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2022年に読んだ本を振り返る

2022年、1年間に読んだ本を感想とともに振り返る。

https://booklog.jp/users/sakujin/users/sakujin

読んだ本はすべてブクログで記録しており、漫画を除いて今年は計32冊だった。

読書グラフを見てみると、相当でこぼこしている。

2~4月は読書ゼロで5月から急に読書を開始したことがわかる。

これは5月から単身赴任が始まりひとりで過ごす時間が増えたことが原因だ。

単身赴任先のアパートでTVを設置しなかったので家にいる時はネットか読書どちらかの生活になって、読書時間を飛躍的に増やすことができた。

それと資格試験のための勉強時間も確保しやすくなって単身赴任の良い思い出だ。

10月が9冊と単月として最大だったのは、9月初旬にQC検定1級の試験があり、受験後に積読本を一気に読み進めたからだ。

 

2022年もっとも印象に残ったのはこの1冊!

新幹線を待つ間に改札内の書店で買ったこの本が2022年のベスト!

著者によると冷蔵庫はシステム的に完成されており、それに対してクローゼットや本棚は未開拓であり、本棚を手入れすることの効用を説く。ただの整理本ではない。

私自身、本書から影響を多く受け、まず読書中のメモ行為を一変させた。それまでは読書後に気になった箇所をPCでメモアプリに転記していたが、該当ページにカラー付箋を外に出るように貼るだけに変えた。

また、本書で紹介されていた「オールタイムベスト10」というのもさっそく自分verで作ったりもした。これは日々継続してのメンテナンスが必要で、本一冊読み終える度に入替えの必要有無について検討する時間を持つようにもなった。(大体の場合、更新されないが)

また、本書で推薦された本棚とよく似た機構を持つマルゲリータのシェルフを自分も昨年新築にあわせて導入していて、今回再読だったが初回に読んだ時に持ったポジティブな感想が自分ではすっかり忘れていたが潜在意識には記憶されていたのかと感慨深くにもなった。

読書の仕方の本が年間ベストとはなんだかやるせない気もするが、とにかく参考になることが多く、その後の読書スタイルに多大な影響を受けた。

 

2023年の抱負

2023年は単身赴任が終わって家族のもとで生活がはじまる。

ひとりで過ごす時間は以前ほどは多く確保できないけど、上手く時間をやりくりして読書は継続していきたい。政治やリベラルアーツ的なジャンルの本はこれまでにより少し控えめにし、工学(機械寄り)系の本を多く読みたい。

また、春に予定している資格試験もあるので、両立できるよう奮闘したい。

 

 

それでは、2022年に読んだ本をブクログで記載した感想とともに振り返っていく。

 

1月

【2回目の感想】
空いた時間にさらっと通読。章の間に3冊ずつ著者のおすすめ本が紹介してあって、計21冊紹介されてる内の8冊を自分も所有していた。朝リーディングとかは2011年当時読んだ直後に買ったもので、墜落遺体はここ最近買ったものだ。この本で紹介されたことはすっかり忘れていて、何か妙な巡りあわせの気がした。
【1回目(以前)の感想】
新卒1年目か2年目の頃に買ったと思う本だが、10年振りくらいに本棚から出して読んでみた。買ってから2度引っ越しをしているが処分対象にならず手元に置いていた本。
前回読了してからさすがに日が経っているのもあって、内容はほとんど覚えておらず、初見のように楽しめた。以前の自分が赤マーカーを入れたところも多々あって、今見ると琴線に触れる部分は微妙に違っていた。以前の自分は読書にお金を使うことを肯定するような記述に特に線が引かれてあった。継続的な読書こそが自分を成長させ、次のステージに後押ししてくれると信じていたのだと思う。その考えは今も変わらないが。
さて、今回改めて通読して特に印象に残ったのが以下3点。
・分厚い企画書に面白い企画はなく、分厚さというのは自信のなさのあらわれ。(読んだ瞬間ハッとした。)
・速読はテクニックではなく、ゆっくり読むようにすると、結果的に速く読める。読書が心底好きでより多く読みたいから速読をしたいのか、もしくは速読できる自分を他者に誇示したいのかをよく考える。
・気付く力は、その人が背負っているリスクに比例し、リスクとは当事者意識のことだという話。

余談だが、本の雰囲気が、著者が活字本をはじめて読みきったという中谷彰宏氏のそれに似ていると思った。読書をしている人としていない人で30代以降、「顔」が変わる、なんていう話はいかにも中谷氏の著作にもどうような記述がありそうだ。「例外はない」とされているものの科学的根拠は特に提示されないという部分も含めて。

 

5月

社会人1年目の2011年に買った本を再読。過去に一度読んでいるけど、10年ほど経ってるのもあってほぼ初見に近い。過去の自分が引いた赤線とコメントにはいまいち共感できなかった。
学びになったのは以下4点。
・言葉やイメージは具体的でなければならない。具体的とは、今すぐこの場で動ける内容。
・勉強時間=記憶時間+想起時間
・時間がきたらピタリとやめる。思い切りの良さが集中力やモチベーションを高める。
・記憶の仕方はカワラ屋式よりペンキ屋式。
さらっと読めて満足度は高い。

 

やりきる力

やりきる力

Amazon

一度やると決めたなら、脇目を振らずに愚直にそのことだけに集中する。
要約するとそんな簡単なことだけど、実践できている人は少ない。
周囲の目は気にせずに、自分が本心からやりたいと思ったこと、好きなことに没頭することが本書の中で何度も推奨される。また、計画は重視せず、目の前にあることを手当たり次第に取り組んでいけば良いとも推奨される。こういった、場当たり的な行動を著者が勧めていることは意外だった。そのくらい、動き出せない人が多いということか。
色々と刺さる箇所はあったが、特に印象に残ったところは下記。

『塀の中でも一般のビジネスパーソンと同じか、それ以上のアウトプットを続けていた。航空工学の勉強もしていたので、退屈だった時間はすぐに消え去った。たぶん僕は、刑務所生活中も、外にいた普通の会社員よりも充実して過ごしていた。言ってみれば、リモートワークのエキスパートだ。
気持ちさえあれば、制限された現実の環境を、自分の望む通りに買えることはできるのだ。収監という特殊な経験をした僕は、若い人たちに問いたい。
刑務所にいても、やりたいことはできる。あなたたちは、なぜやらないのですか?』

 

「グッピーの惨劇」はあまり切なすぎる、だけど不謹慎にも笑ってしまった。
「引っ越し」は上京してから著者がどんなところに住んでいたか、ちびまる子という作品が生まれた部屋について書かれていて貴重な資料だ。それにしても、旦那の無責任さには驚愕した。搬出の前日に自分の大量の荷物をなんら荷造りせずに、疲れたと言って帰ってしまう精神は理解できないし、代わりに夜通し泣きながら対応した著者も不思議だ。ここの最後でちらりと新築した家が欠陥住宅だったことに触れられていて、もっと読みたい!と思ったがその先は語られていない。何か他の、後に出版されたエッセイでこの新築について書かれたエピソードがあればまた読んでみたいなと思った次第。

 

著者の学生時代の回想。小学5年生での生理の話題から始まって、高校2年秋の文化祭まで。時系列で話が続いていく。ちびまる子の漫画ではなく、さくらももこ氏の学生時代の記憶が、ちびまる子の世界観で再現された感じ。特に印象に残ったのが見知らぬ美容室へ飛び込みで入ったエピソード。著者自身もエッセイなどで散々語っているが、端からみると相当な怠け者だったことがわかる。活動が少なそうという不純な動機で高校では物理部に入ってアマチュア無線の資格を取るくだりは思わず笑ってしまった。ちびまる子でおなじみのたまちゃんは高校生になっても親友だったみたいで、高校生同士のまる子とたまちゃんは、何か変な感じだ。

 

いわゆる0系と呼ばれる初代新幹線から現在建設中の路線も含めて新幹線全般の歴史と進化について書かれている。非常に読みやすい本。今では考えられないような新幹線営業開始直後のトラブルについてが面白い。トイレから汚水が吹き上がるところは当時被害にあった方には申し訳ないが、本当に笑ってしまう。ただ、このエピソードは齋藤雅男著『新幹線 安全神話はこうしてつくられた』からの出典であり、自分にとっては既出だった。(ちなみに汚水被害を受けた方の中には着物の女性もいたようだ。)
新幹線の機械的な構造についてや、電気(動力モータ、架線での電力供給、信号による通信)の部分は初学者が一読して全てを理解はできないが、できるだけ分かりやすく記述しようと著者が努力されたのが伝わる。
過去の地震によって起きた課題やそれをどういった形で対策として反映したかといった分野は自分は今回、この本で初めて学んだ。
新幹線という技術やシステムの世界への輸出というのも、世界のそれぞれの国の様式に沿うよう千差万別のカスタマイズを施す必要があり、日本の特殊な地理・気候・慣習によって成立している今のシステムをそのまま移植することは極めて困難というのも学びになった。

 

6月

2018年10月に購入し、一度読んだ本を3年以上経過した今、2回目の通読。1回目に読んだ時に赤線を引いていた箇所は今回も同じく重要と思った。それと同時に欄外への過去の自分の書き込みにも納得した。(書き込んだことすらすっかり覚えておらず、自分なのにまるで他者のように感じた。)
いちばん刺さったのは以下の言葉。
『気合いは不要。黙ってスッとやる。』
できるビジネスパーソンになるための心構えを説いた本で、学びも多いが、この言葉こそ自分には最も強く響いた。そしてまた、本書を体現するような一文だと思う。千田氏の本は隙間時間にさっと読む、少しずつ読み進めていくのが活用法として合っていると思う。一度の読書時間の「長さ」ではなく「頻度」だ。

 

最近、社会人として資格試験の勉強を始めて、河野さんのYouTubeで10時間勉強Live配信を見るようになったので本書を買ってみた。
特に目新しいことは書いてないけど、こういった勉強本はテクニックを得るものではなく、勉強に向かうマインドを醸成するために読む本だと思っているので、直接的に速攻で効果が出ないのは当然だ。
クイズ番組などで経歴を拝見し、常人離れした天才だと思っていたが、司法試験の勉強中は医学部の勉強は最低限をキープしていたなど裏話もあって、普通の人にも多少の希望は見えた気がする。

本書で最も衝撃を受けたのは、エビングハウスの忘却曲線の説明だ。このこと自体は以前からビジネス書などでも度々引用されていて知っていたが、間違って理解していた。縦軸が「時間経過に対する記憶保有量」だと思っていたが、実は「節約率」という似て非なる概念だった。ネットで調べてみても、記憶の保有率という誤った情報が多数見つかった。私が以前読んだビジネス本でも保有率として表現されていて、この誤りを正せたのが個人的に最大の収穫。(勉強のマインドとは何ら関係ないが・・)

 

【2回目の感想】

4年振りに再読。著者が説く理想の本棚の条件は、以下5点。
・見やすいこと
・2割の余白があること
・勝負本のみを並べる
・多様性は持たせつつ違和感を排除する
・いつも変化していること
メインの本棚には、奥行があってセル単位で分割できるものを推奨されていて、具体例として本書ではIKEAのKALLAXと無印良品のスタッキングシェルフセットが紹介されている。著者のここの部分の主張はすっかり忘れていたけど、最近買った本棚がマルゲリータの奥行350mmの壁一面シェルフで本書のポイントもすべて網羅していた。しかも、縦・横板で仕切られた1マス単位でそこに並べる本のジャンルを決めて配置していた。本書を参考にしたつもりではなかったのに、久しぶりに読んでことごとく同じ行動を自分がしていて驚いた。これが血肉になる、ということか・・。何はともあれ、これでいいんだ、とお墨付きを貰えた気分なのでこのまま自分だけの理想の本棚へとカスタマイズを楽しんでいきたい。

【1回目(2018/08/25)の感想】
著者が長年の試行錯誤の末に辿り着いた本棚ルールの指南本。著者曰く、読み終わった本や買ってきた本をただ並べているのは「本置き場」でしかなく、「本棚」とは読書を通じてより成長するためにもっと意識的に、能動的に本棚を捉えなければいけない。
細かなルールは多々あるが、最も重要なのは、本棚をある大きさで分割し、並べる本をジャンル分けするということ。買ってきた食材を冷蔵庫にしまう時に悩むことがないように、また既存の情報にアクセスしやすいように、本棚にも置く場所のルールを決めるべきである。このやり方にすると、あらかじめ設定する「ジャンル」がこれからの読書傾向に大きく影響する。そしてこのシステムが優れている点は、現時点では未だよく知らなくても、これから勉強しようと思っている分野について本棚に定位置を確保すればその場所に何冊の本があるか常に視覚化され埋めようという意識が働き、オートパイロット的にその分野の本の読書へと駆り立ててくれる。学びの分散性と読書傾向を視覚化する上で非常に良い方法と思う。
もう一点、フィルムタイプの付箋は私も使っていたが、貼ったままで良いというのは目から鱗だった。

 

7月

著者のYouTube動画は今まで観たことがなかったがジェケ買いで読んでみた。帯で松丸亮吾さんが推薦する通り「勉強について知りたいことがほぼ載っている」。最終章は小中学生の子を持つ親に向けたメッセージもあって読み応えがあった。
結果を出すための勉強法として特に学びになったのは、『「知っている」ことと「理解している」「できる」ことは、まったく別もの』という第1章の説明。確かに自分の学生時代を振り返っても勉強しているのにテストの点数に結びつかない人はこの罠にはまっていたように思える。自分が「できる」に移行したかどうかを自分で的確に判断するのは難しいが、問題を解くことが判断をする上での助けになる。
第2章の計画の立て方のところで、どんなに疲れていてもたとえ5分でもいいから何かしてまったくしなかった日を作らないという説明も参考になった。気乗りしなくても、ほんの少しだけと思っていざ始めたら意外にできた、という体験は誰しもあるが自己肯定感を損なわずに済むという考え方は目から鱗だった。

 

さらっと読めた。紙幣寮の得能良介との場面が個人的には最も印象に残った。渋沢栄一が、水戸の昭武公のお供としてフランスに随行するところから物語は始まる。広く浅く人生を総括するというよりは個別のトピックについて当時関係者の感情や背景も豊かに漫画化されている。渋沢栄一氏だけの人生を振り返るのではなく、山縣有明と対比しながら語られていく。なぜ氏がチョイスされたのかは特に説明がないので良く分からない。渋沢栄一を偉人として賛美する都合上、山縣有明が必要以上に悪っぽく描かれている気がして少し気の毒に思った。

 

ダイオウイカのニュース以来、深海に興味があって読んでみた。しんかい6500という潜水船はレゴブロックやフィギュアとのコラボもあって、以前より存在だけは知っていた。しかし本書の前半で紹介される「しんかい2000」についてはまったく知らなかった。2000を製造、運航する実績を積んだことで現在活躍している6500の下地になった。前例のプロジェクトには、まず発案する人が絶対に必要で、有人潜水船の場合は三菱重工業の社員であった。官主導ですべて始まった訳ではないことも本書を読んで知った。しんかい2000の製造段階で徳山技師による手溶接の場面や、潜航目標を達成して皆で喜び合う場面にじーんと来た。日本の技術のすばらしさに誇りを持てる本。

 

蔦屋書店 仙台泉店を散策中に発見し購入。帯のPR文「単なるプラスチックのブロックがなぜ、勝ち続けるのか」に惹かれた。個人的な体験でいえば幼少期にレゴブロックで遊んだ記憶はほとんどなくて、たまに友達の家にあったりして遊ばせてもらった程度。
本書は、レゴビジネスについてのこれまでの歴史を総括した本。経営者や社員、関係者へのインタビューが非常に多いので資料的価値も高い。
ブロックの誕生から今日まで「定番商品」として順風満帆に来た訳ではなくて、その裏側ではいくつかのターニングポイントがあった。その一つが、1980年代にブロックの特許が世界各国で切れたことによる同業他社の参入と、ビデオゲームの登場による玩具業界の流行の変化の中でレゴ社が多角化経営に舵を切った時代だった。結果的には多角化経営は失敗に終わり、そこからの反省として、「自社の強みは何か」を問うてブロックに集中したことで今日の世界的な地位を取り戻した。原点回帰で再成長の軌道に戻すことは、並大抵のことではなく、本書で述べられるような様々な取り組みが同時並行で進んでいたことがよくわかった。
レゴ社の繁栄に至る経緯は十分に分かったが、個人的にはここ最近のレゴブロックの価格設定には違和感がある。かなり高飛車な価格設定となっといて、プラスチックブロックの原価から想像できない。付加価値があるのは理解するが、それにしても高いよなぁと思って、買うことに多少の勇気がいる。

 

本屋で見つけて面白そうだったので購入。このシリーズは他にもたくさんの書籍が既に刊行されているが、自分が読んだのはこれが初めてだった。シリーズを通して語られている物語があるが、シリーズを初めて読んだ自分には当然、何がなんだか分からなかった。いきなり佳境のような感じで、なんとか博士が決死の思いで動物だけの島に到着し、キャプテン・クロウがなんだと言っているが、まったくわからない。ストーリの展開から完全においけぼりだった。一話完結ではなく、シリーズ全体を通してストーリが進展していくならせめてナンバリングをしてほしいものだ。肝心のシャチとシュモクザメの戦いはかなり後半で描かれていた。そこに関しては多少読み応えがあったが、過去の経緯について無知な自分は十分に楽しめなかった。

 

5代将軍 綱吉の治世で「生類憐みの令」が施行された時代の江戸の町の様子が最も興味深かった。義務教育として学校の教科書で、いつ、誰が、この令を発布したかというのは一般常識として知っていても、その理由やそれによって江戸がどうなったかというのは本書を読んで初めて垣間見ることができて、これぞ大人の勉強だと思った。将軍だけでなく、配下や大奥など様々な登場人物が目まぐるしく現れる。14代家茂が変わり果てた姿で江戸城に戻った時の正室の和宮の場面にほろりと来た。
「将軍」というのは、すべてが独裁権力者ではなかったようだ。将軍職でありながらも、大御所や老中、朝廷に主導権を握られ、お飾りの存在のまま終えた将軍も少なからずいたというのが学び。

 

8月

石原慎太郎氏を悼んで以前に買ったものの本棚で眠っていた本書を引っ張り出してみた。面白くて一気に読んだ。時折過激な発言もあるが、まあ、石原氏のキャラクターで許されているのだろう。ジェンダー平等の観点からいえばかなりきわどい発言もあるが、昭和の古い人、それも石原さんだから・・・と大目に見てもらえる(と思う。)
政治的な氏の主張はこれまでも度々触れることがあったが、プライベートや交友関係についてはあまり知らなかった。ヨットや海外でのハンティングなど生きるか死ぬかのドラマのような出来事も度々あったようだ。交友関係は本当に広かったようで、現代の視点からすると半ば歴史化しそうな人物の思い出なんかも出てきたりして読み応えがある。子育てに関しては割と現代風な考えを持っておられたようだ。氏の母親の「孫は孫」というのは、確かにそうなのかもと妙に納得した。

 

9月

・脳が最も活性化するのは音読している時
・小学校3,4年生からゴールデンエイジがはじまる
・3-2-15呼吸法

 

読み物として抜群に面白いが、フィクションの境界が分からないという一点だけが残念だ。全5章すべて読み応えがあるが、中でも「金貨を延べる」の貨幣戦争のくだりが特に熱中して読んだ。「石垣を積む」のラストではるばる伊豆から運ばれた石が真っ二つに切られていたのを知った時は、吾平と同じく自分もあまりの衝撃で崩れ落ちそうになった。

 

10月

子供が4人とも東大理Ⅲに入られたということでその界隈では有名な著者らしい。自分は存じ上げておらず、著者の本に触れたのも本書が初めてだった。お受験ママとして幼少期から子供の教育に熱心に取り組んだのかなと思い、本書を読み始めたが、取り扱う範囲は広く、生活全般について著者の経験談を基に語られている。その中には、子育てに関して一般的に正しいやり方と思われていることと反対の主張もあり、新たな視点を得た気がする。
例えば朝なかなか起きれない子がいた時、親の心情としてはある程度までは起こすが、それ以上は諦めて、一度子供に寝坊して遅刻した時の気まずさなどを身をもって知らせて今後そうならないように早く寝る、などのしつけを考えてしまうが、著者はあっさりと「起こしてあげてください」と言う。曰く、成長して大人になったら自分で必ず起きるから、と。子供は必ず成長して手がかからなくなる、親が手をかけたいと思っても子供の方から距離を置かれる時が必ず来る、というのが前提にあるようで、それならば求められている今のうちに精一杯手をかけてあげよう、ということだと大筋で理解した。
もう一つ印象に残ったのは、子供の誕生日プレゼントは、誕生日を迎えた子供だけでなく、他の兄弟にも同じプレゼントを全員分に渡すということ。誕生日で主役の子だけがプレゼントを貰って喜んで、他の兄弟は羨ましそうに見てるというのより、皆が等しく喜んだ方が兄弟も含めて誕生日が楽しみなイベントになるからだそうだ。言われてみればそうかもしれない。自分もこれは取り入れてみようと思った。

 

”時間はもともと、生活が繰り広げられる舞台であり、生活そのものだった。ところが、時間はどんどん生活から切り離され、「使う」ことができるモノになった。
ここから、人間と時間との現代的な格闘がはじまる。”

”そもそも人生の意味を疑うためには、前提として、人生に対する新たな視点を持っている必要がある。つまり、何もかも片付いたあとの遠い未来に得られるかもしれない充実感ではなく、今ここにある人生をなんとかしなくてはならないという視点だ。”

様々な示唆が得られる本書の中で上記の2文は特に輝いて見えた。時間の有限性と、テクニカル的にどれだけ時間を効率的に使えるようになっても目指すところには辿り着けないという虚無感に耳が痛い。
きっとこれからも、日々の生活の中で仕事やプライベートの色々なことに追われて、いわゆる「時間術の本」を読むと思うが、その時に本書で説かれたことも思い返し、バランスを取りたいと思った。

 

ドラえもん科学ワールドとして20冊刊行されている内、本書「地球の不思議」を初めて手に取った。構成は原作漫画の題材に沿ったお話が掲載され、その後に見開きで3ページほどの詳細解説が付くというような形だ。解説のところは一応全てルビは振ってあるものの子供が全て読むのは結構体力が必要そうに感じた。
漫画のページで両端にちょっとした地球関連のクイズがあって、それが地味に面白かった。ただ漫画を読みながら同時に見ると集中できないので一度漫画だけ読み切って戻ってからクイズを楽しむ、というような使い方になる。
JAMSTECの「ちきゅう」や「しんかい」なんかの活躍も登場して歴史だけでなく現在進められている開発や調査も学べて良い本だと思った。

 

”勉強の極意は「短い時間で何度も繰り返す」”
とあるように、短時間の復習を何度もして短期記憶を長期記憶へと移行させることを本書は薦めていると思う。ワンミニッツ・リーディングという1冊の本を1分で読む部分が注目されがちだが、読むのではなく導くということで、ワンミニッツ・リーディングでやっているのは読書ではなく直感で重要と思う部分を捜すだけである。本を開いてページをめくってはいるものの文字を読もうとするな、ともアドバイスされているように。
革命的な読書法を期待して本書を読むと満足感は低い。
復習こそが王道であり唯一絶対の道だという勉強におけるモチベーションの再確認にだけ有効だ。

 

慶長江戸絵図を下敷きに江戸城のレイアウトと機能の解説は読み応えがあった。家康から4代家綱までに天下普請で具体的にどの範囲の改造を行っていったかというのも勉強になった。後半は幕末から現代までの日本の首都の変遷を足早に辿っていく。江戸時代もそうだったが、20世紀に入ってからも、首都は火災や地震、それに戦争によって度々大打撃を受けるが、遷都はせずその度に短期間で復興を遂げており、先人たちの努力に脱帽だ。戦後の現在では首都が天災も含めて壊滅的な事態になることは今のところ起きていないが、今後そうなった時、現在の私たちも先人たちのように再建できるかなとふと思った。

 

『変わり続けなければ、変わらない価値を提供することはできません』
第1部の最後に登場するこの一文が最も響いた。この一文こそが日本マクドナルドの50年の成長の歴史と現在の繁栄を端的に表していると思う。

品質においても、
『日本マクドナルドのビーフパティは牛肉100%で結着剤・保存料などの食品添加物やつなぎ、調味料は一切使用していません』とあり、創業当初から食の安全安心を第一に考え、高い品質基準を遵守してきたことが分かるが、2014年と2015年の低迷時の反省にもあるように、それらの取り組みや考え方を消費者に正しく届けれていなかったことが失敗だったようだ。

その他、2004年に花王が泡タイプのハンドソープを開発・販売した際に日本マクドナルドが大いに関係していたというのは初耳だった。

米マクドナルドを日本にフランチャイズした創業者の藤田田氏と前社長サラ・カサノバ氏はその活動や足跡が度々本書で紹介されるが、原田泳幸氏は名前が一切出てこなくて不自然だった。最近の逮捕の件もあるのかもしれないが、退任間際のマイナス点ばかりでなく就任直後にV字回復を果たしたことは事実であり、それらの取り組みも紹介してほしかったのが少し残念だったポイントだ。

 

”我々はマクドナルドを名前以上の存在にしたかった。マクドナルドを、安定した品質と、運営が標準化された、レストランのシステムの代名詞としたかったのだ。特定の店舗やフランチャイズオーナーのクオリティによって顧客を増やすのではなく、どの店に行っても同じサービスが受けられるというように、マクドナルドのシステム自体に対するリピーターをつくりたかった。”
安定した品質、グローバルで標準化されたシステムは今なお続くマクドナルドの源泉になっていると思う。日本での「てりやきマックバーガー」の登場によるメニューの一部ローカライズ等、グローバルでまったく同じではないが、ブランドイメージやマクドナルドが推進しているQSC&Vは世界共通に感じる。

著者のこれまでの仕事や私生活についても、ある意味赤裸々に語られていて読み物として面白い。リリー・チューリップ社のジョン・クラークとのやり取りは手に汗握るものがある。一筋縄では行かなかったマクドナルド兄弟とのフランチャイズ契約や、マクドナルド創業メンバとの確執と別れ、3回も結婚をしたそれぞれのエピソードなど次から次と展開が切り替わるので読者も追いつくのに忙しい。

52歳から飲食業という未知の世界に飛び込む情熱も凄いが、その後も様々な困難にぶち当たりながらも決して諦めずにひとつずつ解決していったことがわかる。亡くなる直前まで、車椅子で毎日会社に顔を出したと本書でも述べられている。情熱を持って仕事に取り組むことがいかに大切かということを痛感させられた。

 

2020年、2021年の世界を象徴するキーワードとして「感染症」と「分断」が挙げられており、それを主軸として世界の動向を著者が解説する。大国であるアメリカと中国に多くのページが割かれつつも、EUや中東も述べられている。取り扱う範囲が広いため一国や一地域については深い背景や考察にまで至らないが、逆に新書一冊にここまで広範な題材を組み入れたという意味で充実した一冊でもある。
個人的に印象に残ったのは中国によるチベット弾圧とダライ・ラマの現在と成り立ちが勉強になった。現在の14世の年齢から考えても、今後10年以内を目処に大きな変化を迎えそうだ。
その他、ゴルバチョフの失敗やイギリスがEUを離脱(ブレグジット)の背景も学びになった。本書はタイトル通り、一端の大人として知っておきたい世界のトレンドを提供するもので、そこから興味を持った分野やさらに深く知りたい分野を読者が追及していけば良い。自分の場合はやはり「中国」(=中国共産党)だ。

 

”こうしてみると、①軍事占領から②政治支配の完成、そして③文化的同化が、中国共産党政権の進める「民族政策」の三段階であることがよくわかる。そして、この三段階の政策の最終目標は、支配下の各民族の独立性とアイデンティティを抹殺して、漢民族へ同化させることだ。諸民族を実質的に消滅させる正真正銘の民族浄化政策であり、「文化的ジェノサイド」そのものといえよう。”
中国共産党の侵略の仕方が鮮やかに説明される。著者の存在をYouTubeで知って本書を読んでみたが、中国共産党は中国にとって、またアジア地域や世界にとっても「癌」だと迷いなく断言している。ソ連のコミンテルン組織として誕生し、どのように今日の党の繁栄に至ったかの経緯を知れば、そう言わざるを得ないのも納得する。文化大革命や天安門事件が中共の所業としてクローズアップされるが、政権を樹立するまでの紆余曲折が学びになった。衝撃で眩暈がするような凄惨な史実も多く登場し、それらの勢力が現在進行形で権力を行使している現在と今後の世界情勢に不安が募る。近い将来どのようなシナリオが待っているか分からないが、まずは正しい歴史を「知る」ことが大切である。

 

11月

最近注目している石平先生の新書ということでAmazonで予約注文。届いてすぐに読了。2022年11月1日発行で、その約1週間前の10月23日に中国で新指導部7人(政治局常務委員)が明らかになった。習氏に近い人で独占され、その他の抵抗勢力が表舞台から一掃された形で権力集中がより高まる体制になったことは今の時点では周知の事実だが、本書はそれらが明らかになる前に書かれた本で、本書の中でも政治局常務委員7人の人選予測が掲載されている。結果的には7人中4人が正解で、相当の的中率であると思う。10年、20年先の未来のことなりそれが当たったかどうかという振り返りはあまりなされず、予測する地点が遠いほど外した時の責任は薄れるが、本書のように出版されるのとほぼ同時期のタイミングで結果が確定する近未来を予測するのは相当に覚悟がいることだ。
本書前半は李克強ら共青団派と周氏の政策路線の違い、静かな対立と、徐々に露わになる李克強らによる敵対行動と支援の多さが語られている。「軍部」以外は周氏にとって劣勢である状況が述べられており、その時点では確かにそうであったのかもしれないが、今回発表された新指導部によってこの先は芽生えかけた機運は消失しそうだ。
国民の不満が高まった時、その解消として「戦争」が起きるという予測は恐ろしいが、クーデターでも起きない限り、規定路線なのかもしれないとやるせない気持ちになる。

 

加工材料の知識がやさしくわかる本

加工材料の知識がやさしくわかる本

  • 作者:西村 仁
  • 日本能率協会マネジメントセンター
Amazon

信頼と安心の西村氏の著書。今回も分かりやすい。初学者は問答無用でまずこれを読むべき。1章で材料知識の全体像、2章で機械的性質、3章で物理的性質と化学的性質。ここまでで加工材料に要求される種々の特性、分類の考え方などが整理できる。以降は個別の材料ごとの各論へ入っていく。様々な材料を万遍なく解説するというより、「実務」に重きを置いた視点で、実際の現場で使用頻度が高いものを丹念に解説してくれている。まず本書で基礎を学んで、その後読者がさらに興味を持った範囲へと進んでいけば良い。
余談だが、コラム的に書かれた奈良の大仏の建立エピソードが面白くて、本書を読んでる最中に関連する書籍をAmazonで注文した。

 

南雲先生の本。最近流行りの「一流」という単語がタイトルに付く本。粗食を勧める著者の本は以前にも読んだことがあって、類似する内容も多かった。(特にゴボウ茶とか)
「集中力」を1日中続かせるためには「睡眠」と「食事管理」が必要で、後者は栄養をバランスよく摂るというのではなく、仕事をする日中は食事を摂らないという時間帯管理の話だった。オフィスワークのビジネスマンが昼食を摂るのはかねがね自分も不思議に思っていた。自分はここ数年、昼食は摂らない生活を続けていてそのメリットは実感している。本書ではさらに朝飯まで抜くというのを推奨されていて、2週間ほど試してみたが意外に不便はないことがわかった。もう少し継続してみようと思う。
その他では、起床後に油で洗顔やうがいを推奨されていてこれには驚いた。生活にすぐ取り入れたいとはならない。色々なやり方が提案されているので試したいと思ったものだけチャレンジしてみるのが良いだろう。
また、本書では著者の学生時代を含む足跡も多く語られていた。父親との確執や受験期のエピソード的な話は以前読んだ本にはなかったと思う。

最後に、、ナグモクリニックをGoogle検索してみたが、クリニックの評判がかなり悪いことが衝撃だった。星1のコメントを読み流すと、診察を受けた方たちのクレームや悲痛な叫びがわんさとある・・。分院もあって、すべて南雲氏に対する評価ではないだろうけど、本でいろいろと「一流」について語る前に、まずは総院長として自身が運営するクリニックの改善をしたらどうかと思った。

 

民衆は無能(少なくとも有能が多数派ではない)であり、それら民衆の多数決によって決められる民主主義は世界がより複雑化していく中において、常に最適な解を導けるはずもなく、劣化していく運命である。劣化する民主主義に対して本書では「逃走」「闘争」そして「構想」が提案される。最後の構想が本書のメインで、無意識民主主義と表現される。具体的なイメージを最もよく表現した箇所を以下に引用する。
『無意識民主主義は大衆の民意による意思決定(選挙民主主義)、少数のエリート選民による意思決定(知的専制主義)、そして情報・データによる意思決定(客観的最適化)の融合である。』
現在の民主主義の根幹にもなっている選挙制度の不十分に関しては、著者に激しく同意する。分野ごとに様々な政策や意見があるものの、個々の課題に対する民衆の意思は反映できず、パッケージ化(=極めて抽象化)された少ない選択肢の中からもっとも近いものを選ぶしかないのが現状だ。
無数のデータを活用して、機械学習などの手法で政策を決定するメリットは納得するが、アルゴリズムの透明性をどのように確保するかが難しい。完全にオープンにすれば常にハックのリスクにもさらされることになる。
著者はSF的な妄想ではなく、むしろ近未来の予測だと述べる。経済など特定の分野において部分的に本書が示すようなシステムを導入する国もあるかもしれない。

 

12月

64とゲームキューブで据え置き型ゲーム市場で一時的に敗者となった任天堂はその後、DS、Wiiと立て続けに大ヒットを飛ばし、ゲーム業界の覇者へと返り咲いた。失敗の原因はどこにあって、何を改めたことで今日の躍進につながったのか、任天堂という企業文化と新しく社長に就任した岩田氏の取り組みから成功の秘訣を探るのが本書だ。本書を端的に表す箇所を一部引用する。
『ゲームプラットフォームのビジネスにおいて、世界のソニーとマイクロソフトを敵に回し、競争が激化する中、任天堂は既に”血の海”となっている既存の市場に未来はないと早々に見切りをつけ、ゲームをやらない普通の人をターゲットに競争のない”ブルーオーシャン”に打って出た。』
任天堂はブルーオーシャンをどこに見つけたのか、答えは社長の岩田氏の言葉にある。
『重要なのは次世代の技術ではなく次世代のゲーム体験であり、パワーが大切なのではない』
ゲーム機の性能を追い求める先に繁栄はないことに気付き、決断し、方針を変えた。他社とまったく異なる路線を進むことの葛藤と社内のベクトル合わせがいかに大変だったかは想像しつくせない。DSやWiiの開発秘話でこれらのエッセンスがどのように折り込められたかを知れたのは貴重だった。横井軍平氏の足跡も後半で主だったところは触れられている。一方で、前社長の山内氏や開発第二部でファミコン開発を主導した上村氏の当時のエピソードはあまり出てこない。
本書を読んで、当時ほとんど触らなかったヴァーチャルボーイに横井氏の哲学がたっぷり込められていることを知り、久々に遊んでみたくなった。