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対数平均温度差LMTDとは?熱交換器の計算

熱交換器の設計で、伝熱面積を決めるときに必ず出てくる値が対数平均温度差です。

英語ではLog Mean Temperature Differenceと呼ばれ、LMTDと略されます。

熱交換器では、高温流体と低温流体の温度差が入口から出口まで一定ではありません。

その変化する温度差を、熱交換器全体の代表値として扱えるようにしたものがLMTDです。式だけでなく、どの温度を組み合わせるかを理解することが重要です。

本記事では、対数平均温度差の意味、計算式、並流と向流の違い、伝熱面積計算への使い方まで実務目線で解説します。

1. 対数平均温度差LMTDとは

熱交換器全体を代表する温度差

対数平均温度差とは、熱交換器全体を代表する等価な温度差です。

英語ではLog Mean Temperature Differenceと書き、頭文字を取ってLMTDと呼びます。

熱交換器では、高温流体から低温流体へ熱が移動します。

その熱の移動を生む駆動力が、二つの流体の温度差です。

ただし温度差は、熱交換器の入口から出口まで同じではありません。

入口側では大きく、出口側では小さくなることが多く、場所によって値が変化します。

そこで、変化する温度差を一つの代表値に置き換える必要があります。

その代表値が、対数平均温度差LMTDです。

熱交換器の面積計算に使う

LMTDは、熱交換器の伝熱量や伝熱面積を求めるために使います。

熱交換器の基本式では、伝熱量は総括伝熱係数、伝熱面積、平均温度差の積で表されます。

この平均温度差として使うのが、対数平均温度差です。

単純な温度差ではなくLMTDを使うことで、入口から出口までの温度変化を反映できます。

熱交換器の種類や構造の基本は、熱交換器の記事で詳しく解説しています。

熱交換器を新しく選ぶときは、必要な熱量から面積を見積もります。

既設の熱交換器を評価するときは、面積と温度条件から能力を確認します。

どちらの場合も、LMTDは設計と性能確認の中心になる値です。

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2. なぜ単純平均ではなく対数平均を使うのか

温度差は直線的に変わらない

入口と出口の温度差を足して二で割れば、平均温度差が求まりそうに見えます。

しかし、熱交換器の温度差は単純な直線では変化しません。

熱が移動すると、高温流体は冷え、低温流体は温まります。

その結果、両者の温度差は位置によって連続的に変わります。

伝熱量は、その瞬間ごとの温度差に比例して決まります。

温度差が大きい部分では熱が多く移動し、小さい部分では熱の移動が小さくなります。

この関係を熱交換器全体で積分すると、対数を含む式になります。

そのため、入口と出口の差を算術平均するだけでは正しい代表値になりません。

差が大きいほど算術平均とのずれが広がる

両端の温度差がほぼ同じなら、算術平均と対数平均の差は小さくなります。

この場合は、どちらを使っても実用上の差はあまり目立ちません。

一方で、入口側の温度差が大きく、出口側の温度差が小さい場合は注意が必要です。

算術平均は実際より大きめの温度差を与えやすくなります。

温度差を大きく見積もると、必要な伝熱面積を小さく見積もってしまいます。

その結果、選んだ熱交換器が能力不足になる恐れがあります。

LMTDは、温度差の変化を反映して安全側に近い面積計算を行うための値です。

熱交換器の設計では、単純平均ではなく対数平均を使うのが基本です。

平均の種類 求め方 熱交換器での扱い
算術平均温度差 両端の温度差を単純に平均する 概算には使えるが誤差が出やすい
対数平均温度差 温度差の変化を対数で平均する 伝熱面積計算の基本として使う

3. LMTDの計算式と温度差の取り方

基本の計算式

対数平均温度差は、熱交換器の両端における二つの温度差から求めます。

片端の温度差をΔT1、もう片端の温度差をΔT2とします。

このとき、LMTDは次の式で表されます。

 \Delta T_{lm} = \dfrac{\Delta T_1 - \Delta T_2}{\ln \left( \dfrac{\Delta T_1}{\Delta T_2} \right)}

ΔTlmが対数平均温度差です。

lnは自然対数を表します。

式の分子は、両端の温度差の差です。

式の分母は、二つの温度差の比の自然対数です。

どちらをΔT1にしても、同じ正の値として扱えば結果は同じになります。

実務では、大きい方をΔT1、小さい方をΔT2として計算すると分かりやすくなります。

温度差は℃で計算してもKで計算しても同じ値になります。

これは温度差1℃と温度差1Kの大きさが同じだからです。

ただし、絶対温度そのものを扱う熱力学計算と混同してはいけません。

LMTDで使うのは温度そのものではなく、二流体間の温度差です。

計算書では、温度の単位と差の単位を明記しておくと、後から確認しやすくなります。

温度差は絶対値で考える

ΔT1とΔT2は、それぞれの端での高温流体と低温流体の温度差です。

基本的には、高温側温度から低温側温度を引いて求めます。

重要なのは、流れの向きに合わせて正しい端同士を組み合わせることです。

並流では、高温入口と低温入口が同じ端にあります。

向流では、高温入口と低温出口が同じ端になります。

この対応を間違えると、LMTDが全く違う値になります。

また、温度差が負になるような組み合わせは、温度の対応を見直す必要があります。

計算前に、簡単な温度プロフィールを描いて確認するとミスを減らせます。

計算例で確認する

簡単な数値例で、LMTDの意味を確認します。

高温流体が90℃から60℃へ冷え、低温流体が20℃から50℃へ温まる向流熱交換器を考えます。

向流では、高温入口90℃と低温出口50℃が同じ端にあります。

この端の温度差は40℃です。

もう一端では、高温出口60℃と低温入口20℃が向かい合います。

この端の温度差も40℃です。

両端の温度差が等しいため、この場合のLMTDは40℃になります。

同じ温度条件を並流で考えると、入口側は90℃と20℃で70℃、出口側は60℃と50℃で10℃です。

算術平均なら40℃ですが、LMTDはこれより小さくなります。

つまり、同じ入出口温度に見えても、流れの向きで有効な温度差は変わります。

この差が、並流と向流で必要面積が変わる理由です。

設計時は、温度の組み合わせだけでなく、実際の流れ方向を必ず確認します。

4. 並流と向流でLMTDはどう変わるか

並流の温度差

並流とは、高温流体と低温流体が同じ向きに流れる方式です。

入口では高温流体が熱く、低温流体が冷たいため、温度差が大きくなります。

流れが進むにつれて高温流体は冷え、低温流体は温まります。

そのため、出口に向かうほど温度差は小さくなります。

並流では、出口側で二つの流体の温度が近づきます。

原理的には、低温流体出口温度が高温流体出口温度を超える温度クロスは起こりません。

構造は分かりやすいものの、同じ条件なら向流よりLMTDが小さくなる傾向があります。

そのため、同じ熱量を交換するには大きめの伝熱面積が必要になることがあります。

向流の温度差

向流とは、高温流体と低温流体が互いに逆向きに流れる方式です。

熱交換器の一端では、高温流体入口と低温流体出口が向かい合います。

もう一端では、高温流体出口と低温流体入口が向かい合います。

この配置では、熱交換器全体にわたって温度差を比較的大きく保ちやすくなります。

そのため、向流は並流よりもLMTDが大きくなりやすい方式です。

LMTDが大きければ、同じ面積でも多くの熱を交換できます。

逆に同じ熱量を得るなら、必要な面積を小さくできます。

省エネや小型化を重視する熱交換器では、向流が基本になることが多いです。

方式 温度差の取り方 特徴
並流 高温入口−低温入口、高温出口−低温出口 出口で温度差が小さくなりやすい
向流 高温入口−低温出口、高温出口−低温入口 全体で温度差を保ちやすい
直交流 流路構成により補正して扱う 空調コイルなどで使われる

5. 伝熱量と伝熱面積の計算

基本式はQ=UAΔTlm

LMTDは、熱交換器の伝熱量を計算する式に入ります。

熱交換器の代表的な設計式は次の通りです。

 Q = U A \Delta T_{lm}

Qは伝熱量、Uは総括伝熱係数、Aは伝熱面積です。

ΔTlmが対数平均温度差を表します。

総括伝熱係数は、熱の伝わりやすさを全体として表す係数です。

壁の熱伝導、流体側の熱伝達、汚れの抵抗をまとめた値として扱います。

熱伝達率の考え方は、熱伝達率の記事が参考になります。

伝熱量を増やしたい場合は、Uを大きくする、Aを大きくする、LMTDを大きくする方法があります。

どの要素を改善するかが、熱交換器設計の検討ポイントになります。

必要な伝熱面積を求める

新しく熱交換器を選ぶときは、必要な伝熱面積を求めます。

基本式を変形すると、面積Aは次のようになります。

 A = \dfrac{Q}{U \Delta T_{lm}}

交換したい熱量Qが大きいほど、必要な面積は大きくなります。

総括伝熱係数Uが小さいほど、同じ熱量を伝えるために大きな面積が必要です。

LMTDが小さい条件でも、面積は大きくなります。

たとえば二つの流体の温度差が小さい熱回収では、LMTDが小さくなりやすいです。

その場合は、同じ熱量でも大型の熱交換器が必要になります。

熱交換器の大きさは、熱量だけでなく温度条件にも強く左右されます。

この点を理解しておくと、なぜ低温差の熱回収が難しいかを説明できます。

たとえば排熱をできるだけ回収したい場合、低温側出口温度を高く設定したくなります。

しかし温度を近づけるほど、出口側の温度差は小さくなります。

その結果、LMTDが下がり、必要な伝熱面積が急に大きくなります。

省エネ効果だけを見ると魅力的でも、設備費や設置スペースが増える場合があります。

熱交換器の設計では、回収できる熱量と設備コストのバランスを見て温度条件を決めます。

6. 熱量Qの求め方と流量条件

流量と比熱から熱量を求める

LMTDを使う前に、まず交換したい熱量Qを決める必要があります。

単相の流体を加熱または冷却する場合、熱量は流量、比熱、温度変化から求めます。

質量流量をṁ、比熱をcp、入口出口の温度差をΔTとすると、次の式になります。

 Q = \dot{m} c_p \Delta T

この式は、高温側でも低温側でも使えます。

高温側で失った熱量と、低温側で受け取った熱量は、理想的には一致します。

実際には放熱や測定誤差があるため、完全には一致しないこともあります。

比熱の基礎は、比熱の記事で確認できます。

温度条件だけでなく流量条件も、熱交換器のサイズを決める重要な要素です。

高温側と低温側の熱収支を合わせる

設計では、高温側と低温側の熱収支をそろえて考えます。

高温流体が放出する熱量と、低温流体が受け取る熱量が大きく違う条件は成立しません。

温度を先に決めた後で、必要な流量を逆算する場合もあります。

逆に、流量が固定されている場合は、出口温度が結果として決まります。

熱交換器の計算では、温度、流量、比熱を一体で見ることが重要です。

流量が増えると、同じ温度変化で扱う熱量は大きくなります。

一方で、流量が増えると圧力損失も増えやすくなります。

配管や熱交換器の圧力損失は、圧力損失とも関係します。

伝熱性能だけを見て流量を増やすと、ポンプ動力が大きくなる点に注意します。

7. 補正係数Fと実際の熱交換器

完全な並流・向流だけではない

教科書では、並流と向流を単純な形で説明します。

しかし実際の熱交換器は、もっと複雑な流れを持ちます。

シェルアンドチューブ熱交換器では、管側が何パスも折り返すことがあります。

シェル側の流れも、バッフルによって曲げられながら進みます。

プレート式熱交換器でも、流路の組み方によって完全な向流から外れる場合があります。

空調用コイルのような直交流では、二つの流体が直角に近い方向で交わります。

このような流れでは、単純な向流LMTDをそのまま使うと実際の平均温度差とずれます。

そこで、LMTDに補正係数をかけて真の平均温度差に近づけます。

補正後の式

補正係数を使う場合、伝熱量の式は次の形になります。

 Q = U A F \Delta T_{lm}

FがLMTD補正係数です。

Fは通常、1以下の値になります。

完全な向流に近いほどFは1に近づきます。

流れの組み方が複雑で、温度差を有効に使いにくいほどFは小さくなります。

Fが小さいと、同じQを得るために必要な面積Aは大きくなります。

補正係数は、熱交換器の形式ごとに用意されたチャートやソフトで求めます。

概算段階では完全向流として計算し、詳細設計で補正する流れが一般的です。

最終的な選定では、メーカーの計算条件と補正の扱いを確認します。

特にシェルアンドチューブ熱交換器では、パス数やバッフル構造で温度分布が変わります。

同じ入口出口温度でも、構造が変わると有効な平均温度差は変化します。

プレート式では流路の組み方やパス割りで、完全向流に近い場合とそうでない場合があります。

カタログ値だけで判断せず、どの流路条件で計算された値かを確認することが大切です。

要素 意味 設計への影響
U 総括伝熱係数 小さいほど面積が必要になる
A 伝熱面積 大きいほど熱量を稼ぎやすい
ΔTlm 対数平均温度差 大きいほど小型化しやすい
F 補正係数 小さいほど必要面積が増える

8. LMTD計算でよくある注意点

両端の温度差が等しい場合

LMTDの式では、ΔT1とΔT2が等しいときに分母がゼロになります。

そのまま計算すると、ゼロで割る形に見えてしまいます。

しかし物理的には、温度差が全体で一定という意味です。

この場合は、LMTDをその温度差そのものとして扱います。

たとえば両端の温度差がともに20℃なら、LMTDも20℃です。

計算ソフトでは、差が非常に小さい場合に数値誤差が出ることがあります。

そのときは、ほぼ同じ温度差として扱ってよいか確認します。

式だけを機械的に使わず、温度差の意味を見て判断します。

また、ΔT1とΔT2のどちらかが極端に小さい場合は、計算値よりも設計上の難しさに注目します。

わずかな温度差で熱を移動させるには、大きな面積と高い熱伝達性能が必要になるためです。

温度クロスと成立性を確認する

向流では、低温流体の出口温度が高温流体の出口温度を上回ることがあります。

これは温度クロスと呼ばれ、熱回収を深く行うときに現れます。

向流では成立し得ますが、並流では原理的に成立しません。

温度条件を入力したときに、流れ方式として矛盾していないかを確認します。

また、LMTD計算では両端の温度差が正である必要があります。

片方がゼロに近いと、必要面積は非常に大きくなります。

温度差を限界まで小さくした熱回収は、省エネ効果が大きい反面、設備が大きくなります。

経済性も含めて、どこまで熱回収するかを決める必要があります。

相変化をともなう場合

蒸気の凝縮や液体の蒸発では、流体温度がほぼ一定で進む区間があります。

このような相変化をともなう熱交換でも、LMTDは使えます。

ただし、相変化区間と単相加熱区間が混在する場合は注意が必要です。

たとえば液体を沸点まで温め、その後に蒸発させる場合は、温度変化の性質が区間で変わります。

その場合は、区間を分けてLMTDと面積を計算した方が分かりやすくなります。

水や油の物性は温度で変化するため、精密計算では平均温度で物性を見ます。

粘度の変化が大きい流体では、流れの状態や熱伝達率も変わります。

流れの状態を判断する指標として、レイノルズ数動粘性係数も関係します。

運転を続ける熱交換器では、汚れの蓄積も重要です。

水あか、スケール、油分、粉体の付着などが伝熱面に残ると、熱が伝わりにくくなります。

汚れが増えると、総括伝熱係数Uが下がります。

同じ伝熱面積でも、得られる伝熱量は小さくなります。

そのため、設計では汚れ係数や清掃周期を考えて余裕を持たせます。

初期性能だけでなく、運転後の性能低下を見込むことが実務では重要です。

定期洗浄ができる構造か、分解点検しやすいかも選定条件になります。

熱交換器は計算値だけでなく、保守性まで含めて評価します。

9. 実務での使い方とまとめ

LMTD法とε-NTU法の使い分け

LMTD法は、入口温度と出口温度がある程度決まっている設計に向いています。

必要な出口温度が指定されており、その条件を満たす面積を求めたい場合に使いやすい方法です。

一方で、既設の熱交換器で出口温度が未知の場合は、LMTDだけでは計算が進めにくいことがあります。

そのような場合は、熱交換器の有効度を使うε-NTU法が使われます。

実務では、設計初期はLMTDで概算し、詳細設計やメーカー選定で専用ソフトを使うことが多いです。

流速を上げると熱伝達率は上がりやすい一方で、圧力損失も増えます。

管内流れや差圧の考え方は、ベルヌーイの定理オリフィスの考え方ともつながります。

温度条件、圧力損失、ポンプ動力、汚れを合わせて判断することが、現実的な選定につながります。

LMTD法は、手計算で全体の見通しを立てやすいのが利点です。

一方で、局所的な温度分布や流速分布までは直接分かりません。

詳細な性能保証が必要な場合は、メーカーの選定計算や実機データと合わせて確認します。

また、熱交換器の入口出口温度は計装位置にも影響されます。

測定点が熱交換器から離れていると、配管での放熱や混合の影響を受けることがあります。

現場で性能低下を疑う場合は、温度計の位置と校正状態も確認します。

このように、LMTDは式だけを覚える値ではありません。

温度差の取り方、流れ方向、補正係数、汚れ余裕をつなげて読むことで、熱交換器の仕様判断に使える値になります。

まとめ

対数平均温度差LMTDとは、熱交換器全体を代表する等価な温度差です。

二つの流体の温度差は入口から出口まで変わるため、単純平均ではなく対数平均で扱います。

LMTDは、両端の温度差の差を、その比の自然対数で割って求めます。

並流では出口側の温度差が小さくなりやすく、向流では全体の温度差を保ちやすくなります。

伝熱量は、総括伝熱係数、伝熱面積、LMTDの積で表されます。

複雑な流路では、補正係数Fをかけて実際の平均温度差に近づけます。

相変化や汚れ、物性変化、圧力損失も、設計では無視できません。

LMTDを理解すれば、熱交換器の大きさと温度条件の関係を具体的に判断できます。

熱膨張をともなう機器配置では、熱膨張と熱応力も合わせて確認すると設計の見落としを減らせます。