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溶接記号の一覧と読み方|図面の書き方をJISで解説

図面に並ぶ三角形やV字のマーク。

溶接を指示するための溶接記号は、設計者の意図を製造現場へ正確に伝える「共通言語」です。

しかし、いざ自分で図面を描こうとすると「基線の上と下、どちらに記号を置くのか」「寸法はどこに書けばよいのか」と迷ってしまう方は少なくありません。

記号の読み間違いは溶接不良や手戻りに直結し、逆に正しく使いこなせるだけで、設計品質と現場のコミュニケーションは一段階上がります。

本記事では、JIS Z 3021に準拠した溶接記号の一覧と読み方を、すみ肉溶接・開先溶接の具体例から図面への記入手順まで徹底的に解説します。

 

 

1. 溶接記号とは

溶接記号とは、図面上で溶接の種類・位置・寸法・仕上げ方法などを簡潔に表すための図記号です。

日本ではJIS Z 3021(溶接記号)によって規定されており、国際的にはISO 2553がほぼ同等の内容を定めています。

 

溶接部の形状を文章だけで指示しようとすると、説明文が膨大になるうえ、解釈のズレが起きやすくなります。

たとえば「T継手の手前側に脚長6mm、長さ50mmのすみ肉溶接を施す」という情報を文字で書くと、一文だけでもこれだけの長さが必要です。

これが10箇所以上にもなれば、図面の注記欄はすぐに飽和してしまいます。

 

溶接記号を使えば、わずか数個の記号と数値で「どこに」「どの種類の溶接を」「どの程度の大きさで」施工するかを一意に伝えることができます。

記号に慣れた技能者であれば、図面を一目見ただけで溶接の全情報を把握できるため、作業着手までの時間を大幅に短縮できます。

 

溶接記号を正しく読み書きすることは、設計者だけの仕事ではありません。

溶接技能者は記号を読んで施工内容を理解する必要がありますし、品質管理担当者や検査員は記号と実際の溶接部が一致しているかを検証します。

つまり、図面に関わるすべてのメンバーにとって、溶接記号は不可欠な共通言語なのです。

 

JIS Z 3021は最新版が2010年に改正されており、国際規格ISO 2553:2019とほぼ整合した内容になっています。

ただし、細部の表記方法にはJIS固有のルールが残っているため、国際図面を扱う際にはJIS版とISO版の違いに注意が必要です。

 

溶接記号は大きく分けて「基本記号」「補助記号」「寸法表示」の3つの要素で構成されています。

これらの要素を「矢」「基線」「尾」という3つの骨格部品の上に配置することで、1つの完結した溶接指示が完成します。

 

なお、溶接記号は溶接の「指示」に使う記号であり、溶接そのものの品質や結果を表すものではありません。

溶接部に欠陥がないかどうかは、非破壊検査などの別の手段で確認する必要があります。

記号を正しく指示し、施工と検査で品質を担保するという一連の流れが、溶接品質管理の全体像です。

 

2. 溶接記号の基本構造

溶接記号の骨格は、「矢」「基線」「尾」の3つの線で構成されています。

この3要素は、溶接記号を読み書きする際の最も基本的な知識です。

図面を前にしたとき、まずこの骨格を把握することが記号解読の第一歩になります。

 

矢(やじるし)

矢とは、溶接を施す接合部を指し示す線です。

図面上では、接合部に向かって斜めに引かれた実線として描かれます。

矢の先端が接触している母材の面を「矢の側」と呼び、反対の面を「反対側」と呼びます。

 

矢は1つの溶接記号につき1本が基本ですが、複数の溶接箇所をまとめて指示する場合には、1つの基線から複数の矢を引くことも許容されています。

ただし、矢ごとに溶接条件が異なる場合は、それぞれ別の溶接記号として独立させるのが原則です。

 

矢の方向は自由に選べますが、基線との角度が極端に浅い(水平に近い)と、矢がどの接合部を指しているのか判別しにくくなります。

図面を描く際には、矢の指示対象が一目で分かるような角度と長さを意識しましょう。

 

基線(きせん)

基線は、矢から水平方向に伸びる実線です。

溶接記号の「台座」にあたり、基本記号や寸法は、すべてこの基線を基準に配置されます。

 

JIS Z 3021では、基線に対する記号の配置ルールが厳密に決められています。

このルールこそが、溶接記号の読み書きにおける最大の関門です。

 

  • 矢の側(手前側)の溶接を指示する場合 → 基本記号を基線の下側に描く
  • 反対側(向こう側)の溶接を指示する場合 → 基本記号を基線の上側に描く

 

この「上下の使い分け」を間違えると、溶接する面がまるごと反転してしまいます。

とくにT継手で片側のみすみ肉溶接をする場合、記号の上下を間違えるだけで溶接する面が変わり、構造物の強度計算そのものが成立しなくなるケースすらあります。

 

「矢の側は基線の下」――このフレーズを丸暗記してしまうのが、最も確実な覚え方です。

迷ったらこのフレーズに立ち返ることで、配置を間違えるリスクを大幅に減らすことができます。

 

尾(おび)

尾は、基線の矢と反対側の端に付けられるV字型の分岐線です。

溶接方法の指定(たとえば被覆アーク溶接、MAG溶接、TIG溶接など)や、溶接施工に関する特別な指示事項を補足する場合に使います。

 

具体的には、尾の内側に溶接方法を表す略号(例:MAG、TIG、SAWなど)を記入します。

この略号はJIS Z 3001(溶接用語)やISO 4063で定義されています。

 

特に補足情報がなければ、尾は省略して構いません。

実務上は尾を使わない記号の方が多く、溶接方法は図面の注記欄や溶接施工要領書(WPS)で別途指定するのが一般的です。

 

この3要素――矢・基線・尾――に、基本記号・寸法・補助記号を組み合わせることで、溶接の全情報を1つの記号に集約することができます。

 

溶接記号を初めて学ぶ方は、まず矢と基線の関係をしっかり理解することが重要です。

尾や補助記号は使用頻度がそこまで高くないため、最初は「矢で場所を指し、基線の上下で面を区別し、基本記号で種類を示す」という3ステップを意識してください。

このシンプルな構造を押さえたうえで、寸法や補助記号などの詳細を段階的に習得していくのが効率的な学習順序です。

 

3. 基本記号の一覧

基本記号とは、溶接部の断面形状を表す図形記号です。

基線の上または下に配置することで、溶接の種類を一目で示すことができます。

基本記号は溶接記号の「核心」であり、この記号を見るだけで溶接部の大まかな形状がイメージできるように設計されています。

 

JIS Z 3021に規定されている主要な基本記号を以下にまとめます。

 

記号名称 断面形状の特徴 主な用途
すみ肉溶接 直角三角形 T継手、重ね継手、角継手
I形開先 平行な2本の垂直線 薄板の突合せ溶接(開先加工なし)
V形開先 V字型 中板から厚板の突合せ溶接
レ形開先 片側のみ斜面(半V字) T継手、片側アクセスが困難な場合
X形開先 X字型(両面V形) 厚板の突合せ溶接(両面施工)
K形開先 片側X字(両面レ形) 厚板のT継手(両面施工)
U形開先 U字型(丸底) 極厚板で溶着量を抑えたい場合
J形開先 片側U字(片丸底) 極厚板の片側施工で溶着量低減

 

このうち、製造現場で最も頻繁に使われるのがすみ肉溶接V形開先です。

構造物のT継手にはすみ肉溶接が、配管や圧力容器の突合せ継手にはV形またはX形開先が多用されます。

 

I形開先は、板厚が薄い場合(概ね6mm以下)に使われます。

端面を加工せずにそのまま突き合わせるため、厳密には「開先加工なし」の状態です。

薄板であれば母材を溶かすだけで十分な溶け込みが得られるため、わざわざ溝を掘る必要がないのです。

 

板厚が大きくなると、母材の端面から溶接金属が十分にルート(底部)まで到達しなくなります。

このため、母材の端面に溝を設けて溶接金属を充填する空間を確保する必要があり、これが「開先」です。

開先の形状は、板厚・継手形式・溶接方法・施工条件によって選定されます。

 

各基本記号の図形は、実際の溶接部の断面形状をそのまま図案化したものです。

V形開先の記号がV字型なのは、母材の端面をV字に削って溝を作ることに由来しています。

すみ肉溶接の記号が三角形なのは、すみ肉溶接ビードの断面がほぼ直角三角形になることに由来しています。

つまり、記号の見た目から溶接断面をイメージできるように設計されているのです。

 

基本記号の中には、上記以外にもフレア溶接やプラグ溶接、スロット溶接、裏波溶接などの記号がJIS Z 3021に規定されています。

ただし、これらは特殊な用途に限られるため、まずは上記8種を確実に覚えることが実務上の最短ルートです。

 

開先形状の選定は、板厚・継手形式・溶接姿勢・施工コスト・溶接変形の許容度など、複数の因子を総合的に考慮して決定します。

設計段階で開先形状を適切に選定し、それを溶接記号として正確に図面に落とし込むことが、溶接設計の基本フローです。

 

溶接継手の種類と開先形状の関係を簡単に整理すると、次のようになります。

T継手や角継手には主にすみ肉溶接またはレ形・K形開先を適用し、突合せ継手にはI形・V形・X形・U形開先を適用します。

重ね継手はほとんどの場合、すみ肉溶接かスポット溶接で対応します。

基本記号を覚える際のポイントは、記号の形が実際の溶接断面形状を模している点です。

たとえば、すみ肉溶接の記号は三角形ですが、これは実際のすみ肉溶接ビードの断面が三角形になることに対応しています。

V形開先の記号はV字型ですが、これは母材のV字に切った開先形状そのものです。

 

また、表の中で「対称形」と「非対称形」に分類できることも重要な視点です。

V形開先とU形開先は対称形であり、両側から均等に開先を加工します。

一方、レ形開先やJ形開先は非対称形で、片側の母材だけに開先加工を施します。

対称形の開先は角変形(溶接による変形)が小さいメリットがあり、非対称形の開先は加工コストが低いメリットがあります。

設計者はこれらのトレードオフを理解したうえで、適切な開先形状を選定する必要があります。

 

 

4. すみ肉溶接の記号と読み方

すみ肉溶接は、2つの母材が直角またはそれに近い角度で接するT継手・角継手・重ね継手に用いられる、最も一般的な溶接方法です。

鋼構造物においてはすみ肉溶接が溶接箇所の大半を占めると言っても過言ではなく、溶接記号を読む場面でも最も遭遇頻度の高い記号です。

 

基本記号は直角三角形で表され、三角形の直角部分が基線側に接するように描かれます。

直角三角形の向き(右に倒れるか左に倒れるか)は、JIS上は厳密に規定されていますが、実務上は直角が基線側に来ていれば問題なく通用しています。

 

脚長の記入方法

すみ肉溶接で最も重要な寸法パラメータは脚長(きゃくちょう)です。

脚長とは、すみ肉溶接の断面において、溶接ビードが母材表面に接する2つの点間の距離を指します。

等脚すみ肉溶接(最も一般的)では、直角二等辺三角形の等辺の長さが脚長に相当します。

 

脚長の数値は、基本記号(三角形)の左側に記入します。

たとえば脚長6mmのすみ肉溶接を指示する場合、三角形の左に「6」と書きます。

 

不等脚すみ肉溶接(2つの脚長が異なる場合)では、2つの脚長をクロス記号でつないで表記します。

不等脚にする場面は、2つの母材の板厚が大きく異なる場合や、応力方向に応じて非対称にした方が有利な場合などに限られます。

 

のど厚の計算

脚長からのど厚(のどあつ)を求めることができます。

のど厚とは、溶接ビードの断面において、ルート部(母材同士が交差する角の点)から溶接表面までの最短距離です。

溶接部の強度計算では、脚長ではなくのど厚を基準に有効断面積を求めます。

 

等脚すみ肉溶接の場合、のど厚は次の式で計算されます。

 

 a = \dfrac{s}{\sqrt{2}} \approx 0.707 \times s

 

ここで、a はのど厚、s は脚長です。

 

たとえば脚長6mmの場合、のど厚は次のようになります。

 

 a = \dfrac{6}{\sqrt{2}} = \dfrac{6}{1.414} \approx 4.24 \, \text{mm}

 

のど厚は脚長の約70%になるという関係を覚えておくと、図面を見ただけで溶接部の実効サイズを概算できて便利です。

 

溶接長さの記入方法

溶接長さは、基本記号の右側に記入します。

たとえば「脚長6mm、溶接長さ50mm」であれば、基本記号の左に「6」、右に「50」と記載します。

 

溶接長さが母材の全長にわたる場合は、長さの数値を省略することが認められています。

この場合は脚長のみが記入され、「全長にわたって連続溶接する」と解釈されます。

 

断続溶接の場合は、溶接長さのあとに括弧付きでピッチ(繰り返し間隔)を記入します。

たとえば「脚長6mm、溶接長さ50mm、ピッチ100mm」の断続すみ肉溶接は、記号上で次のように表現されます。

 

 6 \quad \triangle \quad 50(100)

 

断続溶接は、連続溶接に比べて溶接変形を抑制できるメリットがあります。

ただし、溶接長さの総計が短くなるため、強度的には連続溶接に劣ります。

変形と強度のバランスを考慮して、連続溶接と断続溶接を使い分けることが設計のポイントです。

 

矢の側と反対側の記号配置

すみ肉溶接の記号で最も注意すべきポイントは、矢の側と反対側の使い分けです。

 

  • 矢が指す面(矢の側)に溶接する場合 → 基本記号を基線の下側に配置
  • 矢の反対面に溶接する場合 → 基本記号を基線の上側に配置
  • 両面に溶接する場合 → 基線の上下両方に基本記号を配置

 

T継手の両面すみ肉溶接は、構造物の強度確保に非常に有効です。

両面に記号を配置する場合、それぞれの脚長を個別に指定できます。

 

すみ肉溶接の強度計算

すみ肉溶接の強度を定量的に評価するには、溶接部に作用するせん断応力を計算します。

有効断面積は「のど厚 x 溶接長さ」で求められます。

 

 A_e = a \times l

 

この有効断面積に対して作用する荷重を除することで、溶接部のせん断応力が算出されます。

 

 \tau = \dfrac{F}{a \times l}

 

ここで、τ はせん断応力、F は作用荷重、a はのど厚、l は溶接長さです。

 

この応力値が母材または溶接金属の許容せん断応力以下であれば、溶接部の安全性が確保されます。

たとえばSS400の許容せん断応力は約80MPa(長期許容応力度の場合)であり、この値を超えないように脚長と溶接長さを設定します。

 

具体的な計算例として、荷重20kN、脚長6mm、溶接長さ50mmの場合を考えます。

 

 \tau = \dfrac{20{,}000}{4.24 \times 50} = \dfrac{20{,}000}{212} \approx 94.3 \, \text{MPa}

 

この値は許容せん断応力80MPaを超えているため、脚長を大きくするか溶接長さを伸ばす必要があります。

たとえば脚長を8mmに変更すると、のど厚は約5.66mmとなり、せん断応力は次のようになります。

 

 \tau = \dfrac{20{,}000}{5.66 \times 50} = \dfrac{20{,}000}{283} \approx 70.7 \, \text{MPa}

 

許容値以下に収まるため、脚長8mmの指定で安全に設計できます。

このように、溶接記号に記入する脚長の根拠は、溶接部の強度計算から導き出されるものです。

 

5. 開先溶接の記号と読み方

開先溶接は、母材の端面に溝(開先)を設けて溶接金属を充填する溶接方法です。

突合せ継手や厚板のT継手で完全溶込み(フルペネトレーション)が必要な場合に使われます。

すみ肉溶接に比べて施工の手間とコストは増しますが、継手効率が高く、母材と同等以上の強度を発揮できるのが最大のメリットです。

 

V形開先

V形開先は、最も代表的な開先形状です。

2枚の母材の端面をそれぞれ斜めに加工し、突き合わせたときの断面がV字になるようにします。

記号はV字型の図形で表されます。

 

V形開先で指定する主な寸法は、開先角度ルートギャップの2つです。

 

開先角度は、2つの斜面が成す角度のことで、基本記号の右側に記入します。

一般的なV形開先の角度は60度が標準です。

角度を小さくすると溶着量を減らせますが、溶接時のアクセス性が悪くなり、融合不良のリスクが高まります。

逆に角度を大きくすると施工しやすくなりますが、溶着量が増えてコストと変形が増大します。

 

ルートギャップ(ルート間隔)は、2枚の母材の端面間に設ける隙間のことです。

溶接金属が裏面まで十分に溶け込むために必要なスペースであり、通常は0から3mm程度に設定されます。

ルートギャップの数値は、基本記号の左側に記入します。

 

たとえば「ルートギャップ2mm、開先角度60度」のV形開先溶接では、基本記号の左に「2」、右に「60度」と表記します。

 

レ形開先

レ形開先は、片方の母材のみ端面を斜めに加工する方法です。

もう片方の母材はストレート(加工なし)のまま突き合わせます。

片側だけの加工で済むため、V形に比べて開先加工の手間が半分になるというメリットがあります。

 

T継手に適用されることが多く、ウェブ(縦板)側を斜めに加工してフランジ(横板)に突き合わせる形状が典型です。

片側からしかアクセスできない構造物でも採用しやすいのが特徴です。

 

ただし、レ形開先はV形に比べて片側にしか斜面がないため、溶込みの確保には注意が必要です。

溶接電流を適切に設定し、ストレート面側にも十分な溶込みを得ることがポイントになります。

 

X形開先とK形開先

X形開先は、V形開先を両面から施工する形状です。

板の表と裏の両方からV字の溝を削り、断面がX字型になるようにします。

 

X形開先の最大のメリットは、溶接変形(角変形)の抑制溶着量の削減です。

両面から均等に溶接するため、片面施工のV形に比べて変形のバランスが良くなります。

 

溶着量の違いを定量的に確認しましょう。

V形開先の溶着断面積は、近似的に次の式で計算されます。

 

 A_V = t \times g + \dfrac{t^2 \times \tan(\theta / 2)}{2}

 

ここで、t は板厚、g はルートギャップ、θ は開先角度です。

 

板厚20mm、ルートギャップ2mm、開先角度60度の場合を計算してみます。

 

V形開先の溶着断面積

 

 A_V = 20 \times 2 + \dfrac{20^2 \times \tan 30°}{2} = 40 + \dfrac{400 \times 0.577}{2} \approx 155.5 \, \text{mm}^2

 

X形開先の溶着断面積

X形開先は片面あたりの深さが板厚の半分(10mm)になるため、次のように計算できます。

 

 A_X = 2 \times \left( 10 \times 2 + \dfrac{10^2 \times \tan 30°}{2} \right) = 2 \times (20 + 28.9) \approx 97.7 \, \text{mm}^2

 

X形開先を選択するだけで、溶着量を約37%削減できることがわかります。

板厚が大きいほどこの差は顕著になるため、厚板の溶接設計ではX形開先が積極的に採用されます。

 

K形開先は、レ形開先の両面版です。

T継手の両面から溶接する際に使われ、X形と同様に溶接変形を抑える効果があります。

 

U形開先とJ形開先

U形開先は、開先の底部(ルート部)を丸く仕上げた形状です。

V形に比べて溶着量を大幅に削減できるため、板厚が非常に大きい場合(概ね40mm以上)に採用されます。

底部が丸いため応力集中も少なく、高品質な溶接部が得られるのがメリットです。

 

J形開先は、U形の片側版です。

V形とレ形の関係と同じように、片方の母材のみ加工する形状です。

 

ただし、U形やJ形の開先加工には専用の切削工具やガス切断技術が必要であり、V形やレ形に比べて加工コストが高くなります。

溶着量の削減効果とコスト増のバランスを考慮して、適切な開先形状を選定することが重要です。

一般的には、板厚30mm以下であればV形またはX形で十分対応でき、40mmを超える場合にU形やJ形の検討が始まるイメージです。

 

開先溶接においては、溶接方法の選定も重要です。

V形やレ形の開先にはアーク溶接(被覆アーク溶接、MAG溶接、TIG溶接など)が広く適用されます。

大型構造物や厚板の溶接ではサブマージアーク溶接(SAW)が使われることもあり、開先形状と溶接プロセスの組み合わせが溶接品質を左右します。

 

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開先溶接を指示する際は、溶接方法との整合性も重要です。

たとえば、被覆アーク溶接(手溶接)では、溶接士の技量にもよりますが、一般的に開先角度を広めに設定します。

これは溶接棒を開先の底部まで到達させるためのアクセス性を確保するためです。

 

一方、TIG溶接やMAG溶接などの半自動・自動溶接では、開先角度をやや狭くしても溶込みを確保できる場合があります。

開先角度を狭くすることで溶着金属量が減り、溶接時間の短縮と変形の低減につながります。

ただし、開先角度を狭くしすぎると融合不良(溶込み不足)の原因になるため、溶接施工要領書で角度の下限を明確に規定しておく必要があります。

 

 

6. 寸法の記入ルール

溶接記号において、寸法値の配置位置には明確な原則があります。

JIS Z 3021で定められた寸法記入のルールを、記号の左側・右側に分けて整理します。

 

基本記号の左側に記入する寸法

基本記号の左側には、溶接の断面に関する寸法を記入します。

断面に関する寸法とは、溶接部を横から切ったときに見える形状を定義する数値です。

 

  • すみ肉溶接 → 脚長(例:6)
  • 開先溶接 → ルートギャップ(例:2)
  • 開先溶接(深さ指定)→ 開先深さ(例:15)

 

基本記号の右側に記入する寸法

基本記号の右側には、溶接の長さ方向に関する寸法を記入します。

長さ方向の寸法とは、溶接線に沿った方向の情報です。

 

  • 溶接長さ(例:50)
  • 開先角度(例:60度)
  • 断続溶接のピッチ(例:100)

 

「左が断面、右が長さ」というルールを覚えておくと、寸法の配置に迷わなくなります。

 

寸法記入の一般形

すみ肉溶接の場合、寸法配置の一般形は次のようになります。

 

 s \quad \triangle \quad l

 

ここで、s は脚長、l は溶接長さです。

 

断続溶接の場合は、長さとピッチをまとめて右側に書きます。

 

 s \quad \triangle \quad l(p)

 

ここで、p はピッチです。

 

開先溶接の場合は、ルートギャップが左側、開先角度が右側に入ります。

 

 g \quad \vee \quad \theta

 

ここで、g はルートギャップ、θ は開先角度です。

 

寸法記入の実務上の注意

実務において最も多い不備は、寸法の記入漏れです。

特に脚長の記入忘れは深刻で、現場が独自の判断で脚長を決めてしまう原因になります。

設計者が意図した強度が確保されない溶接になりかねないため、寸法の記入は確実に行いましょう。

 

逆に、過剰な寸法指定もトラブルの原因です。

たとえばV形開先で開先角度・ルートギャップ・開先深さ・板厚をすべて記入すると、寸法間に矛盾が生じる可能性があります。

参考寸法(括弧付き)と指示寸法を明確に区別し、必要最小限の寸法だけを記入するのが理想です。

 

図面チェックの際には、すべての溶接記号に必要十分な寸法が記入されているかを一箇所ずつ確認する習慣をつけましょう。

チェックリスト方式で検証するのが最も確実な方法です。

寸法記入で特に注意すべきは、単位の扱いです。

JIS Z 3021では、溶接記号に記入する寸法の単位はミリメートル(mm)を基本とし、単位記号は省略します。

つまり、脚長6mmのすみ肉溶接であれば、記号には「6」とだけ記入します。

これはJIS製図の一般原則(寸法はmm単位で記入し、単位記号を省略する)と同じ考え方です。

 

溶接長さを指定する際、断続溶接の場合は「溶接長さ−ピッチ」の形式で記入します。

たとえば「50−100」と記入されていれば、溶接長さ50mm、ピッチ(繰り返し間隔)100mmの断続溶接を意味します。

ピッチは溶接部の中心から次の溶接部の中心までの距離であり、非溶接部の長さではない点に注意が必要です。

 

 

7. 補助記号と仕上げ記号

基本記号と寸法だけでは表しきれない溶接の付加情報を、補助記号と仕上げ記号で補います。

これらを正しく使いこなすことで、図面が持つ情報密度をさらに高めることができます。

 

全周溶接記号

部材の全周にわたって溶接を施す場合に使用します。

基線と矢の交点に小さな円を付けて表します。

 

たとえば、角パイプをベースプレートに溶接する場合、パイプの四辺すべてにすみ肉溶接を指示するのであれば、全周溶接記号を使います。

全周溶接記号がない場合は、矢が指した箇所のみの溶接と解釈されます。

 

全周溶接は水密性(水の侵入を防ぐ)を求められる部位にもよく使われます。

タンクの内部構造物や船舶の隔壁など、液体に接する溶接箇所では全周溶接が必須になるケースが多いです。

 

現場溶接記号

工場ではなく据付現場で溶接を行うことを示す記号です。

基線と矢の交点に旗のマーク(三角旗)を付けて表します。

 

大型の構造物や建築鉄骨では、工場で部材を製作してから現場で組み立て・本溶接を行うのが一般的です。

現場溶接記号があることで、施工計画の段階で「この溶接は現場作業になる」と把握でき、足場の準備や溶接環境の確保などの段取りを事前に進められます。

 

現場溶接は工場溶接に比べて品質管理が難しい傾向があります。

風や雨の影響を受けやすく、溶接姿勢も制約されるためです。

現場溶接が必要な箇所では、溶接条件や検査基準をより厳密に設定することが望ましいです。

 

仕上げ記号

溶接後のビード表面をどのように仕上げるかを指定する記号です。

基本記号の上(反対側の場合は下)に付加して使います。

 

  • 平面仕上げ(直線記号):ビード表面を母材と同一面になるまでグラインダー等で研削します
  • 凸面仕上げ(上に凸の弧):ビードが母材表面より盛り上がった状態に仕上げます
  • 凹面仕上げ(下に凸の弧):ビード表面を凹ませた状態に仕上げます

 

仕上げ記号が指定されていない場合は、溶接したままの状態(アズウェルド)で良いことを意味します。

仕上げ作業は追加のコストと工数がかかるため、必要な箇所にのみ指定するのが合理的です。

 

平面仕上げは、外観品質が求められる製品や、疲労強度を向上させたい箇所で指定されます。

溶接ビードの余盛り(母材表面より盛り上がった部分)は応力集中源になるためです。

 

溶接ビードの余盛りによる応力集中係数は、形状にもよりますが一般的に次の範囲です。

 

 K_t = 1.5 \sim 3.0

 

平面仕上げを施してビードの余盛りを除去すると、応力集中係数を1.0に近づけることが可能です。

繰り返し荷重を受ける部位では、仕上げの有無が部品の疲労寿命に数倍から数十倍の差を生むことがあります。

疲労設計が必要な部位では、仕上げ記号の指定を忘れずに行いましょう。

 

凹面仕上げは、応力の流れをスムーズにしたい場合に指定されます。

すみ肉溶接のビード表面を緩やかに凹ませることで、母材との境界部(止端部)の角度が緩くなり、応力集中が緩和されます。

裏当て金記号

開先溶接の裏側に裏当て金(バッキングストリップ)を使用する場合に付加する記号です。

基本記号の反対側に長方形の記号を付けて表します。

 

裏当て金は、片側からしか溶接できない場合や、初層のビードを安定させたい場合に使用されます。

完全溶込み溶接を片側から行う場合、溶融金属が開先の裏側に流れ落ちるのを防ぐ役割を果たします。

 

裏当て金には「残す(永久裏当て金)」と「除去する(仮裏当て金)」の二種類があります。

永久裏当て金は構造の一部として残りますが、疲労強度の観点からは除去する方が有利です。

裏当て金と母材の境界部に応力集中が生じるため、繰り返し荷重を受ける部位では仮裏当て金を使用し、溶接後に除去する設計が望ましいです。

 

 

8. 溶接記号の実務的な注意点

溶接記号のルール自体は、JIS Z 3021を読めば理解できるように体系化されています。

しかし実務では、規格書には書かれていない「落とし穴」がいくつも存在します。

ここでは、設計者や製図担当者が陥りやすいミスとその対策をまとめます。

 

矢の側と反対側の混同

最も頻発するミスが、基本記号を基線の上下どちらに配置するかの間違いです。

前述のとおり「矢の側は基線の下」がJISのルールですが、無意識に上下を逆に書いてしまうケースが後を絶ちません。

 

特に危険なのは、CADソフトのテンプレートをコピーして使い回す場合です。

テンプレートの矢の向きと実際の図面の矢の向きが異なるまま記号を配置してしまい、結果として上下が反転する事故が起きます。

 

対策としては、溶接記号を配置した後に必ず「この矢はどちらの面を指しているか」を自問し、基本記号の上下と一致しているかをダブルチェックする習慣が有効です。

 

なお、ISO 2553には方式Aと方式Bが存在し、方式Bでは矢の側と反対側のルールがJISと異なります。

国際図面を取り扱う場合は、図面の凡例やタイトルブロックでどちらの方式が使われているかを必ず確認してください。

 

脚長と板厚の関係

すみ肉溶接の脚長を決める際に、「板厚と同じにしておけばよい」と安易に考えるのは危険です。

脚長が厚い方の板厚に合わせて過大に設定されてしまうケースが典型的です。

 

原則として、すみ肉溶接の脚長は薄い方の母材の板厚以下に設定します。

 

 s \leq t_{\min}

 

ここで、s は脚長、 t_{\min} は薄い方の母材板厚です。

 

脚長が板厚を超えると、薄い方の母材が溶接熱で溶け落ちたり、大きな変形を起こしたりするリスクがあります。

また、過大な脚長は溶着量の増大と溶接時間の延長を招くため、コスト面でも不利です。

 

一方、各種設計基準には最小脚長の規定もあります。

厚板同士の溶接では、母材の急冷による低温割れを防ぐために一定以上の入熱量が必要であり、それに対応する最小脚長が定められています。

たとえばAWS D1.1(鋼構造溶接規準)では、板厚に応じた最小脚長の表が規定されています。

 

溶接記号の省略ルール

JIS Z 3021には、図面の煩雑さを軽減するための省略ルールがいくつか用意されています。

 

たとえば、溶接長さが母材の全長にわたる場合は、溶接長さの数値を省略できます。

また、すべての溶接が同一条件の場合は、代表的な1箇所にだけ完全な記号を配置し、残りは「同上」の注記で済ませることも可能です。

 

ただし、省略ルールの適用基準は社内規格や顧客要求によって異なることがあります。

省略して良いかどうか迷ったときは、明示的に記入する方が安全です。

「書きすぎて困ることはないが、書き漏らすと事故になる」――これが製図の鉄則です。

 

非破壊検査の指示

溶接部の内部品質を保証するために、非破壊検査(NDT)を実施する場合があります。

検査方法の指示は、溶接記号の尾の部分に略号で記載するか、図面の注記として追記します。

 

代表的な非破壊検査の略号を示します。

 

略号 検査方法 検出対象
RT 放射線透過試験 内部欠陥(ブローホール、スラグ巻込み)
UT 超音波探傷試験 内部欠陥(融合不良、割れ)
MT 磁粉探傷試験 表面・表面直下の割れ
PT 浸透探傷試験 表面に開口した割れ・ピット

 

完全溶込み溶接を指定した箇所では、RTまたはUTによる内部欠陥の検査が求められるのが一般的です。

すみ肉溶接に対してはMTまたはPTで表面検査を行うケースが多くなります。

 

図面上で検査方法まで明確にしておくことで、製造工程の中に検査のタイミングを組み込みやすくなります。

 

公差との関係

溶接記号で指定した寸法には、一般的な寸法と同様に公差の概念が適用されます。

脚長や開先角度の許容範囲は、図面の一般公差規定や溶接施工要領書(WPS)で定めるのが通常です。

 

たとえば脚長6mmと指定した場合、実際の施工でぴったり6.0mmにするのは現実的ではありません。

一般的には脚長の許容差は指定値以上かつ指定値+3mm以下に設定されることが多く、脚長不足は不合格ですが、若干の余盛りは許容される傾向にあります。

 

開先角度についても同様で、プラスマイナス5度程度の許容差を設けるのが一般的です。

角度が小さすぎると溶込み不良のリスクが高まり、大きすぎると溶着量が増大するため、適切な管理が求められます。

 

CADソフトでの溶接記号

近年の2D/3D CADソフトには、溶接記号を自動生成する機能が搭載されています。

記号の構成要素をダイアログで選択するだけで図面に配置できるため、手描きに比べて格段に効率的です。

 

ただし、CADが生成する記号がJIS Z 3021に完全準拠しているとは限りません。

特に海外製のCADソフトは、デフォルトでAWS(米国溶接協会)規格に基づいた記号を生成する場合があります。

AWSとJISでは矢の側・反対側のルールや寸法の配置位置に細かい違いがあるため、出力後にJIS規格との整合性を必ず確認してください。

 

また、CADの溶接記号テンプレートが古いバージョンのJISに準拠している可能性もあります。

社内のCAD環境を定期的にアップデートし、最新のJIS改正内容を反映させることが重要です。

 

JISとAWSの主な違い

日本国内の図面ではJIS Z 3021を使用しますが、海外メーカーとの取引ではAWS A2.4(米国溶接記号規格)に基づいた図面を受け取ることがあります。

両規格の主な違いを把握しておくことで、海外図面を読む際の混乱を防げます。

 

最も注意すべき点は、ISO 2553の方式Bです。

JISとAWSはともに「矢の側は基線の下」というルールを採用していますが、ISO 2553の方式Bでは「矢の側は基線の上」と逆になります。

ISO準拠の海外図面を受け取った場合は、どちらの方式で描かれているかを必ず確認してください。

 

AWSでは溶接記号の尾に溶接プロセスの略号(例:SMAW、GMAW)を記入する慣習が一般的ですが、JISでは尾の使用頻度がAWSほど高くありません。

海外図面に慣れていない場合でも、「矢・基線・基本記号」の骨格は国際的に共通しているため、まずこの3点を押さえれば大筋は読み取れます。

 

溶接記号と溶接欠陥の関係

溶接記号が正しく記入されていても、施工段階で不備があれば溶接欠陥が発生します。

逆に、記号の指示が曖昧だったために施工者が判断を誤り、欠陥につながるケースも少なくありません。

 

代表的な溶接欠陥としては、アンダーカット(母材が溶けて溝状にえぐれる現象)、ブローホール(溶接金属内に生じる気泡状の空洞)、融合不良(母材と溶接金属が十分に溶け合わない欠陥)などがあります。

 

開先溶接で特に注意すべきは融合不良です。

ルートギャップが狭すぎると溶接金属が底部まで到達せず、未溶融部分が残ります。

図面で指定したルートギャップが現場で正確に再現されるよう、開先加工の精度管理が重要です。

 

すみ肉溶接では脚長不足が最も多い不具合です。

溶接技能者が脚長の指定値を見落としたり、指定値より小さい脚長で施工してしまうケースが散見されます。

脚長不足は溶接部の有効断面積の低下に直結し、設計で想定した強度が確保できなくなる深刻な問題です。

 

図面で溶接記号を正しく指示し、施工段階で記号どおりの溶接が行われているかを検査で確認する――この3つのステップが、溶接品質を確保するための基本サイクルです。

 

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近年の3D CADでは、溶接情報をモデルに直接付与できるPMI(Product Manufacturing Information)機能が普及しつつあります。

PMIを活用すれば、3Dモデル上に溶接記号を配置し、2D図面を介さずに溶接仕様を伝達することが可能です。

ただし、PMIの運用には受け取り側のCAD環境やビューワーの対応が必要であり、現時点では2D図面による溶接記号の指示が主流です。

 

 

9. まとめ

本記事では、JIS Z 3021に基づく溶接記号の体系を、基本構造から実務上の注意点まで解説しました。

 

溶接記号は「矢」「基線」「尾」の3要素で構成され、基線の上下に基本記号を配置することで矢の側と反対側の溶接を区別します。

この「上下のルール」が溶接記号の読み書きの核心であり、「矢の側は基線の下」を確実に覚えることが最初のステップです。

 

基本記号は、すみ肉溶接やV形・レ形・X形・K形・U形・J形の各開先形状を断面図そのままの形で表しています。

すみ肉溶接では脚長と溶接長さ、開先溶接では開先角度とルートギャップが主な寸法パラメータです。

寸法は「左が断面、右が長さ」の原則に従って配置します。

 

補助記号(全周溶接の丸印、現場溶接の旗マーク)や仕上げ記号(平面・凸面・凹面)を追加すれば、施工条件や品質要求まで図面に盛り込むことが可能です。

 

実務では、矢の側と反対側の混同、脚長の記入漏れ、CADソフトの規格不一致といった「落とし穴」に注意が必要です。

図面チェックの際にはこれらのポイントを意識的に確認することで、溶接不良や手戻りを未然に防ぐことができます。

 

溶接記号の読み書きは、一度しっかり学べばそれほど難しいものではありません。

まずは本記事で紹介したすみ肉溶接とV形開先の2つの記号を確実にマスターし、徐々にレパートリーを広げていってください。

溶接記号を使いこなせるようになれば、図面の精度は格段に向上し、設計と現場のコミュニケーションがスムーズになるはずです。

溶接記号が統一された規格として整備されている背景には、溶接技術の発展と安全への要求があります。

かつては各社独自の記号や口頭指示で溶接仕様が伝えられていましたが、それでは解釈の相違による事故や不良が避けられませんでした。

現在ではJIS Z 3021に基づく記号を図面に記載することで、設計意図を正確に伝達できる仕組みが確立されています。

 

基線の長さや矢の角度に厳密な規定はありませんが、図面の見やすさを考慮して適切なサイズで描くことが重要です。

一般的には、基線の長さは溶接記号や寸法が十分に記入できる程度(20mm〜40mm程度)に設定します。

矢は基線に対して60度程度の角度で描くのが慣例ですが、図面のレイアウトに応じて調整して構いません。

 

尾についても補足しておきます。尾は必要な場合にのみ付加するもので、常に必要なわけではありません。

尾に記入する情報としては、溶接方法の略号(MAG、TIG等)、非破壊検査の種類(RT、UT等)、溶接施工要領書の番号などがあります。

尾を省略した場合は、図面の注記や溶接施工要領書で別途指示するのが一般的です。

溶接記号は、設計者・製造者・検査者の間をつなぐ「共通言語」です。

記号を正しく使いこなすことは、製品の品質向上だけでなく、コミュニケーションコストの削減にもつながります。

本記事で解説した知識を実際の図面で繰り返し使うことで、溶接記号の読み書きは自然と身についていきます。