
「キュービクルの扉の裏に貼ってある、あの1本線の図面が読めない」
電気設備に関わり始めた人が最初に突き当たる壁、それが本記事のテーマである単線結線図です。
単線結線図とは、三相3線の電路をあえて1本の線で描き、受電から配電までの設備構成を一望できるようにした図面です。
図記号と機器略号、そして制御器具番号という3つの「言語」を覚えれば、単線結線図は誰でも読めるようになります。
本記事では、単線結線図の役割と他の図面との違いから、JIS C 0617の電気用図記号、JEM 1090の制御器具番号、受電設備の標準的な構成の読み方、点検・事故対応での実務活用までを、表を交えて体系的に解説します。
- 1. 単線結線図とは|設備の全体像を1枚で表す地図
- 2. 電気用図記号|JIS C 0617の基本
- 3. 制御器具番号|JEM 1090の数字を読む
- 4. 受電設備の単線結線図を上から読む
- 5. CB形とPF・S形|図面パターンの違いを読む
- 6. 実務での活用|図面を仕事の道具にする
- まとめ
1. 単線結線図とは|設備の全体像を1枚で表す地図
単線結線図とは、電力回路の接続を1本の線で簡略化して描いた系統図です。
スケルトン図、単結(たんけつ)とも呼ばれ、電気設備の最も基本となる図面です。
1-1. 三相3線を1本の線で描く
高圧受電設備の主回路は、三相3線式です。
本来なら3本の電線が並んで走っているはずですが、単線結線図ではこれを1本にまとめて描きます。
3本とも同じ機器を通り、同じ経路をたどるのだから、1本で代表させても構成は伝わる。
これが単線表現の発想です。
線の本数という情報を捨てる代わりに、図は劇的にシンプルになります。
受電点から変圧器、低圧の幹線まで、設備全体の骨格が1枚に収まるのです。
相数や線数を明示したい箇所には、斜線に数字を添えた表記(3φ3Wなど)を使います。
「省略はするが、必要な情報は記号で補う」という約束事で成り立っています。
例えるなら、単線結線図は鉄道の路線図です。
線路が複線か単線かではなく、駅(機器)のつながり方を伝えることに特化した地図なのです。
1-2. なぜ単線で描くのか|目的は構成の把握
単線結線図の目的は、設備の構成と系統を把握することにあります。
どこから受電し、どの保護装置を通り、どの変圧器でどの負荷へ配るのか。
この「電気の流れの全体像」を伝えるのに、配線1本1本の詳細は不要です。
むしろ詳細を描き込むほど、全体像は見えにくくなります。
単線結線図には、機器の種類・定格・接続順序という設計の本質だけが残されています。
だからこそ、設計検討・保安管理・事故対応のすべてで出発点になるのです。
電気主任技術者は、この図で保護協調や系統切り替えを考えます。
工事業者は、この図で作業範囲と停電範囲を確認します。
つまり単線結線図は、設備に関わる全員の共通言語です。
読めるかどうかで、現場での会話の解像度がまったく変わります。
1-3. 複線図・展開接続図との違い
電気図面には、単線結線図のほかにも種類があります。
役割の違いを整理しておきましょう。
| 図面の種類 | 描き方 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 単線結線図 | 電路を1本線で簡略化 | 設備構成・系統の把握 |
| 複線図(三線結線図) | 実際の線数どおりに描く | 結線作業・相順の確認 |
| 展開接続図(シーケンス図) | 制御回路を動作順に展開 | 制御動作の設計・解読 |
| 配置図・配線図 | 機器の位置と配線経路 | 施工・ケーブル敷設 |
複線図は、変圧器の結線やCTの極性など、相ごとの接続が問題になる場面で使います。
単線結線図が「何がつながっているか」なら、複線図は「どうつながっているか」です。
展開接続図は、リレーや接触器の制御回路を読み解くための図面です。
主回路の単線結線図とセットで、設備図書の中核をなします。
まず単線結線図で全体をつかみ、必要に応じて複線図・展開接続図へ降りていく。
この順序が、図面読解の正攻法です。
1-4. 誰がいつ使う図面なのか
単線結線図が活躍する場面を、具体的に挙げてみます。
最も日常的なのは、電気主任技術者による保安管理です。
月次点検では、図と現物を照らし合わせながら測定値を記録します。
年次点検の停電・復電操作は、単線結線図上で操作順序を確認しながら進めます。
事故時には、動作した保護装置を図上で特定し、事故範囲を推定します。
「どの遮断器が切れたか」を図に当てはめれば、原因箇所の見当がつくのです。
増設や改修の打ち合わせでも、議論の土台は常にこの図です。
電力会社との協議、消防・官庁への届け出にも添付されます。
設計から廃止まで、設備の一生に寄り添う図面だといえます。
「電気設備の履歴書」と呼ばれるゆえんです。
1-5. どこにあるか|図面の入手と保管
自社の単線結線図は、どこで見られるのでしょうか。
最も身近なのは、キュービクル受電箱の扉の裏側です。
JIS C 4620は、受電箱正面扉の裏面に接続図を備えることを定めています。
現場で図を確認できるよう、規格レベルで義務付けられているのです。
より詳細な図面は、竣工図書(完成図書)の中に綴じられています。
保安規程に基づく書類として、電気主任技術者または管理担当部署が保管しているはずです。
外部委託している事業場なら、委託先の電気管理技術者も写しを持っています。
「見たことがない」という場合は、まず委託先に確認してみてください。
図面がない・古いままという状態は、保安管理上の重大なリスクです。
本記事を読み終えたら、まず自社の単線結線図の所在と日付を確かめることをおすすめします。
単線結線図は、法定書類の世界でも主役級の存在です。
保安規程にもとづく点検記録の基礎資料となり、主要設備の変更時には電力会社との協議や官庁手続きの添付図書になります。
消防への届け出や、省エネ・再エネ関連の申請でも提出を求められることがあります。
「設備を説明する公式の1枚」として、社外との接点でも常に最初に出てくる図面なのです。
1-6. 単線結線図に描かれないもの
読図でつまずかないために、「この図に何が描かれていないか」も知っておきましょう。
単線結線図は主回路の構成図であり、多くの情報を意図的に省いています。
まず、制御回路の詳細は描かれません。
遮断器を引き外すコイルや補助接点の配線は、展開接続図の担当です。
機器の物理的な配置・寸法も対象外です。
キュービクル内のどこに何があるかは、機器配置図で確認します。
ケーブルの敷設ルートや端末処理、端子番号レベルの接続も別図面の領分です。
単線結線図に期待してよいのは、あくまで「系統としてのつながりと定格」です。
逆にいえば、必要な情報ごとに参照すべき図面が決まっています。
図面体系の役割分担を知ることが、図書を使いこなす第一歩です。
2. 電気用図記号|JIS C 0617の基本
単線結線図の第一の言語が、図記号です。
現在の図記号は、JIS C 0617(電気用図記号)に定められています。
2-1. JIS C 0617とは|国際規格と整合した現行記号
JIS C 0617は、IECの国際規格と整合した電気用図記号の規格です。
それ以前に使われていた旧規格(JIS C 0301)の記号を置き換える形で導入されました。
このため現場には、新旧2世代の記号が混在しています。
古い設備の竣工図は旧記号、新しい図面は新記号で描かれていることが多いのです。
たとえば抵抗の記号は、旧記号のギザギザ線から、新記号では長方形に変わりました。
遮断器や開閉器も、新旧で形が異なります。
実務では、両方の記号をある程度読めることが求められます。
「自社の図がどちらの世代か」を最初に確認すると、戸惑いが減ります。
なお、受変電分野では業界団体の作図慣行も根強く残っています。
規格を軸にしつつ、図面ごとの凡例(記号表)を必ず参照するのが安全です。
2-2. 開閉・遮断機器の記号
単線結線図の主役は、電路を入り切りする開閉・遮断機器です。
記号は、どれも「線が切れる場所」を図案化しています。
断路器(DS)は、回路を切り離すスイッチとして斜めの開閉線で表されます。
遮断器(CB)は、開閉線に遮断能力を示す装飾(×印など)を加えた記号です。
高圧交流負荷開閉器(LBS)は、開閉線に負荷開閉能力を表す要素を添えます。
限流ヒューズ(PF)は、線をまたぐ長方形で描かれ、LBSと組み合わせて表記されます。
低圧側の配線用遮断器(MCCB)や漏電遮断器(ELCB)も、それぞれ固有の記号をもちます。
同じ「切る」機器でも、能力の違いが記号の違いとして描き分けられているのです。
読図のコツは、記号の細部より「ここで電路を切れる」という機能をつかむことです。
開閉点の位置が分かれば、停電範囲の議論ができるようになります。
2-3. 変成器・計器の記号
次に重要なのが、電圧・電流を測るための変成器の記号です。
計器用変圧器(VT)は、変圧器と同様に2つの巻線(円の重なり)で表されます。
変流器(CT)は、主回路の線を貫く形の記号で描かれます。
零相変流器(ZCT)も同系の記号で、3相一括を貫通する点が特徴です。
電力需給用計器用変成器(VCT)は、取引計量用としてまとまった箱記号で示されることもあります。
その二次側に電力量計(Wh)がつながる構成まで含めて、計量部としてひとかたまりに読みます。
変成器の二次側には、電圧計・電流計や保護継電器がぶら下がります。
「測る系統」と「流す系統」を区別して眺めると、図がすっきり見えてきます。
計器の記号は、円の中に量記号(V・A・Whなど)を書き込む形が基本です。
切替スイッチ(VS・AS)を介して1台の計器を共用する構成も、定番として覚えておきましょう。
2-4. 変圧器・コンデンサ・避雷器の記号
電力を変換・補償する機器の記号も押さえます。
変圧器(T)は、2つの円が重なった記号、または2つのコイルで表されます。
高圧進相コンデンサ(SC)は、平行な2本線というコンデンサそのものの記号です。
直列リアクトル(SR)は、コイルの記号でコンデンサの電源側に直列に描かれます。
避雷器(LA)は、ギャップと接地を組み合わせた専用記号で表されます。
記号の下端が接地記号につながっていることが、避雷器の見分けポイントです。
接地記号そのものも、図のあちこちに登場します。
機器の外箱接地・系統の接地・避雷器の接地が、どこに集まっているかも読み取れる情報です。
変圧器記号の脇には、容量や結線方式(Δ・Y)が文字で添えられます。
記号と添え書きをセットで読むことが、機器仕様の正確な把握につながります。
2-5. 主要な機器と記号・略号の一覧
受電設備でよく登場する機器を、略号とあわせて一覧にします。
| 略号 | 機器名称 | 図上での役割 |
|---|---|---|
| PAS/UGS | 高圧(気中/地中)負荷開閉器 | 引込口の区分開閉・波及事故防止 |
| VCT | 電力需給用計器用変成器 | 取引計量(電力量計とセット) |
| DS | 断路器 | 点検時の切り離し |
| CB(VCB) | (真空)遮断器 | 主遮断装置・事故電流の遮断 |
| LBS+PF | 負荷開閉器+限流ヒューズ | PF・S形の主遮断装置 |
| VT/CT/ZCT | 計器用変圧器/変流器/零相変流器 | 電圧・電流・零相電流の変成 |
| OCR/GR・DGR | 過電流継電器/地絡(方向)継電器 | 事故の検出と引外し指令 |
| LA | 避雷器 | 雷サージの抑制 |
| T(Tr) | 変圧器 | 高圧から低圧への降圧 |
| SC/SR | 進相コンデンサ/直列リアクトル | 力率改善・高調波対策 |
| MCCB/ELCB | 配線用遮断器/漏電遮断器 | 低圧回路の保護 |
この表の機器が図中のどこにあるかを探すだけで、読図の練習になります。
キュービクルの標準構成については、本カテゴリのキュービクル解説記事もあわせて参照してください。
2-6. 相数・線式・電圧の表記ルール
記号とあわせて、図中の文字表記のルールも押さえておきます。
代表が、相数と線式を表す「3φ3W」のような表記です。
φ(ファイ)は相数、Wは線数を表します。
3φ3Wなら三相3線式、1φ3Wなら単相3線式、1φ2Wなら単相2線式です。
電圧は「6.6kV」「210-105V」のように、系統ごとに併記されます。
210-105Vという2段表記は、単相3線式の200V系と100V系を同時に示す書き方です。
周波数(50Hz・60Hz)も、図枠や受電部に明記されるのが通例です。
東西で周波数が異なる日本では、機器選定に関わる基本情報だからです。
こうした文字情報は、図記号よりも先に確認すべき設備の自己紹介です。
「何相・何線・何ボルト・何ヘルツ」を最初の10秒で読み取る癖をつけましょう。
3. 制御器具番号|JEM 1090の数字を読む
単線結線図の第二の言語が、機器に添えられた数字です。
この数字は制御器具番号と呼ばれ、JEM 1090という規格に定められています。
3-1. 制御器具番号とは何か
単線結線図を見ると、遮断器に「52」、継電器に「51」といった数字が添えられています。
これは適当な通し番号ではなく、機器の機能を表す世界共通語に近い番号体系です。
制御器具番号は、日本電機工業会の規格JEM 1090で規定されています。
1から99までの基本番号それぞれに、「この番号はこの機能の機器」という意味が割り当てられています。
たとえば52は交流遮断器、51は過電流継電器と決まっています。
図面・銘板・点検記録のどこで見ても、52は遮断器を指すのです。
米国のANSIデバイス番号と多くが共通しており、海外設備の図面にも応用が利きます。
番号を覚えることは、世界中の単線結線図への入場券を手に入れることに近いといえます。
すべて暗記する必要はありません。
受電設備に頻出する10個前後を押さえれば、実務の読図はほぼ困りません。
3-2. 受電設備でよく使う番号一覧
高圧受電設備で頻出する制御器具番号を表にまとめます。
| 番号 | 機器・機能 | 対応する略号の例 |
|---|---|---|
| 27 | 交流不足電圧継電器 | UVR |
| 51 | 交流過電流継電器 | OCR |
| 52 | 交流遮断器 | CB・VCB |
| 59 | 交流過電圧継電器 | OVR |
| 64 | 地絡過電圧継電器 | OVGR |
| 67 | 交流地絡方向継電器 | DGR |
| 89 | 断路器・負荷開閉器 | DS・LBS |
52と51のペアは、「遮断器とそれを動かす過電流継電器」という主保護の組み合わせです。
67と64は、地絡保護に関わる継電器として覚えておきます。
27(不足電圧)は、停電検出や非常用発電機の起動条件などに使われます。
番号から機能が浮かぶようになると、図面が一気に読みやすくなります。
3-3. 補助記号|51Gや52F1の読み方
基本番号には、補助記号が付くことがあります。
補助記号は、機能の細分や設置場所を表す追加情報です。
代表例が、地絡を表すGです。
51が過電流継電器なのに対し、51Gは地絡過電流継電器を意味します。
受電用とフィーダ(引出し回路)用を区別する数字や文字もあります。
たとえば52F1なら「フィーダ1番用の遮断器」、52Rなら「受電用遮断器」といった読み方です。
同じ番号の機器が複数ある設備では、この補助記号が個体の識別子になります。
操作指示や点検記録で「52F2を開放」と書けば、誤解の余地なく特定の遮断器を指せるのです。
補助記号の細かな付け方は、設備ごとの設計ルールにもよります。
図面の凡例で、その設備での約束事を確認する習慣をつけてください。
3-4. 海外図面とANSIデバイス番号
制御器具番号の知識は、海外設備の図面にもそのまま生きます。
JEM 1090の番号体系は、米国のANSI(IEEE)デバイス番号と多くが共通だからです。
52が遮断器、51が過電流継電器という割り当ては、ANSIでも同じです。
輸入設備や海外工場の単線結線図でも、番号から機能を推定できます。
ただし、細部には日米で差異もあります。
同じ番号でも定義の範囲が微妙に違うものがあるため、重要な判断では原典の規格定義に当たるのが確実です。
海外図面では、略号もIEC流(QFやKMなどの文字記号体系)が使われることがあります。
番号という共通項を足がかりに、略号の差異を凡例で埋めていく読み方が実践的です。
グローバルに設備を見る機会が増えた今、番号体系の価値はむしろ上がっています。
国内図面で鍛えた読図力は、世界中の現場で通用する財産になります。
3-5. 略号・番号・記号の三位一体で読む
ここまでの3つの言語は、図面上で重ねて使われます。
1つの機器に、図記号・文字略号・制御器具番号が同時に添えられるのです。
たとえば主遮断装置なら、遮断器の図記号に「VCB」と「52」が併記されます。
過電流継電器なら、継電器記号に「OCR」と「51」が並びます。
三者は同じものを別の角度から表しているだけです。
記号は「形と接続」、略号は「機器の種類」、番号は「機能の分類」を担います。
読図の練習では、3つを相互変換できるかをチェックすると効果的です。
「52って何の略号の機器?」「DGRの番号は?」と自問してみてください。
この三位一体が頭に入ると、初見の図面でも迷子になりません。
次章では、いよいよ実際の受電設備の図を上から下まで読み通します。
4. 受電設備の単線結線図を上から読む
準備が整ったので、6.6kV受電設備の標準的な単線結線図を読み通します。
原則はただ1つ、「電源側(上)から負荷側(下)へ」です。
4-1. 読み方の大原則|上から下へ、幹から枝へ
単線結線図は、ほぼ例外なく電源を上、負荷を下に描きます。
電力会社の配電線から始まり、下へたどるほど末端の負荷に近づく構図です。
まず図の最上部で、受電電圧と引込方式を確認します。
次に、主回路の幹線を1本の太い流れとして、最下部までざっとなぞります。
幹をつかんだら、枝分かれ(分岐)を順に見ていきます。
計器用の分岐、避雷器の分岐、コンデンサの分岐といった脇道は、2周目で拾えば十分です。
いきなり細部の記号を解読しようとすると、全体を見失います。
「幹を1本通してから枝を読む」が、迷わないための鉄則です。
このとき、開閉できる機器(89系・52系)の位置に印をつけながら読むと効果的です。
開閉点の並びが、その設備の停電操作の骨格そのものだからです。
4-2. 引込部|PAS・VCT・DSを読む
図の最上部、構内第1号柱のあたりから読み始めます。
最初に現れる機器が、PAS(柱上気中開閉器)またはUGS(地中線用開閉器)です。
PASは構内と電力会社系統の区分点で、地絡継電装置(GR)付きが標準です。
構内の事故を引込口で切り離し、配電線への波及事故を防ぐ門番として描かれます。
続いて、電力需給用計器用変成器(VCT)と電力量計が現れます。
ここが取引計量点で、電力会社の所有物と需要家設備の境界を示す重要なポイントです。
キュービクルに入ると、最初に断路器(DS・89)が置かれます。
点検時に主回路を確実に切り離すための機器で、図上では主遮断装置の手前に必ず確認できます。
避雷器(LA)は、DSの直後から分岐して接地へ落ちる形で描かれます。
「引込→区分開閉→計量→切り離し→雷保護」という流れを、まずはひとつなぎで覚えてください。
4-3. 主遮断装置と保護継電器の読み合わせ
引込部の次に現れるのが、設備の心臓部である主遮断装置です。
CB形なら、遮断器(52・VCB)を中心とした保護のかたまりを読み取ります。
遮断器の電源側には、変流器(CT)が主回路を貫く形で描かれます。
CTの二次側から過電流継電器(51・OCR)が引き出され、OCRから遮断器へ引外しの矢印(制御線)が伸びます。
この「CT→51→52」のつながりが、過電流保護の一筆書きです。
同様に、零相変流器(ZCT)→地絡方向継電器(67・DGR)→遮断器が、地絡保護の一筆書きになります。
計器用変圧器(VT)は、主回路から分岐して電圧計や継電器の電源に向かいます。
測る系統(細線)と流す系統(太線)を区別して描き分けている図面も多くあります。
保護の一筆書きが読めると、「何を検出して、何が切れるのか」が図から分かります。
これこそが、事故対応で最も役立つ読図スキルです。
4-4. 変圧器回路とコンデンサ回路
主遮断装置の負荷側では、母線から各回路が分岐します。
中心になるのは、変圧器回路と進相コンデンサ回路です。
変圧器回路では、一次側の開閉器(LBSや高圧カットアウト)と保護ヒューズをまず確認します。
続いて変圧器本体の記号に添えられた、容量(kVA)・電圧・結線方式を読み取ります。
電灯用の単相変圧器と、動力用の三相変圧器が並んでいるのが典型的な構成です。
どの変圧器がどの低圧系統を受け持つかが、この部分の読みどころです。
進相コンデンサ回路は、開閉器→直列リアクトル(SR)→コンデンサ(SC)の順に描かれます。
SRの「6%」という添え書きは、高調波対策のリアクタンス比を表しています。
コンデンサの容量(kvar)は、設備全体の力率改善能力を示す数字です。
力率と無効電力の考え方は、力率の記事で確認できます。
4-5. 低圧側|配電盤と幹線の読み方
変圧器の二次側から下は、低圧の世界です。
図の下段には、低圧主幹と分岐回路のブレーカー群が並びます。
変圧器直下の主幹MCCBには、定格電流と遮断容量(kA)が添えられています。
この遮断容量が変圧器の%Zから計算した短絡電流以上であることは、図面チェックの定番項目です。
主幹の下に、動力盤・電灯盤へ向かう幹線が分岐します。
幹線ごとに、ケーブルの種類・サイズ(sq)・こう長が記載されるのが丁寧な図面です。
電灯系は単相3線式(1φ3W)、動力系は三相3線式(3φ3W)の表記で区別されます。
漏電遮断器(ELCB)の設置回路と感度電流も、安全管理上の重要情報です。
低圧側まで読み通せば、受電から末端までの旅は完了です。
「6.6kVで受けて、210V/105Vに変えて、どの盤に配る」という物語が、1枚から立ち上がってきます。
4-6. 受電方式による図の違い
ここまで標準的な1回線受電を前提に読んできましたが、受電方式にはバリエーションがあります。
図の最上部の形が、設備の信頼性設計を物語ります。
最も一般的なのは、配電線1回線から受ける1回線受電です。
図の頂点には引込線が1本だけ描かれ、中小規模設備のほとんどがこの形です。
停電が許されない設備では、本線・予備線受電が採用されます。
図の頂点に2本の引込線が並び、切替用の開閉器を介して母線につながる形になります。
さらに大規模では、ループ受電やスポットネットワーク受電といった方式もあります。
引込が複数になるほど、図の上部は複雑に、設備の信頼性は高くなります。
図の頂点を見れば、その事業所が停電リスクをどう設計したかが分かります。
受電方式の確認は、BCP(事業継続計画)の検討材料としても価値があります。
4-7. 接地系統の読み方
主回路の流れとあわせて読み取りたいのが、接地の系統です。
単線結線図には、接地工事の種別(A種〜D種)が接地記号とともに示されます。
高圧機器の外箱や避雷器の接地は、A種接地工事です。
避雷器の接地は雷電流を逃がす重要経路なので、専用の表記で区別されます。
変圧器の低圧側に描かれる接地は、B種接地工事です。
高圧と低圧の混触から低圧側を守る系統接地で、単相3線式なら中性線に施されます。
低圧機器の外箱接地は、使用電圧に応じてC種・D種接地工事と表記されます。
図上で「どの機器が・どの種別で・どこに落ちているか」を拾えば、接地設計の全体像がつかめます。
接地は事故時にだけ働く、見えない安全網です。
図で系統を把握しておくことが、接地抵抗測定や改修時の判断を支えます。
5. CB形とPF・S形|図面パターンの違いを読む
受電設備の単線結線図には、主遮断装置の形式による2大パターンがあります。
CB形とPF・S形、それぞれの図の特徴を押さえます。
5-1. CB形の図面パターン
CB形は、遮断器(52)を主遮断装置とする形式です。
図面では、DS→CT→VCB→母線という縦の並びが背骨になります。
保護継電器は、OCR(51)とDGR(67)が標準セットです。
CTとZCTからそれぞれ継電器へ、継電器から遮断器へと制御の線がつながります。
VTが母線または遮断器電源側から分岐し、計器と継電器の電圧源になります。
計器類(V・A・W・Whなど)が切替スイッチとともにまとまって描かれるのも特徴です。
受電設備容量4,000kVAまで対応できる形式だけに、回路数も多くなりがちです。
フィーダごとの遮断器(52F系)が母線から並列にぶら下がる構図を覚えてください。
図が複雑に見えても、保護の一筆書き(CT→51→52)は共通です。
背骨と一筆書きを先に拾えば、CB形の図は必ず読み解けます。
5-2. PF・S形の図面パターン
PF・S形は、限流ヒューズ(PF)と高圧交流負荷開閉器(LBS)の組み合わせを主遮断装置とする形式です。
図面は、CB形に比べて格段にシンプルになります。
背骨は、DS(またはLBSが断路機能を兼任)→PF付きLBS→変圧器という短い並びです。
OCRやCTによる過電流保護の一筆書きは登場しません。
短絡保護はヒューズの溶断が直接担うため、継電器の制御線が不要なのです。
地絡保護は、ZCT+GRからLBSの引外しへつながる線として描かれます。
ヒューズ記号に添えられた定格電流の選定が、この形式の保護設計の核心です。
変圧器容量との組み合わせ表に基づく選定値が、図面に反映されています。
受電設備容量300kVA以下の小規模設備で採用される形式です。
「小さな設備の図はPF・S形かも」という予備知識が、初見の理解を早めます。
5-3. 2つの形式を図で見分けるポイント
CB形かPF・S形かは、図面を数秒眺めれば判別できます。
見分けポイントを整理しましょう。
| 着眼点 | CB形 | PF・S形 |
|---|---|---|
| 主遮断装置の記号 | 遮断器(52・VCB) | ヒューズ付き負荷開閉器(PF+LBS) |
| 過電流保護 | CT+OCR(51)の一筆書きあり | ヒューズのみ(継電器なし) |
| 図の規模感 | 回路数が多く複雑 | シンプルで縦に短い |
| 設備容量の目安 | 300kVA超〜4,000kVA | 300kVA以下 |
最初に主遮断装置の記号を見る、それだけで形式は判別できます。
形式が分かれば、その先に続く構成の予測がつき、読図速度が上がります。
異動先や訪問先の設備でまず単線結線図を見る習慣は、保全技術者の基本動作です。
形式・容量・回路数という設備の素性が、挨拶代わりに頭に入ります。
5-4. 定格値の読み方|数字に宿る設計意図
記号の脇に添えられた数字には、設計者の意図が詰まっています。
代表的な定格値の読みどころを挙げます。
遮断器の定格遮断電流(12.5kAなど)は、受電点の短絡電流以上である必要があります。
系統の短絡容量に対する備えが、この1つの数字に表れています。
CTの変流比(75/5Aなど)は、負荷電流の大きさと計器・継電器の定格を結ぶ換算率です。
OCRの整定値とセットで、保護協調の検討材料になります。
変圧器の容量と%Zは、低圧側の短絡電流計算の出発点です。
低圧主幹MCCBの遮断容量がそれに見合っているかを、図上で突き合わせできます。
数字が読めるようになると、単線結線図は「絵」から「設計書」に変わります。
短絡電流と保護協調の考え方は、本カテゴリの短絡と地絡の解説記事で詳しく扱っています。
5-5. 計算例|変流比とOCR整定値を一次側に換算する
定格値の読み方を、簡単な計算で体験してみます。
CTの変流比が50/5A、OCRの限時要素タップが3Aに整定された図を考えます。
変流比50/5Aは、一次側50Aが二次側5Aに変換されるという意味です。
変換の倍率は50÷5=10倍になります。
OCRタップ3Aは二次側の値なので、一次側に換算すると3×10=30Aです。
つまりこの設備は、主回路に30Aを超える電流が続くと限時要素が動作を始める設計だと読めます。
瞬時要素が30A(二次側)に整定されていれば、一次換算で300Aです。
これは短絡級の大電流を遅滞なく遮断するための設定だと解釈できます。
このように、図中の3つの数字(変流比・タップ・瞬時値)から保護の輪郭が計算できます。
自社の図で同じ換算をしてみると、定格と負荷の余裕まで見えてきます。
5-6. 図面とシーケンス図の連携読み
単線結線図で主回路をつかんだら、制御の詳細は展開接続図(シーケンス図)で追います。
2つの図面は、機器略号と制御器具番号で結ばれています。
単線結線図で「67→52」の引外し関係を見つけたら、シーケンス図で同じ52の制御回路を探します。
そこには、引外しコイルや補助接点(52a・52b)を使った具体的な回路が描かれています。
52aは遮断器が入っているとき閉じる接点、52bは切れているとき閉じる接点です。
番号+a/bという表記は、シーケンス図を読む共通ルールになっています。
「単線結線図で当たりをつけ、シーケンス図で確かめる」のが両図面の連携読みです。
制御回路側の読み方は、シーケンス制御の解説記事を足がかりにしてください。
6. 実務での活用|図面を仕事の道具にする
読めるようになった単線結線図を、実務でどう使うか。
代表的な活用場面と、図面管理の要点をまとめます。
6-1. 停電・復電操作の手順検討
年次点検などの停電作業では、操作手順書を単線結線図から起こします。
原則は「停電は負荷側から、復電は電源側から」です。
停電時は、低圧の分岐→低圧主幹→変圧器一次→主遮断装置→DS→PASの順に切っていきます。
負荷電流が流れた状態で断路器を開くことがないよう、順序が組まれています。
復電時はその逆順で、電源側から順に投入します。
各ステップで「どの機器を・誰が・どう確認して」操作するかを、図上の略号・番号で指定します。
操作禁止札をかける位置や、検電・接地の実施箇所も図面上で計画します。
単線結線図は、停電作業の安全を支える台本なのです。
手順書と図面のセットを毎年使い回すのではなく、設備変更の反映を必ず確認してください。
図と現物の食い違いは、操作ミスの温床になります。
6-2. 事故時の切り分けに使う
停電事故の発生時、単線結線図は原因究明の地図になります。
出発点は「どの保護装置が動作したか」です。
動作表示(ターゲット)が出た継電器を図上で特定すれば、検出した事故の種類が分かります。
51なら過電流系、67なら構内の地絡系という切り分けです。
次に、動作した遮断器より負荷側の範囲を図でなぞります。
その範囲こそが事故点の候補であり、絶縁測定などの調査対象になります。
PASが動作していれば引込ケーブルを含む構内全体、フィーダの52F1なら1番回路だけ、と範囲の絞り込みが一気に進みます。
図がなければ、この推理は成り立ちません。
事故対応の速さは、平時にどれだけ図を読み込んでいたかで決まります。
「自社の図で事故シナリオを3つ想定してみる」のは、優れた机上訓練です。
6-3. 増設・改修時の検討資料として
設備の増設や更新でも、検討は単線結線図から始まります。
新しい負荷を「図のどこにつなぐか」が最初の論点です。
変圧器の容量に余裕はあるか、低圧主幹・幹線の定格は足りるか。
図に記載された容量・定格値が、可否判断の一次資料になります。
高圧機器の増設なら、受電設備容量の変化が形式(CB形・PF・S形)や契約に影響します。
保護協調やヒューズ定格の再検討も、図をベースに行われます。
工事業者やメーカーへの見積もり依頼にも、現状の単線結線図を添えるのが通例です。
正確な図面が1枚あるだけで、見積もり精度と打ち合わせ効率が大きく変わります。
改修後は、変更箇所を反映した改訂版を必ず作成します。
改訂履歴と日付の管理までが、図面を使う者の責任です。
6-4. 図面の最新化と管理ルール
単線結線図は、現物と一致していて初めて価値をもちます。
ところが実際の現場では、図と現物の不一致が珍しくありません。
小さな改修の積み重ねが反映されないまま、図だけが古くなっていくのです。
「図ではヒューズ30Aなのに現物は40A」といった食い違いは、保安上の地雷になります。
対策は、変更管理のルール化に尽きます。
電気設備に手を入れる工事には、図面改訂までをセットで発注・検収するルールを徹底します。
年次点検のタイミングで、図と現物の照合を行うのも実効的です。
機器の銘板と図の記載(定格・変流比・整定値)を突き合わせ、相違をリスト化します。
照合の観点はチェックリスト化しておくと、毎年同じ品質で実施できます。
主遮断装置の形式と定格遮断電流、変圧器の容量と%Z、CT変流比と継電器整定値、ヒューズの定格電流、接地種別、そして図面の改訂日が定番の項目です。
とくに継電器の整定値は、試験のたびに現場で変更され得る情報です。
整定変更の記録が図面・整定値リストへ反映される流れまで、ルールとして決めておきましょう。
図面の保管は、原本・現場掲示・データの3点を同期させます。
キュービクル扉裏の図が最新版と一致しているかも、忘れずに確認してください。
6-5. 読図力を鍛えるトレーニング
単線結線図の読図力は、練習で確実に伸びます。
おすすめの進め方を紹介します。
第一歩は、自社(または身近な設備)の図を1枚、徹底的に読み込むことです。
本記事の読み方で幹と枝をなぞり、すべての記号・略号・番号を特定してみます。
次に、図を見ながら現物のキュービクルを見学します。
「図のこの記号が、この機器」という対応づけが、知識を体験に変えてくれます。
第三段階は、白紙への模写です。
何も見ずに自社の単線結線図を描ければ、設備の構成は完全に頭に入っています。
電験などの資格学習でも、単線結線図は頻出テーマです。
実務の図面と試験問題を行き来すると、双方の理解が深まります。
読図は、語学と同じで「読んだ量」がものを言います。
機会を見つけては他社・他現場の図面にも触れ、パターンの引き出しを増やしてください。
まとめ
本記事では、電気設備の全体像を1本線で表す「単線結線図」について、複線図・展開接続図との役割の違いから、JIS C 0617の電気用図記号、JEM 1090の制御器具番号(51=過電流継電器・52=遮断器・67=地絡方向継電器など)、6.6kV受電設備を上から下へ読み通す手順、CB形とPF・S形の図面パターンの見分け方、停電操作・事故対応・図面管理といった実務活用までを体系的に解説しました。
読図の鉄則は「電源側から負荷側へ、幹から枝へ」、そして保護の一筆書き(CT→51→52)をつかむことです。
図記号・機器略号・制御器具番号の三位一体を覚えれば、初見の図面でも設備の素性を読み取れます。
図面は現物との一致が命であり、変更管理と定期照合が保安の土台になります。
単線結線図が読めることは、電気設備に関わる技術者の共通パスポートです。
まずはキュービクル扉裏の1枚から、本記事の手順で読み通してみてください。