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電圧降下とは?計算式と電線サイズの選定

「配線を長く延ばしたら、末端の機器がうまく動かなくなった」

現場でよくあるこのトラブルの原因が、本記事のテーマである電圧降下です。

電圧降下とは、電線自身の抵抗によって、電源から離れるほど電圧が下がっていく現象です。

内線規程には許容値と計算式が定められており、電線サイズを選定するときの重要な判定項目になっています。

本記事では、電圧降下の仕組みと計算式から、内線規程の許容値、具体的な計算例、電線サイズの選定手順までを、表と計算例を交えて体系的に解説します。

 

 

1. 電圧降下とは|電線の抵抗で電圧が下がる現象

電圧降下とは、電線に電流が流れることで、電源側よりも負荷側の電圧が低くなる現象です。

送り出した電圧と届いた電圧の差として、ボルト単位で表されます。

1-1. 電圧降下の仕組み

電線は銅などの導体でできていますが、抵抗は完全にゼロではありません。

わずかな抵抗でも、長い距離を引けば積み重なって無視できない大きさになります。

 

抵抗をもつ電線に電流が流れると、電線の両端には電圧の差が生じます。
この差の分だけ、負荷に届く電圧は電源の電圧より低くなります。

 

たとえば電源側が102Vでも、配線で4V下がれば末端は98Vしかありません。
電線が細いほど、距離が長いほど、電流が大きいほど、電圧降下は大きくなります。

 

つまり電圧降下は、電線という「見えない抵抗」が引き起こす宿命的な現象です。
ゼロにはできないため、許容範囲に収まるよう設計でコントロールします。

1-2. 電圧降下が引き起こす問題

電圧が下がると、負荷側の機器にさまざまな不具合が起こります。

代表的なのは、電動機のトルク不足と始動不良です。

 

電動機のトルクは電圧の2乗にほぼ比例するため、電圧が10%下がるとトルクは約2割も低下します。
照明であれば明るさの低下、ヒーターであれば出力の低下につながります。

 

また、電線の抵抗で消費されたエネルギーは、すべて熱になって失われます。
このジュール熱による損失は、電力と電力量の考え方で電気料金の無駄として定量化できます。

 

電圧降下は、機器の性能低下と電力損失という二重の損をもたらします。
だからこそ、配線設計の段階で必ず計算して確認するのです。

1-3. 電圧変動・瞬時電圧低下との違い

電圧降下と混同されやすい用語に、電圧変動と瞬時電圧低下があります。

電圧降下は配線の抵抗による定常的な低下で、負荷が同じなら値も一定です。

 

一方、電圧変動は大きな負荷の入り切りなどで電圧が一時的に上下する現象です。
コピー機の起動でパソコンの電源がふらつくのは、電圧変動の典型例です。

 

瞬時電圧低下は、送配電系統の落雷事故などで0.07〜0.2秒程度だけ電圧が下がる現象です。
「瞬低」と略され、需要家側の配線設計では対処できない外的要因です。

 

本記事で扱うのは、配線設計で管理できる定常的な電圧降下です。
原因が違えば対策も違うため、まず用語を切り分けて理解しておきましょう。

1-4. 高圧側で問題になりにくい理由

電圧降下が設計上問題になるのは、主に低圧側の配線です。

高圧6,600Vの構内配線では、電圧降下はほとんど問題になりません。

 

同じ電力を送る場合、電圧が高いほど電流は小さくて済みます。
6,600Vは200Vの33倍の電圧なので、電流は約33分の1になります。

 

電圧降下は電流に比例するため、電流が小さい高圧側では降下もごくわずかです。
送電線が数十万ボルトまで昇圧するのも、まったく同じ理由です。

 

このため高圧ケーブルの選定では、電圧降下よりも許容電流と遮断容量が決め手になります。
電圧降下の計算が活躍するのは、大電流が流れる低圧の幹線と分岐回路です。

 

2. 電圧降下の基本式|オームの法則で導く

電圧降下の計算式は、難しいものではありません。

基本はすべて、電圧=電流×抵抗というシンプルな関係から導かれます。

2-1. 電線1本あたりの電圧降下

電線1本がもつ抵抗を  r とすると、電流  I が流れたときの電圧降下は次式で表されます。

 e_1 = I \times r

 

これはオームの法則そのものです。
電線を1個の抵抗器とみなせば、両端に生じる電位差が電圧降下になります。

 

つまり、電線の抵抗値さえ分かれば、電圧降下は掛け算1回で求められます。
あとは「電線の抵抗をどう求めるか」だけが問題になります。

2-2. 往復2本分で考える

実際の回路では、電気は行きの電線を通って負荷に届き、帰りの電線を通って戻ります。

そのため単相2線式では、電圧降下も行きと帰りの2本分を考える必要があります。

 

電線1本あたりの降下が  e_1 なら、負荷から見た線間の電圧降下は次のようになります。

 e = 2 \times I \times r

 

行きの電線と帰りの電線は、回路として直列につながっています。
直列につながった抵抗が足し合わされるのは、合成抵抗の計算とまったく同じ考え方です。

 

「往復分を忘れて半分の値で計算してしまう」のは、初学者に多いミスです。
こう長(配線の片道距離)と電線の総延長を区別して覚えておきましょう。

2-3. 電線の抵抗を決める3要素

電線の抵抗は、材質・長さ・断面積の3つで決まります。

抵抗率を  \rho、長さを  L、断面積を  A とすると次式になります。

 r = \rho \times \dfrac{L}{A}

 

長さに比例して抵抗は大きくなり、断面積に反比例して小さくなります。
「長く引くほど不利、太くするほど有利」という直感どおりの関係です。

 

材質については、配線用の電線はほぼ銅と考えて差し支えありません。
軟銅の抵抗率は約0.0178Ω・mm²/mで、この数値が次に述べる係数の正体です。

2-4. 係数17.8の由来

軟銅線の導電率は、規格上1mあたり1/56Ω・mm²とされています。

つまり断面積1mm²・長さ1mの銅線の抵抗は、約1/56=0.0178Ωです。

 

電線1本あたりの電圧降下は、これを使って次のように書けます。

 e_1 = \dfrac{L}{56 \times A} \times I = \dfrac{17.8 \times L \times I}{1000 \times A}

 

分母分子に1000を掛けて整理すると、係数17.8が現れます。
これが内線規程の簡易式に登場する17.8、35.6、30.8の出発点です。

 

35.6は17.8の2倍で、往復2本分の電圧降下を表します。
30.8は17.8の√3倍で、三相回路の線間電圧降下を表します。

2-5. 電線の温度と抵抗の関係

銅の抵抗は一定ではなく、温度が上がるとともに増加します。

銅の抵抗温度係数は1℃あたり約0.4%で、温度が50℃上がれば抵抗は約2割増えます。

 

大電流が流れて電線自身が発熱すると、抵抗が増えてさらに電圧降下が大きくなります。
夏場の高温環境や、許容電流いっぱいで使う幹線では、この影響が無視できません。

 

簡易式の係数は、こうした実使用温度をある程度織り込んだ実用値です。
それでも判定が許容値ぎりぎりの場合は、温度上昇分の余裕を見ておくのが安全側の設計です。

 

「電流→発熱→抵抗増→さらに降下」という連鎖を頭に入れておきましょう。
電圧降下と発熱は、同じ抵抗が生む表裏一体の現象です。

 

3. 配電方式ごとの簡易計算式

内線規程に基づく電圧降下の簡易式は、配電方式ごとに3つあります。

いずれも、こう長  L(m)、電流  I(A)、断面積  A(mm²)を代入するだけで使えます。

3-1. 単相2線式の計算式

100Vのコンセント回路や照明回路で最も多い、単相2線式の式です。

 e = \dfrac{35.6 \times L \times I}{1000 \times A}

 

係数35.6は、電線1本分の17.8を往復2本分にした値です。
求まる  e は線間の電圧降下で、単位はボルトです。

 

一般住宅から工場の制御回路まで、最も出番の多い式です。
まずはこの式を確実に使えるようにしておきましょう。

3-2. 三相3線式の計算式

工場の動力幹線で標準的な、三相3線式の式です。

 e = \dfrac{30.8 \times L \times I}{1000 \times A}

 

係数30.8は、17.8に√3(約1.732)を掛けた値です。
三相回路では線間電圧と相電圧の間に√3倍の関係があるため、この係数になります。

 

三相方式の電圧・電流の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。

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3-3. 単相3線式の計算式

100Vと200Vを同時に取り出せる、単相3線式の式です。

 e = \dfrac{17.8 \times L \times I}{1000 \times A}

 

単相3線式では、電圧線と中性線の間(大地間)の電圧降下を計算します。
負荷が平衡していれば中性線に電流が流れないため、係数は片道1本分の17.8になります。

 

注意点は、判定の基準電圧に105Vを使うことです。
線間の210Vではなく、電圧線と中性線の間の105Vを基準に許容値を計算します。

3-4. 3つの式の使い分けまとめ

3つの簡易式を一覧表に整理します。

配電方式 係数 電圧降下の対象 主な用途
単相2線式 35.6 線間 コンセント・照明回路
単相3線式 17.8 大地間(電圧線〜中性線) 住宅・ビルの引込幹線
三相3線式 30.8 線間 動力幹線・電動機回路

 

係数の関係は「17.8を基準に、2倍が35.6、√3倍が30.8」と覚えると忘れません。
どの式も、こう長はm、電流はA、断面積はmm²(sq)で代入します。

 

なお簡易式は、電線の抵抗だけを考えた近似式です。
こう長が短い屋内配線では十分な精度ですが、長距離・大電流の場合は後述するインピーダンス法を使います。

3-5. 簡易式が使える条件と限界

簡易式は便利ですが、どんな回路にでも使えるわけではありません。

前提となっているのは、電線のリアクタンス分を無視できるという条件です。

 

電線が細く、こう長が短い屋内配線では、抵抗に比べてリアクタンスはごく小さくなります。
このような回路では、簡易式でも実用上十分な精度が得られます。

 

一方、太いケーブルではリアクタンスの比重が大きくなり、簡易式の誤差が広がります。
断面積60sqを超えるような幹線や、力率の低い負荷では、リアクタンスを含めた詳細計算が望まれます。

 

もう1つの前提は、負荷の力率がおおむね1に近いことです。
電動機が多く力率が低い動力幹線では、簡易式の値は実際より小さめに出る傾向があります。

 

「細い電線・短い距離・力率良好なら簡易式、太い・長い・力率が低いなら詳細計算」と覚えてください。
使い分けの判断そのものが、設計者の腕の見せどころです。

 

4. 電圧降下の許容値|内線規程の基準

計算した電圧降下が適切かどうかは、内線規程の許容値と比べて判定します。

許容値は、標準電圧に対するパーセントで定められています。

4-1. 原則は2%以下

内線規程では、低圧配線の電圧降下は幹線・分岐回路それぞれで標準電圧の2%以下と定められています。

標準電圧100Vなら2V、三相200Vなら4Vが上限の目安です。

 

ただし、構内に変圧器を設置して供給する場合、幹線の電圧降下は3%以下まで認められます。
自前の変圧器ならタップ調整で送り出し電圧を補正できるため、基準が緩和されているのです。

 

幹線と分岐を合わせた全体ではなく、それぞれの区間で判定する点に注意してください。
幹線で2%、分岐で2%なら、末端では最大4%下がっている計算になります。

4-2. こう長が長い場合の緩和

こう長が60mを超える場合は、距離に応じて許容値が緩和されます。

幹線・分岐に分けず、供給点から末端までの全体で判定できるようになります。

こう長 電力会社から低圧受電 構内変圧器から供給
60m以下 2%以下 3%以下
120m以下 4%以下 5%以下
200m以下 5%以下 6%以下
200m超過 6%以下 7%以下

 

距離が長いほど基準が緩いのは、経済性への配慮です。
長距離で2%を守ろうとすると、電線が非現実的なほど太くなってしまうためです。

 

構内変圧器からの供給で許容値が1%上乗せされるのも、同じ趣旨です。
キュービクルをもつ工場やビルでは、緩和後の数値で判定できます。

4-3. 電気事業法が定める電圧の維持範囲

そもそもなぜ2%なのかは、法令上の電圧維持義務から逆算すると理解できます。

電気事業法に基づき、電気事業者は供給電圧を一定範囲に維持する義務を負っています。

 

維持すべき範囲は、標準電圧100Vに対して101±6V、200Vに対して202±20Vです。
受電点で最低95Vの可能性がある以上、構内でさらに大きく下げるわけにはいきません。

 

受電点の電圧が下限側に振れても、構内の降下が2%程度なら機器は定格近くで動けます。
許容値は、供給側の変動と構内の降下を合算しても機器が正常に動く範囲として設計されているのです。

4-4. 許容値ぎりぎり設計の落とし穴

計算上2%以内に収まっていても、安心できないケースがあります。

代表例が、電動機の始動電流です。

 

誘導電動機の始動時には、定格の5〜7倍の電流が流れます。
定格電流で2%の設計でも、始動の瞬間には10%を超える電圧降下が起こり得ます。

 

始動時の電圧不足はトルク不足を招き、始動失敗や保護装置の動作につながります。
大きな電動機を抱える回路では、始動時の電圧降下も別途確認するのが実務の鉄則です。

 

また、将来の負荷増設を見込んでおくことも重要です。
増設のたびに幹線を引き替えるのは高くつくため、初期設計で余裕をもたせておきます。

4-5. 電圧降下率という表し方

電圧降下の大きさは、ボルト値そのものよりもパーセントで表すことが一般的です。

この百分率を電圧降下率と呼び、次式で計算します。

 \varepsilon = \dfrac{e}{V} \times 100

 

 e は電圧降下のボルト値、 V は標準電圧です。
たとえば100V回路で1.8Vの降下なら、電圧降下率は1.8%となります。

 

パーセントで表す利点は、電圧の異なる回路どうしを同じ物差しで比べられることです。
100V回路の2Vと200V回路の2Vでは、負荷への影響がまったく違います。

 

内線規程の許容値がパーセント表記なのも、この理由によります。
計算結果は必ず降下率に直してから、許容値と比較する癖をつけましょう。

 

5. 電圧降下の計算例

ここからは、実際の数値で電圧降下を計算してみます。

式に代入して、許容値と比べて、だめなら太くする、という流れを体感してください。

5-1. 例題1|単相2線式の分岐回路

単相2線式100Vの回路で、こう長20m、負荷電流20A、電線5.5sqの場合を計算します。

 e = \dfrac{35.6 \times 20 \times 20}{1000 \times 5.5} \fallingdotseq 2.6 \text{V}

 

電圧降下は約2.6Vで、標準電圧100Vに対して2.6%です。
分岐回路の許容値2%(2V)を超えているため、このままでは不適合です。

 

電線を1サイズ上の8sqに変更して再計算します。

 e = \dfrac{35.6 \times 20 \times 20}{1000 \times 8} \fallingdotseq 1.8 \text{V}

 

1.8V(1.8%)となり、2%以内に収まりました。
このように「計算→判定→サイズアップ→再計算」を繰り返すのが基本手順です。

5-2. 例題2|三相3線式の動力幹線

三相3線式200Vの幹線で、こう長50m、負荷電流50A、電線14sqの場合を計算します。

 e = \dfrac{30.8 \times 50 \times 50}{1000 \times 14} \fallingdotseq 5.5 \text{V}

 

電圧降下は約5.5Vで、200Vに対して2.75%です。
幹線の許容値2%(4V)を超えているため、サイズアップが必要です。

 

電線を22sqに変更して再計算します。

 e = \dfrac{30.8 \times 50 \times 50}{1000 \times 22} \fallingdotseq 3.5 \text{V}

 

3.5V(1.75%)となり、許容値に収まりました。
三相回路では係数30.8を使うこと、判定の基準が線間電圧200Vであることがポイントです。

5-3. 例題3|必要な電線サイズの逆算

許容値から必要な断面積を逆算することもできます。

簡易式を断面積  A について解くと、次のようになります。

 A \geq \dfrac{35.6 \times L \times I}{1000 \times e}

 

単相2線式100V、こう長30m、負荷電流30A、許容電圧降下2Vで計算します。

 A \geq \dfrac{35.6 \times 30 \times 30}{1000 \times 2} \fallingdotseq 16.0 \text{mm}^2

 

16.0mm²以上が必要なので、規格サイズから22sqを選定します。
電線の断面積は2、3.5、5.5、8、14、22、38sqと飛び飛びの規格値なので、計算値の直近上位を選びます。

5-4. 例題4|直径表記のVVFケーブルを換算する

住宅や小規模設備で多用されるVVFケーブルは、断面積ではなく導体の直径で呼ばれます。

簡易式に代入するには、直径  d を円の面積の公式で断面積に換算します。

 A = \dfrac{\pi \times d^2}{4}

 

直径1.6mmなら約2.0mm²、直径2.0mmなら約3.1mm²、直径2.6mmなら約5.3mm²です。
この換算値を使えば、VVFケーブルでも同じ式で電圧降下を計算できます。

 

単相2線式100V、VVF2.0mm(3.1mm²)、こう長15m、負荷電流15Aで計算してみます。

 e = \dfrac{35.6 \times 15 \times 15}{1000 \times 3.1} \fallingdotseq 2.6 \text{V}

 

降下率2.6%で、許容値2%を超えてしまいました。
細い直径表記のケーブルは、距離が延びるとすぐに電圧降下がネックになることが分かります。

5-5. 計算結果を整理するコツ

計算例をまとめると、次の表のようになります。

例題 条件 当初の結果 対策後
例題1(単相2線) 20m・20A・5.5sq 2.6V(2.6%)不適合 8sqで1.8V(1.8%)
例題2(三相3線) 50m・50A・14sq 5.5V(2.75%)不適合 22sqで3.5V(1.75%)
例題3(逆算) 30m・30A・2V以下 必要16.0mm² 22sqを選定

 

実務では、回路ごとにこう長・電流・電線サイズ・電圧降下を一覧表にして管理します。
表にしておけば、負荷の追加や配線変更のときも素早く再判定できます。

 

6. 電線サイズ選定の手順と実務の注意点

電線サイズは、電圧降下だけで決まるわけではありません。

許容電流とセットで、2段階のチェックを通すのが正しい手順です。

6-1. 許容電流と電圧降下の2段階チェック

電線サイズ選定の第一関門は、許容電流です。

電線には安全に流せる電流の上限があり、超えると絶縁被覆が劣化・溶損します。

 

まず負荷電流に対して十分な許容電流をもつサイズを仮選定します。
次に、そのサイズで電圧降下を計算し、許容値以内かを確認します。

 

こう長が短ければ、許容電流で決めたサイズがそのまま通ることがほとんどです。
しかし距離が長くなると、電圧降下側の要求が厳しくなり、サイズアップが必要になります。

 

「許容電流はOKなのに電圧降下でNG」が、長距離配線の典型パターンです。
2つのチェックは順番も含めてセットで覚えてください。

6-2. 電圧降下を抑える4つの方法

電圧降下を小さくする手段は、式の変数を見れば自然に導けます。

方法 式の上での意味 実務での例
電線を太くする 断面積Aを大きくする 幹線のサイズアップ
距離を短くする こう長Lを小さくする 分電盤を負荷の近くに置く
電流を小さくする 電流Iを小さくする 供給電圧を200V・400Vに上げる
回路を分割する 1回路あたりのIを減らす 大負荷の専用回路化

 

最も確実なのは電線を太くすることですが、コストとのバランスが問題になります。
過剰に太いケーブルは材料費も施工費も跳ね上がるためです。

 

設計の上手な現場は、分電盤の配置で距離そのものを短くしています。
「太くする前に、近くできないか」を考えるのが経済設計のコツです。

6-3. インピーダンス法による詳細計算

簡易式は電線の抵抗分だけを考えており、リアクタンス分を無視しています。

こう長が長い場合や大電流の幹線では、リアクタンスを含めたインピーダンス法で計算します。

 e = K \times I \times (R \cos\theta + X \sin\theta) \times L

 

 K は配電方式の係数で、単相2線式は2、三相3線式は√3、単相3線式の大地間は1です。
 R X はケーブル1kmあたりの抵抗とリアクタンス、 \cos\theta は負荷力率、 L はkm単位のこう長です。

 

リアクタンスを考慮すると、同じ条件でも簡易式より厳しい(大きい)結果になります。
抵抗とリアクタンスを合成した考え方については、以下の記事をご覧ください。

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6-4. 実務でのチェックポイント

最後に、電圧降下に関する実務の確認事項を整理します。

設計時だけでなく、トラブル調査のときにも使えるリストです。

 

第一に、こう長は図面上の直線距離ではなく、実際の配線ルートで測ります。
立ち上がり・立ち下がりや迂回を含めると、直線距離の1.5倍前後になることも珍しくありません。

 

第二に、幹線と分岐のどちらの許容値で判定しているかを明確にします。
幹線2%・分岐2%の区別と、こう長60m超の緩和の適用可否を確認してください。

 

第三に、電動機負荷では始動電流時の電圧降下も検討します。
定格時に余裕があっても、始動時に電圧不足となる設計は実務では通用しません。

 

第四に、既設設備の不調調査では、末端での実測電圧が有力な手がかりになります。
負荷運転時に末端電圧を測り、計算値と突き合わせれば、接続部の緩みなど異常な抵抗の発見にもつながります。

6-5. 接触抵抗による異常な電圧降下

計算どおりにならない電圧降下の代表的な原因が、接続部の接触抵抗です。

端子の締め付け不足や経年の緩みがあると、その1点に余分な抵抗が生まれます。

 

接触抵抗の怖いところは、電圧降下と発熱が1点に集中することです。
電線全体に分散する正常な電圧降下と違い、接続部だけが局所的に過熱します。

 

過熱は接触面の酸化を進め、酸化はさらに抵抗を増やすという悪循環に陥ります。
放置すれば端子の溶損や火災につながる、見逃せない劣化モードです。

 

対策の基本は、規定トルクでの締め付けと、定期的な増し締め・点検です。
サーモグラフィで接続部の温度を確認すれば、緩みを非接触で早期発見できます。

 

設計値より大きな電圧降下が実測されたら、まず接続部を疑ってください。
電圧降下の計算値は、設備の健全性を測る「ものさし」としても役立つのです。

まとめ

本記事では、電線の抵抗によって末端の電圧が下がる「電圧降下」について、その仕組みと基本式から、配電方式ごとの簡易計算式、内線規程の許容値、計算例、電線サイズの選定手順までを体系的に解説しました。

電圧降下は、単相2線式なら  e = \dfrac{35.6 \times L \times I}{1000 \times A} のように、こう長・電流・断面積から簡単に計算できます。

許容値は幹線・分岐それぞれ標準電圧の2%以下が原則で、こう長60mを超える場合は段階的に緩和されます。

電線サイズは、許容電流と電圧降下の2段階チェックで決定します。

 

電圧降下の計算は、配線設計の品質を左右する基本スキルです。
本記事の計算例を出発点に、現場の配線を自分の手で計算してみてください。