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サーミスタとは?NTC・PTCと温度測定の原理

「10kΩのサーミスタを付けたのに、温度表示が数℃ずれる」ことは珍しくありません。

サーミスタは安価で高感度ですが、抵抗値、B定数、自己発熱、分圧回路を誤ると温度を正しく読めません。

サーミスタとは、温度変化を抵抗値の変化として取り出す半導体の温度センサです。

温度測定には主にNTCを使い、過電流保護や過熱検出にはPTCを使うのが基本です。

本記事では、NTC・PTCの違い、B定数による計算、分圧回路、選定時の注意点までを実務目線で解説します。

 

 

1. サーミスタとは:温度を抵抗値に変える半導体センサ

サーミスタは、温度によって抵抗値が大きく変化する電子部品です。

英語のthermal sensitive resistorを縮めた言葉で、熱に敏感な抵抗器という意味を持ちます。

一般的な固定抵抗器は、温度が変わっても抵抗値の変化が小さいように作られます。

これに対してサーミスタは、温度による抵抗変化を積極的に利用する部品です。

温度を直接電圧として出すのではなく、まず抵抗値の変化として取り出します。

その抵抗を分圧回路や定電流回路で電圧へ変換し、マイコンやPLCで読み取ります。

抵抗値の扱いは基本的に抵抗器とは何かと同じですが、温度特性が主役になる点が大きく異なります。

 

温度測定で使われる理由

サーミスタが温度測定に広く使われる理由は、小型、安価、高感度の三つです。

特にNTCサーミスタは、25℃付近の抵抗変化が大きく、数℃の変化を簡単な回路で検出できます。

エアコン、冷蔵庫、給湯器、バッテリーパック、電子基板の温度監視など、身近な機器に多く使われます。

半導体IC温度センサのように電源端子や通信端子を持たず、基本的には二本のリードだけで使える点も強みです。

一方で、抵抗と温度の関係は直線ではないため、単純に電圧を読めば温度が出るわけではありません。

温度換算テーブル、B定数式、Steinhart-Hart式などを使い、回路側で補正する必要があります。

このためサーミスタは、部品単体ではなく、回路とソフトを含めて温度センサとして考えるのが正しい見方です。

 

NTCとPTCの基本的な違い

サーミスタは、温度上昇時に抵抗が下がるNTCと、抵抗が上がるPTCに大きく分かれます。

NTCはnegative temperature coefficientの略で、温度係数が負のサーミスタです。

温度が上がるほど抵抗が下がるため、温度測定、温度補償、突入電流抑制に使われます。

PTCはpositive temperature coefficientの略で、温度係数が正のサーミスタです。

温度が上がるほど抵抗が上がるため、過電流保護、過熱検知、ヒータ制御などに使われます。

名称は似ていますが、温度測定の主役はNTC、保護用途の主役はPTCと考えると整理しやすくなります。

種類 温度上昇時の抵抗 代表用途 設計で見る項目
NTCサーミスタ 下がる 温度測定、温度補償、突入電流抑制 R25、B定数、許容差、自己発熱
PTCサーミスタ 上がる 過電流保護、過熱検出、自己制御ヒータ トリップ温度、保持電流、復帰条件、放熱条件

 

2. NTCサーミスタの原理:温度上昇で抵抗が下がる理由

NTCサーミスタは、温度測定用として最もよく使われるサーミスタです。

材料にはマンガン、ニッケル、コバルト、銅などの金属酸化物を焼結した半導体セラミックが使われます。

半導体では、温度が上がると電流を運ぶキャリアが増え、電気を通しやすくなります。

その結果、金属抵抗とは逆に、温度上昇とともに抵抗値が低下します。

金属の抵抗器では温度上昇で抵抗が少し増えるため、この違いは重要です。

回路図では単なる抵抗記号に見えても、温度特性は固定抵抗器とまったく異なります。

 

R25とB定数で特性を読む

NTCサーミスタの仕様書で最初に見るべき値は、R25とB定数です。

R25は25℃における抵抗値で、10kΩ、47kΩ、100kΩなどがよく使われます。

B定数は、温度に対して抵抗値がどれだけ急に変わるかを表す係数です。

B定数が大きいほど、同じ温度変化に対する抵抗変化が大きくなります。

ただし、B定数が大きければ常に良いわけではなく、測定範囲が狭く扱いにくくなる場合があります。

常温付近を細かく見たいのか、広い温度範囲を無理なく読みたいのかで選び方が変わります。

代表的には、10kΩのNTCでB定数が3000K台から4000K台程度の部品が多く使われます。

実際の選定では、温度範囲、抵抗許容差、B定数許容差を必ずセットで確認します。

 

抵抗温度特性は強い非直線性を持つ

NTCサーミスタの抵抗温度特性は、直線ではなく指数関数的に変化します。

温度が低い領域では抵抗が非常に大きく、高温側では抵抗が急激に小さくなります。

このため、同じ1℃の変化でも、低温側と高温側で電圧変化量が同じにはなりません。

単純な一次式で温度に換算すると、測定範囲の端で誤差が大きくなりやすいです。

温度表示器やマイコンでは、ルックアップテーブルや補正式を使って非直線性を補正します。

狭い温度範囲だけを測る場合は、分圧抵抗の値を工夫して、必要な範囲の電圧変化を大きくできます。

広い温度範囲を高精度で測る場合は、B定数式だけでなく、実測テーブルや校正値を使う設計が安全です。

 

3. PTCサーミスタの原理:抵抗が上がって電流を制限する

PTCサーミスタは、温度が上がると抵抗値が増えるサーミスタです。

特にチタン酸バリウム系のセラミックPTCは、ある温度を超えると抵抗が急増します。

この急激な変化は、キュリー温度付近で材料の性質が変わることに由来します。

温度測定にも使われますが、NTCよりも保護素子として使われる場面が多いです。

回路の電流が増えるとPTC自身が発熱し、抵抗が増え、さらに電流を絞る動作をします。

この性質により、ヒューズのように回路を保護しながら、冷えると復帰する用途に使えます。

 

過電流保護での動作

PTCを負荷と直列に入れると、通常時は低抵抗のため電流をほとんど妨げません。

異常電流が流れると、PTC内部でジュール熱が発生し、素子温度が上がります。

一定温度を超えると抵抗値が急増し、回路電流を小さく抑えます。

この状態をトリップ状態と呼び、負荷の短絡やモータの拘束から回路を守ります。

異常が取り除かれ、電源を切るか発熱が下がると、PTCは冷えて低抵抗側へ戻ります。

ただし、完全に元通りになる時間は周囲温度、放熱、印加電圧、部品サイズで変わります。

保護設計では、定常電流だけでなく、起動電流、周囲温度、基板放熱まで含めて確認します。

 

温度検出用PTCと保護用PTCの違い

PTCには、温度検出を目的にしたものと、過電流保護を目的にしたものがあります。

温度検出用PTCは、指定温度付近で抵抗が変化することを利用して過熱を検出します。

モータ巻線、トランス、パワー半導体周辺など、異常過熱を早く知りたい場所に取り付けます。

一方、保護用PTCは、回路電流そのものを制限するために負荷と直列に入れます。

同じPTCでも、検出用は温度しきい値、保護用は保持電流やトリップ電流が重要になります。

用途を取り違えると、過熱を検出したいのに電流制限できなかったり、通常運転で誤動作したりします。

仕様書では、抵抗温度特性だけでなく、電流時間特性と最大電圧を必ず確認する必要があります。

 

4. B定数と温度計算:抵抗値から温度を求める

NTCサーミスタで温度を求めるには、測定した抵抗値を温度へ変換します。

最も基本になるのがB定数式で、基準温度の抵抗値とB定数から抵抗温度特性を近似します。

実際の量産設計では、部品メーカーのR-T表を使うことも多いです。

ただし、B定数式を理解しておくと、仕様書の読み方と回路電圧の見積もりが楽になります。

温度を式に入れるときは、必ず摂氏ではなく絶対温度Kを使います。

25℃は298.15K、0℃は273.15Kとして扱います。

 

B定数式と記号の意味

基準温度を25℃とする場合、NTCサーミスタの抵抗値は次の式で近似できます。

 

 R_T = R_{25} \exp \left\{ B \left( \dfrac{1}{T} - \dfrac{1}{298.15} \right) \right\}

 

ここで、 R_Tは絶対温度 Tにおける抵抗値です。

 R_{25}は25℃における抵抗値、 BはB定数、 TはKで表した絶対温度です。

温度が上がると \dfrac{1}{T}が小さくなるため、指数部が負になり、抵抗値は下がります。

B定数を二つの温度点から求める場合は、次の式を使います。

 

 B = \dfrac{\ln \left( \dfrac{R_1}{R_2} \right)}{\dfrac{1}{T_1} - \dfrac{1}{T_2}}

 

この式は、二点間の平均的な傾きを表すため、温度範囲を変えるとB定数も少し変わります。

そのため、仕様書ではB25/50やB25/85のように、どの温度範囲で定義した値かが示されます。

B定数式は扱いやすい近似式ですが、全温度範囲で完全に一致する式ではありません。

高精度が必要な温度計では、三つの係数を使うSteinhart-Hart式やメーカー提供のR-T表を使います。

量産設備の温度監視では、全点校正ではなく、代表温度で補正して必要精度に収める設計もあります。

どの式を使うかは、表示したい温度精度、ソフト容量、校正工数のバランスで決めます。

 

10kΩ・B=3435Kの計算例

例として、R25が10kΩ、B定数が3435KのNTCを考えます。

温度が50℃のとき、絶対温度は323.15Kになります。

式に代入すると、抵抗値はおよそ4.1kΩ程度まで下がります。

同じ素子が0℃に置かれると、絶対温度は273.15Kになり、抵抗値はおよそ28.7kΩ程度になります。

つまり、0℃から50℃までの範囲だけでも、抵抗値は約7倍変化します。

この大きな変化が、サーミスタの高感度という長所を生みます。

一方で、温度と抵抗の関係が直線ではないため、温度換算を雑に行うと誤差も大きくなります。

計算式の扱いでは、オームの法則とは何かと同じく、電圧、電流、抵抗の単位をそろえることが基本です。

温度 絶対温度 抵抗値の目安 設計上の意味
0℃ 273.15K 約28.7kΩ 低温側では電圧が飽和しないか確認する
25℃ 298.15K 10kΩ 仕様書の基準点として使う
50℃ 323.15K 約4.1kΩ 常用高温側の分解能を確認する

 

5. 温度測定回路:分圧回路とA/D変換の基本

サーミスタの抵抗値をマイコンで読むには、電圧へ変換する必要があります。

もっとも簡単なのは、固定抵抗とサーミスタを直列にした分圧回路です。

電源電圧を二つの抵抗で分け、サーミスタの抵抗変化を電圧変化として取り出します。

取り出した電圧は、A/D変換器でデジタル値へ変換します。

マイコン内蔵ADCで読む場合も、外付けADCで読む場合も、基本の考え方は同じです。

センサ信号をデジタル化する流れは、A/D変換とは何かでも詳しく扱っています。

 

固定抵抗との分圧で電圧を作る

NTCを下側、固定抵抗を上側に置く分圧回路を考えます。

電源電圧を V_{CC}、固定抵抗を R_F、サーミスタ抵抗を R_Tとします。

このとき、サーミスタ側の電圧は次の式で求められます。

 

 V_{out} = V_{CC} \dfrac{R_T}{R_F + R_T}

 

NTCでは温度が上がると R_Tが下がるため、この配置では V_{out}も下がります。

逆に、NTCを上側、固定抵抗を下側に置けば、温度上昇で出力電圧は上がります。

どちらが正しいというより、マイコン入力範囲、異常時判定、ソフトの扱いやすさで決めます。

固定抵抗値は、測りたい温度範囲の中央付近におけるサーミスタ抵抗に近づけるのが基本です。

複数の抵抗を組み合わせる考え方は、合成抵抗とは何かの理解にもつながります。

 

ADC分解能と測定範囲を確認する

分圧回路の電圧は、ADCの入力範囲に収める必要があります。

3.3V系マイコンなら、通常は0Vから3.3Vの範囲で電圧を読みます。

10bit ADCなら1024段階、12bit ADCなら4096段階に電圧を分割します。

ただし、電圧分解能が細かくても、サーミスタの許容差やB定数誤差が大きければ温度精度は上がりません。

温度測定精度は、ADC分解能、基準電圧、固定抵抗精度、サーミスタ許容差、自己発熱の合計で決まります。

例えば12bit ADCでも、電源基準が不安定なら下位ビットは温度ノイズとして見えてしまいます。

温度表示を0.1℃刻みにしても、センサと回路の総合誤差が±2℃なら表示桁だけが細かい状態です。

電源電圧をADC基準電圧にも使うレシオメトリック構成にすると、電源変動の影響を受けにくくできます。

PLCのアナログ入力で読む場合は、入力インピーダンス、スケーリング、断線診断の仕様も確認します。

PLC側で温度制御を行う場合は、センサ入力後の制御ロジックとしてPID制御とは何かも関係します。

確認項目 確認する理由 よくある失敗
ADC入力範囲 電圧が飽和すると温度差を読めない 低温側または高温側で0Vや電源電圧に張り付く
固定抵抗精度 基準抵抗の誤差がそのまま温度誤差になる 1%品で十分と思い込み、量産ばらつきが大きくなる
基準電圧 ADC変換値の基準になる 電源リップルで温度表示が揺れる
入力フィルタ ノイズを減らす 時定数を大きくしすぎて応答が遅れる

 

6. 自己発熱と応答速度:測っている温度を変えない

サーミスタは抵抗なので、電流を流すと発熱します。

温度を測るために電流を流した結果、センサ自身が温まり、実際より高い温度を示すことがあります。

これを自己発熱と呼び、サーミスタ測定で非常に重要な誤差要因です。

小型のサーミスタは応答が速い一方で、熱容量が小さいため自己発熱の影響を受けやすくなります。

設計では、測定電流を小さくし、必要なら間欠測定にして平均消費電力を抑えます。

センサを空気中で使うのか、水中や金属面に密着させるのかでも、放熱条件は大きく変わります。

 

自己発熱は消費電力で決まる

サーミスタで消費される電力は、電流と抵抗から求められます。

 

 P = I^2 R

 

また、サーミスタにかかる電圧が分かる場合は次の式でも計算できます。

 

 P = \dfrac{V^2}{R}

 

自己発熱による温度上昇は、消費電力を放熱定数で割って概算できます。

 

 \Delta T = \dfrac{P}{D}

 

 Dは放熱定数で、一般にmW/℃の単位で示されます。

例えば放熱定数が1mW/℃の状態で1mWを消費すると、素子温度は周囲より約1℃高くなります。

温度センサとして使う場合、この1℃はそのまま測定誤差として現れます。

測定間隔を長くできる装置では、通電時間を短くして読み取り直前だけ電流を流す方法も有効です。

空気中では放熱が悪く、金属面に密着させた場合や液体中では放熱が良くなります。

したがって、カタログ値だけでなく、実装状態で自己発熱を確認することが重要です。

 

応答速度は形状と取り付け方で変わる

サーミスタの応答速度は、素子サイズ、封止材料、リード線、取り付け先の熱抵抗で決まります。

小さなビード型やチップ型は熱容量が小さいため、温度変化に速く追従できます。

樹脂モールドや金属ケース入りのセンサは保護性が高い反面、熱が素子へ届くまで時間がかかります。

空気温度を測る場合は、センサ周囲の風速が応答に大きく影響します。

金属面温度を測る場合は、熱伝導グリス、固定圧、絶縁シートの厚みが誤差になります。

「応答時間が短い部品を選んだのに測定が遅い」という場合、部品ではなく取り付け構造が原因のことも多いです。

温度センサは、電気部品であると同時に熱部品でもあるため、熱の伝わり方まで設計対象に含めます。

 

7. 他の温度センサとの違い:測温抵抗体・熱電対・ICセンサ

温度センサには、サーミスタ以外にも測温抵抗体、熱電対、半導体IC温度センサがあります。

サーミスタは高感度で安価ですが、非直線性が強く、広温度範囲や高温域には向きません。

測温抵抗体は精度と安定性に優れますが、抵抗変化が小さいため測定回路がやや重くなります。

熱電対は高温測定に強い一方、冷接点補償や微小電圧測定が必要になります。

IC温度センサは扱いやすい反面、動作電源、通信方式、使用温度範囲の制約を受けます。

目的を「安く常温付近を測る」のか、「高精度で校正する」のか、「数百度を測る」のかで選択肢が変わります。

 

常温付近の高感度測定ならNTCが強い

NTCサーミスタは、-40℃から125℃前後の電子機器温度監視で特に使いやすいセンサです。

この範囲では抵抗変化が大きく、簡単な分圧回路でも十分な電圧変化を得られます。

バッテリー、モータドライバ、電源基板、LED照明、家電の庫内温度などに向いています。

ただし、測温抵抗体のような長期安定性や標準化された高精度測定を期待すると、用途によっては不足します。

絶対温度精度を重視する場合は、許容差の小さいサーミスタを選ぶだけでなく、回路側で校正します。

量産品で「過熱していないか」を見る用途なら、NTCのコストと感度のバランスは非常に優れています。

現場の設備データとして温度を上位へ送る場合は、スマートセンサ化やIO-Linkとは何かの考え方も関係します。

 

高温・高精度・標準化では別方式を検討する

150℃を大きく超えるような高温測定では、サーミスタより熱電対が適する場合があります。

計量管理や校正を重視する温度測定では、白金測温抵抗体が選ばれることも多いです。

マイコン基板上の温度監視だけなら、デジタルIC温度センサの方が実装しやすい場合もあります。

サーミスタは万能ではなく、常温付近での高感度、低コスト、小型化が必要なときに強みを発揮します。

高温域、長期安定性、互換性、校正証明、通信インターフェースまで含めると、最適なセンサは変わります。

設計初期では、温度範囲、必要精度、応答時間、取り付け条件、回路コストを表で比較すると判断しやすくなります。

温度センサ 得意な用途 主な注意点
NTCサーミスタ 常温付近の高感度・低コスト測定 非直線性、自己発熱、許容差
PTCサーミスタ 過熱検出、過電流保護 トリップ条件、放熱、復帰時間
白金測温抵抗体 高精度・長期安定測定 回路が複雑、抵抗変化が小さい
熱電対 高温測定、広温度範囲 冷接点補償、微小電圧、ノイズ
IC温度センサ 基板温度、デジタル出力 電源、通信、使用温度範囲

 

8. サーミスタ選定と実装の注意点

サーミスタ選定では、R25とB定数だけを見て決めると失敗します。

実際には、温度範囲、許容差、形状、応答時間、耐電圧、放熱、取り付け方法を合わせて判断します。

特に温度測定用NTCでは、部品誤差と回路誤差の両方が温度表示に効きます。

保護用PTCでは、周囲温度によって保持電流やトリップ時間が大きく変わります。

試作段階では、机上計算で十分に見えても、実装後に熱結合やノイズで温度がずれることがあります。

量産で使う前に、実機状態で温度プロファイルを取り、必要なら校正値を持たせます。

 

選定時に見るべき仕様

温度測定用NTCでは、まず測定したい温度範囲を決めます。

次に、その範囲内でADC入力が十分に変化するR25と固定抵抗の組み合わせを選びます。

R25の許容差が±1%でも、温度換算では数℃の差になる場合があります。

B定数許容差も高温側や低温側の誤差に効くため、狙い温度から離れた範囲ほど注意が必要です。

チップ型は基板温度を測るのに向き、リード型や樹脂封止型は空気温度や金属面温度の検出に使いやすいです。

ケーブル付きセンサでは、耐水性、耐油性、絶縁耐圧、引き回し時のノイズも確認します。

電源投入時の突入電流抑制用NTCでは、常温抵抗だけでなく、定常時の温度上昇と再投入間隔が重要です。

保護用PTCでは、最大電圧、保持電流、トリップ電流、周囲温度ディレーティングを必ず見ます。

仕様項目 NTC温度測定での意味 PTC保護用途での意味
R25 基準抵抗値、分圧回路の中心 通常時の直列抵抗
B定数 温度感度と換算式に関係する 温度検出用ではしきい値設計に関係する
許容差 温度表示誤差の主因になる 誤トリップや保護遅れに関係する
放熱条件 自己発熱と応答時間に影響する 保持電流と復帰時間に影響する

 

断線・短絡を前提に異常診断を入れる

温度センサは、正常な温度を読むだけでなく、故障したときの判定も重要です。

NTCサーミスタが断線すると、回路構成によってADC入力は電源側または0V側に張り付きます。

短絡した場合も、反対側の端に張り付き、実際にはあり得ない温度として見えることがあります。

ソフト側では、測定可能範囲を超えたADC値をエラーとして扱う設計にします。

例えば-40℃から125℃を測る仕様なら、その範囲外の値を単純に表示せず、センサ異常として分けます。

保護制御では、異常時に安全側へ倒す動作を事前に決めておく必要があります。

冷却ファンを最大出力にする、ヒータを停止する、警報だけ出すなど、装置ごとに安全状態は異なります。

ケーブルが長い場合は、ノイズ、接触抵抗、コネクタ腐食、シールド処理も誤差要因になります。

安全に関わる温度監視では、センサ一本だけに頼らず、過熱保護用の独立回路やPTCを併用することもあります。

入力信号の考え方は、I/Oとは何かを理解しておくと整理しやすくなります。

 

9. まとめ

サーミスタは、温度によって抵抗値が大きく変わる半導体の温度センサです。

NTCは温度上昇で抵抗が下がり、常温付近の温度測定に広く使われます。

PTCは温度上昇で抵抗が上がり、過電流保護や過熱検出に向いています。

B定数式を使えば抵抗値から温度を見積もれますが、温度は必ずKで扱います。

分圧回路では、固定抵抗、ADC入力範囲、基準電圧、自己発熱を同時に確認します。

実務ではR25とB定数だけでなく、許容差、形状、応答速度、放熱条件、断線診断まで含めて選定します。

サーミスタは部品単体で選ぶのではなく、熱の伝わり方、測定回路、ソフト補正を含めて設計することが重要です。