
力や重量を電気信号に変換するセンサ「ロードセル」は、産業用の電子はかり、押し引きの荷重測定、プレス機の加圧管理、自動車の衝突試験など、製造業のあらゆる計量・計測シーンで使われています。
しかし「ロードセルって結局どんな原理で動くの?」「コラム型・ビーム型・シェア型の違いは?」「定格容量や精度はどう選べばいいの?」と感じる方も多いはずです。
ロードセルの選定を誤ると、過負荷で破損したり、必要な精度が得られず製品の品質保証ができなくなったりと、現場での影響は決して小さくありません。
そこで本記事では、ロードセルの動作原理から代表的な種類、定格容量・精度・出力感度といった主要仕様の見方、現場での選定ポイントと主要メーカー、使用上の注意点までを体系的に解説します。
- 1. ロードセルとは?力を電気信号に変換する変換器
- 2. ロードセルの動作原理|ひずみゲージとホイートストンブリッジ
- 3. ロードセルの種類|起歪体の構造で分類する
- 4. ロードセルの主要仕様|定格容量・精度・出力感度の見方
- 5. ロードセルの選定方法|失敗しない7つのチェックポイント
- 6. ロードセルの主要メーカーと選び方
- 7. ロードセルの使い方と注意点
- まとめ
1. ロードセルとは?力を電気信号に変換する変換器

ロードセル(Load Cell)とは、加わった力や荷重の大きさを電気信号に変換して出力する変換器(トランスデューサ)の総称です。
身近なところでは、デジタル体重計やキッチンスケール、産業用のホッパースケール、トラックスケール、引張・圧縮試験機の力検出部など、ほぼあらゆる「重さ・力を測る機器」の心臓部にロードセルが組み込まれています。
力の検出方式には、ひずみゲージ式、静電容量式、磁歪式、圧電式、振動弦式、光学式などいくつもの種類があります。その中で圧倒的な主流となっているのがひずみゲージ式ロードセルです。本記事でも特に断りがない限り、ひずみゲージ式ロードセルを前提として解説します。
ひずみゲージ式ロードセルは、力に比例して微小に変形する金属の弾性体(起歪体)と、その表面に貼り付けたひずみゲージから構成されます。荷重がかかったときの起歪体の変形(ひずみ)をひずみゲージが電気抵抗の変化として検出し、ホイートストンブリッジ回路を通じて電圧信号として取り出す仕組みです。
ロードセルが扱う物理量は本来は「力(単位はN:ニュートン)」ですが、重力加速度のもとで質量と力は比例関係にあるため、計量用途では「重さ(kg)」として読み替えて使われます。両者の関係は次の式で結ばれます。
ここで は力
、
は質量
、
は重力加速度
です。標準重力加速度は
と定義されています。
なお、重力加速度は緯度や高度によって僅かに異なるため、はかりとして高い精度を求める場合は使用地で実際の分銅を使った質量校正を行う必要があります。たとえば北海道稚内と鹿児島では、同じ1 kgの分銅をロードセルではかると約1.2 g程度の差が生じるとされています。
2. ロードセルの動作原理|ひずみゲージとホイートストンブリッジ

ひずみゲージ式ロードセルの動作原理は、「力 → ひずみ → 抵抗変化 → 電圧変化」という4段階のエネルギー変換で説明できます。
まず起歪体(きざいたい)と呼ばれる金属弾性体に荷重が加わると、フックの法則に従って弾性ひずみが発生します。荷重と発生するひずみは、弾性域内では比例関係にあります。
ここで は応力、
はヤング率、
はひずみです。
次にこのひずみを電気的に検出するのがひずみゲージ(ストレンゲージ)です。ひずみゲージは絶縁シート上にニクロム系などの細い金属箔を蛇行状にパターンしたもので、起歪体の表面に接着剤で貼り付けて使用します。起歪体が変形するとひずみゲージの金属箔も一緒に伸縮し、電気抵抗が変化します。
ひずみと抵抗変化率の関係は、ゲージ率(ゲージファクタ) を用いて次のように表されます。
一般的な金属箔ひずみゲージのゲージ率は 程度です。ひずみは
オーダーの極めて小さい値なので、抵抗変化もごく僅かです。
この微小な抵抗変化を電圧信号に変換するために用いられるのがホイートストンブリッジ回路です。ロードセルでは、ひずみゲージを4枚使って起歪体に貼り付けることで、温度変化の影響を打ち消しつつ、感度を高める「4ゲージ法」が標準です。
ブリッジに電圧 を印加した状態で、ひずみによる抵抗変化があると、出力電圧
は近似的に次のように表されます。
たとえば 、
(=1000マイクロひずみ)、印加電圧1 Vのとき、出力は0.5 mV/V となります。4枚のゲージ全てが感度方向に効く構成では、4倍の出力が得られ2 mV/V となります。
このため、ロードセルの出力は最大でもせいぜい数mV程度しかありません。高精度に計測するには、専用の高精度アンプ(ロードセルアンプ/重量インジケータ)と組み合わせて使用するのが基本です。
3. ロードセルの種類|起歪体の構造で分類する

ロードセルは起歪体の構造と荷重のかけ方によっていくつかのタイプに分類されます。代表的なものを紹介します。
3-1. ビーム型(曲げ型)
梁(ビーム)の片持ち構造で、荷重による曲げひずみを検出するタイプです。構造が単純で安価、低背に作りやすいのが特徴で、低~中容量のはかり、小型試験機などで広く使われます。
3-2. シングルポイントロードセル(ロバーバル型)
平行四辺形リンク機構を内蔵した一体型のビーム型ロードセルです。偏置誤差(荷重位置の偏りによる出力変化)が小さいのが大きな特徴で、デジタルはかりやプラットフォームスケールのように荷重位置が一定しない用途に最適です。
3-3. コラム型(圧縮型)
柱(コラム)状の起歪体に荷重をかけ、軸方向の縮みひずみと円周方向の伸びひずみを検出するタイプです。大容量化しやすいのが利点で、トラックスケール、ホッパースケール、油圧プレスの加圧管理など数十kN~数MNクラスの計量に多用されます。
3-4. シェア型(せん断型)
起歪体内部に発生するせん断ひずみを45°方向のひずみゲージで検出するタイプです。横荷重や曲げモーメントの影響を受けにくく、過負荷耐性に優れるため、車両重量計やクレーンスケールなどの過酷環境で採用されます。
3-5. ダイヤフラム型・薄膜型
円形の薄板(ダイヤフラム)が荷重で凹むときのひずみを検出するタイプです。低背で剛性が高く、引張・圧縮兼用で使えるものもあります。圧力センサと近い構造で、力センサとしても用いられます。
3-6. リング型・S字型
リング型はリング状の起歪体の内外で発生するひずみを検出するタイプで、引張・圧縮の両方に対応します。S字型はその名の通りS字形状で、引張荷重の検出に多く使われます。フックスケールやテンションメータの内部によく見られる形状です。
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4. ロードセルの主要仕様|定格容量・精度・出力感度の見方

ロードセルのカタログには多数の数値が並びますが、選定で特に重要なのは次の項目です。
4-1. 定格容量
そのロードセルが正しく性能を発揮できる最大荷重です。N(ニュートン)、kgf、t(トン)などで表記されます。実際に測定したい最大荷重の1.2~2倍程度を目安に選び、過負荷でロードセルを破損させないようにします。
4-2. 定格出力(出力感度)
定格容量を負荷したときの出力電圧を、印加電圧1 Vあたりの値(mV/V)で表したものです。一般的には1 mV/V~3 mV/V程度の値が用いられます。出力感度が高いほど、後段アンプでの増幅率を低く抑えられ、ノイズに強い計測系を構成できます。
4-3. 非直線性・ヒステリシス・繰返し性
これらは精度に関わる代表的な指標で、いずれも定格出力に対する百分率(%RO:% of Rated Output)で示されます。非直線性は理想直線とのずれ、ヒステリシスは増荷時と減荷時の出力差、繰返し性は同じ荷重を繰返しかけたときの出力ばらつきです。合算した「総合精度」が0.02~0.5%RO程度のロードセルが用途に応じて使い分けられます。
4-4. 安全過負荷・最大過負荷
定格容量を超えても性能に影響を与えない上限が「安全過負荷」、機械的な破壊までの上限が「最大過負荷」です。多くの製品で安全過負荷は定格容量の150%、最大過負荷は200~300%に設定されています。
4-5. 入力抵抗・出力抵抗・推奨印加電圧
ホイートストンブリッジの抵抗値で、ゲージ抵抗350 Ωのロードセルが標準です。推奨印加電圧は5 V~10 V程度が一般的で、これを超えるとひずみゲージの自己発熱で誤差が増大したり、最悪の場合は焼損に至ります。
4-6. 温度特性
使用温度範囲、零点の温度ドリフト(%RO/℃)、感度の温度ドリフト(%/℃)が規定されています。低温倉庫や屋外、加熱炉まわりなどで使う場合は必ず確認します。
5. ロードセルの選定方法|失敗しない7つのチェックポイント

実際の選定では、以下の手順で条件を整理していくと過不足のない機種選びができます。
- ① 測定したい荷重の種類:圧縮のみか、引張のみか、両方か。動的か静的か。
- ② 最大荷重と最小荷重:定格容量はピーク荷重×安全率(1.2~2.0)で決定。最小分解能は出力感度から逆算。
- ③ 必要精度:取引証明用なら計量法のクラス分け(OIML R60相当)も確認。社内検査用なら0.1~0.5%RO程度で十分なケースも。
- ④ 設置スペースと取付方法:低背が必要ならビーム型、軸方向に長く設置できるならコラム型、など物理的制約を確認。
- ⑤ 環境条件:温度・湿度・粉塵・水濡れの程度を踏まえて、保護等級(IP66/IP67/IP68など)と材質(ステンレス/アルミ)を選定。
- ⑥ ケーブル長と出力形式:4線式か6線式か。長距離配線では6線式(リモートセンシング)にして電圧降下の影響を補償。
- ⑦ 後段アンプとの組み合わせ:印加電圧、入力抵抗、出力レンジ(mV/V)が指示計(インジケータ)と整合しているか確認。
特に見落としがちなのが過負荷対策です。プレス用途や落下衝撃が想定される用途では、ロードセル本体の保護のためにオーバーロードストッパや弾性継手を併用する設計が望まれます。
6. ロードセルの主要メーカーと選び方

国内外には多くのロードセルメーカーがあり、得意領域や品揃えに違いがあります。代表例として次のようなメーカーが挙げられます。
- ユニパルス(UNIPULSE):日本のロードセル・計装機器メーカ。ロードセル本体に加え、対応するデジタルインジケータやアンプの品揃えが豊富。
- ミネベアミツミ:国産ロードセルの大手で、小型~中容量品とOEM向け製品に強み。
- 共和電業:ひずみゲージ・ひずみ測定の老舗メーカ。試験機向け高精度ロードセルや多軸ロードセルに強み。
- クボタ精機:トラックスケール・ホッパースケールなど大容量計量分野に実績。
- HBM(ホッティンガー・ブリュエル&ケアー):ドイツ発祥の世界的計測機器メーカで、高精度試験用ロードセルで国際的に広く使われる。
- Vishay(ビシェイ)/Tedea-Huntleigh:シングルポイントロードセルなどはかり用途で世界シェア大。
選定時は、価格や納期だけでなく、校正証明書の発行体制、過負荷時のアフター対応、対応する指示計の入手性まで含めて評価すると、長期間の安心感が得られます。
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7. ロードセルの使い方と注意点

ロードセルを長く正しく使うためには、設置と運用の両面での配慮が欠かせません。代表的な注意点をまとめます。
① 取付面の平面度・剛性を確保する:取付面が歪んでいると起歪体に余分なひずみが入り、ゼロ点や直線性が崩れます。十分な剛性のある平らなベース上に取り付けるのが基本です。
② 偏荷重・横荷重を避ける:軸方向の力だけを受けるよう、ガイドや弾性継手で位置決めします。シェア型などは横荷重に比較的強いものの、規定値内に収めるのが原則です。
③ 過負荷を絶対に避ける:定格容量を超えた荷重は機械的破損や永久変形を招きます。プレスや落下衝撃のあるラインではオーバーロード保護機構を必ず設けます。
④ 温度急変・結露に注意する:温度急変はゼロ点のドリフトを招きます。屋外や加熱・冷却プロセス近傍では、保温カバーや恒温化、温度補償機能の活用を検討します。
⑤ 定期的に校正する:法令に基づく取引証明用は計量法による定期検査が必要です。社内用途でも、年に1回程度は標準分銅で校正し、ゼロ点と感度のドリフトを確認します。
⑥ ノイズ対策:信号ケーブルはシールド付きを使い、動力ケーブルとは離して配線します。インバータ機器や溶接機の近傍では特に対策が必要です。
センサとしてのロードセルと組み合わせて使われる位置・速度センサについては、エンコーダやポテンショメーターの記事も合わせてご覧ください。
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まとめ
本記事では、力や荷重を電気信号に変換するセンサ「ロードセル」について、原理・種類・主要仕様・選定方法・使用上の注意点を体系的に解説しました。
ロードセルはひずみゲージ式が主流で、起歪体に貼ったひずみゲージの抵抗変化をホイートストンブリッジで電圧に変換し、定格容量に対する出力感度(mV/V)として取り出すシンプルな構造です。ビーム型・コラム型・シェア型・ダイヤフラム型といった形式の違いは、荷重方向や容量、過負荷耐性、設置スペースとの相性で選び分けます。
選定では、定格容量・精度・出力感度の3点を最優先に、環境条件・取付方法・後段アンプとの整合まで一括で確認することが、過負荷破損や精度不足といった失敗を避けるカギです。ハンチングのような制御系の不具合を避ける意味でも、入力センサとしてのロードセル選定は制御系全体の性能を決める重要な要素となります。本記事を参考に、用途に最適なロードセルを選定してください。