
「短絡と地絡、どちらも事故なのは分かるが、何がどう違うのか説明できない」
電気設備に関わると必ず突き当たるこの疑問に答えるのが、本記事のテーマである短絡と地絡です。
短絡は電線どうしが直接つながってしまう事故、地絡は電気が大地に漏れてしまう事故です。
流れる電流の大きさも、検出の方法も、守り方もまったく異なります。
本記事では、短絡と地絡の違いから、短絡電流のパーセントインピーダンス法による計算、地絡の検出のしくみ、保護機器の使い分け、そして事故区間だけを切り離す保護協調までを体系的に解説します。
- 1. 短絡と地絡とは|2大電気事故の違い
- 2. 短絡電流の計算|パーセントインピーダンス法
- 3. 地絡電流のしくみと検出
- 4. 短絡・地絡から設備を守る保護機器
- 5. 保護協調とは|事故区間だけを切り離す
- 6. 実務での予防と事故対応
- まとめ
1. 短絡と地絡とは|2大電気事故の違い
電気設備の事故は、大きく短絡と地絡に分けられます。
まず、それぞれの定義と現象をはっきりさせましょう。
1-1. 短絡とは|電線どうしがつながる事故
短絡とは、電位の異なる電線どうしが、負荷を介さずに直接つながってしまう事故です。
ショートとも呼ばれ、回路を「短く絡げる」という字のとおりの現象です。
本来、電気は電灯や電動機といった負荷を通って流れます。
負荷には抵抗があるため、電流は適正な大きさに制限されています。
ところが電線どうしが直接接触すると、回路の抵抗がほぼゼロになります。
行き場を失った電圧が、ごくわずかな抵抗に全部かかるため、電流は数千〜数万アンペアにも達します。
巨大な電流は、激しい発熱とアークを伴い、火災や機器破壊を引き起こします。
短絡は、電気事故の中で最も破壊力の大きい事故です。
1-2. 地絡とは|電気が大地に漏れる事故
地絡とは、電路と大地が電気的につながってしまう事故です。
絶縁の劣化や損傷によって、本来の回路から外れた電流が大地へ流れ出します。
たとえば、ケーブルの被覆が傷つき、導体が金属管や構造物に触れたとします。
すると電流の一部が、金属管から大地を通って電源へ戻る経路を流れ始めます。
この大地へ漏れる電流を地絡電流と呼びます。
地絡電流は短絡電流に比べてはるかに小さく、外見上は何も起きていないように見えることさえあります。
しかし、漏れた電気は感電や火災の原因になります。
静かに進行する分、短絡よりたちが悪い事故ともいえるのです。
1-3. 漏電との関係
地絡とよく似た言葉に、漏電があります。
厳密な使い分けはありませんが、実務ではほぼ同じ現象を指すと考えて差し支えありません。
強いて区別するなら、漏電は絶縁の劣化で電気が漏れている状態を広く指します。
地絡は、電路と大地が接触してつながる事故という、より技術的な用語です。
低圧の現場では漏電、高圧の保護や継電器の世界では地絡と呼ぶことが多い、と覚えておけば十分です。
本記事では以降、地絡で統一して解説します。
1-4. 短絡と地絡の比較表
2つの事故の違いを表に整理します。
| 項目 | 短絡 | 地絡 |
|---|---|---|
| 現象 | 電線どうしが直接つながる | 電路と大地がつながる |
| 電流の経路 | 線間(相間) | 電路→大地→電源 |
| 電流の大きさ | 数千A〜数万A | 数十mA〜数十A程度 |
| 主な被害 | 火災・機器破壊・アーク | 感電・火災・波及事故 |
| 検出方法 | 過電流の検出 | 零相電流(漏れ電流)の検出 |
| 主な保護機器 | 配線用遮断器・OCR・ヒューズ | 漏電遮断器・地絡継電器 |
ポイントは、電流の大きさが桁違いに異なることです。
大きさが違えば検出の原理も変わるため、保護機器も別々に用意する必要があります。
2. 短絡電流の計算|パーセントインピーダンス法
短絡保護の設計は、短絡電流の大きさを知ることから始まります。
実務では、パーセントインピーダンス(%Z)法という計算手法が標準です。
2-1. 短絡電流はなぜ巨大になるのか
短絡電流の大きさは、オームの法則で説明できます。
電流は電圧をインピーダンスで割った値なので、分母が小さいほど電流は大きくなります。
短絡時の回路に残るのは、変圧器や電線がもつわずかなインピーダンスだけです。
分母がほぼゼロに近づくため、電流は定格の数十倍から数百倍に跳ね上がります。
つまり短絡電流の大きさは、電源から短絡点までのインピーダンスで決まります。
このインピーダンスをパーセント表記で扱いやすくしたのが、次に述べる%Zです。
2-2. パーセントインピーダンス(%Z)とは
パーセントインピーダンスとは、定格電流を流したときのインピーダンスによる電圧降下が、定格電圧の何%にあたるかを表した値です。
変圧器の銘板には、%Zが必ず記載されています。
%Zが4%の変圧器なら、定格電流で4%分の電圧降下が内部で生じるという意味です。
裏を返せば、二次側を短絡すると定格の100/4=25倍の電流が流れることを示します。
%Zはオーム値と違い、変圧器の一次側・二次側どちらから見ても同じ値で使えます。
この扱いやすさが、%Z法が実務標準になっている理由です。
インピーダンスそのものの考え方をおさらいしたい方は、以下の記事をご覧ください。
2-3. 短絡電流の計算式と例題
%Zが分かれば、短絡電流は次式で計算できます。
は短絡電流、
は定格電流です。
三相回路の定格電流は、定格容量を√3倍の定格電圧で割って求めます。
例題として、三相300kVA・二次電圧210V・%Z=4%の変圧器の二次側短絡電流を計算します。
定格825Aに対し、短絡時は約20,600Aもの電流が流れる計算です。
この数値が、低圧側の遮断器に求められる遮断能力の根拠になります。
2-4. 遮断容量の選定
保護機器には、安全に遮断できる電流の上限である定格遮断容量があります。
遮断容量は、設置点の短絡電流以上でなければなりません。
先ほどの例題なら、変圧器二次側の主幹遮断器には20.6kA以上の遮断容量が必要です。
規格品の中から、25kAなどの直近上位の遮断容量をもつ機種を選定します。
もし遮断容量が不足していると、遮断器自身が短絡電流で破壊されます。
遮断できないまま機器が壊れる最悪の事態で、火災に直結します。
高圧側についても考え方は同じです。
キュービクルの規格であるJIS C 4620は、系統短絡電流12.5kA以下の回路を適用範囲とし、主遮断装置に受電点短絡電流以上の遮断性能を求めています。
2-5. 基準容量への換算
%Zには、計算上の約束事が1つあります。
%Zは機器の定格容量を基準にした値なので、容量の異なる機器どうしをそのまま足し算できないのです。
合成するときは、すべての%Zを共通の基準容量に換算してから足します。
換算は次式のとおり、容量に比例させるだけです。
は元の基準容量、
は新しい基準容量です。
たとえば1,000kVA基準で%Z=2%の系統は、300kVA基準に換算すると2×300/1000=0.6%になります。
系統側と変圧器の%Zを合算すれば、受電点や二次側の短絡電流をより正確に求められます。
「基準容量をそろえてから足す」が、%Z計算の鉄則です。
3. 地絡電流のしくみと検出
地絡の保護は、短絡とはまったく別の発想が必要です。
鍵になるのは、小さな漏れ電流をどう見つけるかという検出技術です。
3-1. 高圧配電は非接地系|地絡電流が小さい理由
日本の6.6kV高圧配電系統は、変電所の中性点を接地しない非接地方式を採用しています。
非接地系では、地絡が起きても電源へ戻る金属的な経路が存在しません。
では地絡電流はどこを通るのかというと、電線と大地の間の静電容量を介して流れます。
経路が静電容量だけなので、地絡電流は数アンペア程度と小さくなります。
地絡電流が小さいことは、被害を抑えるうえでは利点です。
一方で、数百アンペアの負荷電流に紛れた数アンペアを見つけるという、検出の難しさを生みます。
あえて接地しないのは、1線地絡時にも供給を継続しやすくするための設計思想です。
非接地系という前提が、高圧の地絡保護のすべての出発点になります。
3-2. 対地静電容量と充電電流
電線と大地は、絶縁物を挟んで向かい合う2枚の電極とみなせます。
つまり電路は、大地との間に目に見えないコンデンサを形成しています。
この静電容量を対地静電容量と呼び、交流ではここを充電電流が常時流れています。
とくに高圧ケーブルは静電容量が大きく、こう長が延びるほど充電電流も増えます。
地絡事故が起きると、健全相の対地静電容量を通じて地絡点へ電流が流れ込みます。
これが非接地系における地絡電流の正体です。
対地静電容量は、後述する「もらい事故」の原因にもなる重要キーワードです。
ケーブルが長い構内ほど、地絡保護の設計は慎重さを要します。
3-3. 低圧系統の地絡は経路が違う
同じ地絡でも、低圧系統では事情が異なります。
低圧系統は、変圧器の二次側がB種接地工事によって大地に接地されているからです。
低圧側で地絡が起きると、漏れた電流は大地からB種接地線を通って変圧器へ戻ります。
非接地の高圧側と違い、地絡電流の戻り道があらかじめ用意されているのです。
経路が明確なので、地絡電流の大きさは接地抵抗などから計算でき、検出も比較的容易です。
家庭や工場の漏電遮断器が確実に働くのは、この接地方式に支えられています。
そもそもB種接地は、変圧器内部で高圧と低圧が触れる混触事故から低圧側を守るための接地です。
「高圧は非接地、低圧はB種接地で系統接地」という対比で覚えると、地絡保護の全体像が整理できます。
3-4. ZCTによる零相電流の検出
小さな地絡電流を検出する主役が、零相変流器(ZCT)です。
ZCTは、三相の電線をまとめて1つの環状鉄心に貫通させた変流器です。
正常な回路では、行きと帰りの電流が打ち消し合い、三相の電流の和はゼロになります。
これはキルヒホッフの法則の電流則そのものです。
ところが地絡が起きると、大地へ漏れた分だけ行きと帰りに差が生まれます。
このアンバランス分が零相電流で、ZCTはこれだけを選択的に取り出します。
数百アンペアの負荷電流が流れていても、和がゼロなら出力はゼロのままです。
「全体を束ねて差分だけを見る」という、シンプルで強力な検出原理です。
3-5. GRとDGR|もらい事故を防ぐ方向判別
ZCTの信号を受けて動作するのが、地絡継電器(GR)です。
零相電流が整定値を超えると、遮断器や開閉器に引外し指令を出します。
ただし、単純なGRには弱点があります。
構外の配電線で起きた地絡でも、自構内のケーブルの対地静電容量を通って零相電流が流れるため、事故でもないのに動作してしまうのです。
これが、もらい事故と呼ばれる不要動作です。
自構内のケーブルが長い設備ほど、もらい事故のリスクは高くなります。
対策として使われるのが、地絡方向継電器(DGR)です。
DGRは零相電流に加えて零相電圧も検出し、両者の位相関係から事故が構内か構外かを判別して、構内事故のときだけ動作します。
4. 短絡・地絡から設備を守る保護機器
検出の原理が分かったところで、保護機器を整理します。
低圧と高圧、短絡と地絡で、それぞれ担当する機器が異なります。
4-1. 低圧回路|配線用遮断器と漏電遮断器
低圧回路の短絡・過負荷保護は、配線用遮断器(MCCB)が受け持ちます。
過電流が流れると、熱動形や電磁形の引外し機構が動作して回路を遮断します。
地絡保護を受け持つのは、漏電遮断器(ELCB)です。
内蔵のZCTで漏れ電流を検出し、設定値を超えると遮断します。
感電保護用には、定格感度電流30mA・動作時間0.1秒以内の高感度高速形が広く使われています。
人体に危険が及ぶ前に回路を切るための数値です。
漏電遮断器は、過電流保護を兼ねた機種が一般的です。
「短絡はMCCB、地絡はELCB」と役割を押さえたうえで、回路ごとに適切に使い分けます。
4-2. 高圧回路|OCR・PF・地絡継電装置
高圧回路の短絡保護は、CB形なら変流器+過電流継電器(OCR)+遮断器の組み合わせです。
OCRには限時要素と瞬時要素があり、過負荷領域と短絡領域を分担して検出します。
PF・S形では、高圧限流ヒューズ(PF)が短絡電流を遮断します。
限流ヒューズは、短絡電流が最大値に達する前に断ち切る限流効果をもつのが強みです。
地絡保護は、ZCT+GR(またはDGR)+遮断装置の組み合わせで行います。
引込口のPASやUGSにも地絡保護が組み込まれ、構内事故の波及を防ぎます。
これらの継電器は、年次点検で動作試験を行い、整定値どおりに働くことを確認します。
保護機器は「動いて当たり前」ではなく、試験で確かめて初めて信頼できるのです。
4-3. 接地と漏電遮断器の協働
地絡保護は、保護機器単独では完結しません。
機器の金属外箱を大地につなぐ接地工事との協働で、初めて感電を防げます。
外箱に地絡しても、接地があれば漏れ電流は接地線を通って大地へ流れます。
このとき人が触れても、人体より抵抗の小さい接地側へ電流が分流するため、感電の危険が下がります。
さらに、接地線を流れる地絡電流を漏電遮断器が検出して回路を遮断します。
「接地が電流の逃げ道を作り、漏電遮断器がとどめを刺す」という二段構えです。
低圧機器のD種接地工事は接地抵抗100Ω以下が原則ですが、0.5秒以内に動作する漏電遮断器を設ければ500Ω以下に緩和されます。
保護機器と接地が一体で設計されていることを示す好例です。
4-4. 保護機器の使い分けまとめ
事故の種類と電圧階級ごとに、保護機器を一覧にします。
| 区分 | 短絡保護 | 地絡保護 |
|---|---|---|
| 低圧回路 | 配線用遮断器(MCCB)・ヒューズ | 漏電遮断器(ELCB)・漏電継電器 |
| 高圧回路(CB形) | CT+OCR+遮断器 | ZCT+GR/DGR+遮断器 |
| 高圧回路(PF・S形) | 高圧限流ヒューズ(PF) | ZCT+GR+負荷開閉器 |
| 引込口 | ―(電力会社側と協調) | PAS・UGS(地絡保護付開閉器) |
同じ「事故から守る」でも、検出原理と担当機器がきれいに分かれていることが分かります。
図面を見るときは、この表を頭に置いて保護の系統を追ってみてください。
5. 保護協調とは|事故区間だけを切り離す
保護機器を設置しただけでは、よい保護とはいえません。
複数の保護機器を正しく連携させる、保護協調という設計が必要です。
5-1. 保護協調の考え方
保護協調とは、事故が起きたとき、事故点に最も近い保護機器だけが動作するように、各機器の動作値と動作時間を調整することです。
目的は、停電範囲を事故区間だけに限定することにあります。
たとえば末端の機械で短絡が起きたとします。
その回路の分岐遮断器だけが動作すれば、影響はその機械だけで済みます。
もし上位の主幹遮断器が先に動作したら、健全な回路まで巻き添えで停電します。
さらに上位の高圧側が動作すれば、工場全体が停電です。
「下位から順に動く」を保証するのが保護協調の本質です。
選択遮断とも呼ばれ、設備の信頼性を支える縁の下の設計です。
5-2. 時間協調と電流協調
協調をとる方法は、大きく2つあります。
1つ目は、動作時間に差をつける時間協調です。
下位の機器は速く、上位の機器ほど遅く動作するよう時間差を設定します。
下位が遮断に失敗した場合のみ、上位がバックアップとして動作します。
2つ目は、動作電流に差をつける電流協調です。
上位ほど大きな電流で動作するよう整定し、小さな事故では上位が反応しないようにします。
実際の設計では、両者を組み合わせて協調を構成します。
高圧側のOCRでは、電流タップとタイムレバーという2つの整定要素で調整します。
5-3. 動作特性曲線の読み方
協調の検討には、動作特性曲線を使います。
横軸に電流、縦軸に動作時間をとった、保護機器の応答を表すグラフです。
過電流保護の特性は、電流が大きいほど速く動作する右下がりの曲線になります。
大きな事故ほど急いで切るという、理にかなった特性です。
協調の判定は、上下の機器の曲線を同じグラフに重ねて行います。
どの電流域でも下位の曲線が上位より下(速い側)にあり、曲線どうしが交差しなければ協調成立です。
曲線が交差していると、その電流域では上位が先に動作する逆転が起こります。
遮断器の更新や増設のときは、特性曲線の再確認を忘れないでください。
5-4. 電力会社との協調|波及事故の防止
保護協調は、構内で完結する話ではありません。
最上位には、電力会社の配電用変電所の保護装置が控えています。
需要家構内の事故で変電所の遮断器が動作すると、同じ配電線の他の需要家まで停電します。
これが波及事故で、地域全体に迷惑を及ぼす重大事故です。
波及事故を防ぐには、構内の保護装置が変電所より確実に先に動作する協調が必要です。
受電点の地絡保護をDGR付きのPAS・UGSで構成するのも、このためです。
自構内の保護協調表は、電力会社との協議資料にもなります。
保護協調は、自社設備と地域系統の両方を守る社会的な設計なのです。
6. 実務での予防と事故対応
最後に、短絡・地絡を防ぐ実務の勘所と、起きてしまったときの対応を整理します。
事故は予防が最善ですが、備えの有無が復旧時間を大きく左右します。
6-1. 短絡事故の典型原因と予防
短絡の典型原因は、絶縁不良・異物・施工ミスの3つです。
経年劣化したケーブルの絶縁破壊は、最も多いパターンです。
キュービクルや盤内に侵入したヘビ・ネズミによる相間短絡も定番です。
開口部の封止と防鼠対策は、地味ですが効果の大きい予防策です。
工事後の結線ミスや、ねじ締め忘れによる端子の脱落も短絡につながります。
施工後の検査と増し締め確認を、手順として確実に実施しましょう。
予防の柱は、定期的な絶縁抵抗測定による劣化の早期発見です。
絶縁の低下傾向をつかめば、破壊に至る前に計画的な更新ができます。
6-2. 地絡事故の典型原因と予防
地絡の典型原因は、絶縁劣化・浸水・損傷です。
とくに水分は絶縁の大敵で、豪雨後や結露の季節に地絡は多発します。
屋外ケーブルの被覆損傷や、端末処理部の劣化も主要な原因です。
紫外線や振動にさらされる部位は、重点的に目視点検します。
電動機など機器内部の絶縁劣化も、地絡として現れます。
巻線の絶縁抵抗を定期測定し、傾向管理することが予防になります。
また、漏電遮断器のテストボタンによる動作確認も習慣化しましょう。
保護機器が眠ったまま壊れていては、いざというとき意味がありません。
6-3. 事故発生時の対応手順
保護機器が動作したら、原因を特定するまで再投入してはいけません。
事故原因が残ったまま再投入すると、事故電流を再び流すことになります。
まず、どの保護機器が動作したかを確認します。
動作した機器の位置と種類から、事故の種別とおおよその区間を推定できます。
次に、推定区間を切り離し、絶縁抵抗測定などで事故点を絞り込みます。
回路を分割しながら測定すると、効率よく特定できます。
高圧側の事故や波及のおそれがある場合は、電気主任技術者へ直ちに連絡します。
復旧を急ぐあまり、安全確認を省略することだけは避けてください。
6-4. 継電器試験と協調の維持
保護協調は、設計時に完成して終わりではありません。
継電器の整定値と動作特性は、年次点検の試験で維持されます。
OCRやGRには試験器で模擬入力を与え、整定値どおりの電流・時間で動作するかを確認します。
経年で特性がずれた継電器は、調整または更新します。
設備の増設や変圧器の容量変更があれば、短絡電流も変わります。
そのたびに%Z計算をやり直し、遮断容量と協調の成立を再検証する必要があります。
保護協調表と単線結線図は、常に最新の状態に保ちましょう。
図面と現物が一致していることが、保護設計の信頼性の土台です。
まとめ
本記事では、電気設備の2大事故である「短絡」と「地絡」について、その違いから、パーセントインピーダンス法による短絡電流の計算、非接地系における地絡検出のしくみ、保護機器の使い分け、保護協調の設計までを体系的に解説しました。
短絡は線間がつながって数千〜数万Aが流れる事故、地絡は電路と大地がつながって小さな電流が漏れる事故です。
短絡電流は で計算でき、保護機器の遮断容量選定の根拠になります。
地絡はZCTで零相電流を検出し、DGRの方向判別でもらい事故を防ぎます。
そして保護協調により、事故時には事故区間だけが切り離されるよう設計します。
短絡と地絡の違いが分かると、保護機器の構成と図面の意図が読めるようになります。
自社設備の単線結線図で、保護の系統をぜひ一度たどってみてください。