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金属3Dプリンターとは?方式と用途を解説

「切削では削り出せないような複雑な形を、金属でそのまま作れたら」と考えたことはないでしょうか。

従来の加工では難しかった中空構造や入り組んだ流路も、金属3Dプリンターを使えば一体で造形することができます。

金属3Dプリンターとは、金属の粉末や線材を一層ずつ溶かして積み重ね、立体的な部品を造形する装置のことです。

この技術は積層造形やアディティブ・マニュファクチャリングとも呼ばれ、近年さまざまな産業で活用が広がっています。

本記事では、金属3Dプリンターの意味から造形方式、メリットと課題、後処理、そして用途と材料までを順番に解説します。

 

 

1. 金属3Dプリンターとは:金属を積層して造形する装置

金属3Dプリンターとは、金属の粉末や線材を溶かしながら一層ずつ積み重ねて、立体物を造形する装置です。

三次元のデータを薄い層に分割し、その層を下から順に積み重ねていくことで部品を作り上げていきます。

切削のように材料を削り取るのではなく、必要なところに材料を付け足していく点が大きな特徴です。

積層造形という考え方

金属3Dプリンターによる造形は、積層造形やアディティブ・マニュファクチャリングと呼ばれています。

設計したデータをスライスソフトで薄い断面に分け、その断面を1層ずつ積み重ねて形を作っていきます。

層の厚みはおおむね数十マイクロメートルと薄く、これを何百層も重ねて立体に仕上げていきます。

このため、内部に空洞のある形状や、複雑に入り組んだ形状も一体で造形することができます。

除去加工との違い

切削や研削などの従来の加工は、材料のかたまりから不要な部分を削り取る除去加工です。

これに対して金属3Dプリンターは、必要な部分にだけ材料を付け足していく付加加工にあたります。

除去加工では削り落とした材料が切りくずとして無駄になりますが、付加加工では無駄が少なくなります。

とくに、チタンのように高価な材料では、この材料の無駄が少ない点が大きな利点になります。

粉末や線材から造形する

金属3Dプリンターでは、原料として金属の細かい粉末や、線材(ワイヤ)を使うのが一般的です。

粉末を使う方式では、敷きつめた粉末をレーザーや電子ビームで溶かして固めていきます。

線材を使う方式では、溶接のように線材を溶かしながら盛り上げて造形していきます。

どの原料と熱源を使うかによって、造形方式がいくつかの種類に分かれることになります。

造形の基本的な流れ

金属3Dプリンターによる造形は、まず三次元のCADデータを用意するところから始まります。

そのデータを専用のソフトで薄い層に分割し、各層の造形経路を計算していきます。

次に装置が層を1枚ずつ造形し、これを繰り返すことで立体の部品が積み上がっていきます。

造形が終わったあとは、サポートの除去や熱処理といった後処理を行って仕上げます。

このように、データの準備から後処理までが一連の工程としてつながっています。

比較項目 除去加工 金属3Dプリンター
加工の考え方 削り取る 付け足す
複雑な内部形状 苦手 得意
材料の無駄 多くなりやすい 少ない
少量生産 段取りに手間 データから直接

 

2. 主な造形方式

金属3Dプリンターには、原料や熱源の違いによって、いくつかの代表的な造形方式があります。

ここでは、実用化されている主な方式の特徴を順番に見ていきます。

パウダーベッド方式

パウダーベッド方式は、敷きつめた金属粉末の層を、レーザーや電子ビームで溶かして固める方式です。

1層を溶かし終えると新しい粉末を薄く敷き、その上にまた次の層を溶かして積み重ねていきます。

細かい形状を高い精度で造形できるため、複雑な部品の製造に広く使われています。

造形できる大きさは装置の粉末床の範囲に限られますが、精密な造形が得意な方式です。

指向性エネルギー堆積方式

指向性エネルギー堆積方式は、粉末や線材を供給しながら、その場で熱源によって溶かして盛り上げる方式です。

英語の頭文字をとってDEDと呼ばれ、肉盛りや部品の補修、大型部品の造形に向いています。

造形の速度が速い反面、パウダーベッド方式に比べると造形の精度は粗くなる傾向があります。

摩耗した金型の補修や、既存の部品への肉盛りといった用途でも活用されています。

バインダージェットと材料押出

バインダージェット方式は、敷いた金属粉末に結合剤を吹きつけて形を作り、あとで焼き固める方式です。

造形そのものは速いですが、焼結という工程で収縮するため、寸法の管理に工夫が必要になります。

材料押出方式は、金属粉末と樹脂を混ぜたフィラメントを溶かして積層し、あとで脱脂と焼結を行います。

装置が比較的安価なため、試作や小型部品の造形に使われることが増えています。

造形方式の選び方

どの造形方式を選ぶかは、求める精度や部品の大きさ、生産する数によって変わってきます。

高い精度や複雑な形が必要なら、パウダーベッド方式が第一の候補になります。

大型の部品や補修が目的であれば、指向性エネルギー堆積方式が適しています。

数を多く作りたい場合は、造形の速いバインダージェット方式が向くこともあります。

このように、目的に合わせて方式を選ぶことが、金属3Dプリンターを活かす第一歩です。

方式 特徴 主な用途
パウダーベッド 高精度・複雑形状が得意 精密な機能部品
指向性エネルギー堆積 高速・大型・補修向き 肉盛り・金型補修
バインダージェット 高速だが焼結で収縮 量産・複雑形状
材料押出 装置が安価 試作・小型部品

 

3. パウダーベッド方式の詳細

パウダーベッド方式は金属3Dプリンターの中心的な方式なので、もう少し詳しく見ていきます。

熱源にレーザーを使う方式と、電子ビームを使う方式の2つに大きく分けられます。

レーザー方式

レーザー方式は、敷きつめた金属粉末をレーザー光で溶かして固めていく方式です。

細かいレーザーで精密に溶かせるため、複雑で繊細な形状を高い精度で造形できます。

多くの金属材料に対応できることから、もっとも広く普及している造形方式です。

大気の影響を避けるため、装置の中を不活性ガスで満たして造形を行います。

電子ビーム方式

電子ビーム方式は、真空中で電子ビームを当てて金属粉末を溶かす方式です。

造形のときに粉末全体を高温に保つため、残留応力が小さくなりやすいという利点があります。

チタン合金のような、酸化しやすく加工が難しい材料の造形に向いています。

一方で、真空が必要なことや表面が粗くなりやすいことが、注意すべき点になります。

造形の精度と表面

パウダーベッド方式は、薄い層を細かい熱源で溶かすため、比較的高い精度で造形できます。

ただし、造形したままの表面は粉末の粒が残ってざらついており、表面粗さは大きくなります。

このため、精度や面の品質が必要な部分には、あとから機械加工を行うのが一般的です。

表面粗さの考え方は、表面粗さの記事で詳しく解説しています。

金属粉末の管理と安全

金属3Dプリンターで使う金属粉末は、品質と安全の両面から、ていねいな管理が必要です。

粉末が湿気を吸ったり、不純物が混じったりすると、造形した部品の品質が下がってしまいます。

また、細かい金属粉末は粉じん爆発の危険があるため、取り扱いには十分な注意が要ります。

使い終わった粉末はふるいにかけて、再び使えるものと使えないものを選り分けます。

こうした粉末の管理が、安定した造形と安全な作業を支えています。

粉末を扱う作業では、防じんマスクや専用の設備を使うことも重要になります。

比較項目 レーザー方式 電子ビーム方式
雰囲気 不活性ガス 真空
残留応力 大きくなりやすい 小さくなりやすい
精度 高い やや粗い
得意な材料 幅広い金属 チタンなど

 

4. 金属3Dプリンターのメリット

金属3Dプリンターには、従来の加工では難しかったことを実現できる、いくつかのメリットがあります。

ここでは、形状の自由度や軽量化、生産の柔軟さといった利点を見ていきます。

複雑な形状を一体で造形できる

金属3Dプリンターの最大のメリットは、複雑な形状を一体で造形できることにあります。

内部に冷却用の流路を通したり、軽量化のために格子状の構造を入れたりすることができます。

従来は複数の部品に分けて作り、組み立てていたものを、ひとつの部品として作れます。

部品の数を減らせるため、組み立ての手間や、接合部の不具合を減らすことにもつながります。

軽量化に役立つ

金属3Dプリンターは、必要な部分にだけ材料を配置できるため、軽量化に大きく役立ちます。

応力のかかる部分だけに材料を残し、不要な部分を取り除く設計を実現できます。

このような最適な形を求める手法は、トポロジー最適化と呼ばれています。

軽量化の考え方は、トポロジー最適化の記事で詳しく解説しています。

少量多品種の生産に向く

金属3Dプリンターは、型を必要とせず、データから直接造形できるのが特徴です。

このため、少量だけ作りたい部品や、一点ものの部品を効率よく製造できます。

試作の段階でも、設計を変えるたびにすぐ形にできるため、開発の期間を短縮できます。

多くの種類を少しずつ作る少量多品種の生産と、とても相性のよい技術だといえます。

デジタル在庫という考え方

金属3Dプリンターでは、部品をデータとして保存し、必要なときに必要な数だけ造形できます。

このため、部品をあらかじめ大量に作って倉庫にためておく必要が少なくなります。

こうした考え方はデジタル在庫と呼ばれ、保管や輸送のコストを下げる効果が期待されます。

古い機械の交換部品なども、データさえあれば必要なときに造形することができます。

在庫を持たずに部品を供給できる点は、これからの製造業で注目されています。

メリット 内容 主な効果
複雑形状 中空・流路・格子を造形 部品統合・高機能化
軽量化 必要な部分だけに材料 燃費や性能の向上
少量多品種 型なしでデータから造形 試作短縮・一点もの
デジタル在庫 必要なときに造形 保管・輸送の削減

 

5. デメリットと課題

金属3Dプリンターには多くのメリットがある一方で、まだ解決すべき課題も残されています。

ここでは、コストや造形速度、品質に関する代表的な課題を見ていきます。

コストと造形速度

金属3Dプリンターは装置も材料の金属粉末も高価で、初期の費用が大きくなりがちです。

また、薄い層を一層ずつ積み重ねていくため、造形には長い時間がかかってしまいます。

このため、同じ部品を大量に作る用途では、従来の加工のほうが安くなることも多くあります。

金属3Dプリンターは、複雑さや少量生産に価値がある部品でこそ強みを発揮します。

表面粗さと後加工

造形したままの表面は粉末の粒が残って粗いため、そのままでは使えないことが多くあります。

精度や面の品質が必要な部分には、造形のあとに機械加工を行う必要があります。

このため、設計の段階から後加工の取りしろを見込んでおくことが大切になります。

後加工まで含めた全体の工程として、コストや時間を考える必要があります。

内部欠陥と残留応力

造形の途中で溶け方にむらがあると、内部に小さな空洞である気孔が残ることがあります。

こうした内部の欠陥は、部品の強度や疲労寿命を下げる原因になってしまいます。

また、急な加熱と冷却を繰り返すため、内部に残留応力がたまり、反りや割れを招くことがあります。

これらの課題に対しては、造形の条件管理や、造形後の後処理で対応していきます。

材料と造形サイズの制約

金属3Dプリンターで造形できる材料は、専用の粉末が用意された金属に限られます。

使いたい材料の粉末がない場合は、造形そのものが難しくなってしまいます。

また、造形できる大きさは装置の造形室の範囲に限られるため、大型部品には不向きです。

造形方向によって強度に差が出る、異方性という性質にも注意が必要です。

こうした制約を理解したうえで、適した部品を選ぶことが大切になります。

課題 内容 対応の方向
コスト・速度 装置・材料が高く造形が遅い 適した部品に絞る
表面粗さ 造形面が粗い 機械加工で仕上げる
内部欠陥 気孔が残ることがある 条件管理・HIP処理
残留応力 反りや割れを招く 熱処理で除去する

 

6. 造形後の後処理

金属3Dプリンターでは、造形しただけで完成ではなく、いくつかの後処理が必要になります。

ここでは、造形した部品を実用品に仕上げるための代表的な後処理を見ていきます。

サポートの除去

造形の途中で形を支えるために、サポートと呼ばれる支柱を一緒に造形することがあります。

造形が終わったあとは、このサポートを工具や機械で取り除く必要があります。

サポートが多いと除去の手間が増えるため、向きや形を工夫して減らすことが大切です。

サポートを減らす設計は、後処理の時間とコストを下げることにつながります。

熱処理による残留応力の除去

造形した部品には残留応力がたまっているため、応力を除く熱処理を行うのが一般的です。

加熱してゆっくり冷ますことで残留応力をやわらげ、反りや割れを防ぐことができます。

材料によっては、強度や組織を整えるための熱処理を合わせて行うこともあります。

残留応力を除いてから機械加工を行うと、加工後の変形を抑えることができます。

HIPと機械加工

内部の気孔を減らすために、熱間等方加圧(HIP)と呼ばれる処理を行うことがあります。

高い温度と圧力を同時に加えることで内部の空洞を押しつぶし、材料を緻密にします。

そのうえで、精度や面の品質が必要な部分に機械加工を施して仕上げていきます。

こうした後処理を組み合わせることで、信頼性の高い金属部品に仕上げることができます。

品質検査と内部の確認

金属3Dプリンターで作った部品は、内部の欠陥を見つけるための検査が重要になります。

X線CTを使うと、部品を壊さずに内部の気孔や欠陥を確認することができます。

こうした非破壊検査によって、強度に関わる内部の品質を保証していきます。

とくに航空宇宙や医療の部品では、厳しい品質検査が欠かせません。

造形から検査までを管理することで、安心して使える部品に仕上げられます。

後処理 目的 内容
サポート除去 支柱を取り除く 工具や機械で切除
熱処理 残留応力を除く 加熱してゆっくり冷ます
HIP処理 内部の気孔を減らす 高温高圧で緻密化
機械加工 精度と面を出す 必要な面を切削

 

7. 用途と使われる材料

金属3Dプリンターは、その特徴を活かせる分野で、すでに実用的に使われています。

ここでは、代表的な用途と、よく使われる金属材料を紹介していきます。

航空宇宙と医療

航空宇宙の分野では、軽量化が重視されるため、金属3Dプリンターが積極的に使われています。

燃料を噴射するノズルや、複雑な形状の軽量ブラケットなどが造形されています。

医療の分野では、骨に合わせた人工関節やインプラントを造形するのに使われています。

患者ごとに形を合わせられるため、一人ひとりに合った医療部品を作ることができます。

金型と自動車

金型の分野では、内部に冷却水の通り道を自由に通せる点が大きな強みになります。

製品の形に沿わせた冷却水路を作ることで、成形の時間を短くし、品質を高められます。

このような冷却の工夫は、コンフォーマルクーリングと呼ばれています。

自動車の分野でも、試作部品や軽量化が必要な部品の製造に活用が広がっています。

使われる金属材料

金属3Dプリンターでは、用途に応じてさまざまな金属材料が使われています。

軽量で強いチタン合金や、軽いアルミ合金、さびに強いステンレスなどが代表的です。

耐熱性が求められる部品には、ニッケル基合金のインコネルがよく使われます。

耐熱合金の特徴は、インコネルの記事で詳しく解説しています。

今後の展望

金属3Dプリンターは、造形の速度や品質の面で、今も改良が続けられている技術です。

複数のレーザーを使って造形を速める装置や、より大型の部品を作れる装置も登場しています。

また、造形の様子をカメラやセンサーで監視し、層ごとの品質を高める取り組みも進められています。

金属3Dプリンターは、設計の自由度を活かして、ものづくりの考え方そのものを変えつつあります。

仮想空間で工程を再現するデジタルツインとの組み合わせも、これから期待されています。

デジタルツインの活用は、デジタルツインの記事で詳しく解説しています。

分野 主な用途 よく使う材料
航空宇宙 ノズル・軽量ブラケット チタン合金・インコネル
医療 人工関節・インプラント チタン合金・コバルトクロム
金型 冷却水路一体の金型 マルエージング鋼
自動車 試作・軽量部品 アルミ合金・ステンレス

 

8. まとめ

金属3Dプリンターとは、金属の粉末や線材を一層ずつ溶かして積み重ね、立体を造形する装置です。

材料を削り取る除去加工と違い、必要な部分に材料を付け足す付加加工である点が大きな特徴です。

主な方式にはパウダーベッド方式や指向性エネルギー堆積方式などがあり、用途に応じて使い分けます。

複雑な形状の一体造形や軽量化、少量多品種の生産に向いている点が大きなメリットです。

一方で、コストや造形速度、表面粗さ、内部欠陥や残留応力といった課題も残されています。

造形後はサポート除去や熱処理、HIP、機械加工といった後処理を行って実用品に仕上げます。

航空宇宙や医療、金型などの分野で、チタン合金やインコネルといった材料とともに活用が進んでいます。