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読書メモ:「超ロボット化社会-ロボットだらけの未来を賢く生きる-」 新山龍馬

 

東京大学で講師を務め、自身もソフトロボティクスを研究している著者が過去、現在、未来のロボットの展望について述べた本。ロボットの素晴らしさや期待される未来を誇大に喧伝するでもなく、かといってマイナス面にばかり注目して悲観するでもない。技術者らしく最先端にいる著者の視点から、現状と近い将来の見通しについて冷静に俯瞰する。いたずらに盛り上げようとアピールもしていないので、章によっては幾分退屈だったりするが、逆にいえばロボットの展望について誠実だともいえる。
「ピザ配達ロボットの恩返し」は実際に想像できて思わず笑った。「ドローンで幽体離脱」も確かにテクノロジーでろくろっ首を再現したことになる。先日、ドローンで鬼ごっこをするTV番組を見たが、その時に感じていた既視感はきっとこれだ。

 

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以下、読書での私的メモ。

 

人間が人生を通じて経験してきたような膨大な情報から、自ら世界を学習していくロボットを作ること、それは、ロボット研究者にとって大きな挑戦です。
わたしの意見としては、単純にビッグデータから学習するというボトムアップのアプローチもやがて行き詰まると思います。人間は、自分なりの仮説や好みを育て、ある種の決めつけや先入観で世界を学んでいきます。外部からトップダウンに教えられたルールや、ボトムアップの経験データからだけでは知能は生まれません。経験を自ら選び取り、仮説を積極的に試していく仕組みが必要だと思います。
 
 
ピザ配達ロボットの恩返し
 
 

ハイラインの元になったウェストサイド線は1840年代に敷設され、はじめは路面電車のように通りを自動車と並走する物流用の貨物線でした。(中略)

解決のため、1920年代には馬に乗ったカウボーイを雇って、列車を先導するようになりました。しかし、事故はあまり減らなかったようです。

このカウボーイは、イギリスで1865年に施行された赤旗法を思い出させます。

馬車が主流で自動車がまだ新しかった頃、自動車に速度制限を課すほか、必ず1名、赤い旗を持って自動車の先を歩く者が必要という法律です。この法律は、結果的にイギリスの自動車の普及を遅らせたといわれています。

ニューヨークマンハッタンのハイラインとは? 

ハイライン - Wikipedia

◆イギリスで施行された「赤旗法」ってどんなの?

 
ロボット業界はどうでしょうか。産業用ロボットアームはテレビや冷蔵庫のようにコモディティ化しつつあります。その時、ロボットメーカーは、自社製品を売ることを目標にするのをやめてサービスを提供しなければ生き残れないでしょう。包括的なサービスを提供するために、会社としては本当に難しいことですが、他社と協力してサービスを展開することになるでしょう。RaaSのはじまりです。
今のところ、日本のロボットメーカーはロボットのハードウェアとコントローラを売っているだけのように見えます。それで利益を確保しようとすれば、ロボットは高価なままでしょう。そのうち、顧客はロボットをメーカーから直接買うのをやめて、ロボットシステムインテグレーターに頼んでロボットを使ったサービスの提供を依頼するようになるでしょう。そうすると、ロボットメーカーの顧客は、ユーザーではなくシステムインテグレーターになり、ロボット完成品を売っていたつもりが、「サービスの部品」を作って納めるだけのサプライヤーになってしまいます。
 
 
ドローンで幽体離脱
テクノロジーによる幽体離脱体験が、人間の空間認知能力、ひいては行動や世界観を変える体験になるのではないかとわたしは期待しています。
 
 
このように、アバターを通じて遠隔地でタスクを行う技術をテレプレゼンスといいます。テレプレゼンスには、ユーザー自身がアバターとの一体感を感じることと、周囲の人がアバターにユーザーの存在を感じることの、二つの側面があります。

◆テレプレゼンスロボットの概要と主なメーカー

テレプレゼンスロボット - Wikipedia