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管摩擦係数とは?ムーディ線図の読み方

配管にポンプで流体を送ると、流れと管壁の摩擦によって、送る途中で必ず圧力が失われていきます。

その失われる圧力の大きさを左右しているのが、管摩擦係数と呼ばれる無次元の値です。

同じ配管でも、この係数を正しく見積もれるかどうかで、必要なポンプの揚程や動力が大きく変わってきます。

管摩擦係数は流れの状態と管内面の粗さで決まり、ムーディ線図を使えば誰でも図から読み取れます。

本記事では、管摩擦係数の意味とダルシーの式、層流と乱流での求め方、ムーディ線図の読み方と設計での使い方まで、実務に役立つ形で具体的に解説します。

 

 

1. 管摩擦係数とは

配管の摩擦損失を表す係数

管摩擦係数とは、配管内を流れる流体が管壁との摩擦で失うエネルギーの大きさを表す係数です。

流体が管の中を進むとき、壁との間にせん断の力が働き、その分のエネルギーが熱となって失われていきます。

失われたエネルギーは熱として散逸し、元の圧力には戻らない、不可逆な損失になります。

この失われるエネルギーを、圧力の低下、つまり圧力損失として計算するために管摩擦係数を使います。

係数の値が大きいほど、同じ流れでも摩擦による圧力損失が大きくなることを意味します。

記号には一般にギリシャ文字のラムダが用いられ、ダルシーの摩擦係数とも呼ばれます。

水道管やプラントの長い配管では、この損失の積み重ねが無視できない大きさになります。

この値は、配管設計で圧力損失を求めるときの、もっとも中心となる重要な係数です。

逆にこの値を読み違えると、ポンプの容量が不足したり、過大な設備で無駄なコストが生じたりします。

圧力損失そのものの全体像は、圧力損失とは何かで詳しく解説しています。

無次元の値として扱う理由

管摩擦係数は、長さや時間といった単位を持たない、無次元の値として定義されています。

無次元であるため、配管の太さや流体の種類が違っても、同じ尺度で摩擦の大きさを比べられます。

実際の値は、おおよそ0.01から0.1ほどの範囲に収まることがほとんどです。

水や油のような一般的な乱流の配管では、0.02から0.04あたりがよく使われる目安になります。

この無次元化のおかげで、ある条件で得た実験の結果を、別の条件の設計にも一般化して使えます。

小さな模型実験の結果を、実物大の配管の設計へ応用できるのも、無次元化の利点です。

後で述べるムーディ線図も、無次元の係数だからこそ一枚の図にまとめられています。

もし係数が単位を持っていたら、管径や流体ごとに別々の図が必要になり、扱いが煩雑になります。

無次元という性質が、管摩擦係数を実務で使いやすい指標にしているのです。

代表的な値の目安

実務では、管摩擦係数のおおよその目安を覚えておくと便利です。

水の乱流では、0.02前後の値になることが多くあります。

層流では、0.03から0.06ほどの、やや大きめの値になります。

粗い管や低いレイノルズ数では、さらに大きな値になります。

計算で求めた値が、この目安から大きく外れていないかを確かめます。

大きく外れていれば、レイノルズ数や粗さの取り違えを疑います。

目安を持っておくと、計算ミスに早く気づけます。

最終的には、線図や式で求めた正確な値を設計に使います。

概算と精算をうまく使い分けることが、効率のよい設計につながります。

 

2. ダルシー・ワイスバッハの式

圧力損失を与える基本式

管摩擦係数は、ダルシー・ワイスバッハの式という基本式の中で使われます。

この式は、十分に発達した円管内の定常な流れについて、管壁の摩擦による圧力損失を与えます。

 \Delta p = \lambda \dfrac{L}{d} \dfrac{\rho v^2}{2}

左辺の圧力損失は、管摩擦係数のラムダに正比例して大きくなる関係になっています。

式の中のLは管の長さ、dは管の内径、ρは流体の密度、vは管内の平均流速をそれぞれ表します。

管が長く内径が細いほど損失が大きくなることが、この式から読み取れます。

圧力ではなく液柱の高さで表したいときは、両辺を密度と重力加速度で割って損失ヘッドにします。

たとえば内径50ミリ・長さ100メートルの管なら、この式に値を入れるだけで損失が求まります。

配管の圧力損失を求める計算では、もっとも広く使われている基本の式です。

係数と配管の形、流れの条件さえ分かれば、この式一つで損失を見積もれます。

流速の二乗で効く点に注意

この式で特に重要なのが、流速vが二乗の形で効いているという点です。

流速を二倍にすると、圧力損失はその二乗にあたる四倍にまで増えてしまいます。

流量を一定に保ったまま管径を半分にすると、流速は四倍になり損失はおよそ十六倍に跳ね上がります。

つまり、流れを速くするほど摩擦損失は急激に大きくなるということです。

大きな流量を無理に細い管へ通すと、損失が想像以上に膨らむ原因がここにあります。

密度と流速の二乗を二で割った項は、流れの運動エネルギーを表す動圧と呼ばれます。

管摩擦係数は、この動圧の何倍が摩擦で失われるかを示す比だと捉えると分かりやすくなります。

動圧を基準にすることで、さまざまな条件の損失を統一的に扱えるようになっています。

流速の影響の大きさを意識すると、配管径を太めに選ぶ理由も理解しやすくなります。

十分に発達した流れが前提

ダルシーの式は、十分に発達した流れを前提にしています。

管の入口付近では、流れの速度分布がまだ完成していません。

この区間を、助走区間または入口区間と呼びます。

助走区間では壁の影響が強く、係数が通常より大きくなります。

配管が長ければ、助走区間の影響は全体の中で小さくなります。

しかし短い配管では、入口の影響を無視できないことがあります。

正確に求めるなら、助走区間の分を別に見込む必要があります。

通常の長い配管では、発達した流れとして扱って差し支えありません。

この前提を知っておくと、短い管での誤差に気づけます。

 

3. 管摩擦係数を決める二つの要素

レイノルズ数と流れの状態

管摩擦係数は、まず流れが層流か乱流かによって、決まり方が大きく変わります。

層流は、流体が乱れず整然と層をなして流れる、穏やかな状態のことです。

乱流は、細かな渦が入り混じって激しく乱れた、活発な状態のことです。

この流れの状態を判定するのに使うのが、レイノルズ数という無次元数です。

レイノルズ数は、流速と内径の積を、流体の動粘性係数で割って求めます。

円管では、おおよそ2300を下回ると層流、4000を超えると安定した乱流とみなされます。

層流と乱流が切り替わる目安の2300を、臨界レイノルズ数と呼びます。

実際の配管では、振動や入口の乱れによって、2300より早く乱流化することもあります。

そのため、まず流れのレイノルズ数を計算し、状態を見極めることが出発点になります。

レイノルズ数の求め方は、レイノルズ数とは何かで詳しく解説しています。

相対粗さと管の内面

乱流の場合は、レイノルズ数に加えて、管内面の粗さも係数に影響します。

管内面の凹凸の高さを、管の内径で割った値を相対粗さと呼びます。

相対粗さが大きい、つまり内径に対して内面が粗い管ほど、係数は大きくなります。

粗さの代表値は、引き抜きの鋼管でおよそ0.045ミリ、鋳鉄管でおよそ0.26ミリです。

塩ビ管や樹脂管は内面がほぼなめらかで、粗さはこれらよりずっと小さくなります。

たとえば粗さ0.26ミリの管を内径260ミリで使えば、相対粗さは0.001になります。

同じ粗さの管でも、内径が太いほど相対粗さは小さくなり、影響は薄れていきます。

さらに、長年の使用でさびやスケールが付くと、粗さが増して損失も増えていきます。

つまり乱流での係数は、レイノルズ数と相対粗さという二つの要素で決まります。

表面の粗さの考え方は、表面粗さとは何かで詳しく解説しています。

温度と粘度の影響

管摩擦係数は、流体の温度によっても間接的に変わります。

液体の粘度は、温度が上がると下がる性質を持っています。

粘度が下がると、同じ流速でもレイノルズ数が大きくなります。

レイノルズ数が変われば、それに応じて管摩擦係数も変化します。

とくに油は、温度による粘度の変化が大きい流体です。

冬場の起動直後は油が硬く、損失が大きくなりがちです。

運転を続けて温まると粘度が下がり、損失も落ち着いていきます。

正確な設計では、実際に使用する温度での粘度を使って計算します。

温度の条件を無視すると、損失の見積もりが大きくずれてしまいます。

 

4. 層流での管摩擦係数

64をレイノルズ数で割る

層流では、管摩擦係数がきわめて単純な式で求められます。

係数は相対粗さによらず、レイノルズ数だけで一意に決まります。

 \lambda = \dfrac{64}{Re}

この関係は、ハーゲン・ポアズイユの流れから理論的に導かれます。

分子の64は円管の場合の定数で、実験に頼らず決まる値です。

レイノルズ数が分かれば、線図を読まずに計算だけで正確に係数を求められます。

たとえばレイノルズ数が2000なら、係数は0.032と即座に求まります。

層流では損失が流速の一乗に比例し、乱流のように二乗で効かないのが大きな違いです。

そのため層流は計算が単純で、設計上もっとも扱いやすい領域だといえます。

ただし、レイノルズ数が小さいほど係数は大きく、損失は相対的に大きくなる点に注意します。

粗さが関係せず現れる場面

層流では、管内面の粗さが係数にほとんど影響しません。

流れが整然としているため、壁際の遅い流れの層が凹凸を覆い隠してしまうからです。

そのため、内面が滑らかでも多少粗くても、係数は同じ値になります。

粗さを気にせず計算できる点が、層流の大きな扱いやすさです。

層流は、流れが遅い場合や、粘り気の強い流体を扱う場合に現れやすくなります。

動粘性係数が大きい流体ほど、同じ流速でもレイノルズ数が小さく層流になりやすいです。

潤滑油や粘度の高い薬液の配管、細い管やゆっくりした流れが典型的な例です。

こうした条件では係数が大きくなり、摩擦損失も大きくなりがちです。

流体の粘性の影響は、動粘性係数とは何かで詳しく解説しています。

 

5. 乱流での管摩擦係数

コールブルックの式となめらかな管

乱流になると、管摩擦係数の決まり方は一気に複雑になります。

レイノルズ数と相対粗さの両方が、同時に係数へ影響するためです。

そのため層流のような単純な一本の式では表せず、実験にもとづく式を使います。

その代表が、レイノルズ数と相対粗さから係数を与えるコールブルックの式です。

ただしこの式は係数が両辺に現れるため、手計算で直接解くことができません。

内面がなめらかな管では、ブラジウスの式という簡単な近似式が使えます。

 \lambda = \dfrac{0.3164}{Re^{0.25}}

このブラジウスの式は、レイノルズ数がおよそ3000から十万の範囲で成り立ちます。

同じレイノルズ数なら、なめらかな管ほど係数が小さく、損失を抑えられます。

樹脂管や新しい銅管は、このなめらかな管に近い挙動を示します。

完全乱流域では粗さが支配する

レイノルズ数が非常に大きくなると、係数は相対粗さだけで決まるようになります。

この領域を、完全乱流域あるいは粗管領域と呼びます。

ここではレイノルズ数をさらに増やしても、係数はほとんど変わりません。

流速が速い大口径の配管や、内面が荒れた古い管は、この領域に入りやすくなります。

完全乱流域では、損失を減らすには粗さを抑えることが決め手になります。

逆に言えば、いくら流れを整えても、粗い管では損失が頭打ちで下がりません。

上水道では、長年の使用で内面が荒れ、当初より流量が落ちる例が知られています。

実用の多くの配管は、なめらかな管と完全乱流の間の遷移的な乱流域で運転されています。

どの領域に入っているかを意識することが、係数を正しく見積もる助けになります。

 

6. ムーディ線図の読み方

三つの量を関係づける図

ムーディ線図は、複雑な乱流の係数を読み取るための代表的な図です。

1944年にムーディがまとめたもので、長く実務で使われ続けています。

管摩擦係数、レイノルズ数、相対粗さという三つの無次元数を一枚で関係づけます。

横軸にレイノルズ数を、縦軸に管摩擦係数を、いずれも対数の目盛りでとります。

対数目盛りを使うのは、レイノルズ数が千から数百万まで広い範囲にわたるためです。

図の中には、相対粗さの値ごとに何本もの曲線が描かれています。

この図を使えば、解きにくいコールブルックの式を解かずに係数を読み取れます。

線図は領域によって形が変わり、左の層流域は一本の右下がりの直線になっています。

右の乱流域では相対粗さごとに曲線が分かれ、さらに右の完全乱流域ではほぼ水平になります。

領域ごとの形を知っておくと、読み取りの際に位置を見失いません。

領域 係数の決まり方 線図での見え方
層流 レイノルズ数だけ 右下がりの直線
遷移 不安定で定まりにくい 不確定な領域
乱流 レイノルズ数と相対粗さ 粗さごとの曲線
完全乱流 相対粗さだけ 水平に近い線

読み取りの手順と遷移領域

読み取りは、決まった手順で進めると間違えません。

まず、流速と内径と動粘性係数から、流れのレイノルズ数を計算します。

次に、管材料の粗さの代表値を内径で割って、相対粗さを求めます。

横軸でレイノルズ数の位置を見つけ、そこから真上にたどります。

該当する相対粗さの曲線との交点まで線を上げ、左の縦軸を読めば係数が得られます。

注意したいのが、レイノルズ数2300から4000あたりの遷移領域です。

この範囲では、層流と乱流が間欠的に入れ替わり、流れが不安定になります。

そのため係数の値も定まりにくく、線図でも確定した線が引けません。

設計では遷移域での運転を避け、入る場合は安全側に大きめの係数を見込みます。

陽な近似式での計算

コールブルックの式は、反復計算が必要で手間がかかります。

そこで、反復なしで直接解ける陽な近似式が考案されています。

代表的なものに、スワミー・ジェインの式があります。

これはレイノルズ数と相対粗さから、係数を一度の計算で与えます。

計算機や表計算ソフトで自動計算するのに向いています。

適用できるレイノルズ数と相対粗さの範囲は、あらかじめ決められています。

その範囲内では、ムーディ線図から読む値とよく一致します。

手計算では線図、自動計算では近似式と、場面で使い分けます。

近似式のおかげで、繰り返しの設計計算を効率よく進められます。

 

7. 設計での使い方

圧力損失とポンプ揚程

設計では、まず管摩擦係数から配管の圧力損失を計算します。

レイノルズ数と相対粗さからムーディ線図で係数を読み、ダルシーの式に入れて損失を求めます。

求めた損失ヘッドに、実際に液を持ち上げる高さを足したものが、必要な全揚程になります。

ポンプは、この全揚程を満たす能力のものを選びます。

損失が大きいほど、それを補うために大きな揚程と動力が必要になります。

係数を過小に見積もれば揚程が不足し、目標の流量が得られません。

逆に過大に見積もれば、必要以上に大きなポンプを選び、無駄な電力とコストを払います。

ポンプのH−Q曲線と配管の抵抗曲線の交点が、実際の運転点になります。

管摩擦係数の精度が、この運転点とポンプの容量選定を直接左右するのです。

余裕は持たせつつ、過大にならない揚程を選ぶことが、合理的な設計につながります。

局所損失との合算と管径選定

配管の損失は、直管の摩擦損失だけではありません。

曲がりや弁、断面の急な変化でも損失が生じ、これらを局所損失や継手損失と呼びます。

局所損失は、損失係数に動圧を掛けた形で表されます。

曲がりや弁を、同じ損失を生む直管の長さに置き換える、相当長さ法もよく使われます。

全体の損失は、直管の摩擦損失と、これら局所損失の合計として求めます。

両方を足し合わせて、はじめて必要な揚程を正しく見積もれます。

管摩擦係数は、配管径の選定にも深く関わってきます。

細い管は流速が上がるため損失が二乗で増え、太い管は損失が減る代わりに材料費がかさみます。

液体では、流速をおおむね毎秒1から3メートルに収めるのが、経済的な目安とされます。

損失によるエネルギー費と配管コストのつり合いで決めた径を、経済的な管径と呼びます。

 

8. ファニングの式との違い

四倍の関係に注意する

摩擦損失の式には、ダルシーのほかにファニングの式もあります。

ファニングの式は、ダルシーとは別の定義による摩擦係数を使います。

ファニングの係数は、壁面のせん断応力を動圧で割った比として定義されます。

化学工学の分野では、このファニングの係数がよく用いられます。

式の形がよく似ているため、二つの係数は混同しやすく、注意が必要です。

ファニングの摩擦係数は、ダルシーの摩擦係数のちょうど四分の一の値になります。

つまり同じ流れでも、どちらの定義かで係数は四倍の差が生じます。

取り違えると、圧力損失の計算が四倍もずれてしまい、重大な設計ミスにつながります。

図表や文献を使うときは、どちらの定義にもとづく係数かを必ず確かめます。

どちらの定義かを見分ける

二つの係数は、層流の式を見れば簡単に見分けられます。

ダルシーの定義では、層流の係数は64をレイノルズ数で割った値です。

ファニングの定義では、16をレイノルズ数で割った値になります。

つまり分子が64か16かで、どちらの体系の係数かを判断できます。

ブラジウスの式の係数も、ダルシー基準では0.3164、ファニング基準では0.079になります。

ムーディ線図はダルシー基準で作られているので、読み取った値はそのままダルシーの式に使えます。

計算を始める前に、使う資料がどちらの定義かを確認する習慣をつけます。

定義の取り違えは、単純ですが影響の大きい誤りなので、最初に押さえておきます。

 

9. まとめ

管摩擦係数とは、配管内の摩擦損失を表す無次元の係数です。

ダルシー・ワイスバッハの式に使い、圧力損失は係数に正比例し、流速の二乗で効きます。

係数は、流れの状態を表すレイノルズ数と、管内面の相対粗さの二つで決まります。

層流では64をレイノルズ数で割った値で求まり、管内面の粗さは関係しません。

乱流ではコールブルックの式で表され、なめらかな管にはブラジウスの式が使えます。

実務ではムーディ線図を使い、レイノルズ数と相対粗さから係数を読み取ります。

線図は層流・遷移・乱流・完全乱流で形が変わり、遷移域は避けて設計します。

係数は、圧力損失とポンプ揚程、そして経済的な管径の選定に使われます。

ダルシーとファニングは四倍違うため、どちらの定義かを必ず確認することが大切です。