「ロボット」の広義/狭義の定義とは?
ロボットという言葉の定義は非常に幅広いため、人によって捉え方が異なる。
一般的に日本のアニメ作品でガンダムはロボットと考えられているが、人が乗って操縦するだけなら建設機械や農業機械と変わらないはずなのでロボットではなく、ただの機械のようにも思える。
ロボットとただの機械の線引きはどこにあるのだろう?機械の中で、自律的な動作をしなくとも、人型やその他の生物を摸した形態であればロボットの範疇なのか?
仮に上記の理屈で、ガンダムやソニーのAIBOをロボットとした場合、自動掃除機のルンバはロボットではなくなる。
経済産業省ロボット政策研究会が2006年(平成18年)にまとめた報告書では、ロボットの定義について以下のように記されている。
ロボットの定義 ~知能化した機械システム~
「ロボット」の定義は、極めて多様であり、ヒューマノイドに限定した見方から、検索 ロボットのようにコンピュータ上のソフトまで広げた見方まで様々である。特に、昨今の我が国においては、従来からのロボットアニメ等の影響に加え、官民から相次いでヒューマノイド型ロボットが発表されてきたこともあり、ヒューマノイド型ロボットのイメージが強い。
しかしながら、本研究会においては、ロボットを市場の側から捉えることに主眼を置いているため、ロボットを形状ではなく、「市場で必要とされる機能を発揮するために要素技術を統合したもの」という視点から定義することが適当である。
このため、本研究会では、「ロボット」を、「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」として、広く定義することとする。
https://www.jara.jp/various/report/img/robot-houkokusho-set.pdf
ロボットとは何かを考える時に、その形体ではなく、有する機能から判断するというのが現在国内における一般解のようだ。そして、機能を発揮するための要素技術として、
1 センサ
2 知能・制御系
3 駆動系
の3つを併せ持つものがロボットと定義される。
上記の基準では、テスラの自動運転カーは完全にロボットと定義される。掃除のルンバもロボットであるが、グーグルホームやアレクサに代表されるスマートスピーカーはこの定義ではロボットではなく、情報端末機器となる。
よって、ロボットは、広義には「知的機械」である。
一方、狭義には「産業用ロボット」があり、この定義について日本工業規格【JIS B 0134:1998】では以下のように示される。
産業用ロボット
自動制御によるマニピュレーション機能又は移動機能をもち,各種の作業をプログラムによって実行できる,産業に使用される機械。
ここでマニピュレーションという見慣れない言葉が出てきたが、JISでは次の項でこの用語について以下のように定義される。
マニピュレータ
互いに連結された分節で構成し,対象物(部品,工具など)をつか(掴)む, 又は,動かすことを目的とした機械。備考 マニピュレータは,オペレータ,可変プログラマブル コントローラ,又は,カム 機構やリレー制御回路などで構成される論理システム によって制御される。
以上が広義と狭義、それぞれのロボットについての定義である。
ロボットに求められる役割
総務省の2015年(平成27年)政策白書の「ICTが拓く未来社会」では、ロボットに求められる役割を以下の3つに大別している。
1.生産環境における人の作業の代替
2.危機環境下での作業代行
3.日常生活支援
総務省|平成27年版 情報通信白書|ロボットの定義とパートナーロボット
上記における1はロボットの最も限定的な定義である「産業用ロボット」が当てはまる。製造分野に導入されるアーム型の組立、溶接、塗装作業をするロボットである。
2は原子力発電所での作業や、深海の調査などが該当するだろう。
3は日常生活での家事や介護の支援等であり、エンタメも含むので相当に範囲が広い。「ロボット」という単語でグーグル検索で画像を表示させると、以下のようなページ一覧が表示されるがこれはいずれも3であり、最も一般的なイメージであると思う。
ロボットに関連する要素技術
経済産業省ロボット政策研究会 報告書(2006年)
https://www.jara.jp/various/report/img/robot-houkokusho-set.pdf
【駆動関連技術】・・・モータ機構、減速機、機構設計、油圧機構、空気圧機構、水圧機構、人工筋肉
【センサ技術】・・・画像認識技術、音声認識技術、ジャイロセンサ、力センサ、自己位置認識
【バッテリー技術】・・・燃料電池、リチウムイオンバッテリー省電力化
【材料技術】・・・形状記憶合金、カーボン素材、人工皮膚
【通信技術】・・・通信セキュリティ、通信の安定化
【ソフトウェア技術】・・・人工知能技術