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伝達関数とは?求め方とブロック線図・ラプラス変換

制御工学の入門書を開くと最初に登場するキーワードのひとつが「伝達関数」です。

機械系・電気系・流体系といった物理的に異なるシステムを、すべて同じ枠組みで扱える共通言語として、伝達関数は制御理論の中心に位置づけられます。

しかし「微分方程式とラプラス変換の関係が分からない」「ブロック線図と伝達関数はどうつながるのか」「具体的にどうやって求めるのか」といった疑問は、初学者の最初の壁になりがちです。

本記事では、伝達関数の定義、ラプラス変換による微分方程式の代数化、求め方の手順、ブロック線図との関係、代表例(1次遅れ系・2次遅れ系)、RC回路やばね・質量・ダンパ系などの例題、そして極・零点と応答の関係までを、制御工学初学者にもわかりやすく体系的に解説します。

 

 

1. 伝達関数とは?入出力比をs領域で表したもの

伝達関数(Transfer Function)とは、初期値を全てゼロとした線形時不変システムにおいて、出力  y(t) のラプラス変換  Y(s) と入力  u(t) のラプラス変換  U(s) の比のことです。

 

 G(s) = \dfrac{Y(s)}{U(s)}

 

ここで  s はラプラス変換の複素変数で、「複素周波数」と呼ばれることもあります。

 

伝達関数の本質は、時間領域の微分方程式を、s領域の代数方程式に翻訳することです。微分方程式は手で解くのが面倒な計算ですが、ラプラス変換を使うと微分は s の掛け算、積分は 1/s の掛け算といった具合に、すべて代数演算に置き換わります。

 

これが伝達関数を制御工学で使う最大の理由です。複雑な動的システムを扱うとき、伝達関数で表現すれば、ブロック線図上の足し算・引き算・掛け算で系全体の特性を計算できるようになります。

 

伝達関数は、機械系(ばね・質量・ダンパ系)、電気系(RC・RLC回路)、熱系(加熱炉)、流体系(タンク液位)など、物理的に異なるシステムでも同じ形(1次遅れ・2次遅れ・積分・微分など)にまとめられるという普遍性を持ちます。これにより、ある分野の知見を別の分野に応用しやすくなるのです。

2. ラプラス変換と伝達関数の関係

伝達関数を理解するには、ラプラス変換の役割を押さえることが欠かせません。

2-1. ラプラス変換とは

時間領域の関数  f(t) を、複素周波数領域の関数  F(s) に変換する積分変換です。

 

 F(s) = \mathcal{L} \lbrack f(t) \rbrack = \int_0^{\infty} f(t) e^{-st} dt

 

制御工学では、片側ラプラス変換( t \geq 0)が用いられるのが一般的です。

2-2. 微分・積分の代数化

ラプラス変換の最大の利点は、時間微分・積分が代数演算に変わる点です。

 

時間領域の演算 s領域での表現
 f(t)  F(s)
 \dfrac{df}{dt}  s F(s) - f(0)
 \dfrac{d^2 f}{dt^2}  s^2 F(s) - s f(0) - f'(0)
 \displaystyle \int_0^t f(\tau) d\tau  \dfrac{F(s)}{s}
 f(t-T)  e^{-Ts} F(s)

 

初期値をすべてゼロと仮定すれば、 \dfrac{df}{dt} は単に  sF(s) に置き換わるため、微分方程式が代数方程式になり、解析が大幅に楽になります。

2-3. 主要な関数のラプラス変換

典型的な入力に対するラプラス変換は、覚えておくと例題で役立ちます。

 

  • ステップ入力  u(t) = 1 U(s) = \dfrac{1}{s}
  • ランプ入力  u(t) = t U(s) = \dfrac{1}{s^2}
  • 指数関数  e^{-at} \dfrac{1}{s+a}
  • 正弦波  \sin(\omega t) \dfrac{\omega}{s^2 + \omega^2}
  • 余弦波  \cos(\omega t) \dfrac{s}{s^2 + \omega^2}

3. 伝達関数の求め方|3ステップ

具体的なシステムの伝達関数を求める手順は、次の3ステップに整理できます。

ステップ1:物理法則から微分方程式を立てる

対象とするシステムの物理法則(ニュートンの運動方程式、キルヒホッフの法則、エネルギー保存則など)を使って、入力  u(t) と出力  y(t) の関係を表す微分方程式を導きます。線形時不変システムであれば、この段階で常微分方程式の形になります。

ステップ2:両辺をラプラス変換する

初期値をすべてゼロと仮定して、両辺をラプラス変換します。すると微分・積分の項がすべて  s の冪の代数項に変わり、微分方程式が代数方程式になります。

ステップ3:出力/入力比を整理して  G(s) を得る

得られた代数方程式から  \dfrac{Y(s)}{U(s)} の比を取り出すと、伝達関数  G(s) が得られます。多くの場合、分子と分母が s の多項式になります。

 

 G(s) = \dfrac{b_m s^m + b_{m-1} s^{m-1} + \cdots + b_0}{a_n s^n + a_{n-1} s^{n-1} + \cdots + a_0}

 

分母の最高次数  n を「系の次数」と呼びます。1次遅れ系なら  n = 1、2次遅れ系なら  n = 2 です。

 

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4. 例題1:RC回路の伝達関数

もっとも基本的な例として、抵抗  R とコンデンサ  C の直列RC回路を考えます。入力電圧  u(t)、出力電圧  y(t) をコンデンサ両端電圧と定義します。

 

キルヒホッフの電圧則から次の微分方程式が立ちます。

 

 u(t) = R \cdot i(t) + y(t), \quad i(t) = C \dfrac{dy}{dt}

 

これを整理すると次のようになります。

 

 u(t) = RC \dfrac{dy}{dt} + y(t)

 

両辺をラプラス変換し、初期値ゼロを仮定すると、

 

 U(s) = (RCs + 1) Y(s)

 

したがって伝達関数は、

 

 G(s) = \dfrac{Y(s)}{U(s)} = \dfrac{1}{RCs + 1}

 

これは時定数  T = RC1次遅れ系です。フィードバック制御系の解析でもっとも頻出する基本伝達関数のひとつです。

5. 例題2:ばね・質量・ダンパ系の伝達関数

機械系の代表例として、質量  m、ばね定数  k、減衰係数  c のばね・質量・ダンパ系を考えます。入力は外力  u(t) = F(t)、出力は変位  y(t) = x(t) とします。

 

ニュートンの運動方程式から、

 

 m \dfrac{d^2 x}{dt^2} + c \dfrac{dx}{dt} + k x = F(t)

 

両辺をラプラス変換すると、

 

 (m s^2 + c s + k) X(s) = F(s)

 

したがって伝達関数は、

 

 G(s) = \dfrac{X(s)}{F(s)} = \dfrac{1}{m s^2 + c s + k}

 

分母を  \omega_n^2 2 \zeta \omega_n で書き直すと、よく知られた2次遅れ系の標準形になります。

 

 G(s) = \dfrac{1/m}{s^2 + 2 \zeta \omega_n s + \omega_n^2}, \quad \omega_n = \sqrt{\dfrac{k}{m}}, \quad \zeta = \dfrac{c}{2 \sqrt{m k}}

 

固有角周波数  \omega_n は機械の振動特性を、減衰係数  \zetaオーバーシュートの大きさを決めます。

6. ブロック線図と伝達関数の対応

伝達関数とブロック線図は、表裏一体の関係にあります。ブロック線図上の各四角ブロックには伝達関数が対応し、ブロックの直列・並列・フィードバック結合は、伝達関数の演算で表現できます。

6-1. 直列結合

2つのブロック  G_1(s) G_2(s) が直列につながっている場合、合成伝達関数は両者の積になります。

 

 G(s) = G_1(s) \cdot G_2(s)

6-2. 並列結合

2つのブロックが並列で同じ入力を受け、出力が加算される場合、合成伝達関数は両者の和になります。

 

 G(s) = G_1(s) + G_2(s)

6-3. フィードバック結合

順方向に  G(s)、フィードバック経路に  H(s) がある負帰還ループの場合、閉ループ伝達関数は、

 

 G_{closed}(s) = \dfrac{G(s)}{1 + G(s) H(s)}

 

これら3つの基本演算を使えば、複雑なブロック線図も段階的に簡略化して、最終的に1つの伝達関数にまとめることができます。これを「ブロック線図の等価変換」と呼びます。

7. 極・零点と応答特性の関係

伝達関数の極(pole)は分母多項式の根、零点(zero)は分子多項式の根です。これらの位置がシステムの応答特性を決定します。

 

  • 極が複素左半平面にある:応答は時間とともに収束する(安定)。
  • 極が虚軸上にある:応答が振動し続ける(安定限界)。
  • 極が複素右半平面にある:応答が発散する(不安定)。
  • 極が実軸上の負の値:指数的に減衰する応答。
  • 極が複素共役対:振動を伴う応答(虚部が振動周波数、実部が減衰の速さ)。

 

たとえば1次遅れ系  1/(Ts+1) の極は  s = -1/T(実軸上の負)で、時定数  T の指数減衰応答を持ちます。2次遅れ系では、減衰係数  \zeta の値で極が実軸上の2点( \zeta \geq 1)か複素共役対( \zeta \lt 1)に分かれ、応答も非振動か振動かが変わります。

 

零点は応答の初期挙動や、入力に対する素早い反応を決める要素です。零点が右半平面にあるシステムは「逆応答」を示すことがあり、設計上の注意が必要となります。

 

このように極と零点の配置を見るだけで、伝達関数の応答が定性的に予測できるのが、伝達関数表現の大きな利点です。

 

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まとめ

本記事では、制御工学の根幹である伝達関数について、定義・ラプラス変換との関係・求め方の3ステップ・RC回路とばね質量ダンパ系の例題・ブロック線図との対応・極/零点と応答特性の関係までを体系的に解説しました。

伝達関数は、物理的に異なるシステムを共通の数式枠組みで扱える強力な道具です。微分方程式をs領域に持ち込んで代数演算に翻訳し、ブロック線図上で系全体を組み立て、極/零点で応答を予測する――この一連の流れが、現代制御理論や周波数解析へ進む基礎となります。手を動かして例題を解き、自分で伝達関数を導けるようになれば、制御工学の世界が一気に開けるでしょう。