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工程能力指数cpkと工程性能指数ppkの違いについて詳しく解説

日々の業務で品質管理の指標として「Cpk」と「Ppk」の用語を耳にすることがあるかと思います。

しかし、これらの指標が何を意味しているのか、そしてどのように異なるのかを正確に理解している方は少ないかもしれません。

本記事では、品質管理において重要な役割を果たす「Cpk」と「Ppk」について、その違いを中心に詳しく解説します。

 

 

 

Cpk(Capability Process Index、工程能力指数)とは

Cpkは、プロセスが設計仕様(上限値と下限値)に対してどれだけ適合しているかを示す指標です。

この指標は、プロセスの中心が仕様の中心にどれだけ近いか、そしてプロセスの変動がどれだけ少ないかを評価します。

Cpkは主にプロセスの安定性と能力を長期的に評価する目的で使用されます。

 

■活用事例

・新しい製造ラインの能力評価:

新設された製造ラインが設計仕様を満たしているかどうかを評価する際にCpkを使用する。

 

・プロセス改善の前後比較:

プロセス改善活動を行った後、その効果を定量的に評価するためにCpkを用いる。

 

Cpkの計算方法

Cpkは次のように計算されます。

 

 Cpk = min ( \dfrac{USL-μ}{3σ} , \dfrac{μ-LSL}{3σ} )

 

※上記の計算式は、  \frac{USL-μ}{3σ}   \frac{μ-LSL}{3σ} をそれぞれ個別に計算し、値の小さい方をCpk値として採用するという意味。

 

USL(Upper Specification Limit):上限規格値

LSL(Lower Specification Limit):下限規格値

μ:プロセス平均

σ:標準偏差

 

Cpkが高いほど、プロセスは規格内で安定して生産していることを示します。一般的に、Cpkが1.33以上であれば、プロセスは良好とみなされます。

 

Ppk(Performance Process Capability、工程性能指数)

Ppkは、実際のプロセス性能を、設計仕様に対してどれだけ適合しているかを示す指標です。

Ppkは特に、短期間でのプロセス性能を評価するのに適しており、プロセスが時間とともにどのように変動するかを示します。

Ppkは、Cpkと異なり、プロセスの中心の位置を考慮しません。

 

活用事例

・短期間でのプロセス監視:

特定の期間(例えば、ある製品ロットや特定の生産週)における製造プロセスの性能を評価する際にPpkを使用する。


・品質管理のためのモニタリング:

製造プロセスが一定の品質を維持しているかを監視するためにPpkを使用する。

 

Ppkの計算式

Ppkは次のように計算されます。

 

 Ppk = min ( \dfrac{USL-μ}{3s} , \dfrac{μ-LSL}{3s} )

 

USL(Upper Specification Limit):上限規格値

LSL(Lower Specification Limit):下限規格値

μ:プロセス平均

s:サンプル標準偏差

 

PpkもCpkと同様に、高い値が望まれますが、Ppkはプロセスの安定性を前提としないため、プロセスのばらつきや異常を含む実際のデータに基づいた評価となります。

 

CpkとPpkの違いは何か?

CpkとPpkの主な違いは、評価する時間枠にあります。

Cpkは短期間の工程の能力を評価するのに対し、Cpkは長期間の工程の性能を評価します。

これは、工程の変動が時間とともにどのように変化するかを理解する上で重要な区別です。

 

Cpkは、プロセスの能力、つまりプロセスが規格内に製品を一貫して生産できるかどうかを評価する指標であり、プロセスの安定性が前提となります。

Cpkは、プロセスの中心が規格の中央からどれだけずれているかを考慮して計算されます。

 

一方、Ppkはプロセスの実際の性能を評価するための指標であり、長期的なデータに基づいて計算されます。

Ppkは、プロセスが実際にどの程度規格に適合しているかを示し、Cpkと異なり、プロセスが必ずしも安定している必要はありません。

 

違いのまとめ

ここまで述べてきたCpkとPpkの違いについて以下3つの観点で整理します。

 

計算の前提

・Cpkはプロセスが安定していることを前提とします(短期的なデータ)。

・Ppkはプロセスの安定性を前提とせず、長期的なデータに基づきます。


標準偏差の使用

・Cpkは工程の標準偏差(σ)を使用します。

・Ppkはサンプル標準偏差(s)を使用します。

 

評価対象

・Cpkは理論的なプロセス能力を評価します。

・Ppkは実際のプロセス性能を評価します。

 

これらの指標は、プロセス改善や品質管理のための重要なツールとして使用されますが、それぞれの違いを理解して適切に使い分けることが重要です。

 

適用時の注意点

工程能力指数(Cpk)と工程性能指数(Ppk)を実際の製品に適用する際の注意点を以下に示します。

 

工程能力指数(Cpk)適用時の注意点

1.データの期間

Cpkを計算する際には、長期間にわたるデータを使用することが重要です。

これは、Cpkが工程の長期的な能力を評価するためであり、短期間のデータでは正確な評価が難しくなります。


2.プロセスの安定性

Cpkを適用する前に、プロセスが統計的に安定している(制御下にある)ことを確認する必要があります。

不安定なプロセスでは、Cpkによる評価は意味をなさない場合があります。


3.特性の選択

製品の全ての特性がCpkの計算に適しているわけではありません。重要な品質特性に焦点を当て、それらの特性でCpkを計算するべきです。

 

工程性能指数(Ppk)適用時の注意点

1.データの期間

Ppkは短期間のデータに基づいて計算されますが、その期間が代表的であることを確認する必要があります。

特定のロットや期間のデータのみに基づいてPpkを計算する場合、その結果が全体のプロセス性能を正確に反映しているか検討する必要があります。


2.データの変動性

Ppkはプロセスの変動を評価しますが、異常な変動や外れ値が含まれている場合、その評価に影響を与える可能性があります。

データを精査し、異常なデータ点が含まれていないか確認することが重要です。


3.プロセスの改善

Ppkが低い値を示した場合、プロセスの変動性を減らすことによって性能を向上させる必要があります。

プロセス改善の取り組みは、Ppkの結果を基に計画されるべきです。

 

また、共通の注意点として、 CpkとPpkの計算は一度きりの活動ではなく、定期的に実施し、プロセスの変化に対応することが重要です。

これにより、プロセスの品質が一定の水準を維持しているかどうかを確認できます。

 

CpkとPpkの算出に影響を与える要因

CpkとPpkの算出に影響を与える要因について、これまで述べていない視点から説明します。

 

1.工程の温度・湿度などの環境要因

・環境条件の変動はプロセスの安定性やばらつきに直接影響を与えます。例えば、温度変動は材料の膨張や収縮に影響し、プロセスの結果が変わることがあります。

 

2.製造設備の状態とメンテナンス

・製造設備が老朽化すると、機械の精度や信頼性が低下し、製品のばらつきが大きくなります。定期的なメンテナンスや設備の更新が必要です。

・測定機器や製造設備のキャリブレーションが適切でないと、測定結果に誤差が生じCpkおよびPpkの値に影響します。

 

3.操作員のスキルと訓練

・操作員のスキルや経験がプロセスの一貫性に影響を与えます。熟練した操作員は安定した品質を保ちやすく、CpkやPpkの値を向上させます。

・定期的な訓練と教育により、操作員の技術力を向上させることができます。これにより、プロセスのばらつきを減少させることができます。

 

4.材料の品質

・原材料の品質や一貫性がプロセスの結果に直接影響します。原材料のばらつきが大きいと、プロセスのばらつきも大きくなり、CpkおよびPpkの値が低くなります。

 

5.プロセス設計と管理

・プロセス設計が適切であるかどうかが重要です。設計が不適切だと、プロセスのばらつきが大きくなり、CpkおよびPpkの値が低下します。設計段階でばらつきを最小限に抑える工夫が必要です。

 

6.人的要因と組織文化

・人的ミスがプロセスのばらつきを増大させる可能性があります。ミスを防ぐための対策(チェックリスト、二重確認など)が必要です。

 

これらの要因は、CpkおよびPpkの算出において重要な役割を果たし、プロセスの品質とパフォーマンスを評価する際に考慮すべきです。

適切に管理することで、プロセス能力と性能を向上させることができます。