
「10Aを測りたいだけなのに、なぜ抵抗の発熱まで考えなければならないのか?」
シャント抵抗は電流測定の基本部品ですが、選び方を誤ると測定誤差や発熱、電圧降下が一気に大きくなります。
シャント抵抗とは、測定したい電流を小さな電圧に変換するため、回路へ直列に入れる低抵抗です。
オームの法則で電流を計算できる一方、抵抗値、定格電力、温度係数、実装方法を同時に見なければなりません。
本記事では、シャント抵抗の原理、低抵抗にする理由、ケルビン接続、ハイサイド測定、選定手順までを実務目線で解説します。実機トラブルを防ぎましょう。
- 1. シャント抵抗とは何か
- 2. 電流測定の原理:オームの法則で電圧から電流を求める
- 3. シャント抵抗が低抵抗である理由
- 4. 抵抗値・定格電力・温度係数の選び方
- 5. ケルビン接続:低抵抗測定で誤差を減らす方法
- 6. ハイサイド測定とローサイド測定の違い
- 7. 他の電流測定方式との違い
- 8. 実務での選定手順とよくある失敗
- 9. まとめ
1. シャント抵抗とは何か
シャント抵抗とは、電流測定のために使う低抵抗の部品です。
測りたい電流の経路へ直列に挿入し、そこに生じる電圧降下を読み取ります。
電流そのものを直接読むのではなく、電流に比例する電圧へ変換して測る考え方です。
このため、シャント抵抗は「電流を電圧へ変換する検出抵抗」と見ると理解しやすくなります。
抵抗値は一般的な制限抵抗よりかなり小さく、ミリオーム級がよく使われます。
低抵抗であるほど、測定対象の回路に与える影響を小さくできます。
一方で、発生する電圧も小さくなるため、増幅回路やA/D変換との組み合わせが重要です。
シャント抵抗は単独で完結する部品ではなく、測定回路全体の入口にあるセンサ部品です。
電源、モーター、バッテリー、インバーター、充電器など、電流を制御したい機器で広く使われます。
電流を把握できれば、出力制限、過電流保護、電池残量推定、異常検出に利用できます。
シャント抵抗の役割は、回路に流れる電流を、扱いやすい電圧信号として取り出すことです。
電流検出用の低抵抗
シャント抵抗は、通常の抵抗器と同じく電気の流れを妨げる部品です。
ただし目的は、電流を制限することではなく、電流を測定することにあります。
電流が抵抗を通ると、抵抗値に比例した電圧が両端に現れます。
抵抗値が既知であれば、この電圧から電流を逆算できます。
たとえば、 の抵抗に
が流れると、電圧降下は
です。
このような小さな電圧を測り、必要に応じて増幅して利用します。
シャント抵抗は、電流を「見える形」に変換する小さな物差しといえます。
分流抵抗と電流検出抵抗の違い
シャントという言葉には、もともと「分流」や「迂回」という意味があります。
古典的な電流計では、メーター本体に流せる電流が小さいため、並列の分流抵抗に大部分の電流を逃がしました。
この意味では、シャント抵抗は電流計を保護し、測定範囲を広げるための部品でした。
現在の電子回路では、測定対象の電流経路に低抵抗を直列に入れる使い方が一般的です。
この場合は、電流の一部を逃がすというより、電流を電圧に変換する検出抵抗として使います。
どちらも「電流測定に使う低抵抗」という点では共通しています。
実務では、文脈に応じて分流抵抗、電流検出抵抗、シャント抵抗という言葉が使い分けられます。
| 呼び方 | 主な使い方 | 考え方 |
|---|---|---|
| 分流抵抗 | 電流計と並列に入れる | 電流を分けて測定範囲を広げる |
| 電流検出抵抗 | 回路へ直列に入れる | 電流を電圧に変換する |
| シャント抵抗 | 両方の意味で使われる | 低抵抗で電流測定に使う |
2. 電流測定の原理:オームの法則で電圧から電流を求める
シャント抵抗による電流測定は、非常に単純な原理で成り立ちます。
抵抗に電流が流れると、オームの法則に従って電圧降下が発生します。
この電圧降下を測り、抵抗値で割れば電流を求められます。
基本式は次のとおりです。
ここで はシャント抵抗の両端電圧、
は測定したい電流です。
は、シャント抵抗の抵抗値を表します。
式そのものは、オームの法則とは何かと同じです。
ただし、シャント抵抗では発生電圧が小さいため、測り方に工夫が必要になります。
大電流を扱うほど、抵抗値を小さくして電圧降下と発熱を抑えます。
小電流を扱うほど、抵抗値をある程度大きくして測定電圧を確保します。
シャント抵抗を直列に入れる理由
電流を正しく測るには、測りたい電流がすべてシャント抵抗を通る必要があります。
そのため、シャント抵抗は測定対象の経路へ直列に挿入します。
電圧計のように並列に当てるだけでは、電流そのものは測れません。
直列に入れることで、負荷へ流れる電流とシャント抵抗へ流れる電流が同じになります。
この「同じ電流が流れる」という条件が、式の前提になります。
ただし直列に部品を入れる以上、回路に余分な電圧降下を作ります。
この電圧降下はバーデン電圧とも呼ばれ、測定によって回路へ与える負担を意味します。
測定したいからといって大きな抵抗を入れると、負荷に届く電圧が下がります。
そのため、測定精度と回路への影響のバランスで抵抗値を決めます。
微小電圧を増幅して読み取る
シャント抵抗の両端電圧は、数ミリボルトから数十ミリボルト程度になることが多いです。
マイコンのA/D変換器に直接入れるには、小さすぎる場合があります。
そこで、オペアンプや電流検出アンプで差動電圧を増幅します。
増幅後の電圧をA/D変換すれば、ソフトウェアで電流値に換算できます。
この流れは、電流を電圧に変え、電圧をデジタル値に変える二段構成です。
アナログ値をデジタル値へ変える考え方は、A/D変換とは何かと深く関係します。
高精度測定では、アンプのオフセット電圧や入力バイアス電流も誤差になります。
シャント抵抗だけでなく、アンプとA/D変換器まで含めて精度を見積もる必要があります。
計算例:10Aを50mVで測る
最大 の電流を、シャント電圧
で測りたいとします。
必要な抵抗値は、次のように求めます。
つまり、 のシャント抵抗を選べばよい計算です。
このときの発熱は、次の式で確認します。
定格 ちょうどの部品を選ぶと、実使用では余裕が足りません。
周囲温度、基板の放熱、連続通電時間を考え、より大きい定格を選ぶのが安全です。
電力損失の考え方は、電力と電力量とは何かを理解しておくと整理しやすくなります。
| 条件 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 最大電流 | 10A | 測定したい上限電流 |
| 目標電圧 | 50mV | アンプで扱いやすいシャント電圧 |
| 抵抗値 | 5mΩ | 50mV ÷ 10Aで決まる値 |
| 発熱 | 0.5W | 連続通電時の電力損失 |
関連記事
3. シャント抵抗が低抵抗である理由
シャント抵抗は、あえて非常に小さな抵抗値で作られます。
理由は大きく二つあります。
一つは、測定対象の回路に与える電圧降下を小さくするためです。
もう一つは、電流による発熱と電力損失を小さくするためです。
電流測定のために入れた部品が、回路の動作を変えてしまっては意味がありません。
シャント抵抗は「存在を感じさせずに測る」ことが求められます。
しかし、抵抗値を下げすぎると測定電圧が小さくなり、ノイズやオフセット誤差の影響を受けやすくなります。
したがって、シャント抵抗の選定は、低ければ低いほどよいという単純な話ではありません。
回路への影響、発熱、測定分解能、ノイズ余裕のバランスで決めます。
電圧降下を小さくする
シャント抵抗に電流が流れると、必ず電圧降下が発生します。
この電圧は測定には必要ですが、負荷から見ると失われた電圧です。
たとえば、 のモーター回路で
も落ちると、駆動条件が変わってしまいます。
負荷に届く電圧が下がれば、出力、効率、応答が変化する可能性があります。
バッテリー駆動機器では、わずかな損失でも動作時間に影響します。
このため、大電流回路では特に低い抵抗値を選びます。
ただし、電圧降下を小さくしすぎると測定信号も小さくなります。
実務では、最大電流時に から
程度を目安にする設計が多くあります。
どの電圧にするかは、損失の許容値とアンプの性能で決まります。
発熱と電力損失を抑える
シャント抵抗の発熱は、 で決まります。
電流が二倍になると、発熱は四倍になります。
この性質により、大電流測定では抵抗値のわずかな違いが大きな熱差になります。
を
で測ると、発熱は
です。
同じ電流を で測れば、発熱は
になります。
この差は、部品サイズ、基板温度、放熱構造に直結します。
発熱が大きいと抵抗値も温度で変化し、測定精度が悪化します。
したがって、シャント抵抗の熱設計は、単なる信頼性だけでなく精度にも関係します。
測定電圧とのトレードオフ
抵抗値を下げるほど、電圧降下と発熱は小さくできます。
しかし、測定できる電圧も小さくなります。
測定電圧が小さいと、アンプのオフセット電圧、ノイズ、A/D変換の分解能が効いてきます。
たとえば の信号を測る回路で、アンプのオフセットが
あると、誤差は無視できません。
一方、 の信号なら、同じオフセットの影響は相対的に小さくなります。
このため、シャント抵抗の値は「低損失」と「十分な信号レベル」の妥協点になります。
測定精度を上げたいなら、低オフセットの電流検出アンプを使い、シャント抵抗は必要最小限まで下げます。
低コストで簡単に測りたいなら、ある程度大きな抵抗値にして電圧を稼ぐ選択もあります。
シャント抵抗の抵抗値は、電圧降下、発熱、測定分解能の三つを同時に満たすように決めます。
4. 抵抗値・定格電力・温度係数の選び方
シャント抵抗の選定では、最初に抵抗値を決めます。
次に、最大電流時の発熱を計算し、定格電力に十分な余裕があるか確認します。
さらに、温度で抵抗値がどれだけ変わるかを見ます。
高精度用途では、抵抗値の初期精度だけでなく、温度係数と長期安定性も重要です。
部品単体のスペックだけでなく、基板に実装した状態での温度上昇も考える必要があります。
シャント抵抗は電流が集中する部品なので、プリント基板の銅箔も放熱経路になります。
小さなチップ抵抗で大電流を測る場合、はんだ部やランド形状が温度分布に影響します。
抵抗値が合っていても、熱設計が不十分なら、測定値は安定しません。
Step 1:最大電流から目標電圧を決める
まず、測定したい最大電流 を決めます。
次に、最大電流時のシャント電圧 を決めます。
この電圧は、アンプやA/D変換器が扱いやすく、かつ回路への負担が小さい値にします。
目標電圧が決まれば、抵抗値は で求められます。
たとえば最大 を
で測るなら、必要な抵抗値は
です。
小電流を測る場合は、より大きな抵抗値を使って電圧を確保できます。
大電流を測る場合は、発熱を抑えるために低い抵抗値を選びます。
Step 2:定格電力に余裕を持たせる
抵抗値が決まったら、最大電流時の消費電力を計算します。
この値が、シャント抵抗の定格電力を下回る必要があります。
ただし、定格電力は標準試験条件での値であり、実際の基板条件とは異なる場合があります。
周囲温度が高い、通電時間が長い、銅箔面積が小さいと、実効的な余裕は小さくなります。
そのため、計算値ぎりぎりの定格を選ぶのは避けます。
連続通電では、発熱計算値に対して十分なディレーティングを取るのが基本です。
短時間パルス電流を扱う場合は、パルス耐量も別途確認します。
Step 3:温度係数と精度を見る
シャント抵抗の測定精度は、抵抗値の公差だけでは決まりません。
温度係数、熱起電力、経年変化、はんだ接合部の影響も関係します。
温度係数は、温度が変わったときに抵抗値がどれだけ変化するかを示す値です。
TCRと呼ばれ、 で表されます。
発熱でシャント抵抗が 上昇する場合、TCRの影響は無視しにくくなります。
たとえば なら、
で約
の変化になります。
高精度用途では、低TCR品や4端子品を選ぶ価値があります。
抵抗器の種類や定格の見方は、抵抗器とは何かも参考になります。
| 項目 | 確認する内容 | 設計上の注意 |
|---|---|---|
| 抵抗値 | 最大電流時の電圧降下 | 小さすぎると信号が埋もれる |
| 定格電力 | 連続通電では余裕を取る | |
| 温度係数 | 温度による抵抗値変化 | 自己発熱による誤差に注意する |
| 抵抗値公差 | 初期抵抗値のばらつき | 校正の有無で必要精度が変わる |
| 端子構造 | 2端子か4端子か | 低抵抗ほどケルビン接続が重要 |
関連記事
5. ケルビン接続:低抵抗測定で誤差を減らす方法
シャント抵抗の精度を大きく左右するのが、配線と実装です。
低抵抗を測るときは、部品本体だけでなく、はんだ、銅箔、端子、ビアの抵抗も無視できません。
たとえば のシャント抵抗に対して、配線抵抗が
あると、それだけで一割級の誤差になり得ます。
普通に二端子で電圧を測ると、シャント抵抗以外の電圧降下まで一緒に拾います。
この誤差を避けるために使うのが、ケルビン接続です。
ケルビン接続では、電流を流す経路と、電圧を測る経路を分けます。
電圧測定線にはほとんど電流が流れないため、配線抵抗による電圧降下を避けられます。
低抵抗の精密測定では、部品選定と同じくらい実装が重要です。
2端子測定で起きる誤差
2端子のシャント抵抗をそのまま測ると、電圧測定点に配線抵抗が含まれます。
電流が流れる銅箔やはんだには、わずかですが抵抗があります。
大電流が流れると、そのわずかな抵抗にも電圧降下が生じます。
電圧計やアンプがその電圧まで含めて読むと、実際より大きな電流として計算されます。
特にミリオーム以下のシャントでは、配線抵抗の比率が大きくなります。
このため、データシート上の抵抗値が高精度でも、基板での測定精度が出ないことがあります。
低抵抗部品は、部品だけを見て選んでも不十分です。
4端子品とケルビン配線
4端子のシャント抵抗は、電流端子と電圧検出端子が分かれています。
大電流は電流端子を通り、電圧検出は専用端子から取り出します。
この構造により、電流経路の端子抵抗やはんだ抵抗の影響を受けにくくなります。
2端子品でも、電圧検出線を抵抗体の近くから細く取り出せば、疑似的なケルビン接続ができます。
ただし、部品内部の構造まで制御できる4端子品のほうが、より安定した測定をしやすくなります。
高精度、大電流、低抵抗の三つが重なる用途では、4端子品を優先して検討します。
シャント抵抗の精度は、抵抗値の精度だけでなく、どこから電圧を拾うかで大きく変わります。
基板レイアウトで守るべき点
シャント抵抗周辺のレイアウトでは、大電流経路と検出線を分けます。
検出線は、左右の電圧検出点から差動ペアのように近接して引き出します。
大電流パターンの途中やランド外側から電圧を拾うと、銅箔の電圧降下を含みます。
スイッチング電源やモーター駆動では、パルス電流によるノイズも重なります。
そのため、検出線は大電流ループやスイッチングノードから離します。
必要に応じてローパスフィルタを入れますが、応答遅れとの兼ね合いを見ます。
ノイズ環境が厳しい場合は、差動入力の電流検出アンプをシャント抵抗の近くに配置します。
ノイズ対策の基本は、ノイズ対策とEMCとは何かにもつながります。
6. ハイサイド測定とローサイド測定の違い
シャント抵抗は、回路のどこに入れるかで性質が変わります。
代表的なのが、ハイサイド測定とローサイド測定です。
電源のプラス側にシャント抵抗を入れるのが、ハイサイド測定です。
負荷のグランド側にシャント抵抗を入れるのが、ローサイド測定です。
どちらも電流測定という目的は同じですが、検出できる異常や回路の難しさが異なります。
ローサイドは簡単で扱いやすい一方、グランド電位を持ち上げる欠点があります。
ハイサイドは回路が難しくなりますが、負荷の基準グランドを乱しにくい利点があります。
設計では、精度だけでなく安全性、異常検出、基準電位の影響を合わせて判断します。
ローサイド測定:簡単だがグランドが動く
ローサイド測定では、負荷とグランドの間にシャント抵抗を入れます。
シャント抵抗の一端がグランドに近いため、測定回路を作りやすいのが利点です。
一般的なオペアンプやA/D変換器でも扱いやすく、低コストに構成できます。
ただし、負荷のグランド側にはシャント電圧分の浮き上がりが生じます。
この浮き上がりが、他の信号の基準電位に影響することがあります。
また、負荷が電源側へ短絡した場合など、故障の種類によっては検出しにくい場合があります。
簡単さを優先できる低電圧回路では有効ですが、グランド基準が重要な回路では注意が必要です。
ハイサイド測定:負荷電流を正しく見やすい
ハイサイド測定では、電源と負荷の間にシャント抵抗を入れます。
負荷のグランドを動かさずに測定できるため、回路全体の基準電位を保ちやすくなります。
電源から流れ出る電流を直接見るため、負荷短絡や異常電流の検出にも向いています。
一方で、シャント抵抗の両端電圧は高い共通電圧に乗ります。
たとえば 電源のハイサイドで
を測る場合、測りたい差動電圧は小さく、共通電圧は大きくなります。
このため、広い同相入力範囲を持つ電流検出アンプが必要になります。
ハイサイド測定は、部品選定と絶縁・耐圧の確認が重要です。
どちらを選ぶかの判断基準
低コストで簡単に測るなら、ローサイド測定が候補になります。
負荷のグランドを正確に保ちたいなら、ハイサイド測定が向いています。
安全保護や短絡検出を重視する場合も、ハイサイド測定が有利です。
ただし、ハイサイドはアンプの同相入力範囲、耐圧、絶縁を確認する必要があります。
モーター制御では、ローサイド、ハイサイド、相電流検出を組み合わせる場合もあります。
電源回路では、出力電流監視と過電流保護の位置づけを決めてから配置を選びます。
基準電位の考え方には、キルヒホッフの法則とは何かの理解も役立ちます。
| 項目 | ローサイド測定 | ハイサイド測定 |
|---|---|---|
| 配置 | 負荷とグランドの間 | 電源と負荷の間 |
| 回路の簡単さ | 簡単に作りやすい | 同相電圧への対応が必要 |
| グランド影響 | 負荷グランドが浮く | 負荷グランドを保ちやすい |
| 異常検出 | 検出できない故障経路がある | 電源側の異常電流を見やすい |
| 主な用途 | 簡易測定、低電圧回路 | 電源監視、バッテリー、保護回路 |
7. 他の電流測定方式との違い
電流測定には、シャント抵抗以外にも複数の方法があります。
ホール素子、電流トランス、ロゴスキーコイル、クランプメーターなどです。
これらは磁界を利用して電流を検出するため、電気的に絶縁しやすい特徴があります。
一方、シャント抵抗は測定対象の回路へ直接つながる方式です。
絶縁はありませんが、構成が単純で直流も低周波も精度よく測れます。
どの方式が優れているかは、測りたい電流の種類、絶縁の必要性、周波数、コストで変わります。
シャント抵抗は万能ではありませんが、直流電流を高精度に測る用途では非常に強力です。
シャント抵抗の長所
シャント抵抗の最大の長所は、原理が単純で直線性がよいことです。
抵抗値が安定していれば、電流と電圧の関係はほぼ比例します。
直流電流を測りやすく、低周波から比較的高い周波数まで対応できます。
部品コストも比較的低く、回路規模を小さくできます。
バッテリー管理、電源装置、モーター駆動、過電流保護などで使いやすい方式です。
また、測定値が電圧として得られるため、制御ICやマイコンに取り込みやすい利点があります。
電流検出アンプと組み合わせれば、小さなシャント電圧でも高精度な信号にできます。
シャント抵抗の短所
シャント抵抗の短所は、測定対象の回路に直列に入ることです。
その結果、電圧降下と電力損失が必ず発生します。
大電流では発熱が大きくなり、部品サイズや放熱設計が問題になります。
また、測定回路と主回路が電気的につながるため、絶縁が必要な用途にはそのまま使いにくいです。
高電圧回路では、アンプの同相電圧範囲や安全規格も考えなければなりません。
高速スイッチング回路では、寄生インダクタンスや配線ノイズも誤差になります。
小さくて安い部品ですが、実装条件を軽視すると期待した精度は出ません。
ホール素子・クランプ式との使い分け
ホール素子を使う方式は、電流が作る磁界を検出します。
電気的に絶縁しやすく、大電流の測定にも向いています。
ただし、オフセットや温度ドリフト、磁気ノイズの影響を受けます。
クランプ式は、電線を挟むだけで測れるため、保全や現場点検に便利です。
一方で、基板上の制御回路へ常時組み込む用途では、シャント抵抗のほうが小型で安価です。
非接触で測りたい場合は、クランプメーターとは何かのような方式が向きます。
制御用に正確なフィードバックを取りたい場合は、シャント抵抗が有力です。
| 方式 | 得意な用途 | 注意点 |
|---|---|---|
| シャント抵抗 | 直流電流、高精度、低コスト | 発熱と絶縁なしに注意 |
| ホール素子 | 絶縁測定、大電流測定 | オフセットと温度ドリフトに注意 |
| 電流トランス | 交流電流、絶縁測定 | 直流は基本的に測れない |
| ロゴスキーコイル | 大電流パルス、広帯域 | 積分回路と校正が必要 |
| クランプ式 | 現場点検、非接触測定 | 小電流や高速制御には不向きな場合がある |
8. 実務での選定手順とよくある失敗
シャント抵抗の選定は、抵抗値だけを見て決めると失敗します。
最大電流、目標電圧、発熱、温度係数、実装、アンプの性能を順番に確認します。
特に多い失敗は、定格電力ぎりぎりの部品を選んでしまうことです。
計算上は壊れなくても、温度上昇で抵抗値が変わり、測定値がずれる場合があります。
もう一つ多いのは、2端子品を普通に配線して、配線抵抗まで測ってしまうことです。
低抵抗になるほど、部品よりレイアウトの影響が大きくなります。
シャント抵抗は、部品選定と基板設計を一体で考える必要があります。
選定チェックリスト
最初に、測定したい電流範囲を決めます。
通常電流だけでなく、起動電流、突入電流、短絡時電流も確認します。
次に、最大電流時のシャント電圧を決め、抵抗値を計算します。
その抵抗値で発生する電力損失を計算し、部品の定格電力と温度上昇を確認します。
精度が必要なら、抵抗値公差、TCR、熱起電力、4端子構造を確認します。
アンプ側では、入力オフセット、ゲイン誤差、同相入力範囲、帯域幅を見ます。
最後に、基板レイアウトでケルビン接続と放熱パターンを確保します。
| 順番 | 確認項目 | 判断内容 |
|---|---|---|
| 1 | 電流範囲 | 通常、最大、突入、異常電流を整理する |
| 2 | 目標電圧 | 損失と測定分解能の妥協点を決める |
| 3 | 抵抗値 | |
| 4 | 発熱 | |
| 5 | 精度 | 公差、TCR、熱起電力を見る |
| 6 | 実装 | ケルビン接続と放熱を確保する |
| 7 | アンプ | 同相電圧、オフセット、帯域を確認する |
失敗例①:抵抗値を大きくしすぎる
測定電圧を大きく取りたいからといって、抵抗値を大きくしすぎるのは危険です。
電圧降下が増えると、負荷に届く電圧が不足します。
モーターならトルクが落ち、電源回路なら効率が悪化します。
さらに、 による発熱が増えて、抵抗値の温度変化も大きくなります。
測りやすくするために抵抗を大きくした結果、測定対象を変えてしまうことがあります。
最大電流時の電圧降下が、回路動作に許容できるか必ず確認します。
大電流では特に、数十ミリボルトの電圧降下でも電力損失が無視できません。
失敗例②:アンプとA/D変換器の誤差を見ない
シャント抵抗が高精度でも、後段のアンプが粗ければ測定精度は出ません。
微小電圧を扱うため、アンプの入力オフセットは大きな誤差になります。
ゲイン誤差、ノイズ、同相信号除去比、帯域幅も確認が必要です。
特にハイサイド測定では、大きな同相電圧の上に小さな差動電圧が乗ります。
この条件に対応できないアンプを使うと、電流値が大きくずれます。
A/D変換器の分解能も重要です。
の変化を読みたいのに、A/D変換の最小刻みが大きければ意味がありません。
測定チェーン全体の誤差を足し合わせて、必要精度に届くか確認します。
失敗例③:実装でケルビン接続になっていない
回路図では4端子測定のつもりでも、基板で正しく配線されていないことがあります。
検出線をランドの外側から引き出すと、銅箔やはんだの抵抗が含まれます。
左右の検出線の取り回しが不対称だと、ノイズの拾い方も変わります。
大電流パターンの近くを長く引き回すと、スイッチングノイズが重畳します。
結果として、電流が一定でも測定値が揺れたり、温度でゼロ点がずれたりします。
部品の精度を活かすには、データシートの推奨ランドと電圧検出点を守る必要があります。
特にミリオーム級では、レイアウトそのものが測定器の一部になります。
インピーダンスや寄生成分の考え方は、インピーダンスとは何かとも関係します。
9. まとめ
シャント抵抗とは、電流測定のために回路へ直列に入れる低抵抗です。
電流が流れると小さな電圧降下が発生し、オームの法則から電流を求められます。
抵抗値は、最大電流時の目標電圧から で決めます。
発熱は で計算し、定格電力と温度上昇に余裕を持たせます。
低抵抗ほど、配線抵抗、はんだ抵抗、銅箔抵抗が誤差として効きます。
高精度測定では、電流経路と電圧検出線を分けるケルビン接続が重要です。
ローサイド測定は簡単ですが、負荷グランドが浮く点に注意します。
ハイサイド測定は負荷グランドを保ちやすい一方、同相電圧に対応できるアンプが必要です。
シャント抵抗は、直流電流を高精度かつ低コストで測れる強力な方法です。
ただし、絶縁が必要な場合や大電流で発熱が厳しい場合は、ホール素子やクランプ式も検討します。
実務では、抵抗値だけでなく、定格電力、TCR、公差、熱起電力、4端子構造、基板レイアウトまで含めて選定しましょう。