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圧力損失とは?配管の計算式と求め方をわかりやすく解説

配管内を流れる水や空気、油などの流体は、必ず管壁との摩擦やバルブ・エルボでの渦によってエネルギーを失います。

この失われるエネルギーを圧力の次元で表したものが圧力損失です。

圧力損失を正しく見積もれなければ、ポンプやブロワーの選定を誤り、流量不足や過大能力といった設計ミスにつながります。

一方で、ダルシー・ワイスバッハの式やムーディ線図を使いこなせば、圧力損失は非常に体系的に計算できます。

本記事では、圧力損失の基本式・摩擦係数の求め方・局所損失の取り扱い・配管設計への応用までを、実務で使える粒度で徹底解説します。

 

 

1. 圧力損失とは?配管設計で必須となる基本概念

圧力損失とは、流体が配管や継手を通過する際に、摩擦や渦によって失う単位体積あたりのエネルギーを圧力の次元で表したものを指します。

工学の世界では「配管抵抗」や「差圧」と表現されることもありますが、いずれも同じ現象を別の切り口で呼んでいる形です。

圧力損失が発生する原因は、大きく次の2つに分けられます。

  • 摩擦損失:直管の内壁と流体との粘性摩擦によって生じる連続的な損失
  • 局所損失:エルボ、バルブ、オリフィス、急拡大・急縮小管など、形状変化部で生じる集中的な損失

圧力損失は、流体の運動エネルギーが熱エネルギーに不可逆的に変換される現象ですので、ベルヌーイの定理にエネルギー損失項を加えた拡張形で表現されます。

圧力損失を考慮しなければならない代表的なシーンには、次のようなものがあります。

  • ビル・工場の給排水・空調配管設計におけるポンプ選定
  • 油圧装置の配管長さ・継手数が多い回路での流量確保
  • 化学プラントの冷却水循環系における循環ポンプの容量決定
  • 蒸気ボイラの配管における蒸気圧降下の許容値設定
  • 半導体工場の超純水供給系における清浄度と流量の両立

いずれのケースも、圧力損失を過小評価すれば流量不足や機器保護機能の作動、過大評価すればイニシャルコスト増加と運転効率低下を招きます。

適切な圧力損失計算は、安全性・性能・コストの3要素を同時に最適化する鍵になります。

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圧力損失の単位と表現方法

圧力損失  \Delta P は、一般的にパスカル(Pa)やキロパスカル(kPa)で表されます。

ただし、配管設計の現場では水柱(mAq)や相当高さ(m)として表すことも多く、これをヘッド損失  h_L と呼びます。

圧力損失とヘッド損失の関係は次式で表されます。

 \Delta P = \rho g h_L

ここで、 \rho は流体の密度、 g は重力加速度です。

ポンプカタログでは「全揚程」としてmで表記されますので、圧力換算の感覚を身につけておくと実務で役立ちます。

 

2. 圧力損失の基本式:ダルシー・ワイスバッハの式

直管の摩擦による圧力損失を求める最も基本的な式が、ダルシー・ワイスバッハの式(Darcy-Weisbach equation)です。

 \Delta P = \lambda \cdot \dfrac{L}{D} \cdot \dfrac{\rho v^2}{2}

各記号の意味は次の通りです。

  •  \Delta P:直管部の圧力損失 [Pa]
  •  \lambda:管摩擦係数(無次元)
  •  L:配管長さ [m]
  •  D:配管の内径 [m]
  •  \rho:流体密度 [kg/m³]
  •  v:平均流速 [m/s]

ヘッド損失の形に書き換えると次のようになります。

 h_L = \lambda \cdot \dfrac{L}{D} \cdot \dfrac{v^2}{2g}

この式の特徴は、圧力損失が流速の2乗に比例する点にあります。

つまり流速を2倍にすると、圧力損失は4倍に膨れ上がりますので、配管径を小さくして流速を上げる設計は、ポンプ動力の観点で非常に不利になります。

平均流速と流量の関係

実務では流量  Q を先に決め、そこから平均流速  v を求めることが多いです。

 v = \dfrac{Q}{A} = \dfrac{4Q}{\pi D^2}

ここで、 A は配管の断面積、 D は内径です。

ダルシー・ワイスバッハの式に代入すると、圧力損失は配管径  D5乗に反比例することが分かります。

 \Delta P = \lambda \cdot \dfrac{L}{D} \cdot \dfrac{\rho}{2} \left( \dfrac{4Q}{\pi D^2} \right)^2 = \dfrac{8 \lambda L \rho Q^2}{\pi^2 D^5}

配管径を1.2倍にするだけで圧力損失が約0.4倍まで下がりますので、配管径選定は圧力損失設計の肝になります。

ダルシー・ワイスバッハの式の歴史的背景

この式はフランスの水力技術者アンリ・ダルシー(Henry Darcy, 1803-1858)が1857年にディジョンの水道設計にあたって実施した大規模な管路実験と、同じくフランスのジュリアス・ワイスバッハ(Julius Weisbach, 1806-1871)が1845年に提案した形式を組み合わせて成立したものです。

それ以前の経験式(ファニング式など)に対して、摩擦係数を無次元量として定式化し、層流から乱流まで統一的に扱える点で画期的でした。

現代の配管設計においても、化学プラントから家庭用給水管まで、あらゆる管内流れの圧力損失計算のデファクトスタンダードとして使用されています。

式の適用条件と限界

ダルシー・ワイスバッハの式は、以下の条件下で成立します。

  • 非圧縮性流体(水、油など密度がほぼ一定の流体)
  • 断面が一定の直管
  • 十分に発達した定常流(入口助走区間を除く)
  • 等温流れ(温度勾配による物性変化が無視できる)

圧縮性流体(高速のガスや蒸気)や、温度変化が大きい系、2相流などの場合は、別途補正が必要になります。

また、配管径が極端に大きい場合や、直径に対して長さが短すぎる場合(L/D 50以下程度)は入口助走区間の影響で精度が落ちますので注意が必要です。

 

3. レイノルズ数と流れの種類(層流・乱流)

摩擦係数  \lambda を求めるためには、まず流れが層流なのか乱流なのかを判定する必要があります。

この判定に用いられる無次元量がレイノルズ数(Reynolds number)です。

 Re = \dfrac{\rho v D}{\mu} = \dfrac{v D}{\nu}

  •  \mu:粘度 [Pa·s]
  •  \nu:動粘度 [m²/s]

レイノルズ数の値によって、円管内の流れは次のように分類されます。

レイノルズ数の範囲 流れの種類 特徴
 Re < 2{,}300 層流 流体が層状に整然と流れる
 2{,}300 \leq Re \leq 4{,}000 遷移域 層流と乱流が混在して不安定
 Re > 4{,}000 乱流 渦やゆらぎを伴う不規則な流れ

一般的な水配管では流速1〜2m/s、内径50mm程度の条件で  Re はおよそ5万〜10万になり、ほぼ確実に乱流領域に入ります。

一方、油圧配管や粘度の高いオイルを扱う場合は、層流領域で設計することも少なくありません。

具体的な  Re の目安を実流体で示すと次のようになります。

条件 流速 [m/s] 内径 [mm] レイノルズ数 流れの種類
家庭用給水管(水) 1.0 20  2.0 \times 10^4 乱流
冷却水配管(水) 2.0 80  1.6 \times 10^5 乱流
油圧ホース(作動油ν=50cSt) 4.0 10  8.0 \times 10^2 層流
蒸気管(飽和蒸気100℃) 20 50  4.7 \times 10^6 完全乱流
空気圧配管(20℃) 10 25  1.7 \times 10^4 乱流

このように、水や空気のほとんどの配管は乱流、油圧配管の一部は層流と覚えておけば、設計の初期判断に役立ちます。

層流における摩擦係数

層流領域では、管摩擦係数はレイノルズ数のみで決まります。

 \lambda = \dfrac{64}{Re}

この式はハーゲン・ポアズイユの法則から導出される厳密解であり、管壁の粗さに依存しない点が特徴です。

層流では流体の粘性が支配的ですので、配管内面を滑らかに仕上げても損失はほとんど変わりません。

 

4. 摩擦係数λの求め方(ムーディ線図)

乱流域での管摩擦係数  \lambda は、レイノルズ数と相対粗さ  \varepsilon / D の両方に依存します。

この関係をグラフ化したものがムーディ線図(Moody chart)です。

横軸にレイノルズ数、縦軸に摩擦係数、パラメータとして相対粗さを取った両対数グラフで、配管設計の実務で最も使われるチャートの1つといえます。

滑らかな管の場合(ブラジウスの式)

配管内面が非常に滑らかで、 3{,}000 \leq Re \leq 10^5 程度の乱流領域では、ブラジウス(Blasius)の式が簡便に使えます。

 \lambda = \dfrac{0.3164}{Re^{0.25}}

新品の銅管やステンレス管、樹脂管などではこの近似で十分な精度が得られます。

一般的な乱流:コールブルックの式とスワミー・ジャインの式

実用配管のほとんどを網羅する乱流領域の摩擦係数は、コールブルック・ホワイトの式(Colebrook-White equation)で求められます。

 \dfrac{1}{\sqrt{\lambda}} = -2 \log_{10} \left( \dfrac{\varepsilon / D}{3.7} + \dfrac{2.51}{Re \sqrt{\lambda}} \right)

この式は左右両辺に  \lambda が含まれる陰関数ですので、手計算では反復解法が必要になります。

反復計算を避けたい場合は、誤差約1%以内でコールブルックの式に一致するスワミー・ジャイン(Swamee-Jain)の式が便利です。

 \lambda = \dfrac{0.25}{\left[ \log_{10} \left( \dfrac{\varepsilon / D}{3.7} + \dfrac{5.74}{Re^{0.9}} \right) \right^2}]

Excelの目標値探索機能やVBA・Pythonでも簡単に数値解を得られますので、現代の設計環境ではこれらのいずれでも実用的な精度で摩擦係数を求められます。

配管材質ごとの代表的な粗さ

相対粗さを決めるには、配管内面の絶対粗さ  \varepsilon が必要です。

配管材質 絶対粗さ  \varepsilon [mm]
引抜銅管・ステンレス鋼管(新品) 0.0015
商業用鋼管 0.046
鋳鉄管(新品) 0.26
コンクリート管 0.3〜3.0
リベット接合の鋼管 0.9〜9.0

長期使用によってスケールや錆が付着した配管は、粗さが2〜5倍になることがありますので、経年劣化も見越して余裕を持った計算をすることが望まれます。

ムーディ線図の読み方

ムーディ線図は、横軸をレイノルズ数(対数目盛)、縦軸を摩擦係数(対数目盛)に取り、相対粗さごとの曲線群として描かれます。

ムーディ線図を読むときの手順は次の通りです。

  1. 配管材質と内径から相対粗さ  \varepsilon / D を計算する
  2. 流速・粘度・内径からレイノルズ数  Re を計算する
  3. 線図の右側で該当する相対粗さ曲線を選ぶ
  4. 横軸から  Re の位置を特定する
  5. 該当曲線と交差する点の縦軸値から  \lambda を読み取る

 Re が十分大きい領域では、摩擦係数は相対粗さのみで決まり  Re にほぼ依存しなくなります。

この領域を完全乱流域(完全粗面域)と呼び、水道配管や空調配管の多くがこの領域に入ります。

完全乱流域では  \lambda は簡略式  \lambda = \dfrac{0.25}{[\log_{10}(\varepsilon / 3.7D)^2}] で近似できます。

 

5. 局所損失(エルボ・バルブ・急拡大・急縮小)の計算

配管には必ずエルボやバルブ、T字分岐、オリフィスといった形状変化部が含まれます。

ここで発生するエネルギー損失を局所損失(または二次損失)と呼び、次の式で表されます。

 \Delta P_{local} = \zeta \cdot \dfrac{\rho v^2}{2}

 \zeta(ゼータ)は損失係数と呼ばれる無次元量で、部品形状ごとに実験的に求められています。

代表的な局所損失係数

実務で使う代表的な損失係数の目安を下表にまとめます。

部品・形状 損失係数  \zeta
90°ロングエルボ 0.3〜0.5
90°ショートエルボ 0.7〜1.0
45°エルボ 0.2〜0.4
T字分岐(直進) 0.2〜0.5
T字分岐(側方) 1.0〜1.8
ゲート弁(全開) 0.1〜0.3
グローブ弁(全開) 6〜10
ボール弁(全開) 0.05〜0.1
急拡大管(面積比0.5) 0.25
急縮小管(面積比0.5) 0.3
配管入口(鋭角) 0.5
配管出口 1.0

グローブ弁の損失係数は同口径のボール弁の100倍以上になることもあり、バルブ選定は圧力損失に直結する重要ポイントです。

損失係数が大きく変わる要因

局所損失係数はあくまで標準形状での参考値であり、実際には次の要因で大きく変動します。

  • 開度:バルブを絞ると  \zeta は指数関数的に増加し、50%開度で全開時の5〜20倍になることも珍しくありません
  • 曲率半径比:エルボの曲率半径/内径比(R/D)が大きいほど損失は小さくなり、R/D=3のロングエルボはR/D=1.5のショートエルボに比べて損失が約半分です
  • 表面粗さ:鋳造品のエルボは鍛造品より損失係数が10〜30%大きい傾向があります
  • レイノルズ数:低  Re 域では  \zeta Re 依存で変化しますが、完全乱流域ではほぼ一定値になります

設計初期は代表値で概算し、詳細設計段階でメーカーカタログ値に基づく精密計算に切り替えるのが実務的なアプローチです。

急拡大管の理論式(ボルダ・カルノーの式)

急拡大管の局所損失は、運動量保存則から理論的に導出できる数少ない例であり、ボルダ・カルノー(Borda-Carnot)の式として知られています。

 \Delta P = \dfrac{\rho (v_1 - v_2)^2}{2}

損失係数の形に書き換えると、上流側の流速  v_1 基準で次のように表されます。

 \zeta = \left( 1 - \dfrac{A_1}{A_2} \right)^2

面積比が大きいほど損失は急増し、配管出口( A_2 \to \infty)では  \zeta = 1 となり、運動エネルギーがすべて損失として消費されます。

 

6. 相当管長法で配管全体の圧力損失を計算する

エルボやバルブが多数含まれる配管系を設計するとき、部品ごとに  \zeta を積算していくのは煩雑です。

そこで便利なのが相当管長法(equivalent length method)です。

局所損失を「同じ損失を生む直管の長さ」に置き換えることで、計算を1本の直管式に統一できます。

 L_{eq} = \zeta \cdot \dfrac{D}{\lambda}

ここで  L_{eq} は相当管長 [m] です。

配管全体の圧力損失は、実配管長と相当管長の合計を使って次式で求められます。

 \Delta P_{total} = \lambda \cdot \dfrac{L + \sum L_{eq}}{D} \cdot \dfrac{\rho v^2}{2}

カタログには「90°エルボは直管の30D相当」といった目安が記載されていることが多く、概算ではこの値を使うだけでも実用精度が得られます。

代表的な部品の相当管長(D基準)の目安は次の通りです。

部品・形状 相当管長  L_{eq} / D
90°ロングエルボ 20
90°ショートエルボ 30
45°エルボ 16
T字(直進) 20
T字(側方) 60
ゲート弁(全開) 13
グローブ弁(全開) 340

たとえば内径50mmの配管で90°ロングエルボを1個使うと、直管1mを追加したのと同じ圧力損失が発生する計算になります。

 

7. 配管設計における圧力損失計算の実例

ここまでの内容を総動員して、具体的な配管系の圧力損失を計算してみます。

計算条件と計算手順

計算条件は次の通り設定します。

  • 流体:常温の水(密度  \rho = 1{,}000 \, \text{kg/m}^3、動粘度  \nu = 1.0 \times 10^{-6} \, \text{m}^2/\text{s}
  • 流量: Q = 0.002 \, \text{m}^3/\text{s}(120L/min)
  • 配管内径: D = 0.05 \, \text{m}(50A)
  • 配管長さ: L = 30 \, \text{m}
  • 配管材質:商業用鋼管( \varepsilon = 0.046 \, \text{mm}
  • 継手:90°ロングエルボ4個、ゲート弁2個、配管入口1個、配管出口1個

ステップ1:平均流速を求める

 v = \dfrac{4Q}{\pi D^2} = \dfrac{4 \times 0.002}{\pi \times 0.05^2} \approx 1.02 \, \text{m/s}

ステップ2:レイノルズ数を計算する

 Re = \dfrac{v D}{\nu} = \dfrac{1.02 \times 0.05}{1.0 \times 10^{-6}} = 5.1 \times 10^4

十分に乱流領域です。

ステップ3:摩擦係数を求める

相対粗さは  \varepsilon / D = 0.046 / 50 = 9.2 \times 10^{-4}、ムーディ線図またはスワミー・ジャインの式から次の値を得ます。

 \lambda \approx 0.026

ステップ4:直管の圧力損失を計算する

 \Delta P_{f} = \lambda \cdot \dfrac{L}{D} \cdot \dfrac{\rho v^2}{2} = 0.026 \times \dfrac{30}{0.05} \times \dfrac{1{,}000 \times 1.02^2}{2} \approx 8{,}110 \, \text{Pa}

ステップ5:局所損失の合計を計算する

損失係数を積算します。

 \sum \zeta = 4 \times 0.4 + 2 \times 0.2 + 1 \times 0.5 + 1 \times 1.0 = 3.5

局所損失は次のようになります。

 \Delta P_{local} = \sum \zeta \cdot \dfrac{\rho v^2}{2} = 3.5 \times \dfrac{1{,}000 \times 1.02^2}{2} \approx 1{,}820 \, \text{Pa}

ステップ6:配管全体の圧力損失

 \Delta P_{total} = \Delta P_{f} + \Delta P_{local} \approx 8{,}110 + 1{,}820 = 9{,}930 \, \text{Pa} \approx 10 \, \text{kPa}

ヘッド換算すると次の通りです。

 h_L = \dfrac{\Delta P_{total}}{\rho g} = \dfrac{9{,}930}{1{,}000 \times 9.81} \approx 1.01 \, \text{m}

50A配管30mを水が1m/sで流れるだけで、水柱約1m分のエネルギーが損失として失われていることが分かります。

実務での配管径選定や継手配置のコツについては、配管設計の基礎の記事も合わせて参照してください。

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8. ポンプ揚程との関係:必要な揚程の求め方

圧力損失の計算結果は、そのままポンプ選定の入力値になります。

ポンプに必要な全揚程  H は、ベルヌーイの拡張式から次のように表されます。

 H = \dfrac{P_2 - P_1}{\rho g} + \dfrac{v_2^2 - v_1^2}{2g} + (z_2 - z_1) + h_L

各項の意味は次の通りです。

  • 第1項:吐出側と吸込側の圧力差
  • 第2項:速度ヘッドの差
  • 第3項:実揚程(高低差)
  • 第4項:配管全体の摩擦+局所損失(圧力損失)

つまり、圧力損失  h_L が大きくなるほど、ポンプに要求される全揚程は大きくなり、ポンプの軸動力も増加します。

ポンプの軸動力

ポンプの軸動力  P_s は、効率  \eta を考慮して次式で求められます。

 P_s = \dfrac{\rho g Q H}{\eta}

圧力損失を10%削減できれば、そのまま軸動力も10%近く削減できますので、省エネの観点でも圧力損失計算の精度は非常に重要です。

先の計算例(流量2L/s、全揚程1m、効率70%)でポンプ軸動力を求めてみます。

 P_s = \dfrac{1{,}000 \times 9.81 \times 0.002 \times 1.01}{0.7} \approx 28.3 \, \text{W}

わずか28Wと小さく見えますが、24時間365日連続運転すると年間消費電力量は約248kWhになります。

もし配管径を50Aから65Aに拡大して圧力損失を半減できれば、そのまま年間124kWhの電力削減になり、複数系統を持つプラントでは大きな省エネ効果を生みます。

キャビテーションへの配慮

吸込み側配管の圧力損失が大きすぎると、ポンプ吸込口の圧力が流体の飽和蒸気圧以下まで低下し、キャビテーションが発生します。

キャビテーションはインペラの壊食や振動・騒音の原因となりますので、NPSH(有効吸込ヘッド)と必要NPSHの関係から吸込配管の圧力損失を厳しく抑える必要があります。

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9. 圧力損失を低減する設計のコツ

圧力損失の式を眺めると、低減のポイントは次の3点に集約されます。

  • 配管径を大きくして流速を下げる
  • ロングエルボや大曲率の継手を採用して局所損失係数を下げる
  • バルブは低抵抗タイプ(ボール弁・ゲート弁)を優先する

経済流速の考え方

配管径を大きくすれば圧力損失は劇的に下がりますが、その分イニシャルコストが増加します。

両者のトレードオフで最適径を決める指標が経済流速です。

流体・用途 経済流速の目安 [m/s]
常温水(給水配管) 1.0〜2.0
蒸気(飽和蒸気) 15〜30
圧縮空気 6〜10
油圧作動油(吐出側) 3〜5
油圧作動油(吸込側) 0.5〜1.5

経済流速を守ることで、運転コスト(ポンプ動力)とイニシャルコスト(配管径)のバランスを取りつつ、圧力損失を常識的な範囲に収めることができます。

具体的な低減テクニック

既設プラントで圧力損失を低減したいときに有効な具体策を挙げます。

  • グローブ弁 → ボール弁への更新:流量調整機能が不要な箇所では、全開損失を  \zeta=7程度から0.1程度まで下げられます
  • ショートエルボ → ロングエルボ:同じ90°曲がりでも、曲率半径R=1.5Dの標準形から3Dのロング形へ変更するだけで局所損失を約半分にできます
  • Y字分岐の採用:T字側方流れの  \zeta=1.5程度に対し、Y字(45°分岐)は  \zeta=0.5程度まで下げられます
  • オリフィスの見直し:流量測定用のオリフィスを超音波流量計に置換することで、定常的な圧力損失をゼロにできます
  • バイパス配管の整備:メンテナンス時のみ使う配管をバイパスに逃がし、通常運転時の経路を短縮する

これらの改善は、配管工事費用と電力削減効果の現在価値比較(NPV計算)で3〜5年で回収できるケースが多く、カーボンニュートラル施策としても評価できます。

設計ミスを防ぐチェックリスト

最後に、圧力損失計算で見落としやすいポイントをまとめます。

  • 流体物性(密度・粘度)を運転温度で評価しているか
  • 経年劣化による粗さ増加を見込んでいるか(新品値の1.5〜2倍を目安に)
  • T字分岐の側方流れやY字継手など、大きな  \zeta を持つ部品を見落としていないか
  • オリフィス・流量計・ストレーナの圧力損失を積み忘れていないか
  • 流量変動を考慮した最大流量で計算しているか

これらを1つでも抜かすと、実機で流量不足に陥る危険性がありますので、安全率(通常1.2〜1.5倍)を掛けて設計することをおすすめします。

 

10. まとめ

本記事では、圧力損失の基本概念からダルシー・ワイスバッハの式、摩擦係数の求め方、局所損失の扱い、そして配管設計への応用までを解説しました。

要点をまとめると次の通りです。

  • 圧力損失は直管の摩擦損失と、継手・バルブの局所損失の和で構成されます
  • 直管損失はダルシー・ワイスバッハの式で求め、摩擦係数はレイノルズ数と相対粗さに依存します
  • 乱流域の摩擦係数はムーディ線図コールブルックの式スワミー・ジャインの式などで求められます
  • 局所損失は損失係数  \zeta を使って計算し、相当管長法で直管損失と合算できます
  • 圧力損失はそのままポンプ揚程・軸動力に直結し、省エネとキャビテーション対策の両面で重要です

圧力損失計算は一見煩雑に見えますが、流速→レイノルズ数→摩擦係数→直管損失→局所損失→合計の順で進めれば、誰でも体系的に求められます。

実機トラブルを未然に防ぐためにも、本記事の手順をぜひ現場の設計に活かしてください。