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読書メモ:「早起き力」 神吉武司

 

早起き力

早起き力

  • 作者:神吉 武司
  • 発売日: 2013/05/17
  • メディア: Kindle版
 

お菓子の卸販売をしている大阪の中小企業の社長本。早起きをして、まだ周りが動いていない早朝の時間帯から仕事を始めることの効用を説く。当然といえばそうかもしれないが、この「早起き」というテーマだけでは本1冊のボリュームに満たないので、だいたい6割くらいは著者の経営哲学に関する記述だ。実際に継続して実績をあげておられるので学ぶべきところは多いが、若干、本書のタイトルとミスマッチの感もある。

例えば大阪ミナミと京都の一等地に販売店(土地)を持てたのは、取引する銀行を1行にするという戦略が功を奏したのが大きく、早起きはあまり関係なかったり。社員が伸びるのも、会社の業績を社員と数字で共有し、利益を還元する取り組みに熱心なことがかなり影響としてあるように思う。

掃除をして心が洗われたり、清々しい気持ちになって逆に元気が出てくるのは、早起きと同じで直接的に因果関係を説明できず、精神論的になってしまうが、自分も生活の中で似たことを実感することが多い。

 

著者は「吉寿屋(よしや)」の現相談役、神吉武司さん。(本書出版2009年時点では会長)

www.okashi.jp

 

カンブリア宮殿にも出演されたようで、YouTubeにテレ東の2分動画があります。


カンブリア宮殿 座右の銘(吉寿屋 創業者・神吉 武司氏/会長・神吉 秀次氏)(2016.9.1)

 

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以下、読書での私的メモ。

 

ある国に、祈れば必ず雨を降らす祈祷師がいました。それは、雨が降るまで祈り続けたからです。
失敗するのは途中で諦めるからで、絶対確実な”成功の秘訣”は、成功するまでやり抜くことです。
 
 
「苦労」という漢字は、「労(働)を苦しむ」と書きますが、「働くことが苦しい」とは、私には考えられない話です。
私は働くことが何より好きで、会社のためにいくら努力をしても、それが大変であるとか、苦労であるとか思ったことは一度もありません。人様から「苦労されたでしょう」といわれるのがイヤで、私は「努力をしても、苦労をしたことはいっぺんもありません」とついムキになって言い返してしまいます。
 
 
お菓子は高額な商品ではないだけに、一円でも節約して利益を出さないといけません。一秒、二秒という時間、一本の蛍光灯の電気代、一滴の水道代、一本のボールペン代もおろそかにするわけにいかないのです。地道な努力を重ねた結果、売上に占める総経費率は、業界平均が10〜12%のところ、8%台まで下げることができました。業界一の経常利益率はその成果といってよいでしょう。
 
 
事実、掃除をすると、心が癒されます。
「ボランティアとはいえ、清掃をしているのだから、何かよいことがあるだろう」と、モノや金銭の見返りを期待しても何もありません。
掃除を終えたあと、みんな心を癒されて、ものすごくいい顔をしています。見返りはそれで十分なのです。
 
 
上場している大企業の場合は、半期ごとの業績が新聞紙上などで公開され、誰の目にも触れますが、中小企業の場合、業績がベールに包まれており、自社がどれだけ売り上げているのか、利益がいくらなのかといった数字は、社員には把握できません。
 
 
「仕事は、社員に任せないとできない」と頭ではわかっていても、部下に任せきれない経営者を見かけます。「君に任せるよ」と言いつつも、気になって仕方ないのでしょう。
任せたはずの社員に対して、あれこれ口を挟み、結局は自分がリードしてしまうと、「任された」と思って張り切っていた社員は、「何だ!」と心の中で不満に思い、二度と自分から積極的に仕事をしなくなります。
 
 
たとえ百円の缶コーヒー1本、お茶のペットボトル1本でも、義務的に渡すのと気持ちを込めて両手で渡すのとでは、10年もすれば大きな違いが出ます。気持ちというのは必ず相手に伝わるもので、感謝の思いを込めて渡すのを5年、10年と続けていたら、ドライバーのみなさんにも必ず通じ、吉寿屋に対する見方が大きく変わります。世の中は人間と人間のつながりで成り立っており、相手を大切に思っているのと思っていないのとでは、その差は年数とともに拡大していくからです。
 
 
税金を払うのが嫌いだという経営者の会社は、たいがい経営がうまくいきません。儲かれば、社員に分けるとともに、税金として国に納める。国のお金が豊かになれば、道路も福祉も、もっとよくなります。それこそ、国のインフラを使ってお金儲けをさせてもらっていることへの恩返しといえるでしょう。その恩を忘れて、私利私欲に走るから、会社が潰れる運命になるのです。
私は、節税なるものをする必要はないと考えています。
節約すべきは税金ではなくて経費で、節約に徹して利益を出し、その利益のうち、三分の一を社員に還元し、三分の一を内部留保に回し、そして、残る三分の一を税金として納める。たくさん儲けて国にお金を納めて、国や地方のインフラの整備が進み、恵まれない人たちを支えることになれば、それこそ経営者としての誇りであり、喜びでしょう。また、社員を雇い入れる以上、利益を出して全員の生活の向上や教育の充実を図っていくことが、日本の国力を高め、日本をよくしていくことになります。