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急成長する産業用ロボット市場ー生産台数と導入地域ー

 

日刊工業新聞社『今日からモノ知りシリーズ ロボットの本』を読んでいる。

産業用ロボットの市場に関して、

”現在、世界中で稼働している産業用ロボットの台数は150万台近くに上る(2013年の台数に2014年の生産分を加えた数字)。1985年には約14万台だったので、30年で市場規模は10倍以上になった。”

とあり、近年ロボットの成長が目覚ましいことがわかるが、データが少し古い。そこで、その後も当初予測通り導入台数は増え続けているのか?を調べてみた。

 

国際ロボット連盟(International Federation of Robotics:IFR) が2020年9月24日に発表した「World Robotics Report 2020」を確認する。

ifr.org

https://ifr.org/downloads/press2018/Presentation_WR_2020.pdf

 

「ロボットの本」には出版日の関係で、実績としてのデータは2013年までの掲載であるが、そこから最新の2019年のデータに至るまで毎年20-30万台のペースで成長を続けていることがわかった。

【世界の産業用ロボット稼働台数】

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世界における1年間の産業用ロボット生産台数の推移のグラフは以下だ。

2019年が前年比12%減となり、それまで順調に成長し続けたものの少し下がっている。新型コロナウィルスが武漢で最初に確認されたのは2019年12月とされているので、コロナ影響ではなさそうで、理由について検索で調べてみたが適当なものは見つからなかった。特にこれといった要因はなく、ただの揺り戻しなのだろう。

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ちなみにこのグラフでは2009年からの比較だが、その前である2005~2008年の4年間は毎年10~12万台で推移していたが、2009年だけは約半減となる6万台に落ちている。こちらの理由は明確で、2008年9月に起きたリーマン・ショックに端を発する一連の金融危機による影響だろう。

 

さらには、以下のようなデータもあった。

【地域別(アジア/ヨーロッパ/アメリカ)における産業用ロボットの稼働台数】

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いずれの地域も10年間で倍以上に伸びているが、その中でアジア地域の成長率がめざましい。国別に比較したデータが以下である。

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中国の導入台数が世界の中でも突出して多く、好調なアジアを牽引しているのは中国、日本、韓国であることがわかる。

 

最新のトレンドがわかってスッキリした。

それにしても傾向としてアメリカはソフトが強く、中国はハードが強いように思う。いまの時点ではロボット自体の生産はファナックや安川電機に代表される日本メーカとABB(スイス)やKUKA(ドイツ)といった欧米メーカがシェア的に主導しているが、圧倒的に旺盛な内需がある中国国内でロボットメーカが育たないはずがないので、いずれ有力なメーカが現れるだろう。