材料の硬度とは
材料の硬さは「硬度」で表される。
硬度とは、材料の表面または表面近傍の機械的性質の一つであり、材料が異物によって変形や傷を与えられようとする時の、物体の変形しにくさ、物体の傷つきにくさと定義される。
硬さ試験により硬度を検査、測定することができる。
硬さ試験法とは
硬さ試験には多くの試験方法があり、また測定物にも金属、プラスチック、ゴムと多くの種類がある。
測定対象物によって、金属のような塑性変形する材料の硬さと、ゴムのような弾性材料の硬さとでは、試験方法も硬さの算出方法も異なり、単純な比較ができない。
各硬さ試験には硬さ記号が設定されており、異なる硬さ記号間での比較はできないことに注意する。
硬さ試験には、「押し込み試験法」と「動的硬さ試験法」がある。
押し込み硬さ試験法は、ダイヤモンドや焼き入れ鋼などの圧子を規定の形状や寸法の押し込み具で試験片に押し付け、その部分にできた圧痕(永久変形)から硬さを求める。
圧子の形状や圧痕の計測方法によって、試験の種類が分かれている。
代表的な押し込み試験法としては、ブリネル硬さ試験、ビッカース硬さ試験、ロックウェル硬さ試験、ヌープ硬さ試験がある。
一方、動的硬さ試験法は、一定の形状と寸法、重量のハンマーなどを試験片に衝突させ、そのときの反発の大きさや角度などから硬さを調べる。
代表的な動的硬さ試験法としては、ショア硬さ試験が知られている。
以下にそれぞれの硬さ試験法の詳細を確認していく。
ブリネル硬さ試験
ブリネル硬さ(Brinell Hardness)は記号HBで表される。
圧子には上図のような球形の金属球が用いられ、測定物のくぼみの直径を測定する。
測定対象物が硬い場合はくぼみは小さく、柔らかい場合は大きくなる。くぼみの大きさは上から見た時の直径であって、深さは測定しない。
圧痕が大きくなりやすいため薄板や小物には適さない。また、鋼球を使った場合HB=450前後で圧子自体が変形するため硬度が高いものにも適さない。
鋳物や非鉄金属など材料の平均的な硬さを評価する際に使われる。粗い、または不均質な粒子構造の材料に適している。
圧子の種類には鉄・(熱処理した)鋼・超硬合金があり、それぞれ記号はHB・HBS・HBWと表記する。
圧子の大きさには1mm、2.5mm、5mm、10mmがあり、直径10mmのサイズが広く使われている。
機械式ブリネル硬さ試験の実際の様子については、以下の動画が参考になる。
全自動で測定するブリネル試験機もあるようだ。
ビッカース硬さ試験
ビッカース硬さ(Vickers Hardness)は記号HVで表される。
ダイヤモンドでできたの圧子を測定対象物に押し込み、その際にできるくぼみ(圧痕)の対角線長さを測定することで、材料が硬いか柔らかいかを評価する。圧子はピラミッドをひっくり返したような四角錐であるので、圧痕は理想的には正方形である。
※圧子の形状は頂角136°の四角錐
圧子に地球上で最も硬い材質であるダイヤモンドを用いているので、測定対象物はどのような材料でも測定可能である。また、くぼみは常に相似形なので荷重とは無関係にHVは一定になる。よって、大きな荷重を印加することができない薄い測定対象物も評価できる。金属材料を含むあらゆる硬い材料で使用される代表的な硬さ試験方法である。
ただし、圧痕が最大でもコンマ数ミリ程度と小さいため、正確な測定結果を得るためには、事前に測定面をよく研磨しておく必要があることに注意する。
ビッカース硬さの試験荷重は可変で、JIS規格では10~100kgfまで規定されているものの、10kgf以下で使用されることもある。
ただし、1kgf以下となる場合はマイクロビッカース(または微小硬さ試験)と呼ばれる。小さな結晶のようなものでも測定可能で、しかも圧痕(くぼみ)が非常に小さいため、非破壊試験として扱うこともできる。
実際のビッカース硬さ試験の様子は以下の動画が参考になる。
ダイヤモンド圧子を所定荷重で押し付けた後、対物レンズに切り替えてひし形圧痕の対角線長さをマイクロメータで測定する。
また、こちらの動画も参考になる。ミツトヨ製ビッカース硬さ試験機HV-114の測定マニュアルの動画だ。
ビッカ−ス硬さ試験機 HV-100シリーズ HV-110 | 商品 | ミツトヨ
ヌープ硬さ試験
ヌープ硬さ(Knoop Hardness)は記号HKで表される。
ヌープ硬さは頂角172.5°の四角錐形状の圧子を用いる。一般に、ビッカース硬さ試験機と圧子を付け替えることにより、ビッカース硬さとヌープ硬さの両方を試験することができる。また、ヌープ硬さはビッカース硬さに近い値をとることが多い。
ビッカース硬さ試験では圧痕がひし形で正方形に近かったのに対し、ヌープ硬さ試験では圧痕は細長いひし形となる。
ヌープ試験の圧子は一方の対角が長く、ビッカース硬さ試験の圧子の約3倍の長さのため、圧痕をマイクロメータで測定する際の測定誤差が小さくなることから硬さの変化をより敏感に評価できる利点がある。
また、圧痕の深さも約1/2なので、表面に近い深さの硬さ試験に向いている。押し込み深さがビッカース硬さ試験より浅いため、セラミックスなどの脆性材料の測定に適している。
ヌープ硬さ試験の試験荷重は概ね1kgf以下で使用される。
実際のヌープ硬さ試験の様子は以下の動画が参考になる。
ロックウェル硬さ試験
ロックウェル硬さ(Rockwell Hardness)は記号HRで表される。
圧子を測定対象物に所定荷重で押し付けるところまではこれまでの硬さ試験と同じだが、ロックウェル硬さは圧痕の表面積ではなく、押し込み深さを読み取る。測定が簡便で測定者による誤差要因が少ないのが特徴である。
試験手順としては2段階あり、まず基準荷重をかけて圧痕を作り、その後試験荷重をかけて圧痕を深くする。基準荷重と試験荷重の圧痕の深さの差がロックウェル硬さになる。
硬さの記号はHRで、その後に測定のスケール(圧子の種類と試験荷重)を示した表記をする。
試験荷重は60、100、150kgfの3種類が用いられる。
圧子には大きく2種類ある。
①円錐・・・頂角120°且つ先端半径0.2mmのダイヤモンド円錐。比較的硬い材料で使用される。試験荷重150kgfと組み合わせた場合は測定スケールは「C」なり、「HRC」と表記される。
②球形・・・1/16インチの鋼球。比較的軟らかい材料で使用される。試験荷重100kgfと組み合わせた場合は測定スケールは「B」なり、「HRB」と表記される。
圧子と測定荷重の組み合わせによる「測定スケール」の一覧を以下に示す。
ロックウェル硬さ試験は、主に熱処理した金属材料の評価で利用される。
実際のロックウェル硬さ試験の様子は以下の動画が参考になる。
基準荷重をかけるところまでは手動でセットし、そこから試験スタート。圧子が押し込めた量がそのまま深さとなり数値確認できるので、対物レンズへの切り替え、マイクロメータで測定といった煩わしさがないことがわかる。
ここまでが「押し込み試験法」の代表的な手法である。
最後に「動的硬さ試験法」を確認する。
ショア硬さ試験
ショア硬さ(Shore Hardness)は記号HSで表される。反発係数を利用した硬さ試験。
校正のトピックスNo.384【硬さ計:今回は、跳ね返り具合から硬さを求める硬さ計のお話しです】 | NKS|計測器・測定器の校正業務
先端にダイヤモンド半球を取り付けたハンマーを測定対象物に対して直角に落とし、ハンマーが跳ね返る高さを測定して硬さを求める試験。跳ね返る高さが高いほど硬い材料となる。
押し込み試験法として違って、測定物に傷が付かないため、仕上がり品をそのまま評価することができる。
跳ね返り高さを目視で読み取るC型、ダイヤルゲージで読み取るD型がある。