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同期電動機とは?回転原理と特徴・用途を解説

「誘導電動機は同期速度より少し遅れて回るのに、同期電動機はぴったり同じ速さで回る、とはどういうことか」

その違いを生む仕組みを整理してくれるのが、本記事のテーマである同期電動機です。

同期電動機は、回転磁界とまったく同じ速さで回り続けるモーターで、速度が安定し、力率を自在に調整できるという独自の強みを持っています。

大型のコンプレッサや、発電所の発電機としても使われる、産業に欠かせない電気機器です。

本記事では、同期電動機の回転原理と特徴から、誘導電動機との違い、始動方法、力率調整、発電機との関係、用途までを、数式と図表で体系的に解説します。

 

 

1. 同期電動機とは|回転磁界と同じ速さで回るモーター

同期電動機とは、固定子が作る回転磁界と同じ速さ(同期速度)で回り続けるモーターです。

シンクロナスモーターとも呼ばれ、速度の正確さと力率調整能力で知られています。

1-1. 同期電動機の特徴

同期電動機の最大の特徴は、負荷が変わっても回転速度が一定に保たれることです。

誘導電動機が負荷とともに少し速度を落とすのに対し、同期電動機は同期速度を厳密に守ります。

 

この正確な速度は、電源の周波数だけで決まります。
周波数が安定していれば、同期電動機は時計のように正確な速さで回り続けます。

 

さらに、後述するように力率を自在に調整できる点も大きな特徴です。
速度の正確さと力率調整という2つの強みが、同期電動機を特別な存在にしています。

1-2. 同期速度で回るとは

同期電動機の回転子は、回転磁界に「ロック」されたように同じ速さで回ります。

回転子の磁極が、回転磁界の磁極にぴたりと引きつけられて追従するのです。

 

磁石どうしが引き合いながら一緒に回る、というイメージが近いでしょう。
回転磁界が1周すれば、回転子もきっかり1周します。

 

このため、回転子と回転磁界の間にずれ(すべり)が生じません。
すべりがゼロである点が、誘導電動機との決定的な違いです。

1-3. 誘導電動機との違い

同じ三相モーターでも、同期電動機と誘導電動機は動作が異なります。

誘導電動機は電磁誘導で回り、同期速度よりわずかに遅れて回ります。

 

一方、同期電動機は回転子自身が磁極を持ち、回転磁界に同期して回ります。
すべりがある誘導電動機に対し、同期電動機はすべりがゼロです。

 

誘導電動機は始動が簡単で丈夫、同期電動機は速度が正確で力率調整ができる、という住み分けです。
それぞれの長所を生かして、用途によって使い分けられています。

1-4. 同期電動機の構造

同期電動機は、外側の固定子と内側の回転子からできています。

固定子には三相のコイルが巻かれ、回転磁界を作ります。

 

回転子には、電磁石や永久磁石による磁極が設けられています。
この回転子の磁極が、回転磁界に引きつけられて同期回転します。

 

電磁石式では、回転子のコイルに直流電流(界磁電流)を流して磁極を作ります。
この界磁電流の大きさを変えることが、力率調整の鍵になります。

 

1-5. 永久磁石式と電磁石式

回転子の磁極の作り方には、永久磁石を使う方式と電磁石を使う方式があります。

永久磁石式(PMSM)は、回転子に強力な永久磁石を埋め込んだもので、界磁電流が不要です。

 

構造が単純で効率が高く、小型化しやすいため、近年急速に普及しています。
エアコンのコンプレッサやハイブリッド車の駆動用モーターは、その代表例です。

 

一方、電磁石式は界磁電流を調整できるため、力率を自在に変えられる利点があります。
大型機では電磁石式、小型・高効率を狙うなら永久磁石式、という使い分けになります。

 

2. 同期電動機の回転原理

同期電動機が回転磁界に同期して回る仕組みを、詳しく見ていきましょう。

鍵となるのは、回転磁界と回転子磁極の引き合いです。

2-1. 三相が作る回転磁界

固定子に三相交流を流すと、なめらかに回転する磁界が生まれます。

120度ずつ位相のずれた3つの電流が、回転磁界を作り出すのです。

 

この回転磁界の速さが同期速度であり、電源周波数と極数で決まります。
回転磁界の仕組みの詳細は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。

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2-2. 界磁と回転磁界の同期

回転子の磁極(界磁)は、固定子の回転磁界に引きつけられます。

磁石のN極とS極が引き合うのと同じ原理です。

 

回転磁界が回ると、回転子の磁極もそれを追って回ります。
両者は磁力で結びついており、まるで歯車がかみ合うように一体で回転します。

 

この磁力による結びつきがある限り、回転子は同期速度を保ちます。
負荷が増えても、磁極の位置が少しずれるだけで、速度自体は変わりません。

2-3. 負荷角という考え方

負荷が増えると、回転子の磁極は回転磁界よりわずかに後ろにずれます。

このずれの角度を負荷角(内部相差角)と呼びます。

 

負荷が重いほど負荷角は大きくなりますが、速度は同期速度のまま保たれます。
位置がずれるだけで、速さは変わらないのが同期電動機の特徴です。

 

ただし、負荷角がある限界を超えると、磁力の結びつきが切れてしまいます。
この現象を脱調と呼び、同期電動機が止まってしまう原因になります。

 

2-4. 同期速度の計算

同期電動機が回る同期速度は、電源周波数と極数で決まります。

これは誘導電動機の同期速度とまったく同じ式です。

 

 N_s = \dfrac{120 f}{p}

 

例えば4極の同期電動機を50Hzで動かすと、同期速度は毎分1500回転です。
誘導電動機と違ってすべりがないため、回転子もぴたり1500回転で回ります。

 

速度を変えたい場合は、インバータで電源周波数そのものを変えるのが基本です。
周波数に正確に比例するため、精密な速度制御がしやすいのも同期電動機の利点です。

 

3. 始動の課題と方法

同期電動機には、そのままでは始動できないという大きな課題があります。

その理由と対策を見ていきましょう。

3-1. 自己始動できない理由

同期電動機は、止まった状態から電源をつないでも回り出しません。

回転磁界は瞬時に高速で回り始めますが、止まっている重い回転子はついていけないためです。

 

磁界が引っ張る向きが一瞬で入れ替わり、回転子は前後に揺さぶられるだけで回り出せません。
これが、同期電動機が自己始動できないという根本的な課題です。

 

誘導電動機が電源をつなぐだけで回り出すのとは、対照的な性質です。
そのため、同期電動機には何らかの始動の工夫が必要になります。

3-2. 始動の方法

同期電動機を始動するには、いったん別の方法で同期速度近くまで回す必要があります。

同期速度に近づいてから、回転子の磁極を回転磁界に引き込みます。

 

代表的な方法が、回転子に誘導電動機のような始動巻線を設ける自己始動形です。
始動時は誘導電動機として回り、同期速度近くで同期に引き込みます。

 

ほかにも、別の始動用モーターで回す方法や、インバータで低い周波数から始動する方法があります。
インバータを使えば、なめらかに加速しながら同期させられます。

3-3. 制動巻線の役割

回転子に設けられる始動巻線は、制動巻線(ダンパ巻線)とも呼ばれます。

始動を助けるだけでなく、運転中の安定にも役立ちます。

 

運転中に負荷が急変すると、回転子が前後に揺れる乱調という現象が起こります。
制動巻線は、この揺れを抑えて回転子を安定させる働きをします。

 

始動と安定化の両方を担う、重要な巻線です。
同期電動機が実用的に使えるのは、この制動巻線のおかげでもあります。

 

3-4. インバータによる始動と制御

近年もっとも一般的な始動方法が、インバータを使う方法です。

電源周波数を非常に低いところから始め、回転子の動きに合わせて徐々に上げていきます。

 

低い周波数なら回転磁界もゆっくり回るため、止まっていた回転子も無理なく追従できます。
そのまま周波数を上げていけば、なめらかに目的の速度まで加速できます。

 

この方法なら、始動巻線がなくても確実に始動できます。
永久磁石同期電動機も、インバータと組み合わせて始動・制御するのが一般的です。

 

4. 力率の調整|同期電動機の強み

同期電動機の最も特徴的な能力が、力率を自在に調整できることです。

この仕組みを見ていきましょう。

4-1. 界磁電流と力率

同期電動機の力率は、回転子に流す界磁電流の大きさで変えられます。

界磁電流を加減することで、電源から見た力率を進みにも遅れにもできます。

 

これは、ほかのモーターにはない同期電動機ならではの能力です。
誘導電動機が遅れ力率に固定されるのとは、大きく異なります。

 

力率そのものの考え方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。

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4-2. 進み力率と遅れ力率

界磁電流を大きくすると、同期電動機は進み力率で運転します。

逆に界磁電流を小さくすると、遅れ力率になります。

 

進み力率で運転すれば、コンデンサと同じように無効電力を供給できます。
これを利用して、工場全体の遅れ力率を打ち消し、力率を改善できます。

 

つまり同期電動機は、動力を生み出しながら同時に力率改善もできるのです。
1台で2役をこなせる点が、大きな経済的メリットになります。

4-3. 同期調相機

力率調整の能力だけを目的に使う同期電動機を、同期調相機と呼びます。

機械的な負荷をつながず、無負荷で運転して無効電力だけを調整します。

 

界磁電流を変えるだけで、進みと遅れの無効電力をなめらかに調整できます。
送電系統の電圧安定や、力率の改善に使われてきました。

 

進相コンデンサが段階的にしか調整できないのに対し、同期調相機は連続的に調整できます。
この細かな調整能力が、大規模な系統で重宝される理由です。

 

4-4. V曲線

界磁電流と電機子電流(固定子に流れる電流)の関係を表したグラフを、V曲線と呼びます。

横軸に界磁電流、縦軸に電機子電流をとると、V字の形になることからこの名がつきました。

 

V字の底にあたる界磁電流のとき、力率はちょうど1になり、電機子電流が最小になります。
そこから界磁電流を増やすと進み力率、減らすと遅れ力率になり、電流が増えていきます。

 

このV曲線を見れば、力率を1にする最適な界磁電流が一目でわかります。
同期電動機の力率調整を理解するうえで、欠かせない特性図です。

 

4-5. 過励磁と不足励磁

界磁電流が力率1のときより多い状態を過励磁、少ない状態を不足励磁と呼びます。

過励磁では進み力率となり、コンデンサのように無効電力を供給します。

 

不足励磁では遅れ力率となり、コイルのように無効電力を消費します。
つまり、界磁電流を増減するだけで、無効電力を出すことも吸い込むこともできます。

 

この双方向の調整能力が、進相コンデンサにはない同期電動機の強みです。
系統の状況に応じて、無効電力をきめ細かく調整できます。

 

5. 同期発電機との関係

同期電動機は、同期発電機とほとんど同じ構造をしています。

両者の関係を整理しておきましょう。

5-1. 構造はほぼ同じ

同期電動機と同期発電機は、構造としては基本的に同じものです。

電気を入れて回せばモーター、外から回せば発電機として働きます。

 

回転磁界と回転子磁極が同期するという原理も共通しています。
エネルギーの向きが逆になるだけで、中身は同じ機械なのです。

 

このため、同期機という言葉で電動機と発電機をまとめて呼ぶこともあります。
片方を理解すれば、もう片方も自然に理解できます。

5-2. 発電所での利用

発電所の発電機は、ほとんどが同期発電機です。

タービンで回転子を回し、固定子のコイルに交流の起電力を発生させます。

 

発電される交流の周波数は、回転速度と極数で決まります。
系統の周波数を一定に保つため、回転速度は厳密に管理されています。

 

私たちが使う電気は、この同期発電機によって作られています。
同期電動機の理解は、発電の仕組みの理解にもつながります。

 

5-3. 系統への並列運転

複数の同期発電機は、電力系統に並列につないで運転されます。

このとき、電圧・周波数・位相をそろえてからつなぐ必要があります。

 

条件が合わないままつなぐと、大きな電流が流れて機器を傷めてしまいます。
周波数と位相を慎重に合わせてから並列にする操作を、同期投入と呼びます。

 

いったん系統につながれば、多数の発電機が歩調をそろえて同じ周波数で回ります。
電力系統全体が、巨大な同期機の集まりとして安定に運転されているのです。

 

5-4. 電動機と発電機の切り替わり

同期機は、機械的な力と電気のやり取りの向きで、電動機にも発電機にもなります。

電気を受け取って軸から力を出せば電動機、軸を回されて電気を送り出せば発電機です。

 

負荷角の符号が、この向きを決めます。回転子が回転磁界より遅れていれば電動機として働きます。
逆に外力で回転子を進ませると、発電機として電気を系統へ送り出します。

 

揚水発電所では、同じ同期機を電動機としても発電機としても使い分けています。
電気が余るときはポンプを回す電動機、足りないときは発電機として活用するのです。
1台の機械を双方向に使える点が、同期機の大きな利点です。

 

6. 同期電動機の長所と短所

同期電動機には、明確な長所と短所があります。

両面を理解して、適切に使い分けることが大切です。

6-1. 長所

同期電動機の長所は、まず速度が正確で一定なことです。

負荷が変わっても同期速度を厳密に保ち、精密な速度制御が求められる用途に向きます。

 

次に、力率を自在に調整できることです。
進み力率で運転すれば、工場全体の力率改善にも貢献できます。

 

また、大型機では誘導電動機より効率が高くなる傾向があります。
正確な速度・力率調整・高効率が、同期電動機の3つの長所です。

6-2. 短所

一方の短所は、まず自己始動ができず、始動に工夫が必要なことです。

始動装置や制御が必要なため、構造が複雑でコストも高くなります。

 

また、回転子に界磁電流を供給する仕組みが必要です。
負荷が急変したときに脱調する危険があることも、注意すべき点です。

 

これらの短所のため、小型の用途では扱いやすい誘導電動機が選ばれます。
同期電動機は、長所が生きる大型・特殊な用途で使われます。

 

6-3. 乱調と脱調への対策

同期電動機で注意すべき現象が、乱調と脱調です。

乱調は、負荷の急変などで回転子が前後に揺れ動く現象です。

 

揺れが大きくなって磁力の結びつきが切れると、同期を失う脱調に至ります。
脱調すると速度が急落し、過大な電流が流れて停止してしまいます。

 

これらを防ぐため、制動巻線で揺れを抑えたり、急激な負荷変動を避けたりします。
安定して同期を保てる範囲で運転することが、同期電動機を扱う基本です。

 

7. 同期電動機の用途

同期電動機は、その特徴を生かした用途で活躍します。

代表的な使われ方を見ていきましょう。

7-1. 大型機械の駆動

同期電動機は、大型のコンプレッサやポンプ、送風機の駆動に使われます。

これらは一定速度で長時間運転されるため、速度が正確で高効率な同期電動機が向いています。

 

大きな動力を効率よく安定して供給できる点が評価されています。
始動の手間はあっても、連続運転ではその効率の高さが生きてきます。

7-2. 力率改善の用途

力率を改善する目的でも、同期電動機が使われます。

動力として使いながら進み力率で運転し、工場全体の力率を引き上げます。

 

無負荷で力率調整だけを行う同期調相機も、この用途の一種です。
動力と力率改善を1台で兼ねられるのは、同期電動機ならではです。

7-3. 選定の考え方

同期電動機を選ぶかどうかは、用途の性質で判断します。

一定速度での連続運転や、力率改善も狙いたい大型の用途では有力な選択肢です。

 

逆に、頻繁な始動停止や小型の用途では、誘導電動機のほうが適しています。
速度の正確さと力率調整が必要かどうかが、選定の分かれ目になります。

7-4. 身近な同期電動機

同期電動機は、大型機械だけでなく身近な製品にも使われています。

かつての電気時計は、電源周波数に正確に同期する性質を利用して時を刻んでいました。

 

近年では、永久磁石同期電動機がエアコンや冷蔵庫、洗濯機などに広く使われています。
インバータと組み合わせ、高効率で静かな運転を実現しています。

 

ハイブリッド車や電気自動車の駆動用モーターも、多くが永久磁石同期電動機です。
大型から家電・自動車まで、同期電動機は幅広く活躍しています。

7-5. 保守と運転の注意点

同期電動機を安定して使うには、いくつかの点に注意が必要です。

まず、界磁電流を供給する仕組みが正常に働いているかを確認します。

 

界磁が失われると同期を保てなくなり、脱調して停止してしまいます。
また、急激な負荷変動を避け、乱調を起こさない運転を心がけます。

 

軸受や絶縁の状態を定期的に点検することは、ほかの回転機と同様に重要です。
始動装置や励磁装置まで含めて点検するのが、同期電動機の保守の特徴です。

まとめ

本記事では、回転磁界と同じ速さで回る「同期電動機」について、回転原理と特徴から、誘導電動機との違い、始動方法、力率調整、発電機との関係、用途までを体系的に解説しました。

同期電動機は、回転子の磁極が回転磁界に引きつけられて同期回転し、すべりがゼロで速度が正確です。

自己始動できないため始動に工夫が必要ですが、界磁電流で力率を自在に調整できるという独自の強みを持ちます。

同期発電機と構造が同じで、発電所の発電機としても使われています。

 

同期電動機は、正確な速度・力率調整・高効率という長所を生かし、大型機械の駆動や力率改善に使われます。
誘導電動機との違いを押さえ、発電機など次の電気機器へと理解を広げていってください。