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砂型鋳造とは?手順とアルミ・他鋳造との比較

工場に並ぶ巨大なエンジンブロックやポンプケーシング、その複雑な形状はいったいどうやって作られるのでしょうか。

答えは、融かした金属を砂の型に流し込む「砂型鋳造」です。

紀元前3000年頃のメソポタミアにまで遡るこの技術は、現代でも鋳造品全体の約60〜70%を占める主力工法として健在です。

特殊な金型が不要で、木型ひとつから試作と量産の両方に対応できる柔軟性こそが、長く支持されてきた最大の理由といえます。

しかし「砂型鋳造とダイカストの違いは?」「アルミ鋳物にはどの合金を選ぶべき?」と聞かれると、即答に困る方も少なくないはずです。

本記事では、砂型鋳造の基本手順から鋳物砂の種類、アルミ合金の選び方、他の鋳造法との比較、そして現場で起きやすい欠陥と対策までを体系的に解説します。

 

1. 砂型鋳造とは

砂型鋳造とは、珪砂(けいさ)を主体とする鋳物砂で鋳型を作り、そこに融かした金属(溶湯)を流し込んで製品形状を得る鋳造法です。

鋳型は製品を取り出す際に壊す必要があるため、「消耗型鋳造」に分類されます。
この点が、金属製の型を繰り返し使うダイカストや金型鋳造と根本的に異なるポイントです。

 

基本的な流れは非常にシンプルです。

まず、製品と同じ形状の模型(パターン)を砂に押し当てて、ネガ形状の空洞(キャビティ)を作ります。

次に、そのキャビティに溶湯を注ぎ込み、金属が凝固したあとに砂型を崩して鋳物を取り出します。

たったこれだけの工程で、数グラムの小型部品から数十トンの大型構造物まで成形できるのが砂型鋳造の最大の強みです。

 

砂型鋳造の歴史は金属文明の歴史とほぼ重なります。

紀元前3000年頃のメソポタミアで青銅の鋳造が始まり、鉄器時代にはヨーロッパや中国で大規模な鋳造工場が稼働していました。

日本でも弥生時代に銅鐸や銅剣の鋳造が行われ、奈良時代には東大寺の大仏(約500トン)が砂型と蝋型を併用して鋳造されています。

産業革命以降は蒸気機関や工作機械の大型鋳物を支える基幹技術として発展し、現代の産業基盤を築く原動力となりました。

 

現代の砂型鋳造は伝統技術と先端技術の融合で進化を続けています。
3D CADで設計された模型データをそのまま3Dプリンターで砂型に出力する「アディティブ砂型造型」は、試作リードタイムを従来の数週間から数日に短縮しました。

鋳造シミュレーション(CAE)との併用により、試作前に湯流れや凝固過程を予測し、方案の最適化を行うのも今や常識です。

 

適用できる金属の種類は非常に幅広く、鋳鉄(FC・FCD)、鋳鋼(SC・SCS)、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋳鋼など、ほぼすべての鋳造用合金に対応します。

特に鋳鉄の砂型鋳造は産業界の基盤を支えています。
工作機械のベッド、エンジンのシリンダーブロック、ポンプケーシング、バルブボディ、マンホールの蓋など用途は多岐にわたります。

 

鋳込み重量は、製品の体積と溶湯の密度から次の式で概算します。

 

 W = \rho \times V

 

ここで  W は鋳込み重量、 \rho は溶湯の密度、 V は製品体積です。

たとえば鋳鉄( \rho \fallingdotseq 7{,}200\,\text{kg/m}^3)で体積  0.01\,\text{m}^3 の部品を鋳造する場合、製品重量は約72 kgとなります。

実際の総鋳込み重量には湯口・湯道・押湯などの方案部も含まれるため、製品重量の1.3〜2.0倍程度を見込む必要があります。

 

製品の重量範囲も幅広く対応できます。

自動車用のブラケット類(数百グラム〜数kg)から、船舶用ディーゼルエンジンのシリンダーブロック(数十トン)、さらには発電用水車ランナー(100トン超)まで、砂型鋳造ならではの守備範囲の広さが際立ちます。

日本鋳造協会の統計によると、国内の鋳物生産量は年間約400万トン規模で推移しています。
そのうち砂型鋳造が大部分を占めており、鋳鉄(ねずみ鋳鉄+ダクタイル鋳鉄)が全体の約7割を占めています。

 

砂型鋳造が選ばれる主なメリットを整理しましょう。

  • 初期投資が低い:木型のコストは金型に比べて10分の1以下で済みます
  • 設計変更が容易:木型の修正で対応できるため、試作段階での柔軟性が高いです
  • サイズの制約が少ない:数グラム〜数十トンまで対応可能です
  • 金属種を問わない:融点の高い鋳鋼やステンレスにも対応します
  • 中空構造が作れる:中子(なかご)を使えば複雑な内部形状を実現できます

 

一方で注意すべきデメリットもあります。

  • 寸法精度が低い:鋳造公差等級はCT9〜CT13と他の鋳造法に劣ります
  • 表面粗さが粗い:Ra 12.5〜25 μm程度で、後加工が前提です
  • サイクルタイムが長い:凝固・冷却に時間がかかるため大量生産には不向きです
  • 欠陥のリスク:ひけ巣やガス欠陥など、工程管理が不十分だと不良が発生します

 

また、鋳物は結晶組織が鍛造品に比べて粗く、繰り返し荷重に対する疲労強度がやや低い点にも留意が必要です。
高い疲労強度が要求される部品では、鋳造後にHIP処理(熱間等方圧加圧)を施して内部欠陥を圧着させることもあります。

鋳物の品質はJIS G 5501(ねずみ鋳鉄)やJIS G 5502(球状黒鉛鋳鉄)などの規格で管理されます。
これらの規格では引張強さや硬さなどの機械的性質の最低保証値が合金種ごとに定められています。

 

この「精度は後加工で補う」という割り切りこそが、砂型鋳造を最もコストパフォーマンスに優れた成形法たらしめている理由といえます。

鍛造加工も金属成形法のひとつですが、溶湯を使わずに固体の金属を塑性変形させるという点で鋳造とは根本的に異なります。
両者の違いを理解しておくと、工法選定の判断がしやすくなります。

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2. 砂型鋳造の手順

砂型鋳造の工程は、大きく5つのステップに分けられます。

各工程の目的と要点を順に見ていきましょう。

 

ステップ1:模型(パターン)の製作

模型とは、最終製品と同じ外形をもつ原型のことです。

材質には木材(木型)、アルミニウム合金、樹脂(エポキシ・ウレタン)などが使われます。

木型は加工が容易でコストが低いため試作や小ロットに向いていますが、量産では耐久性に優れた金属型が選ばれます。

模型を設計する際には、金属が凝固時に収縮する分だけ寸法を大きくしておく必要があります。
この余裕分を「収縮代(しゅうしゅくしろ)」と呼びます。

鋳鉄の場合は約1.0%、鋳鋼で約2.0%、アルミニウム合金では約1.2〜1.5%の収縮代を見込むのが一般的です。

機械加工を行う面には「加工代(かこうしろ)」も上乗せしておきます。
一般的に砂型鋳造品の加工代は片側2〜5 mm程度で、大型品や高精度要求の面ではさらに多くを見込むことがあります。

さらに、砂型から模型を引き抜く際に鋳型が崩れないよう、製品の垂直面には「抜き勾配」を設けます。
抜き勾配は通常1〜3°で、模型の高さが高いほど大きな角度が必要です。

 

ステップ2:造型(鋳型づくり)

模型を鋳枠(フラスコ)の中にセットし、周囲に鋳物砂を詰めて突き固めます。

砂型は通常、上型(コープ)と下型(ドラグ)の2つに分割して作られます。

分割面は「見切り面(パーティングライン)」と呼ばれ、製品形状に応じて最適な位置を決める必要があります。
見切り面の位置が悪いと、バリの発生や寸法精度の低下を招きます。

造型には手込め造型と機械造型の2種類があります。
少量生産や大型品では熟練作業者による手込め造型が行われますが、量産ラインでは自動造型機を用いるのが主流です。

造型後には模型を砂型から慎重に引き抜き(型抜き)、キャビティの内面を仕上げます。
鋳肌を良くするために、塗型剤(ウォッシュコート)をキャビティ面に塗布することも多いです。

 

ステップ3:中子(なかご)のセット

製品に中空部や貫通穴がある場合は、中子と呼ばれる砂の塊を鋳型内にセットします。

中子はシェルモールド法やCO2プロセスで別途製作し、鋳型に正確に位置決めします。

中子の位置ずれは肉厚不良に直結するため、中子支え(チャップレット)や巾木(はば木)で確実に固定することが重要です。

中子には注湯時のガス抜き性能も求められます。
ガスが抜けないと鋳物内部にブローホールが発生するため、通気孔の設計が欠かせません。

 

中子の製造法にはシェルモールド法のほか、コールドボックス法(アミンガスで瞬時硬化)や熱硬化法などがあります。
近年は環境対応の観点から無機バインダー中子の開発も進んでいます。

 

ステップ4:型合わせ・湯口系の設置

上型と下型を合わせ、溶湯の流入経路となる「湯口系(ゆぐちけい)」を設置します。

湯口系は湯口(スプルー)、湯道(ランナー)、堰(ゲート)の3要素で構成されます。
溶湯がスムーズかつ均一にキャビティへ充填されるように、各部の断面積と配置を設計しなければなりません。

湯口での溶湯速度は、トリチェリの定理から次のように求まります。

 

 v = \sqrt{2gh}

 

ここで  g は重力加速度、 h は湯口上端から堰までの高さ(有効ヘッド)です。

たとえば有効ヘッドが0.3 mの場合、溶湯速度は約2.4 m/sとなります。

必要な堰の断面積  A_g は、鋳込み重量と注湯時間から算出します。

 

 A_g = \dfrac{W}{\rho \cdot v \cdot t_p}

 

 t_p は注湯時間です。
肉厚や材質に応じて適切な範囲を設定します。

さらに、凝固収縮を補うための「押湯(おしゆ)」も方案の重要な構成要素です。
押湯は製品よりも遅く凝固する必要があるため、厚肉部の近くに十分な容量で設置します。

 

ステップ5:鋳込み(注湯)

溶解炉で融かした金属を取鍋(とりべ)で運び、湯口から鋳型内に注ぎ込みます。

注湯温度は金属の液相線温度よりも50〜150℃高く設定するのが一般的です。
この余分な温度を「スーパーヒート(過熱度)」と呼び、溶湯の流動性を確保するために不可欠です。

鋳鉄の注湯温度は1,300〜1,400℃、アルミニウム合金では680〜750℃が標準的な範囲です。

注湯の際は、溶湯が乱流にならないよう一定速度で静かに流し込むことがポイントです。
乱流が生じると空気を巻き込んでガス欠陥の原因となります。

注湯が完了したら、鋳型を静置して金属の凝固を待ちます。

 

ステップ6:型ばらし・後処理

金属が十分に凝固・冷却したら、砂型を壊して鋳物を取り出します。
この工程を「型ばらし(シェイクアウト)」と呼びます。

取り出した鋳物には湯口・湯道・押湯・バリなどが付着しているため、これらを切断・研削して除去します。

さらにショットブラスト処理で表面のスケールや砂を除去し、必要に応じて熱処理や機械加工を施して製品に仕上げます。

最終的に寸法検査・外観検査・内部検査(X線や超音波)を経て、製品として出荷されます。

 

鋳込みにおける方案の効率は「歩留まり」で評価します。

 

 \eta = \dfrac{W_{\text{製品}}}{W_{\text{総鋳込}}} \times 100\;\lbrack\%\rbrack

 

歩留まりは鋳鉄で60〜80%、アルミニウム合金で50〜70%が一般的な目安です。
歩留まりが低いとコスト増に直結するため、方案設計は鋳造技術者の腕の見せどころといえます。

 

3. 鋳物砂の種類と特性

砂型鋳造の品質を大きく左右するのが、鋳型の材料となる「鋳物砂」の選定です。

鋳物砂には求められる特性が多岐にわたります。

溶湯の高温に耐える耐火性、ガスを逃がす通気性、型崩れしない強度、そして型ばらし後に容易に崩壊する崩壊性が代表的な要求特性です。

これらの特性は互いにトレードオフの関係になることが多く、用途に応じたバランス調整が不可欠です。

ここでは産業界で広く使われている3種類の鋳物砂を紹介します。

 

生型(なまがた)/グリーンサンド

最も一般的な鋳物砂が「生型」です。
珪砂を主体に、粘結剤としてベントナイト(モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物)、そして少量の水分を混合した砂を指します。

「生」の名称は、乾燥させずに「生のまま」使用することに由来します。

標準的な配合は珪砂85〜92%、ベントナイト5〜10%、水分2〜5%です。
この単純な配合で実用的な鋳型強度と通気性が得られるため、コストパフォーマンスに優れています。

生型の最大のメリットは砂の回収・再利用が容易な点です。
型ばらし後の砂を回収し、水分とベントナイトを補充するだけで再使用できます。

自動造型ラインとの相性もよく、鋳鉄の量産鋳造では生型が圧倒的なシェアを占めています。

一方で、水分を含むため注湯時に蒸気が発生しやすく、ガス欠陥の原因となることがあります。
また、鋳型強度がやや低いため大型品や高精度を要求される製品には向いていません。

石炭粉やデンプンなどの添加剤を混合することもあります。
石炭粉は注湯時にガスクッション層を形成して砂の焼き付きを防ぎ、デンプンは鋳型の崩壊性を改善します。

生型の品質管理では、圧縮強度・通気度・水分率の3項目を定期的に測定し、配合を調整します。
圧縮強度は50〜150 kPa、通気度は80〜200の範囲が一般的な管理基準です。

 

自硬性鋳型(じこうせいいがた)

珪砂に有機バインダー(フラン樹脂など)または無機バインダー(水ガラスなど)と硬化剤を混合し、常温で自然に硬化させる鋳型です。

生型に比べて鋳型強度が格段に高く、大型鋳物や厚肉鋳物に適しています。
重量が数トン〜数十トンにおよぶ船舶用エンジンブロックや大型バルブの鋳造には、この方式が多く用いられます。

バインダーの種類によって硬化速度や崩壊性が異なるため、用途に応じた選定が必要です。

フラン樹脂系は硬化後の強度と寸法精度に優れますが、注湯時に有機ガスが発生するため排気設備への配慮が求められます。
近年は環境規制の強化に伴い、ホルムアルデヒドフリーのバインダーへの切り替えが進んでいます。

水ガラス系(CO2プロセス)は、珪砂に水ガラス(ケイ酸ナトリウム)を混合し、CO2ガスを吹き込むことで瞬時に硬化させる方式です。
環境負荷が低い反面、崩壊性がやや劣るため砂の再利用率は低くなります。

 

シェルモールド

珪砂の表面をフェノール樹脂で被覆した「レジンコーテッドサンド(RCS)」を、200〜300℃に加熱した金属模型に吹き付け、薄い殻状(シェル)の鋳型を作る方法です。

鋳型の肉厚はわずか5〜15 mmと薄いため、使用する砂の量が少なく材料コストを抑えられます。

最大の利点は寸法精度の高さです。
生型の鋳造公差等級がCT10〜CT13程度であるのに対し、シェルモールドではCT8〜CT10と1〜2ランク高い精度が得られます。

表面粗さも生型より良好で、後加工の工数を削減できます。

自動車のカムシャフトやクランクシャフト、排気マニホールドなどの量産鋳造に広く採用されています。

シェルモールドは中子の製造にも広く使われています。
複雑な中空形状を高精度で再現できるため、シリンダーブロックのウォータージャケット用中子などに欠かせない技術です。

ただし、RCSは生型用の砂よりも単価が高く、加熱設備も必要なため初期投資がかさみます。
少量生産にはコスト面で不利になるため、量産品に限定して使われるのが一般的です。

 

鋳物砂の粒度は、鋳肌(表面粗さ)と通気性のバランスに直結する重要な管理項目です。

業界標準の指標としてAFS粒度指数が用いられ、次の式で算出します。

 

 GFN = \dfrac{\sum (R_i \times M_i)}{\sum R_i}

 

 R_i は各ふるいに残留した砂の重量割合、 M_i は各ふるいに対応する係数(メッシュ番号)です。

GFN値が大きいほど砂粒が細かく、鋳肌は滑らかになりますが通気性は低下します。

一般的に鋳鉄ではGFN 40〜70、アルミニウム合金ではGFN 50〜90の範囲が使われます。
粒度分布が均一であるほど安定した鋳型品質が得られるため、砂の管理には粒度分布曲線の定期確認が欠かせません。

 

鋳物砂の通気度も品質を左右する重要な特性です。
通気度が低いと注湯時にガスの逃げ場がなくなり、ブローホールやピンホールの原因となります。

通気度は次の式で算出されます。

 

 P = \dfrac{V \times h}{A \times p \times t}

 

 V は通過空気量、 h は試験片の高さ、 A は断面積、 p は送気圧力、 t は通気時間です。
生型砂の通気度は80〜200の範囲で管理するのが一般的です。

4. 砂型鋳造の道具と設備

砂型鋳造を行うには、造型・溶解・注湯・後処理の各工程に対応した設備が必要です。

ここでは主要な設備とその役割を整理します。

 

模型(パターン)

鋳型のネガ形状を作るための原型です。
材質は木型(マツ・ケヤキ・合板など)、金属型(アルミ・鋳鉄)、樹脂型(エポキシ・ウレタン)に大別されます。

試作や小ロットでは木型が多用されますが、量産ラインでは繰り返し精度と耐久性の高い金属型が標準です。

模型は「分割模型」「マッチプレート型」「コアボックス(中子用模型)」など、鋳物の形状と生産量に応じていくつかの方式に分かれます。

マッチプレートはプレートの上下に上型用と下型用の模型を取り付けたもので、自動造型ラインで広く使われています。

近年は3Dプリンターで直接砂型を出力する「砂型3Dプリンティング」も実用化が進んでいます。
模型が不要になるため試作リードタイムの大幅な短縮が可能で、複雑な中子も一体造型できるのが画期的です。

 

造型機

鋳物砂を鋳枠に詰めて鋳型を形成する機械です。

方式はジョルト式(振動締め固め)、スクイズ式(加圧締め固め)、ブロー式(圧縮空気で砂を吹き込む)などに分類されます。

量産ラインではジョルトスクイズ式の自動造型機が主流で、1時間あたり100〜300型のペースで連続造型できます。
近年のハイエンド機では1時間500型以上の高速造型も可能です。

大型鋳物の場合は手込め造型が行われることもありますが、作業者の熟練度が品質に直結するため管理が難しい面があります。
砂の突き固め加減ひとつで通気度や鋳型強度が変わるため、経験と勘がものをいう世界です。

 

溶解炉

金属を溶融させるための炉で、鋳造の心臓部ともいえる設備です。

鋳鉄の溶解には「キュポラ」(コークス燃焼炉)と「電気炉」(誘導炉・アーク炉)が広く使われます。

キュポラは連続的な大量溶解に適しており、操業コストが低い点が魅力です。
しかし成分調整の自由度が低く、CO2排出量が多いという課題があります。

近年は成分管理が容易で環境負荷の低い電気誘導炉への移行が進んでいます。
電気誘導炉では溶湯温度を±5℃以内で精密に制御でき、合金成分の微調整も容易です。

アルミニウム合金の溶解にはるつぼ炉や反射炉が用いられ、溶解温度は680〜780℃程度です。

溶解炉の選定にあたっては、溶解速度、溶湯品質、エネルギー効率、環境規制への対応を総合的に検討します。
近年はエネルギーコストの上昇に伴い、廃熱回収機能を備えた高効率炉への更新が進んでいます。

 

取鍋(とりべ)と注湯設備

溶解炉から鋳型まで溶湯を運ぶ容器が取鍋です。
材質は鋼製の外殻に耐火物を内張りしたもので、容量は数kgから数十トンまで多様です。

量産ラインでは自動注湯機が導入され、注湯量と速度をプログラム制御するのが一般的です。
自動注湯により品質のばらつきを低減し、作業者の安全性も向上します。

溶解量の設計には、注湯サイクルに応じた計算が必要です。

 

 Q_m = \dfrac{W_{\text{総鋳込}} \times N}{t_c}

 

 Q_m は単位時間あたりの必要溶解量、 N はサイクルあたりの鋳型数、 t_c はサイクル時間です。

 

後処理設備

型ばらし後の鋳物を製品レベルに仕上げるための設備群です。

ショットブラスト機(表面の砂やスケールを除去)、グラインダー(バリや湯口跡の研削)、そして熱処理炉(応力除去焼なましやT6処理など)が代表的です。

大型鋳物では砂落とし用の振動コンベアやハンマリング装置が使われることもあります。

寸法精度が要求される鋳物では、ショットブラスト後にCNC加工機で切削仕上げを行います。
鋳物専用のマシニングセンタは、砂噛みや硬質異物による工具損傷に対応した高剛性設計が特徴です。

 

検査設備も見逃せません。
三次元測定機(CMM)で寸法精度を確認し、蛍光浸透探傷試験(PT)で表面の微細な割れを検出します。

砂の回収設備も重要です。
磁気選別機で金属片を除去し、振動ふるいで粒度を調整した砂は再び造型工程に戻されます。
生型砂のリサイクル率は90%以上に達するため、資源の有効活用と廃棄物削減の両面でメリットがあります。

 

鋳造工場のレイアウト設計も生産効率を左右する重要な要素です。

一般的な動線は、砂処理→造型→中子セット→型合わせ→注湯→冷却→型ばらし→後処理の順にU字またはI字のラインで配置します。
工程間の搬送距離を最小化し、溶湯の運搬経路を短くすることで安全性と品質の両方が向上します。

量産工場では天井クレーンやローラーコンベアで鋳枠を搬送し、各工程をタクトタイムで管理するのが一般的です。

粉塵や熱対策として集塵設備や局所排気装置の設置も法令上必要となります。

5. アルミの砂型鋳造

アルミニウム合金の砂型鋳造は、軽量化ニーズの高まりとともに需要が拡大し続けている分野です。

鋳鉄に比べて密度が約3分の1(約2,700 kg/m³)と軽く、熱伝導率も高いため、自動車部品や産業機器のハウジング類に広く採用されています。

アルミの融点は約660℃と鋳鉄(約1,150℃)に比べて大幅に低いため、溶解エネルギーが少なく済む点もメリットです。

 

主要なアルミ鋳造合金

JIS H 5202「アルミニウム合金鋳物」にはさまざまな合金種が規定されています。
砂型鋳造でよく使われる代表的な4合金の特徴を紹介します。

 

AC2B(Al-Cu-Si系)

銅(Cu)とケイ素(Si)を含む合金で、高い強度と優れた被切削性を兼ね備えています。

シリンダーヘッドやブレーキドラムなど、強度と加工性の両立が求められる部品に適しています。

銅を含むため耐食性はやや劣り、腐食環境での使用には陽極酸化処理などの表面処理が必要です。
溶接性も低いため、製品設計の段階で接合部の配置に注意しなければなりません。

 

AC4A(Al-Si-Mg系)

ケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)を主要添加元素とする合金です。

T6熱処理(溶体化処理+人工時効)を施すことで機械的性質が大きく向上します。

耐圧性に優れるため、油圧・空圧機器のボディやマニホールドなどの気密性が求められる部品に多用されます。

 

AC4C(Al-Si-Mg系)

AC4Aと同系統ですが、ケイ素の含有量がやや多く鋳造性に最も優れた合金として広く知られています。

湯流れがよく、ひけ巣も出にくいため砂型鋳造との相性が抜群です。

自動車のホイールやサスペンション部品、汎用ポンプケーシングなど幅広い用途に使われます。
「迷ったらAC4C」と言われるほど汎用性が高い合金です。

 

AC7A(Al-Mg系)

マグネシウム(Mg)を主な添加元素とする合金で、耐食性が非常に高いのが最大の特徴です。

船舶部品や海水ポンプなど、腐食環境で長期間使用される製品に適しています。

反面、鋳造性がやや劣るため湯回りに注意が必要です。
溶湯の酸化も起きやすく、溶解・注湯工程では細心の管理が求められます。

 

これらの合金の機械的性質は応力-ひずみ曲線引張強さの概念と密接に関係しています。

T6処理を施すことで引張強さは鋳放し状態の約1.5倍に向上し、伸びも改善されます。

合金選定では、強度・鋳造性・耐食性・被切削性のバランスを考慮することが重要です。

たとえば強度最優先ならAC2BやAC4A、鋳造しやすさ重視ならAC4C、腐食環境ならAC7Aという使い分けが基本になります。
近年は自動車の軽量化ニーズからAC4CH(AC4Cの高純度版)の採用も増加傾向にあります。

 

溶湯処理と品質管理

アルミ鋳物の品質を左右する最重要工程が「溶湯処理」です。

アルミニウムは溶融状態で水素ガスを大量に吸収する性質があります。
凝固時にこの水素がガス気孔として残ると、強度低下やリーク不良の原因となります。

そこで注湯前に「脱ガス処理」を実施します。

回転式脱ガス装置で不活性ガス(窒素やアルゴン)を溶湯中に吹き込み、水素を微細気泡に取り込んで浮上除去する方法が一般的です。

脱ガス後の水素含有量は、密度指数法(減圧凝固試験)で評価します。
減圧下で凝固させたサンプルの密度と大気圧下のサンプルの密度を比較し、その差をパーセントで表します。

健全な鋳物を得るためには密度指数を2%以下に管理するのが目安です。
脱ガスが不十分な場合、鋳物の強度が健全品の半分以下に低下することもあるため、この工程は決して省略できません。

 

もうひとつ重要な処理が「改良処理(モディフィケーション)」です。

Al-Si系合金では、共晶シリコンが粗い針状に晶出すると機械的性質(特に伸び)が大きく低下します。

これを防ぐため、微量のストロンチウム(Sr)やナトリウム(Na)を溶湯に添加します。
添加によって共晶シリコンの形態が微細な繊維状に変化し、伸びと衝撃値が大幅に向上します。

改良処理の効果は永続的ではなく、溶湯を長時間保持すると効果が薄れる「フェーディング」が起きます。
そのため、改良剤の添加から注湯までの時間管理が極めて重要です。

 

アルミ鋳物の機械的性質は凝固速度にも強く依存します。

凝固が速いほど「デンドライトアームスペーシング(DAS)」と呼ばれる樹枝状晶の間隔が狭くなり、引張強さと伸びが向上します。
砂型鋳造は金型鋳造に比べて冷却速度が遅いためDASが大きくなりやすく、この点が機械的性質の差として表れます。

 

注湯温度の管理も極めて重要です。
アルミ合金の注湯温度は一般的に680〜750℃の範囲で設定しますが、合金種と製品の肉厚によって最適値は異なります。

温度が高すぎると水素吸収量が増えてガス欠陥が増加し、低すぎると湯回り不良や湯じわの原因となります。

このバランスを取るため、現場では熱電対による溶湯温度の連続モニタリングが不可欠です。

 

アルミ鋳物のT6熱処理(溶体化処理+人工時効)は、機械的性質を飛躍的に向上させるために欠かせない工程です。

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6. 他の鋳造法との比較

鋳造法にはさまざまな種類があり、製品の要求仕様に応じて最適な工法を選定する必要があります。

ここでは砂型鋳造と代表的な3つの鋳造法を比較します。

 

砂型鋳造 vs ダイカスト

ダイカストは、金属製の金型に溶湯を高圧(数十〜数百MPa)で射出して成形する鋳造法です。

サイクルタイムが数十秒と非常に短く、大量生産における単価は砂型鋳造を大きく下回ります。

寸法精度も鋳造公差等級でCT4〜CT7と、砂型のCT9〜CT13に比べて格段に優れています。
表面粗さも良好で、鋳放しのまま製品として使用できるケースも少なくありません。

一方、金型の製作費は数百万〜数千万円と高額です。
損益分岐点を超える量産規模(通常数千〜数万個以上)がなければ、コストメリットは出ません。

また、ダイカストで鋳造できる金属はアルミ・亜鉛・マグネシウムなどの低融点合金に限られます。
鋳鉄やステンレス鋼は金型が溶損するため対応できず、この点で砂型鋳造のほうが汎用性は高いといえます。

ダイカストの製品重量は一般的に数十グラム〜数十kg程度で、数百kgを超える大型品には対応できません。
砂型鋳造なら数トン〜数十トン級の鋳物も製造可能なため、大型品では唯一の選択肢となるケースが多いです。

さらにダイカスト品は高速充填時に空気を巻き込みやすく、内部にポロシティ(微細気孔)が残存する傾向があります。
このため熱処理をかけると気孔が膨張してブリスタ(膨れ)が発生するリスクがあり、T6処理が難しいという制約もあります。

 

砂型鋳造 vs ロストワックス鋳造(精密鋳造)

ロストワックス鋳造は、蝋(ワックス)で作った原型をセラミックスのシェルで覆い、加熱して蝋を溶かし出した後に溶湯を注ぐ方法です。

「消失模型鋳造」とも呼ばれ、鋳造公差等級はCT5〜CT8と極めて高精度です。

抜き勾配がほぼ不要で、アンダーカット形状にも対応できるため複雑形状の小型精密部品に適しています。
タービンブレードや人工関節、歯科用パーツなど、機械加工が困難な形状の製造に欠かせない工法です。

対応可能な金属は耐熱合金やチタンを含む広範囲に及ぶため、航空宇宙分野でも欠かせない技術です。

ただし工程数が多くリードタイムが長いため、大型品や大量生産には向きません。
砂型鋳造のほうが大幅にコストを抑えられるケースがほとんどです。

 

砂型鋳造 vs 金型鋳造(重力鋳造)

金型鋳造は、金属製の永久型に溶湯を重力で流し込む方法です。
ダイカストのような高圧射出は行わないため「重力鋳造」とも呼ばれます。

鋳造公差等級はCT7〜CT9で、砂型鋳造とダイカストの中間的な位置づけです。
金型を繰り返し使えるため、中〜大量生産においてはコストメリットがあります。

主にアルミニウム合金の鋳造に使われ、自動車のシリンダーヘッドやインテークマニホールドが代表的な適用例です。
ダイカストに比べて充填速度が遅いため巻き込み気孔が少なく、T6処理にも適しています。

 

以下の表に各鋳造法の主要な比較項目をまとめます。

 

項目 砂型鋳造 ダイカスト ロストワックス 金型鋳造
鋳造公差等級 CT9〜CT13 CT4〜CT7 CT5〜CT8 CT7〜CT9
型の種類 消耗型(砂) 永久型(金属) 消耗型(セラミック) 永久型(金属)
型費 低い 非常に高い 中程度 高い
適正ロット 少量〜中量 大量 少量〜中量 中量〜大量
製品サイズ 小型〜超大型 小型〜中型 小型 小型〜中型
対応金属 ほぼ全種 低融点合金 ほぼ全種 低融点合金
表面粗さ 粗い 良好 非常に良好 良好

 

砂型鋳造は精度面では他工法に劣りますが、型費の安さ・対応金属の広さ・サイズの自由度では他の追随を許しません。

「まず砂型で試作し、量産移行時にダイカストや金型鋳造へ切り替える」というアプローチは産業界で広く実践されています。

 

鋳造公差等級(CT)はISO 8062-3で規定された寸法公差の等級です。
CT値が小さいほど公差が狭く、寸法精度が高いことを意味します。

たとえば基本寸法100 mmの鋳物の場合、各CT等級の寸法公差はおおよそ次のとおりです。

 

 CT6 \rightarrow \pm 0.7\,\text{mm}

 CT9 \rightarrow \pm 1.8\,\text{mm}

 CT12 \rightarrow \pm 4.2\,\text{mm}

 

砂型鋳造品の後加工では、この公差に応じた加工代(削りしろ)を設定する必要があります。
加工代は一般に片側2〜5 mm程度が標準ですが、大型品ではさらに多くの加工代を見込むこともあります。

 

鋳造法の選定で迷ったときは、次の3つの問いを順に検討するのが実務的です。

まず「生産数量は何個か?」を確認します。
数個〜数百個なら砂型鋳造、数千個以上ならダイカストや金型鋳造が候補に入ります。

次に「対応金属は何か?」を見ます。
鋳鉄やステンレス鋳鋼ならダイカストは選択肢に入らず、砂型鋳造かロストワックスに絞られます。

最後に「要求精度はどのレベルか?」を検討します。
CT7以下の精度が必要なら金型鋳造以上の工法を検討し、CT10程度で問題なければ砂型鋳造で十分です。

この3ステップで選択肢を絞り込めば、最適な鋳造法にたどり着くことができます。

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7. 砂型鋳造の欠陥と対策

砂型鋳造は工程が多く、各工程のわずかな管理不足が鋳造欠陥に直結します。

ここでは代表的な5つの欠陥と、その発生メカニズムおよび対策を解説します。

 

ひけ巣とガス欠陥

ひけ巣(引け巣・収縮巣)は、溶湯が凝固する際の体積収縮によって生じる空洞です。

金属は液体から固体に相変化するとき、必ず体積が減少します。
この収縮分を補う溶湯の供給(押湯からの補給)が不十分な場合、鋳物内部に巣が発生します。

ひけ巣は製品の強度低下や気密不良の原因となるため、最も注意すべき欠陥のひとつです。

 

凝固に要する時間は「チボリネフの法則」で推定できます。

 

 t_s = B \left(\dfrac{V}{A}\right)^2

 

 t_s は凝固時間、 B は鋳型定数(鋳型材と金属の熱的特性で決まる値)、 V は鋳物の体積、 A は表面積です。

この式から、体積に対して表面積が小さい(つまり肉厚の大きい)部分ほど凝固が遅くなることが分かります。

ここで  V / A を「モジュラス M と呼びます。

 

 M = \dfrac{V}{A}

 

押湯のモジュラスを製品のモジュラスよりも大きく設計すれば、押湯が製品よりも遅く凝固するため、ひけ巣を押湯側に誘導できます。

実務では次の関係を目安にします。

 

 M_{\text{押湯}} \geq 1.2 \times M_{\text{製品}}

 

体積収縮率は金属の種類によって異なります。
液相から固相への体積変化は次の式で表されます。

 

 \varepsilon_V = \dfrac{\rho_s - \rho_l}{\rho_s} \times 100\;\lbrack\%\rbrack

 

 \rho_s は固相密度、 \rho_l は液相密度です。

鋳鉄の体積収縮率は約2.5〜4.0%、鋳鋼で約5.0〜7.0%、アルミニウム合金では約5.0〜7.0%が目安です。
なお、ねずみ鋳鉄(FC)は凝固時に黒鉛が晶出して体積が膨張するため、見かけ上の収縮率が小さくなる特殊なケースです。

 

ガス欠陥(ブローホール・ピンホール)は、鋳物内部にガスが閉じ込められて生じる球状の気孔です。

原因は大きく3つに分類できます。

溶湯中に溶解したガス(水素など)が凝固時に析出する「ガス析出型」、鋳型の水分や有機バインダーが分解して発生する「鋳型ガス型」、そして溶湯の乱流で空気を巻き込む「巻込み型」です。

対策としては、溶湯の脱ガス処理の徹底、鋳物砂の水分管理(生型の場合は水分3〜4%に厳密管理)、そして湯口系の最適設計が三本柱となります。

 

砂かみ・湯回り不良・割れ

砂かみ(砂噛み)は、鋳型の一部が注湯時に崩れ落ち、鋳物内部や表面に砂が混入する欠陥です。

鋳型強度の不足や、溶湯の勢いが強すぎる場合に発生しやすくなります。

対策には鋳物砂の強度向上(ベントナイト添加量の調整)や、堰の断面積を適切に設計して溶湯の流速を下げることが有効です。
塗型剤(コーティング)を鋳型内面に塗布する方法も、砂かみ防止と鋳肌改善の両面で効果があります。

 

湯回り不良(ミスラン)は、溶湯がキャビティの末端まで充填されずに凝固してしまう欠陥です。

薄肉部や複雑形状部で起きやすく、主な原因は注湯温度の不足と通気性不良です。

対策としては、スーパーヒートを十分に確保する、堰の位置を薄肉部の近くに設ける、鋳型のベント(排気穴)を増やすといった方法があります。
製品設計の段階で肉厚の急激な変化を避けることも、湯回り改善に大きく寄与します。

 

割れ(鋳造割れ)は、凝固中や冷却中に鋳物に亀裂が生じる深刻な欠陥です。

凝固途中に発生する「熱間割れ」と、室温付近まで冷却された後に生じる「冷間割れ」の2種類があります。

いずれも根本原因は鋳物内部に蓄積する残留応力(鋳造応力)です。

鋳造応力の大きさは、次の式で概算できます。

 

 \sigma = E \cdot \alpha \cdot \Delta T

 

 E はヤング率、 \alpha は線膨張係数、 \Delta T は温度差です。

厚肉部と薄肉部では冷却速度が異なるため温度差が生じ、それに応じた応力が発生します。
この応力が材料の強度を超えると割れに至ります。

対策としては、肉厚の急激な変化を避ける設計、冷却速度を均一化するチラー(冷し金)の使用、そして型ばらし後の応力除去焼なましが有効です。

設計段階でR(フィレット)を付けて応力集中を緩和するのも基本的ですが重要な対策です。
鋭角なコーナー部は割れの起点になりやすいため、最低でもR3 mm以上の丸みを付けることが推奨されます。

 

鋳造欠陥を完全にゼロにすることは困難ですが、発生メカニズムを正しく理解することで大幅に低減できます。

近年は鋳造シミュレーション(CAE)を活用して、注湯前の段階で充填解析・凝固解析・応力解析を行い、方案の最適化を図るのが主流です。
シミュレーションによって押湯のサイズや位置、堰の配置を事前に検証できるため、試作回数を大幅に削減できます。

また、完成した鋳物の内部検査にはX線透過試験や超音波探傷試験が用いられます。
これらの非破壊検査によって内部のひけ巣やガス気孔を検出し、出荷前の品質を保証します。

特に圧力容器やバルブボディなどの耐圧部品では、水圧試験やヘリウムリークテストが追加で実施されることもあります。
品質保証体系の構築は、鋳造メーカーの競争力を左右する重要な経営課題です。

鋳型の上面(コープ面)は溶湯の浮力で押し上げられるため、砂かみが特に起きやすい箇所です。
このため上型には十分な錘(おもり)を載せるか、クランプで固定して浮き上がりを防止します。

8. まとめ

本記事では、砂型鋳造の基礎から実務的なポイントまでを体系的に解説しました。

砂型鋳造は、木型さえあれば小さな部品から数十トンの大型構造物まで成形できる、最も汎用性の高い鋳造法です。

工程は模型製作→造型→中子セット→型合わせ→鋳込み→後処理の6ステップで構成され、湯口系と押湯の方案設計が品質を大きく左右します。

 

鋳物砂には生型・自硬性・シェルモールドの3種類があり、製品のサイズ・精度・ロット数に応じた使い分けが重要です。

アルミの砂型鋳造では、AC2B・AC4A・AC4C・AC7Aの4合金がそれぞれ異なる用途に対応し、脱ガス処理や改良処理などの溶湯管理が品質を大きく左右します。

 

他の鋳造法と比較すると、砂型鋳造は精度面では劣るものの、型費の安さと対応金属の幅広さで際立った優位性を持っています。

ひけ巣・ガス欠陥・砂かみ・湯回り不良・割れといった代表的な欠陥の発生メカニズムを理解し、適切な方案設計と工程管理を行うことで信頼性の高い鋳物が得られます。

 

鋳造の歴史は金属加工の歴史そのものです。

数千年の実績に裏打ちされた砂型鋳造の基本を押さえておくことは、ものづくりに携わるすべてのエンジニアにとって大きな財産となるはずです。

設計者の方は「この部品を砂型鋳造で作れるか?」と迷った際に、本記事の比較表やチェックポイントを判断材料として活用してみてください。

適切な工法選定と品質管理を行えば、砂型鋳造は今後もものづくりの中核を担い続ける技術です。