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キー(キー溝)のせん断強度・面圧強度の計算方法

軸とハブを確実に結合するキーは、回転機構における重要な部品であり、せん断強度や面圧強度を正しく評価することが安全設計に直結します。

キーの強度不足は、滑りや破損を引き起こし、機械の運転停止や重大なトラブルにつながります。

本記事では、キーのせん断強度・面圧強度の計算方法、設計上の注意点、具体的な計算例までを網羅的に解説します。

 

 

キーの基礎知識

キーの役割

キーは軸とハブ間の回転トルクを確実に伝達するための重要な部品です。

軸とハブを固定するだけでなく、回転中の滑りを防ぎ、機械全体の動作精度や安全性を維持する役割も担っています。

代表的な形状には、軸とハブの両方に溝を設ける平行キー、半円状の断面を持つ半月キー、複数の歯形を持つスプラインキーなどがあります。

 

これらのキーは、使用環境や伝達トルク量、機械構造に応じて適切に選定されます。

軸とハブに設けられたキー溝にキーを正確に嵌め込むことで、両者が一体として回転し、大きなトルクでも安定して伝達することが可能です。

また、キーは交換や補修が比較的容易なため、摩耗や損傷が生じても保守性に優れた設計が可能です。

 

せん断応力と面圧応力

キーには主に二つの種類の応力が作用します。

これらの応力は、設計段階で必ず評価し、許容値を超えないようにする必要があります。

  • せん断応力:キーの断面が軸とハブの相対運動に対して抵抗する応力です。トルクを伝達する過程でキーの断面に直接作用するため、過大なせん断応力はキーの破断や軸溝の損傷につながります。
  • 面圧応力:キーとハブの接触面に生じる圧縮応力です。キーがハブ溝に密着している面積に荷重が集中するため、設計が不十分だと塑性変形や摩耗が発生し、トルク伝達効率が低下する原因になります。

 

これらの応力は、軸径、キー寸法、材料強度、トルク量などにより変化します。

設計値を超えると、キーの滑りや破断が発生し、機械の停止や重大トラブルの原因となります。

したがって、キーの強度計算ではせん断応力と面圧応力の両方を必ず評価し、十分な安全率を確保することが重要です。

 

せん断応力の計算式

キーのせん断応力 \tau は、作用トルク T、キー長 L、キー高さ h、軸半径 r により次式で求められます。

 \tau = \frac{2T}{d L h}

ここで d は軸径、L はキーの有効長、h はキーの高さです。

せん断応力は、軸径やキー寸法に直接依存するため、部品選定時に十分確認する必要があります。

 

面圧応力の計算式

キーとハブの接触面に生じる面圧応力 p は次式で求められます。

 p = \frac{2T}{d L b}

ここで b はキー幅です。

面圧応力は、キー溝の長さや幅によって変化し、過大になるとハブやキーに塑性変形が発生します。

 

キーのせん断・面圧強度計算の具体例

平行キーの計算例

軸径 d = 30 mm、キー幅 b = 10 mm、キー高さ h = 8 mm、キー長 L = 40 mm の平行キーが、トルク T = 500 N·m を伝達する場合を考えます。

 

まず、せん断応力を計算します。

 \tau = \frac{2T}{d L h} = \frac{2 \times 500}{0.03 \times 0.04 \times 0.008} \approx 104.2 \,\mathrm{MPa}

 

次に、面圧応力を計算します。

 p = \frac{2T}{d L b} = \frac{2 \times 500}{0.03 \times 0.04 \times 0.01} \approx 833.3 \,\mathrm{MPa}

 

設計強度と比較し、せん断応力・面圧応力が許容値内であることを確認します。

 

半月キーの計算例

半月キーの場合、接触面積が半円断面のため、面圧計算で係数 0.5 を乗じます。

例えば軸径 d = 40 mm、トルク T = 800 N·m、キー長 L = 50 mm、キー半径 r = 5 mm の場合。

 

せん断応力  \tau = \frac{2T}{d L h} は同様に計算できます。

面圧応力は  p = \frac{2T}{d L b} \times 0.5 と補正します。

計算により、面圧が許容値を超える場合は、キー長や幅を増加させることで安全性を確保します。

 

材料別許容応力と安全率の設定

キー寸法別せん断・面圧計算表

軸径 d [mm] キー幅 b [mm] キー高さ h [mm] キー長 L [mm] トルク T [N·m] せん断応力 τ [MPa] 面圧応力 p [MPa]
30 10 8 40 500 104 833
40 12 10 50 800 64 533
50 14 12 60 1000 49 396
60 16 14 70 1500 42 268

 

キー材質と許容せん断応力

キーの材質により、許容せん断応力や面圧応力は大きく異なります。

代表的な鋼材の許容せん断応力は以下の通りです。

材質 引張強さ σ_b [MPa] 許容せん断応力 τ_{allow} [MPa] 許容面圧応力 p_{allow} [MPa]
S45C(一般機械構造用鋼) 570 285 450
SCM435(クロムモリブデン鋼) 800 400 600
SCM440(高強度合金鋼) 1000 500 750
SK5(工具鋼) 900 450 700

※許容応力は安全率を考慮した値で、一般的には引張強さの 0.5 倍前後が目安です。

 

安全率を考慮した設計例

先ほどの平行キー例(軸径 d = 30 mm、キー幅 b = 10 mm、キー高さ h = 8 mm、キー長 L = 40 mm、トルク T = 500 N·m)を S45C で設計する場合、許容せん断応力 τ_{allow} = 285 MPa を用います。

 

設計せん断応力は τ = 104 MPa でしたので、安全率は以下の通り計算できます。

 n_s = \frac{\tau_{allow}}{\tau} = \frac{285}{104} \approx 2.74

 

面圧応力 p = 833 MPa に対して許容面圧応力 p_allow = 450 MPa ですので、安全率は

 n_p = \frac{p_{allow}}{p} = \frac{450}{833} \approx 0.54

 

この場合、面圧が許容値を超えているため、キー幅またはキー長を増やして安全率を 1.5 以上に確保する設計に修正する必要があります。

 

複数キー・多軸伝達の場合の安全率補正

複数軸や複数キーを使用する場合、荷重分担の偏りにより各キーにかかる応力は均等にならないことがあります。

設計時には、各キーの応力を個別に計算し、最小安全率が設計基準を満たすように補正します。

また、高負荷や衝撃荷重がある場合は安全率をさらに増やすことで、キーの滑りや破損を防止できます。

 

設計上の注意点

キー設計では、せん断強度と面圧強度の両方を考慮することが重要です。

特に高トルク伝達時は、キー溝の寸法や軸径、キー材質の強度を慎重に選定する必要があります。

過大トルクや振動荷重を考慮し、安全率を設けることで滑りや破断のリスクを低減できます。

複数軸にまたがる伝達機構では、各キーの荷重分担を計算し、総合的な強度評価を行うことが重要です。

 

現場での保全ポイント

キーは摩耗や腐食により強度が低下することがあります。定期点検では、目視による溝の損傷確認、軸とハブのガタチェックを行います。

摩耗やゆるみが発生した場合は、キーの交換やキー溝の補修を行い、安全なトルク伝達を維持します。

長期運転では、伝達トルクや回転数の履歴を記録し、設計トルクと比較することで異常兆候を早期に発見できます。

 

まとめ

キーは軸とハブ間のトルク伝達に不可欠な部品であり、せん断応力・面圧応力を正確に評価することが安全設計の基本です。

計算例や寸法表を活用することで、設計段階でキーの強度を確認し、摩耗や過負荷によるトラブルを未然に防ぐことができます。

現場では定期点検や摩耗チェックを実施し、設計強度との比較によって長期的な信頼性を確保することが重要です。