嫌い、コイルは電流の変化を嫌います。

 

コンデンサは直流を遮り交流を通し、コイルは直流を通し交流を妨げます。
エネルギーも、コンデンサは電界、コイルは磁界という形でたくわえます。

 

この対称性を押さえておくと、片方を理解すればもう片方も自然に理解できます。
2つを対にして覚えるのが、受動部品をマスターする近道です。

 

2. インダクタンスとは

インダクタンスとは、コイルが電流の変化を妨げる能力の大きさを表す量です。

コイルの最も基本的な性能指標です。

2-1. インダクタンスの意味

インダクタンスは、同じ電流変化に対してどれだけ強く妨げるかを表します。

インダクタンスが大きいほど、電流の変化を強く妨げ、磁気エネルギーも多くためられます。

 

記号はLで表され、コイルの巻数や形状、コアの性質で決まります。
同じ電流でも、インダクタンスが大きいほど多くの磁気エネルギーをたくわえます。

2-2. インダクタンスの単位

インダクタンスの単位は、ヘンリー(H)です。

1ヘンリーは、1秒間に1アンペアの電流変化があったとき、1ボルトの起電力を生じる大きさです。

 

実際の部品では、ミリヘンリー(mH)やマイクロヘンリー(μH)がよく使われます。
電源用の大きなコイルはmH級、高周波用の小さなコイルはμH級が一般的です。

2-3. インダクタンスを決める要素

インダクタンスの大きさは、コイルの構造で決まります。

巻数・断面積・コアの透磁率・コイルの長さが主な要素です。

 

特に巻数の効果は大きく、インダクタンスは巻数の二乗に比例します。
巻数を2倍にすると、インダクタンスは4倍になります。

 

また、透磁率の高いコアを使うほどインダクタンスは大きくなります。
小型で大きなインダクタンスを得るには、コア材料の選択が重要です。

2-4. 空芯とコア入りの違い

コイルは、中に磁性体のコアを入れるかどうかで特性が変わります。

空芯コイルはインダクタンスが小さい代わりに、高い周波数まで安定して働きます。

 

コア入りコイルは、少ない巻数で大きなインダクタンスが得られます。
その反面、大電流ではコアが磁気飽和し、インダクタンスが下がる弱点があります。

 

用途に合わせて、空芯とコア入りを使い分けるのが基本です。
高周波では空芯、低周波で大きな値が必要ならコア入り、と覚えておきましょう。

 

3. 誘導起電力と自己誘導

コイルが電流変化を妨げるのは、誘導起電力という電圧を生じるためです。

この仕組みを見ていきましょう。

3-1. レンツの法則

コイルを貫く磁界が変化すると、その変化を妨げる向きに起電力が生じます。

これをレンツの法則と呼びます。

 

電流を増やそうとすれば、それを打ち消す逆向きの起電力が生まれます。
変化に逆らう、というコイルの性質は、このレンツの法則に由来します。

3-2. 自己誘導の式

コイル自身の電流変化が起電力を生む現象を、自己誘導と呼びます。

生じる起電力eは、次式で表されます。

 

 e = -L \dfrac{di}{dt}

 

電流の変化の速さ(di/dt)が大きいほど、大きな起電力が生じます。
マイナス符号は、変化を妨げる向きであることを表しています。

 

電流を急に止めると、非常に大きな起電力が発生することがあります。
リレーやモーターのスイッチで火花が出るのは、この自己誘導が原因です。

3-3. 相互誘導

2つのコイルを近づけると、一方の電流変化が他方に起電力を生じさせます。

これを相互誘導と呼びます。

 

相互誘導は、変圧器(トランス)の動作原理そのものです。
磁界を介してエネルギーを伝えることで、電圧を変換できます。

3-4. 逆起電力とサージ対策

コイルの電流を急に遮断すると、ためた磁気エネルギーが高い逆起電力となって現れます。

この電圧は、スイッチや半導体を破壊するほど大きくなることがあります。

 

これを防ぐため、コイルと並列に還流ダイオードを入れるのが定番の対策です。
遮断時の電流をダイオードに逃がし、危険な逆起電力を抑えます。

 

リレーやモーターの駆動回路では、このサージ対策が欠かせません。
コイルを扱うときは、遮断時の逆起電力を必ず意識する必要があります。

 

4. コイルにためるエネルギー

コイルにためられる磁気エネルギーも、計算で求められます。

電流の二乗に比例するのが特徴です。

4-1. エネルギーの式

コイルにたまる磁気エネルギーEは、次式で求められます。

 

 E = \dfrac{1}{2} L I^2

 

エネルギーは電流の二乗に比例します。
電流を2倍にすると、たまるエネルギーは4倍になります。

 

コンデンサのエネルギーが電圧の二乗に比例したのと、ちょうど対称的な関係です。
コイルは電流、コンデンサは電圧でエネルギーが決まる、と覚えておきましょう。

4-2. エネルギーの計算例

インダクタンス0.1H(100mH)のコイルに2Aの電流が流れているときのエネルギーを求めます。

 

 E = \dfrac{1}{2} \times 0.1 \times 2^2 = 0.2 \, \lbrack \text{J} \rbrack

 

たまる磁気エネルギーは0.2ジュールと求まります。
このエネルギーは、電流を止めると一気に放出されようとします。

 

大きなコイルの電流を急に切ると、ためたエネルギーが高電圧となって現れます。
この性質は、昇圧回路や点火装置に応用されています。

 

5. 交流とコイル

コイルは、コンデンサとは正反対の交流特性を持っています。

この対称性が、両者の使い分けを生みます。

5-1. 直流は通し交流は妨げる

コイルは、直流をよく通し、交流を妨げるという特徴があります。

直流では電流が一定なので変化がなく、起電力も生じないためです。

 

一方、交流では電流が絶えず変化するため、それを妨げる起電力が生じ続けます。
この性質は「直流通過・交流阻止」と呼ばれ、コンデンサとちょうど逆です。

 

周波数が高いほど、コイルは交流を妨げる度合いが強くなります。
この性質を使って、高周波ノイズを抑えるチョークコイルが作られます。

5-2. 誘導性リアクタンス

交流に対するコイルの「通しにくさ」を、誘導性リアクタンスと呼びます。

 

 X_L = 2 \pi f L

 

周波数fやインダクタンスLが大きいほど、リアクタンスは大きくなります。
抵抗とリアクタンスをまとめた量がインピーダンスです。

 

コンデンサのリアクタンスが周波数に反比例したのと、ちょうど逆の関係です。
この正反対の特性を組み合わせると、特定の周波数を選ぶ回路が作れます。

5-3. 電流が電圧より遅れる

コイルだけの交流回路では、電流の波が電圧の波より90度遅れます。

電流の変化を妨げるため、電流の立ち上がりが遅れるのです。

 

この「電流が遅れる」性質は、コンデンサとちょうど反対です。
モーターなどコイルを含む機器が遅れ力率になるのは、この性質によります。

 

6. RL回路と時定数

抵抗とコイルを組み合わせた回路をRL回路と呼びます。

電流の立ち上がりの速さを決めるのが時定数です。

6-1. 電流の立ち上がり

RL回路に電圧を加えると、電流は指数関数的に立ち上がります。

最初はゆるやかで、最終値に近づくほど変化が小さくなります。

 

コイルが電流変化を妨げるため、電流はすぐには最大になりません。
最終的な電流は、抵抗だけで決まる値に落ち着きます。

6-2. 時定数τ=L/R

RL回路の時定数τは、インダクタンスを抵抗で割って求められます。

 

 \tau = \dfrac{L}{R}

 

RC回路とは異なり、抵抗が分母にある点に注意が必要です。
抵抗が大きいほど時定数は小さく、応答は速くなります。

RL回路の時定数の詳しい計算は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。

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7. コイルの種類と用途

コイルには用途に応じてさまざまな種類があります。

代表的なものと使い方を見ていきましょう。

7-1. コイルの種類

コイルは、コアの種類や用途によって分類されます。

空芯コイルは高周波向き、フェライトコアは小型で高周波ノイズ対策に使われます。

 

鉄心コイルは電源用など低周波で大電流を扱う用途に向いています。
用途に合わせて、コア材料と巻数が選ばれます。

7-2. コイルの用途

コイルの代表的な用途が、ノイズを抑えるチョークコイルです。

高周波を妨げる性質を使い、電源ラインのノイズを除去します。

 

また、相互誘導を利用した変圧器(トランス)も、コイルの重要な応用です。
コンデンサと組み合わせれば、特定の周波数を選ぶ共振回路やフィルタも作れます。

7-3. 種類と特徴の比較

主なコイルの種類を、表で整理します。

 

種類 特徴 主な用途
空芯コイル 高周波で安定・低インダクタンス 高周波回路
フェライトコイル 小型・高周波ノイズに強い ノイズ除去・電源
鉄心コイル 大きなインダクタンス・低周波向き 変圧器・電源

 

同じコイルでも、コアの種類で得意な周波数や用途が大きく変わります。
扱う周波数と必要なインダクタンスから、適したコイルを選びます。

7-4. 選定の注意点

コイルを選ぶときは、インダクタンスのほかに定格電流に注意が必要です。

定格電流を超えると、コアが磁気飽和してインダクタンスが急減します。

 

磁気飽和を起こすと、コイルとしての働きが失われてしまいます。
インダクタンス・定格電流・周波数特性の3点を確認して選ぶことが大切です。

まとめ

本記事では、磁気エネルギーをためる部品である「コイル」について、仕組みとインダクタンスから、誘導起電力、ためるエネルギー、交流での振る舞い、RL回路の時定数、種類と用途までを体系的に解説しました。

コイルは電流の変化を妨げる部品で、自己誘導起電力は  e = -L \dfrac{di}{dt}、ためるエネルギーは  E = \dfrac{1}{2} L I^2 で表されます。

交流に対しては誘導性リアクタンス  X_L = 2 \pi f L として働き、直流を通し交流を妨げるという、コンデンサと正反対の性質を持ちます。

RL回路の時定数は  \tau = L/R で、抵抗が分母にある点がRC回路との違いです。

 

コイルは、ノイズ除去・変圧・フィルタなど、電子回路で欠かせない基本部品です。
コンデンサと対にして性質を覚え、共振やフィルタといった応用へと理解を広げていってください。