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モーダル解析とは?固有振動数と共振対策

装置を試運転したとき、ある回転数だけで急に音が大きくなることがあります。

ボルトを増し締めしても直らない場合、原因は強度不足ではなく共振かもしれません。

モーダル解析とは、構造物の固有振動数、モード形状、減衰を求める振動解析です。

この3つを把握すると、どの周波数で、どこが、どの形で揺れやすいかを判断できます。

本記事では、固有振動数の式、CAEと実験の違い、共振対策の進め方まで解説します。

 

 

1. モーダル解析とは:振動の癖を見える化する解析

モーダル解析は、構造物が持つ振動の癖を、周波数ごとの揺れ方として分解する解析です。

ここでいう癖とは、固有振動数、モード形状、減衰という3つの情報を指します。

固有振動数は揺れやすい周波数、モード形状はその周波数での変形パターン、減衰は揺れの収まりやすさです。

機械フレーム、ブラケット、配管、モータ架台、制御盤、橋梁など、質量と剛性を持つ構造物は必ず複数のモードを持ちます。

通常の静解析が「荷重をかけたら何mmたわむか」を見るのに対し、モーダル解析は「何Hzでどんな形に揺れやすいか」を見ます。

そのため、設計段階のCAE、試作品の振動試験、量産設備の異音対策まで幅広く使われます。

何を求める解析なのか

モーダル解析で最初に得られる結果は、低い順に並んだ固有振動数の一覧です。

たとえば、1次が28Hz、2次が74Hz、3次が115Hzのように表示されます。

ただし、数値だけを見ても対策は決められません。

各周波数に対応するモード形状を見て、どの部位が大きく動いているかを確認します。

同じ50Hz付近のモードでも、板が曲がるモード、支柱が倒れるモード、箱全体がねじれるモードでは対策位置が変わります。

モーダル解析の目的は、単に危険な周波数を探すことではありません。

振動問題を「周波数」「変形形状」「エネルギーが集まる場所」に分け、設計変更へつなげることです。

静解析や強度計算との違い

静解析は、一定の荷重がゆっくり加わる前提で、応力や変位を求める解析です。

一方、振動問題では荷重の大きさだけでなく、荷重が何Hzで繰り返されるかが重要になります。

小さな力でも、固有振動数に近い周期で入力されると、応答が大きくなることがあります。

これが共振であり、静的な安全率だけでは見落としやすい代表的な不具合です。

応力や安全率の基本は、応力の基本を理解しておくと整理しやすくなります。

ただし、振動で問題になるのは最大応力だけではありません。

繰り返し応力による疲労、締結部のゆるみ、配管溶接部の割れ、センサ信号のノイズも評価対象になります。

そのため、モーダル解析は強度計算の代わりではなく、動的な設計リスクを補足する道具として使います。

 

2. 固有振動数の決まり方:質量・剛性・境界条件

固有振動数は、構造物の質量と剛性のバランスで決まります。

剛性が高いほど高い周波数で揺れ、質量が大きいほど低い周波数で揺れます。

この関係は、ばねとおもりの1自由度振動で考えると理解しやすくなります。

固有振動数  f_n は、ばね定数  k と質量  m から次式で表せます。

 f_n = \dfrac{1}{2\pi}\sqrt{\dfrac{k}{m}}

単位は  Hz で、1秒間に何回振動するかを示します。

剛性を上げると固有振動数は上がる

剛性  k が大きい構造は、同じ力を受けても変形しにくくなります。

式を見ると、 k が大きくなるほど  f_n は高くなります。

たとえば  k = 1.0 \times 10^6 \, \text{N/m} m = 25 \, \text{kg} の場合、固有振動数は約31.8Hzです。

 f_n = \dfrac{1}{2\pi}\sqrt{\dfrac{1.0 \times 10^6}{25}} \fallingdotseq 31.8 \, \text{Hz}

同じ質量で剛性を2倍にすると、固有振動数は約45.0Hzになります。

2倍ではなく  \sqrt{2} 倍になるため、剛性を少し上げただけでは周波数が大きく移動しない場合もあります。

実務では、リブ追加、板厚増加、支持間距離短縮、断面形状変更で剛性を上げます。

曲げ剛性を高める考え方は、断面二次モーメントの理解と密接に関係します。

質量を増やすと固有振動数は下がる

質量  m が大きくなると、同じ剛性でも動き出しにくくなるため、固有振動数は低くなります。

先ほどの例で質量を25kgから50kgに増やすと、固有振動数は約22.5Hzになります。

質量を増やす対策は、固有振動数を危険な入力周波数から下側へ逃がすときに有効です。

ただし、装置全体が重くなり、搬送性、コスト、支持部の荷重条件が悪化する欠点があります。

また、質量を付ける位置がモード形状の節に近いと、期待したほど効果が出ません。

大きく動いている腹の位置に質量を加えるほど、そのモードの周波数を動かしやすくなります。

そのため、重りを付ける前にモード形状を確認し、対象モードに効く場所を選ぶ必要があります。

変更内容 固有振動数の変化 実務上の代表例
剛性を上げる 高くなる リブ追加、板厚増加、支持点追加、スパン短縮
質量を増やす 低くなる 重り追加、制振材貼付、大型部品の搭載
固定条件を強くする 高くなる傾向 片持ちを両持ちにする、ボルト本数を増やす
固定条件を弱くする 低くなる傾向 防振ゴムを入れる、支持剛性を下げる

 

3. モード形状の読み方:腹・節・次数を見る

モード形状は、固有振動数ごとに現れる変形パターンです。

解析ソフトでは、変形量を実寸より大きく拡大してアニメーション表示することが多くあります。

ここで重要なのは、表示された変位の絶対値をそのまま実変位と誤解しないことです。

固有値解析のモード形状は、基本的に相対的な形を示すものであり、外力がかかったときの実振幅ではありません。

したがって、モード形状を見る目的は「何mm動くか」ではなく、「どこが大きく動き、どこが動きにくいか」を把握することです。

腹と節で対策場所を決める

モード形状で大きく動く部分を腹、ほとんど動かない部分を節と呼びます。

振動対策では、腹の位置に剛性、質量、減衰を与えるほど効果が出やすくなります。

反対に、節の近くを補強しても、そのモードにはほとんど効かないことがあります。

たとえば制御盤の側板が太鼓のように膨らむモードでは、側板中央が腹になりやすいです。

この場合、側板の端だけを補強しても改善が小さく、中央付近にビード、リブ、制振材を配置した方が効く場合があります。

配管であれば、スパン中央が腹になる曲げモードを狙ってサポートを追加します。

モード形状は、振動対策の部品をどこに置くかを決める地図として扱うと実務に使いやすくなります。

低次モードほど実機で問題になりやすい

固有振動数は低い順に、1次、2次、3次のように次数を付けて整理します。

低次モードは構造全体が大きく動くことが多く、モータ、ファン、ポンプなどの運転周波数と重なりやすい傾向があります。

高次モードは局所的な板のびびりや、センサブラケットの細かな振動として現れることが多くなります。

ただし、高次モードが安全という意味ではありません。

高回転スピンドル、ギヤかみ合い、インバータの高調波、パルス状の衝撃では、高い周波数の局所モードが問題になることもあります。

評価対象の入力周波数範囲に入るモードを、次数の大小に関係なく確認する必要があります。

たとえば加工機でびびりが問題なら、主軸回転数だけでなく刃数による通過周波数も確認します。

 

4. 基本式と計算イメージ:1自由度から多自由度へ

モーダル解析の考え方は、1自由度系から多自由度系へ拡張できます。

1自由度系は、質量、ばね、ダンパで表した最も単純な振動モデルです。

多自由度系では、各節点や各部品が複数の自由度を持ち、それぞれが連成して振動します。

CAEのモーダル解析は、この多自由度系の固有値問題を数値的に解いています。

実務では式を暗記するより、各式が何を示しているかを理解することが重要です。

1自由度系の運動方程式

質量  m、減衰係数  c、ばね定数  k の1自由度系では、自由振動を次式で表します。

 m\ddot{x} + c\dot{x} + kx = 0

減衰を無視すると、固有角振動数  \omega_n は次式です。

 \omega_n = \sqrt{\dfrac{k}{m}}

角振動数  \omega_n の単位は  rad/s であり、周波数  f_n との関係は次式です。

 f_n = \dfrac{\omega_n}{2\pi}

この式から、ばね定数の単位が  \text{N/m}、質量の単位が  \text{kg} でそろっているかを必ず確認します。

mm単位の剛性を使う場合は、 \text{N/mm} \text{N/m} へ変換しないと、周波数が桁違いになります。

多自由度系の固有値問題

有限要素法では、構造物を多数の要素に分け、質量マトリクス \lbrack M\rbrack と剛性マトリクス \lbrack K\rbrack を作ります。

減衰を無視したモーダル解析は、一般に次の固有値問題として表されます。

\left(\lbrack K\rbrack - \omega^2\lbrack M\rbrack\right)\{\phi\} = \{0\}

ここで \omega は固有角振動数、\{\phi\} はモード形状を表す固有ベクトルです。

この式は、外力を与えなくても構造そのものの質量と剛性から振動特性が決まることを示しています。

実務で重要なのは、\lbrack K\rbrack\lbrack M\rbrack が現物を正しく表しているかです。

板厚、材料密度、固定条件、接触状態、ボルト締結のモデル化がズレると、固有振動数もモード形状もズレます。

解析結果の精度は、ソルバの性能だけでなく、モデル化の妥当性に大きく左右されます。

共振時の応答倍率と減衰

外力の周波数  f が固有振動数  f_n に近づくと、応答は大きくなります。

周波数比  r = f/f_n と減衰比  \zeta を使うと、1自由度系の変位応答倍率は次式で表せます。

 \dfrac{X}{X_{st}} = \dfrac{1}{\sqrt{(1-r^2)^2 + (2\zeta r)^2}}

減衰が小さいほど、 r が1付近のピークは鋭く高くなります。

たとえば減衰比が0.02程度の軽減衰では、共振近傍の応答が大きくなりやすいです。

逆に減衰を増やすとピークは低く広くなり、危険な振動を抑えやすくなります。

共振の基本的な考え方は、共振の基本と合わせて読むと理解しやすくなります。

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5. 計算モーダル解析:CAEで何を確認するか

計算モーダル解析は、CAD形状や有限要素モデルから固有振動数とモード形状を求める方法です。

試作品がない段階で振動リスクを予測できるため、設計初期の比較検討に向いています。

特に、フレームのリブ配置、ブラケット板厚、配管サポート位置、モータ架台の形状比較に有効です。

ただし、計算結果はモデル化した条件の範囲でしか正しくありません。

境界条件を固定しすぎると実機より高い周波数になり、支持を柔らかくしすぎると低い周波数になります。

境界条件と接触条件を現物に近づける

モーダル解析で最も誤差が出やすいのは、固定条件と接触条件です。

完全固定にした面は、回転も並進も動かない理想的な拘束として扱われます。

しかし実機では、ボルト締結部、溶接部、ゴムマウント、床の剛性が有限であり、完全固定ではありません。

特に片持ちブラケットの根元や薄板カバーの締結部では、固定条件の差が固有振動数を大きく変えます。

ボルトの本数や座面の接触を無視すると、実機で発生する局所的な揺れを見落とすことがあります。

初期検討では単純固定で傾向を見てもよいですが、最終判断では支持剛性や接触状態を現物に寄せる必要があります。

たわみと剛性の基本関係は、たわみ計算の基本でも確認できます。

材料値と質量を正しく入れる

固有振動数は剛性と質量で決まるため、ヤング率、密度、板厚、付属部品の質量が重要です。

同じ形状でも、鉄、アルミ、樹脂ではヤング率と密度が異なるため、固有振動数は変わります。

解析モデルでセンサ、ケーブル、カバー、治具、塗装、充填材を省略すると、質量不足で周波数が高めに出る場合があります。

薄板構造では板厚の入力ミスも致命的です。

曲げ剛性は板厚に強く影響されるため、1.6mm板を2.0mmとしてモデル化すると、振動特性は実機と大きくズレます。

材料のヤング率をどう見るかは、ヤング率の考え方と合わせると整理しやすいです。

実機に近い質量を入れるためには、部品表の重量と解析モデルの質量を比較する習慣が有効です。

確認項目 ズレたときの影響 実務での確認方法
固定条件 固有振動数が高めまたは低めにズレる ボルト締結、溶接、床剛性を確認する
材料密度 質量が変わり周波数がズレる 部品表重量と解析質量を照合する
ヤング率 剛性が変わりモードが変わる 材質、温度、樹脂の異方性を確認する
接触条件 局所モードや締結部の揺れを見落とす 結合、摩擦、すき間を必要に応じてモデル化する

 

6. 実験モーダル解析:FRFから実機の特性を出す

実験モーダル解析は、実物を加振して応答を測定し、固有振動数、モード形状、減衰を同定する方法です。

計算モーダル解析がモデルから予測する方法なら、実験モーダル解析は現物から実測する方法です。

実機の締結状態、材料ばらつき、加工誤差、組立状態が反映される点が大きな利点です。

一方で、測定点、加振点、センサ質量、治具の影響を受けるため、試験計画が結果の信頼性を左右します。

実験モーダル解析の中心になるデータは、入力した力と出力した振動応答の比を周波数ごとに表すFRFです。

インパクトハンマーと加振機の使い分け

実験でよく使われる加振方法には、インパクトハンマーと加振機があります。

インパクトハンマーは、先端に力センサを持つハンマーで構造物を叩き、入力力を測定します。

短時間で広い周波数成分を与えられるため、ブラケット、板金、治具などの簡易測定に向いています。

加振機は、シェーカーで正弦波、ランダム波、掃引波などを与え、より制御された入力で測定します。

大型構造物、減衰が大きい構造、入力レベルを管理したい試験では加振機が有利です。

ただし、加振機を取り付けるスティンガや治具が構造物に影響を与えることがあります。

測定の目的が「現場で大まかに共振を探す」のか、「設計検証用のモーダルモデルを作る」のかで方法を選びます。

FRFのピークから固有振動数と減衰を読む

FRFは、ある点に力を入れたとき、別の点がどれだけ加速度、速度、変位として応答するかを示します。

加速度を測る場合、FRFの単位は  (\text{m/s}^2)/\text{N} のような形になります。

FRFの大きさに鋭いピークが出る周波数は、固有振動数の候補です。

ピークが高く鋭いほど減衰が小さく、広く低いほど減衰が大きい傾向があります。

軽減衰でピークが十分に分離している場合、半値幅法で減衰比を概算できます。

 Q = \dfrac{f_n}{f_2 - f_1}

 \zeta \fallingdotseq \dfrac{1}{2Q} = \dfrac{f_2 - f_1}{2f_n}

ここで  f_1 f_2 は、ピーク振幅の  1/\sqrt{2} となる両側の周波数です。

近接モードやノイズが多い測定では、単純なピーク読みではなくカーブフィットによる同定が必要になります。

周波数応答の読み方は、周波数応答の考え方でも詳しく扱っています。

加振点と応答点の選定で結果が変わる

実験モーダル解析では、どこを叩き、どこで測るかが非常に重要です。

対象モードの節に近い位置を叩くと、そのモードがほとんど励起されません。

同じく、節に近い位置にセンサを置くと、そのモードの応答が小さく見えます。

測定点が少なすぎると、曲げモードとねじりモードを取り違えることがあります。

板金構造では、面の中央、端部、折り曲げ部、締結点付近を含めて測定点を配置します。

複雑な構造では、3方向の応答を測る三軸加速度センサを使うと、面外方向だけでなく面内方向のモードも把握しやすくなります。

測定点の配置は、モード形状を粗く描くためのメッシュだと考えると計画しやすくなります。

 

7. 共振対策:周波数をずらす・減衰を増やす・入力を避ける

モーダル解析の結果は、共振対策を決めるために使います。

対策の基本は、固有振動数を入力周波数から離す、減衰を増やす、入力そのものを小さくすることです。

この3つを整理せずに補強だけを追加すると、重く高価な構造になっても振動が残ることがあります。

たとえば30Hzのモードに対して、モータの一次回転成分が1800rpmで入ると30Hzに一致します。

この場合、補強で固有振動数を上げる、運転回転数を変更する、防振・制振を入れるといった選択肢を比較します。

剛性変更で固有振動数を逃がす

剛性を上げる対策は、固有振動数を高い側へ逃がしたいときに使います。

代表例は、リブ追加、板厚増加、支柱追加、支持間距離短縮、箱断面化です。

薄板のびびりでは、単に板厚を増やすより、折り曲げ、ビード、リブで断面を立体化した方が効率的な場合があります。

一方、剛性を上げると別の高い周波数の入力と重なる可能性もあります。

対策後は、対象モードだけでなく周辺の入力周波数も再確認します。

制御系の発振や追従遅れが関係する場合、機械剛性だけでなく制御ゲインも影響します。

制御由来の振動は、ハンチング現象と切り分けて考える必要があります。

質量変更とダイナミックダンパーを使う

質量を加える対策は、固有振動数を低い側へ逃がすときに使います。

ただし、単なる重り追加は装置全体の重量増につながるため、使いどころを選びます。

特定周波数の振動を狙って抑える場合は、ダイナミックダンパーを使う方法があります。

ダイナミックダンパーは、主構造に小さな質量とばねを追加し、対象周波数で逆向きに揺らして応答を低減する装置です。

有効にするには、対象モードの腹に近い位置へ取り付ける必要があります。

取り付け位置がずれると、追加質量だけが増えて効果が小さくなります。

また、対象周波数が運転条件で変動する機械では、ダンパーのチューニング範囲を確認する必要があります。

減衰を増やしてピークを下げる

固有振動数を大きく動かせない場合、減衰を増やして応答ピークを下げる方法が有効です。

代表例は、制振材、摩擦減衰、粘弾性材、防振ゴム、オイルダンパー、締結面の見直しです。

減衰対策は、周波数をずらすのではなく、共振時の振幅を小さくする考え方です。

そのため、固有振動数と入力周波数が完全に離せない場合でも効果を出せます。

ただし、防振ゴムは支持剛性を下げるため、固有振動数を低い側へ移動させます。

回転機の防振では、運転周波数と支持系の固有振動数の関係を確認しないと、逆に揺れが増えることがあります。

共振対策は、周波数をずらす対策と、減衰でピークを下げる対策を分けて考えることが重要です。

対策方針 具体策 注意点
固有振動数を上げる リブ、板厚増加、支持追加、箱断面化 別の高周波入力と重ならないか確認する
固有振動数を下げる 質量追加、支持剛性低下、防振ゴム 重量増と低周波共振に注意する
減衰を増やす 制振材、粘弾性材、ダンパー、摩擦面 温度依存性と経年変化を確認する
入力を避ける 運転rpm変更、ジャンプ周波数、加振源低減 生産条件や制御安定性との両立を見る

 

8. 実務での注意点:解析結果を過信しない

モーダル解析は強力ですが、結果をそのまま正解として扱うと失敗します。

解析はモデルの仮定に依存し、実験は測定条件に依存します。

特に量産設備では、床、基礎、周辺配管、ケーブル、カバー、治具が組み合わさって振動系を作ります。

単体部品だけの解析結果が良好でも、組付け後に別のモードが現れることは珍しくありません。

重要なのは、解析と実測を対立させるのではなく、互いに補正しながら使うことです。

解析値と実測値は必ずズレる

計算モーダル解析と実験モーダル解析の固有振動数は、完全には一致しません。

10%程度のズレでも、原因が固定条件なのか、質量なのか、材料値なのかを確認する必要があります。

特にボルト締結部や接触面を理想結合にしていると、実機より高い固有振動数になることがあります。

逆に、試験で加速度センサやケーブルが小さな部品に対して重すぎると、実測値が低く出る場合があります。

ズレを見つけたら、部品表重量、境界条件、接触条件、測定治具、センサ質量を順番に確認します。

CAEモデルを実測に合わせて見直す作業は、モデル更新と呼ばれます。

これを繰り返すと、次の設計変更の予測精度を高められます。

運転周波数と次数成分を整理する

共振の有無を判断するには、固有振動数だけでなく入力周波数を整理する必要があります。

回転機では、回転数  N  \text{rpm} から一次成分の周波数  f を求めます。

 f = \dfrac{N}{60}

3000rpmで回る軸の一次成分は50Hzです。

ファンの羽根が6枚なら、羽根通過周波数は  50 \times 6 = 300 \, \text{Hz} になります。

ギヤでは、回転数だけでなく歯数によるかみ合い周波数を確認します。

ポンプや圧縮機では、圧力脈動、ベーン枚数、プランジャ本数が加振周波数になります。

固有振動数一覧と運転周波数一覧を同じ表に並べると、危険な一致を見つけやすくなります。

疲労・騒音・制御不安定まで見る

振動の問題は、目に見える大きな揺れだけではありません。

小さな振動でも長時間繰り返されると、溶接部、ボルト穴、切欠き、曲げ部に疲労損傷が起こります。

疲労破壊は、静的強度に余裕があっても発生するため、振動問題では特に注意が必要です。

繰り返し荷重の考え方は、疲労設計とS-N線図を合わせて確認してください。

また、薄板カバーや配管は、強度的には問題がなくても騒音として不具合になることがあります。

サーボ軸では、機械共振が制御ゲインの上限を下げ、応答性を悪化させることもあります。

モーダル解析の結果は、強度、騒音、制御、保全のどの問題に効かせるのかを明確にして使う必要があります。

 

9. まとめ

モーダル解析は、構造物の固有振動数、モード形状、減衰を求める解析です。

固有振動数は質量と剛性で決まり、剛性を上げると高くなり、質量を増やすと低くなります。

モード形状を見ると、対策すべき腹の位置と、効きにくい節の位置を判断できます。

計算モーダル解析は設計初期の比較に有効で、実験モーダル解析は実物の特性確認に有効です。

FRFのピークから固有振動数を読み、ピーク幅から減衰の傾向を把握できます。

共振対策では、固有振動数をずらす、減衰を増やす、入力周波数を避けるという3方向で考えます。

最終的には、CAE結果、実測結果、運転周波数、疲労や騒音の要求を並べて判断することが重要です。