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細長比とは?座屈と限界荷重の計算

「細い柱は、材料そのものが壊れる前に、横にぐにゃりと曲がってしまうのはなぜだろう」と考えたことはないでしょうか。

強度の計算では引張や圧縮の応力ばかりに目が向きがちですが、細長い柱では座屈というまったく別の壊れ方に注意が必要です。

細長比とは、柱がどれだけ細長いかを1つの数値で表す指標で、この値が大きいほど座屈で壊れやすくなります。

細長比を計算すれば、その柱がどのくらいの圧縮荷重で座屈してしまうのかを、あらかじめ見積もることができます。

本記事では、細長比の意味から座屈との関係、計算式、限界荷重の求め方、そして設計のコツまでを順番に解説します。

 

 

1. 細長比とは:柱の細長さを表す指標

細長比とは、柱の長さと断面の大きさの比から求められる、柱がどれだけ細長いかを表す指標のことです。

同じ材料でできた柱であっても、細長比が大きいほど座屈しやすく、小さいほど座屈しにくくなります。

長さや断面の単位を割り算で打ち消すため、細長比そのものは単位を持たない無次元の数値になります。

細長比が表すもの

細長比は、柱の座屈のしやすさを1つの数値にまとめて表したものだと考えると分かりやすくなります。

長くて細い柱ほど細長比は大きくなり、反対に短くて太い柱ほど細長比は小さくなります。

たとえば、同じ太さなら長い柱のほうが、同じ長さなら細い柱のほうが座屈しやすくなります。

この座屈のしやすさを、柱の長さと断面の関係から数値として表したものが細長比です。

身近に見られる座屈の例

座屈は特別な現象ではなく、私たちの身のまわりでもよく目にすることができます。

細いストローを両端から押すと、途中で折れ曲がってしまうのは座屈の一例です。

空き缶を上から踏みつぶしたときに、側面がぐしゃりとへこむのも座屈の一種です。

こうした身近な例を思い浮かべると、細長比と座屈の関係がイメージしやすくなります。

座屈との深い関係

細長比がとくに重要になるのは、圧縮を受ける柱の座屈について考えるときです。

座屈とは、圧縮された細長い柱が、材料の強度に達する前に横へ曲がってしまう現象のことです。

細長比が大きい柱では、この座屈が圧縮による破壊よりも先に起こってしまいます。

このため、細長い柱の設計では、強度だけでなく細長比による座屈の確認が欠かせません。

無次元の指標である

細長比は、座屈長さを断面二次半径で割って求めるため、長さどうしの比という形になります。

長さを長さで割ることになるので、細長比は単位を持たない無次元の数値になります。

無次元であるため、材料や寸法が違う柱どうしでも、座屈のしやすさを同じ尺度で比べられます。

この比べやすさが、細長比を柱の設計で広く使う大きな理由になっています。

柱の状態 細長比 座屈のしやすさ
長くて細い 大きい 座屈しやすい
短くて太い 小さい 座屈しにくい
中くらい 中くらい 条件で判断する

 

2. 座屈とは何か

細長比を理解するには、まず座屈という現象そのものについて知っておく必要があります。

ここでは、座屈がどのように起こり、なぜ危険なのかを順番に見ていきます。

圧縮で横に曲がる現象

座屈とは、まっすぐな柱を上下から圧縮したときに、柱が横方向へ急に曲がってしまう現象です。

細い物差しの両端を手で押すと、途中でたわんで横へ曲がる様子を思い浮かべると分かりやすいでしょう。

座屈が起こると柱は本来の役目を果たせなくなり、構造全体が一気に崩れてしまうこともあります。

このため、圧縮を受ける細長い部材では、座屈を防ぐことがとても重要になります。

細い柱ほど起こりやすい

座屈は、すべての柱で同じように起こるわけではなく、細くて長い柱ほど起こりやすくなります。

太くて短い柱では、座屈する前に材料が圧縮の力に耐えきれず、押しつぶされる形で壊れます。

反対に細くて長い柱では、押しつぶされるよりも先に、横へ曲がる座屈が起こってしまいます。

この2つの壊れ方の境目を判断するために使われるのが、柱の細長さを表す細長比です。

座屈は突然起こる

座屈の怖いところは、ある荷重を超えた瞬間に、前ぶれなく急に起こることにあります。

荷重が座屈荷重に達するまでは、柱はほとんど変形せずにまっすぐ立っています。

ところが座屈荷重を超えると、柱は一気に横へ曲がり、支える力を失ってしまいます。

このように座屈は突然起こるため、十分な余裕を持って設計することが大切になります。

強度より先に座屈が起こる

細長い柱では、材料の許容応力にはまだ余裕があるのに、座屈で壊れてしまうことがあります。

つまり、強度の計算だけでは安全に見えても、実際には座屈で先に壊れてしまう危険があるのです。

この見落としは大きな事故につながるため、圧縮を受ける部材では必ず座屈の確認を行います。

応力という考え方の基礎は、応力の記事で確認できます。

柱のタイプ 壊れ方 決め手
細長い柱 横に曲がる座屈 細長比・座屈荷重
太く短い柱 押しつぶされる 材料の強度

 

3. 細長比の計算式

細長比は、座屈長さと断面二次半径という2つの量から計算することができます。

ここでは、それぞれの量の意味と、細長比を求める式を具体例とともに見ていきます。

細長比の式と具体例

細長比は、座屈長さを断面二次半径で割った次の式によって求められます。

 \lambda = \dfrac{l_k}{i}

ここで \lambdaは細長比(無次元)、 l_kは座屈長さ(mm)、 iは断面二次半径(mm)を表します。

たとえば座屈長さが1000mm、断面二次半径が5mmの柱では、細長比は200という値になります。

 \lambda = \dfrac{1000}{5} = 200

この200という値が大きいか小さいかは、後で述べる限界細長比と比べることで判断します。

断面二次半径の求め方

断面二次半径とは、断面のかたちが座屈にどれだけ強いかを表す、長さの単位を持つ量です。

断面二次半径は、断面二次モーメントを断面積で割った値の平方根として求められます。

 i = \sqrt{\dfrac{I}{A}}

ここで iは断面二次半径(mm)、 Iは断面二次モーメント(mm⁴)、 Aは断面積(mm²)です。

たとえば直径20mmの丸棒では、断面二次半径は直径の4分の1にあたる5mmになります。

断面二次モーメントの考え方は、長方形・円・T字断面の公式の記事で解説しています。

座屈長さとは

座屈長さとは、柱が座屈するときに、実際に横へ曲がる部分の長さを表す量のことです。

この座屈長さは、柱の両端がどのように支えられているかによって変わってきます。

同じ長さの柱であっても、両端の支え方が違うと座屈長さが変わり、細長比も変わります。

このため、細長比を求めるときには、柱の端末条件を正しく見きわめる必要があります。

記号 意味 単位
λ 細長比 無次元
lk 座屈長さ mm
i 断面二次半径 mm
I 断面二次モーメント mm⁴
A 断面積 mm²

 

4. オイラーの座屈荷重

細長い柱が座屈するときの限界の荷重は、オイラーの座屈荷重という有名な式で求められます。

この式を使えば、柱がどのくらいの圧縮荷重で座屈してしまうのかを計算することができます。

オイラーの式と意味

オイラーの座屈荷重は、縦弾性係数や断面二次モーメント、座屈長さから次の式で表されます。

 P_{cr} = \dfrac{\pi^2 E I}{l_k^2}

ここで P_{cr}は座屈荷重(N)、 Eは縦弾性係数(MPa)、 Iは断面二次モーメント(mm⁴)、 l_kは座屈長さ(mm)です。

この式から、座屈荷重は座屈長さの2乗に反比例することがはっきりと分かります。

つまり、柱の長さが2倍になると、座屈する荷重は4分の1まで小さくなってしまいます。

座屈荷重の計算例

直径20mm、長さ1000mmの鋼の丸棒を両端ピンで支えた場合の座屈荷重を求めてみます。

断面二次モーメントは I = \pi d^4 / 64 \approx 7854\,\text{mm}^4、座屈長さは1000mmです。

これを代入すると、座屈荷重は P_{cr} = \pi^2 \times 206000 \times 7854 / 1000^2 \approx 16000\,\text{N}となります。

つまり、この丸棒はおよそ16kNの圧縮荷重で座屈してしまうという見積もりが得られます。

たわみの考え方とも関係が深く、たわみ計算の記事も参考になります。

座屈応力と細長比

座屈荷重を断面積で割ると、座屈するときの応力である座屈応力を求めることができます。

座屈応力は、縦弾性係数と細長比を使って、次のように簡単な形で表すことができます。

 \sigma_{cr} = \dfrac{\pi^2 E}{\lambda^2}

ここで \sigma_{cr}は座屈応力(MPa)、 Eは縦弾性係数(MPa)、 \lambdaは細長比です。

たとえば細長比200の鋼の柱では、座屈応力は \pi^2 \times 206000 / 200^2 \approx 50.8\,\text{MPa}になります。

鋼の降伏点はおよそ235MPaなので、この柱は材料が降伏するより前に座屈で壊れることが分かります。

オイラーの座屈は弾性で起こる

オイラーの座屈は、材料がまだ弾性の範囲にあるうちに起こる座屈です。

このため、座屈荷重は材料の強度ではなく、縦弾性係数と形状だけで決まります。

同じ形の柱であれば、強度の高い鋼に変えても座屈荷重はほとんど変わりません。

座屈を防ぎたいときに、材料を強くするだけでは効果が薄いのはこのためです。

座屈と強度はまったく別の問題として、分けて考えることが大切になります。

特徴
座屈荷重 π²EI÷lk² 長さの2乗に反比例
座屈応力 π²E÷λ² 細長比の2乗に反比例

 

5. 端末条件と座屈長さ

細長比を正しく求めるには、柱の端末条件に応じた座屈長さを使うことが大切になります。

ここでは、代表的な端末条件と、それぞれの座屈長さの取り方を見ていきます。

両端の支え方で変わる

座屈長さは、柱の両端がどのように支えられているかによって、大きく変わってきます。

両端がピンで支えられている場合は、柱の長さがそのまま座屈長さになります。

一方、両端ががっちりと固定されていると、座屈長さは柱の長さの半分まで短くなります。

このことから、しっかりと固定された柱ほど座屈に強くなることが分かります。

座屈長さ係数

端末条件ごとの座屈長さは、柱の長さに座屈長さ係数を掛け合わせることで求めます。

両端ピンでは係数が1.0、両端固定では0.5、一端固定で他端自由では2.0になります。

一端固定で他端がピンの場合は、係数がおよそ0.7という値として扱われます。

この係数を柱の長さに掛けることで、その柱の実際の座屈長さが求められます。

座屈する向きに注意する

断面が縦と横で大きさの違う柱では、座屈は弱い向きに起こることに注意が必要です。

たとえば長方形の断面では、薄い向きのほうが断面二次半径が小さく、座屈しやすくなります。

このため、もっとも細長比が大きくなる向きを見つけて、その向きで座屈を確認します。

柱を設計するときは、弱い向きにも支えを入れるなどの工夫が必要になります。

実際の柱での扱い

実際の構造では、端末条件が理想的なピンや固定にぴったり当てはまるとは限りません。

このため、設計では安全側になるように、座屈長さをやや長めに見積もることがあります。

支えがあいまいな場合は、ピン支持として扱うほうが安全側の判断になります。

端末条件を正しく見きわめることが、座屈の計算を確実にするための第一歩になります。

端末条件 座屈長さ係数 座屈長さ
両端ピン 1.0 L
両端固定 0.5 0.5L
一端固定・他端ピン 0.7 0.7L
一端固定・他端自由 2.0 2L

 

6. 長柱と短柱の区別

オイラーの座屈荷重の式は、すべての柱でそのまま使えるわけではありません。

柱が細長い長柱なのか、太く短い短柱なのかによって、使う考え方が変わってきます。

限界細長比という境目

長柱と短柱を分ける境目になるのが、限界細長比と呼ばれる値です。

限界細長比は、縦弾性係数と材料の降伏点を使って、次の式で求めることができます。

 \lambda_1 = \pi \sqrt{\dfrac{E}{\sigma_y}}

ここで \lambda_1は限界細長比、 Eは縦弾性係数(MPa)、 \sigma_yは降伏点(MPa)です。

たとえば降伏点235MPaの鋼では、限界細長比はおよそ93という値になります。

オイラーの式が使える範囲

細長比が限界細長比より大きい長柱では、オイラーの座屈荷重の式をそのまま使うことができます。

この範囲では、座屈は材料の降伏とは関係なく、弾性的な変形として起こります。

先ほどの細長比200の柱は限界細長比93より大きいため、オイラーの式を適用できます。

このように、まず細長比を限界細長比と比べることが、計算の出発点になります。

短柱は強度で決まる

細長比が限界細長比より小さい短柱では、座屈よりも先に材料が降伏してしまいます。

このため短柱では、オイラーの式ではなく、材料の強度をもとにして評価します。

中くらいの細長比の柱では、実験式を使って両者の中間として扱うこともあります。

柱の細長比に応じて、適切な評価の方法を選ぶことが大切になります。

区分 細長比 評価の方法
長柱 限界細長比より大きい オイラーの座屈荷重
中間柱 限界細長比の前後 実験式で評価
短柱 限界細長比より小さい 材料の強度で評価

 

7. 細長比を小さくする設計

座屈を防ぐには、細長比を小さくして、座屈しにくい柱にすることが基本になります。

ここでは、細長比を小さくして座屈に強くするための、設計の工夫を紹介していきます。

断面の形を工夫する

細長比を小さくするには、断面二次半径を大きくして、断面を座屈に強くするのが有効です。

同じ断面積であっても、材料を外側に配置した中空のパイプは断面二次半径が大きくなります。

このため、軽さと座屈の強さを両立したい場合には、中空断面やH形の断面がよく使われます。

断面の向きによって座屈のしやすさが変わるため、もっとも弱い向きを必ず確認します。

座屈長さを短くする

柱の途中に支えを設けて座屈長さを短くすると、細長比を小さくすることができます。

長い柱の中間を横から支えるだけで、座屈長さが半分になり、座屈に強くなります。

建築や機械の構造で、長い柱に控えや筋かいを入れるのは、この考え方によるものです。

座屈長さを短くする支えは、少ない材料で大きな効果を生み出すことができます。

安全率を見込む

座屈は突然起こるうえに、わずかな初期の曲がりでも荷重が下がってしまう性質があります。

このため、座屈の設計では計算した座屈荷重に対して、十分な安全率を見込んでおきます。

実際の柱には、材料のばらつきや取り付けのわずかな傾きなどの不確かさもあります。

こうした不確かさを安全率でカバーすることが、安全な圧縮部材の設計につながります。

材料の選び方

オイラーの座屈荷重は縦弾性係数に比例するため、材料の選び方も座屈に影響します。

ただし、座屈は強度ではなく縦弾性係数で決まるため、強い材料に変えても効果は限られます。

たとえば、同じ鋼であれば強度が違っても縦弾性係数はほぼ同じで、座屈荷重は変わりません。

材料の弾性係数の意味は、ヤング率の記事で解説しています。

身近な圧縮部材の例

細長比と座屈の考え方は、身近なさまざまな圧縮部材の設計で使われています。

建物を支える柱や、足場に使うパイプ、橋を支える部材などが代表的な例です。

自動車を持ち上げるジャッキの支柱なども、座屈を考えて設計されています。

こうした部材では、細長比を確認して、座屈に対する安全を確かめています。

圧縮を受ける細長い部材を見たら、座屈の確認が必要だと考えるとよいでしょう。

対策 効果 注意点
中空・H形断面 断面二次半径が大きい 弱い向きを確認する
中間に支えを設ける 座屈長さが短くなる 支えの強度も必要
端末を固定する 座屈長さ係数が下がる 固定が緩むと効果減
材料の変更 縦弾性係数で決まる 強度を上げても効果薄

 

8. まとめ

細長比とは、柱の座屈長さを断面二次半径で割った、柱の細長さを表す無次元の指標です。

細長比は \lambda = l_k / iで求められ、断面二次半径は i = \sqrt{I/A}で計算します。

細長比が大きい柱ほど、圧縮による破壊よりも先に座屈が起こりやすくなります。

長柱の座屈荷重はオイラーの式 P_{cr} = \pi^2 E I / l_k^2で求めることができます。

座屈応力は \sigma_{cr} = \pi^2 E / \lambda^2で表され、細長比の2乗に反比例します。

細長比が限界細長比より大きければオイラーの式を、小さければ材料の強度で評価します。

断面の工夫や座屈長さを短くする支えによって、細長比を小さくし、座屈を防ぐことができます。