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サージとは?雷サージとSPDの対策を解説

「落雷の後に家電が壊れた、というのはなぜ起こるのか」

その原因を整理してくれるのが、本記事のテーマであるサージです。

サージは、瞬間的に発生する非常に高い電圧で、雷や機器の開閉によって生じ、電子機器を一瞬で破壊することがあります。

電子機器が増えた現代では、このサージから機器を守る対策がますます重要になっています。

本記事では、サージの種類と仕組みから、雷サージの正体、被害、SPD(避雷器)による対策、実務での備えまでを、図表を交えて体系的に解説します。

 

 

1. サージとは|瞬間的な高電圧

サージとは、ごく短い時間に発生する、異常に高い電圧や電流のことです。

通常の電圧をはるかに超える大きさで、機器に深刻な被害を与えます。

1-1. サージの定義

サージは、平常の電圧から急峻に立ち上がり、一瞬で消える電圧の波です。

その大きさは、通常の電圧の何倍、何十倍にも達することがあります。

 

持続時間は非常に短く、マイクロ秒からミリ秒という一瞬の現象です。
しかし、その瞬間のエネルギーは機器を壊すのに十分な大きさになります。

 

サージは「電圧のスパイク」とも呼ばれ、波形が鋭くとがっています。
普段は問題なく動いている機器が、一瞬のサージで壊れることがあります。

 

目に見えず、一瞬で起こるため、被害に遭うまで気づきにくいのが特徴です。
だからこそ、あらかじめサージへの備えをしておくことが重要になります。

1-2. 通常の電圧変動との違い

サージは、通常の電圧の変動とは大きく異なります。

通常の変動は、電圧が多少上下する程度で、機器が壊れるほどではありません。

 

これに対しサージは、極めて高い電圧が一瞬だけ加わる、特殊な現象です。
立ち上がりが急で、エネルギーが集中している点が、通常の変動と違います。

 

そのため、通常の電圧変動への対策と、サージへの対策は別に考える必要があります。
サージには、専用のサージ対策が欠かせません。

 

普段の電圧が安定していても、サージは突然やってきます。
平常時の安定とは別の備えが、サージには必要なのです。

1-3. なぜサージが危険か

サージが危険なのは、機器の耐えられる電圧を一瞬で超えてしまうからです。

電子部品には、耐えられる電圧の上限があります。

 

サージがこの上限を超えると、部品の絶縁が破壊され、機器が故障します。
とくに、繊細な半導体を使った電子機器は、サージに弱いものです。

 

一度のサージで、高価な機器が一瞬にして使えなくなることもあります。
データを扱う機器では、保存していた情報が失われる被害も起こります。

 

サージの被害は、突然かつ深刻です。
事前の対策によって、こうした被害を防ぐことができます。

 

1-4. サージの大きさ

サージの電圧や電流は、通常の電気とは桁違いの大きさになります。

雷サージでは、電圧が数千ボルトから数万ボルトに達することもあります。

 

家庭の100Vや200Vと比べると、いかに大きな電圧かがわかります。
電流も、瞬間的には数千アンペアから数万アンペアに及ぶことがあります。

 

ただし、この大きなエネルギーが流れるのは、ごく短い時間だけです。
一瞬であっても、その間に機器を破壊するには十分なエネルギーを持ちます。

 

サージ対策では、この瞬間的で巨大なエネルギーをいかに逃がすかが課題になります。
普段の電気とはまったく異なる規模だと理解しておくことが大切です。

 

2. サージの種類

サージは、その発生原因によっていくつかの種類に分けられます。

代表的なものを見ていきましょう。

2-1. 雷サージ

最も大きく、被害が深刻なのが雷サージです。

落雷によって、電線や通信線に高い電圧が発生します。

 

雷のエネルギーは膨大で、雷サージの電圧は非常に高くなります。
建物や設備に大きな被害をもたらす、最も警戒すべきサージです。

 

直接落雷しなくても、近くへの落雷で雷サージが発生します。
そのため、雷サージへの対策は広い範囲で必要になります。

2-2. 開閉サージ

開閉サージは、電気回路を開閉したときに生じるサージです。

大きな電流が流れる回路を急に切ると、高い電圧が発生します。

 

とくに、モーターやトランスなどコイルを含む回路で起こりやすいものです。
コイルは電流の変化を妨げようとして、急な遮断時に高電圧を生じます。

 

雷サージほど大きくはありませんが、頻繁に起こるため無視できません。
同じ電源系統の機器に、繰り返し影響を与えることがあります。

2-3. 静電気によるサージ

静電気の放電も、一種のサージです。

人体や物体にたまった静電気が、機器に触れた瞬間に放電します。

 

このとき、瞬間的に高い電圧がかかり、電子部品を壊すことがあります。
とくに、半導体部品は静電気に弱く、製造や取り扱いで注意が必要です。

 

冬場の乾燥した時期は、静電気サージが起こりやすくなります。
精密機器を扱う現場では、静電気対策が重要になります。

2-4. 直撃雷と誘導雷

雷サージは、さらに直撃雷と誘導雷に分けられます。

直撃雷は、建物や電線に直接雷が落ちる場合です。

 

直撃雷のエネルギーは桁違いに大きく、強力な対策が必要です。
一方、誘導雷は、近くへの落雷によって電線などに誘導される電圧です。

 

被害件数としては、誘導雷によるものが多くを占めます。
直接落ちなくても、近くの落雷で機器が壊れるのは、この誘導雷のためです。

 

2-5. 開閉サージとコイル

開閉サージは、コイルを含む回路を遮断したときに特に大きくなります。

コイルは電流の変化を妨げる性質があり、急に電流を止めると高い逆起電力を生じます。

 

この逆起電力が、開閉サージとして回路に現れます。
リレーやモーター、電磁弁などの開閉時に発生しやすいものです。

 

接点で火花(アーク)が飛ぶのも、この開閉サージが原因です。
火花は接点を傷め、同時にノイズの発生源にもなります。

 

開閉サージには、コイルと並列にダイオードやコンデンサを入れて吸収します。
身近な誘導性負荷の開閉に、こうした対策が施されています。

 

3. 雷サージの仕組み

最も被害の大きい雷サージについて、その仕組みを詳しく見ていきましょう。

侵入の経路を知ることが、対策の前提になります。

3-1. 直撃雷による被害

直撃雷は、建物や電線、アンテナなどに直接雷が落ちる現象です。

非常に大きな電流が流れ、強力な破壊力を持ちます。

 

直撃を受けると、その経路にある設備は大きな被害を受けます。
避雷針は、この直撃雷を安全に大地へ導くための設備です。

 

直撃雷のエネルギーは膨大なため、完全に防ぐのは困難です。
被害を最小限にするための、建物全体での対策が求められます。

3-2. 誘導雷による被害

誘導雷は、近くへの落雷によって、電線や通信線に電圧が誘導される現象です。

落雷の強い電磁界が、周囲の配線に高い電圧を生じさせます。

 

直接落雷しなくても、数百メートル先の落雷で誘導雷が発生します。
そのため、被害の範囲が広く、件数も多いのが特徴です。

 

家電や電子機器が雷で壊れる被害の多くは、この誘導雷によるものです。
身近な機器を守るうえで、誘導雷への対策が重要になります。

3-3. サージの侵入経路

雷サージは、さまざまな経路から建物や機器に侵入します。

電源線、通信線、アンテナ線、接地線などが侵入経路になります。

 

1つの経路だけ対策しても、別の経路から侵入すれば被害を受けます。
例えば、電源は守っても、通信線から侵入したサージで機器が壊れることがあります。

 

そのため、サージ対策はすべての侵入経路で考える必要があります。
侵入する可能性のある線すべてに、対策を施すのが基本です。

 

3-4. 雷被害の起こりやすい状況

雷サージの被害は、雷の多い時期や地域で起こりやすくなります。

夏季の雷や、日本海側の冬季雷など、地域や季節によって雷の傾向は異なります。

 

屋外の設備や、高い建物、長い配線を持つ施設は、雷の影響を受けやすいものです。
山間部や開けた場所も、落雷のリスクが高い環境です。

 

こうしたリスクの高い環境では、サージ対策の重要性が一段と増します。
設置場所の雷リスクを踏まえて、対策の強さを決めることが大切です。

 

雷注意報が出たら、重要な機器の電源を抜くといった備えも有効です。
環境のリスクを知り、状況に応じた対策をとることが被害を減らします。

 

4. サージによる被害

サージが機器にどのような被害をもたらすのか、具体的に見ていきましょう。

被害は多岐にわたります。

4-1. 機器の破壊

サージの最も直接的な被害が、機器の破壊です。

耐圧を超える電圧で、電子部品の絶縁が破壊されます。

 

半導体部品は特にサージに弱く、一瞬で焼損することがあります。
パソコン、テレビ、通信機器など、電子機器が被害を受けやすいものです。

 

高価な機器が一度のサージで使えなくなる、深刻な被害です。
業務用の設備が壊れれば、事業の停止にもつながります。

4-2. 火災のリスク

サージは、火災を引き起こすこともあります。

大きなサージ電流が流れた箇所で発熱し、出火に至る危険があります。

 

とくに直撃雷では、強力なエネルギーが火災の原因になります。
サージによる火災は、建物全体に被害を広げかねません。

 

機器の故障だけでなく、火災という重大な事態にも備える必要があります。
サージ対策は、火災予防の面でも意味を持ちます。

4-3. システムの停止とデータ消失

サージは、システムの停止やデータの消失も引き起こします。

コンピュータやサーバーがサージで停止すれば、業務が止まります。

 

保存していたデータが失われたり、通信が途絶したりする被害もあります。
社会インフラを担うシステムでは、こうした停止が大きな影響を及ぼします。

 

目に見える機器の破壊だけでなく、情報やサービスの損失も深刻です。
重要なシステムほど、サージ対策の必要性が高まります。

 

4-4. 被害が広がりやすい理由

サージの被害は、1台の機器にとどまらず広がりやすいのが特徴です。

サージは配線を通じて伝わるため、つながった複数の機器が同時に被害を受けます。

 

1回の落雷で、建物内の多くの電子機器が一度に壊れることもあります。
ネットワークでつながった機器では、被害が次々と連鎖することもあります。

 

修理や交換の費用、復旧までの時間を考えると、被害は決して小さくありません。
事前のサージ対策のほうが、被害後の対応よりはるかに低コストです。

 

「壊れてから対処」では遅いのが、サージ被害の怖いところです。
被害が広がりやすいからこそ、事前の備えが重要になります。

 

5. SPD(避雷器)による対策

サージから機器を守る中心的な装置が、SPDです。

その役割と仕組みを見ていきましょう。

5-1. SPDとは

SPDは、サージ防護デバイス(避雷器)のことです。

サージが機器に達する前に、その高い電圧を抑えて機器を守ります。

 

SPDは、普段は何もせず、サージが来たときだけ動作します。
瞬間的な高電圧を吸収し、機器にかかる電圧を安全な範囲に抑えます。

 

電源線や通信線に取り付けて、サージの侵入から機器を守ります。
サージ対策の中核となる、重要な装置です。

5-2. SPDの動作原理

SPDは、電圧によって抵抗が変わる素子を使っています。

普段の電圧では電気を通さず、高い電圧がかかると急に電気を通すようになります。

 

サージが来ると、SPDが導通してサージ電流を大地へ逃がします。
これにより、機器にかかる電圧が危険な値まで上がるのを防ぎます。

 

サージが過ぎ去ると、SPDは再び電気を通さない状態に戻ります。
このすばやい切り替えで、一瞬のサージから機器を守るのです。

5-3. SPDの設置場所

SPDは、サージの侵入経路に設置します。

建物の電源の引き込み口や、分電盤に取り付けるのが基本です。

 

侵入口に近いところでサージを抑えることで、建物全体を守ります。
守りたい機器の近くにも設置すると、より確実に保護できます。

 

電源だけでなく、通信線やアンテナ線にもSPDを設けます。
すべての侵入経路にSPDを置くことが、確実な対策になります。

5-4. SPDの段階的な配置

大きなサージに対しては、SPDを段階的に配置します。

引き込み口で大きなサージを大まかに抑え、機器の近くで残りを抑えます。

 

1段だけでは抑えきれない大きなサージも、多段にすることで段階的に減らせます。
建物全体を守る大容量のものと、機器を守る小型のものを組み合わせます。

 

侵入口から機器まで、何段かでサージを減衰させていく考え方です。
重要な設備では、この多段の保護が採用されます。

 

5-5. SPDのクラスと選定

SPDは、想定するサージの大きさによってクラス分けされています。

直撃雷の大電流に耐える高い性能のものから、機器のそばで使う小型のものまであります。

 

建物の引き込み口には、大きなサージに耐えるクラスのSPDを設置します。
機器の近くには、残ったサージを抑える、より細かい性能のSPDを使います。

 

SPDを選ぶときは、設置場所と想定するサージの大きさに合ったクラスを選びます。
クラスの異なるSPDを組み合わせ、段階的に保護するのが基本です。

 

適切なクラスを選ばないと、サージを抑えきれなかったり、SPDが壊れたりします。
設置場所に応じたSPDの選定が、確実な保護につながります。

 

6. サージ対策の基本

SPD以外にも、サージ対策にはいくつかの基本があります。

組み合わせて、総合的に備えます。

6-1. 接地の重要性

サージ対策の土台となるのが、しっかりした接地です。

SPDが逃がしたサージ電流は、最終的に大地へ流れます。

 

接地抵抗が小さければ、サージ電流をスムーズに大地へ逃がせます。
接地が不十分だと、SPDが動作してもサージを逃がしきれません。

 

サージ対策は、良好な接地があって初めて十分に機能します。
SPDと接地は、セットで考えるべき対策です。

6-2. 等電位ボンディング

サージ対策では、等電位ボンディングも重要です。

建物内の金属部分や接地を互いに接続し、電位を同じにする方法です。

 

サージが来たとき、各部の電位がそろっていれば、危険な電位差が生じません。
電位差がなければ、機器間にサージ電流が流れず、被害を防げます。

 

とくに、直撃雷のような大きなサージでは、等電位化が効果を発揮します。
接地と等電位ボンディングは、雷対策の基本となる考え方です。

6-3. 機器側での保護

機器そのものにも、サージへの備えが組み込まれています。

電源回路に、サージを吸収する素子が入っていることがあります。

 

サージ保護用の素子は、瞬間的な高電圧を吸収して機器内部を守ります。
ダイオードを使ったサージ保護素子なども、機器の保護に使われます。

 

こうした素子の働きは、以下のダイオードの記事もあわせて参考になります。
機器側と設備側の両方で備えることが、確実なサージ対策になります。

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7. 実務・身近なサージ対策

サージ対策は、産業設備だけでなく家庭でもできます。

身近な対策と実務での扱いを見ていきましょう。

7-1. 雷ガード付き電源タップ

家庭で手軽にできるのが、雷ガード付きの電源タップの使用です。

タップの中にSPDの一種が入っていて、雷サージから機器を守ります。

 

パソコンやテレビなど、大切な機器をこうしたタップにつなぐと安心です。
比較的安価で、手軽に導入できるサージ対策です。

 

ただし、効果には限界があり、直撃雷のような大きなサージは防ぎきれません。
雷が激しいときは、コンセントから抜くのが最も確実な対策です。

7-2. 設備でのサージ対策

工場やビルでは、分電盤にSPDを設置するのが基本です。

建物全体を守るとともに、重要な機器の近くにもSPDを配します。

 

通信機器やサーバーなど、止められない設備では、サージ対策が特に重要です。
接地・等電位化・SPDの多段配置を組み合わせて、総合的に守ります。

 

サージ対策は、設備の信頼性と事業の継続性に直結します。
重要な設備ほど、手厚いサージ対策が求められます。

7-3. SPDの点検と交換

SPDは、サージを吸収するたびに少しずつ劣化します。

大きなサージを受けると、寿命が縮んだり、壊れたりします。

 

多くのSPDには、劣化や故障を知らせる表示が付いています。
この表示を定期的に確認し、劣化したものは交換します。

 

劣化したSPDは、いざというときにサージを抑えられません。
定期的な点検と交換が、サージ対策を有効に保つ鍵になります。

7-4. 通信線・アンテナ線の保護

サージ対策では、電源線だけでなく通信線やアンテナ線の保護も忘れてはいけません。

これらの線も、サージの侵入経路になるからです。

 

電源を守っても、通信線やアンテナ線からサージが侵入すれば機器は壊れます。
LANや電話線、アンテナ線にも、専用のSPDを設けて保護します。

 

とくに、屋外のアンテナにつながる線は、雷サージの侵入口になりやすいものです。
すべての侵入経路に対策を施して、初めて確実な保護になります。

 

雷が近いときは、機器のコンセントだけでなく、アンテナ線や通信線も抜くとより安全です。
侵入経路を物理的に断つのが、最も確実な対策です。

まとめ

本記事では、瞬間的な高電圧である「サージ」について、その種類と仕組みから、雷サージの正体、被害、SPDによる対策、実務での備えまでを体系的に解説しました。

サージは、雷・開閉・静電気などで発生し、とくに雷サージ(直撃雷・誘導雷)が大きな被害をもたらします。

サージから機器を守る中心がSPD(避雷器)で、サージ電流を大地へ逃がして機器を保護します。

SPDは、しっかりした接地と等電位ボンディングがあって初めて十分に機能します。

 

サージ対策は、接地・等電位化・SPDを組み合わせた、多重の備えが基本です。
接地やノイズ対策とあわせて理解し、電気設備を守る技術への理解を深めていってください。