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TPSでは設備改善より動作改善を優先する

TPSにおける改善のアプローチ

トヨタ生産方式(TPS)における改善のアプローチは、設備改善よりもまず動作改善を重視するという特徴を持っている。

その背景や理由、そしてプレス成型装置を例にした具体例について説明する。

 

なぜ動作改善が設備改善よりも優先されるのか?

低投資、且つ、スピーディー:

動作改善は、多くの場合、大きな費用を必要とせず、小さな変更で効果を確認することが可能である。

一方、設備改善は高額な投資を伴うことが多いため、まず低コストのアプローチを試みるのが経済的に合理的である。

 

基本を見直すことの重要性:

作業者の動作を見直すことで、無駄な動作や操作を減少させることができ、これが生産効率の向上に直結する。

このような基本的な改善を先に行うことで、その後の設備改善の方向性や必要性もより明確になる。

 

人の成長:
動作改善の取り組みは、作業者自身がその場で問題を認識し、解決策を考え、実践する機会を増やすことにつながる。

これは、作業者の思考力や問題解決能力を養成する上で非常に価値がある。

 

プレス成型装置における改善の具体例

動作改善

無駄な動きの削減:プレス成型の際の部材の取り付けや取り外しの動作を見直し、簡素化や効率化を図る。

作業手順の標準化:作業の一貫性と再現性を確保するため、手順を明確にし、作業者間でのばらつきを減少させる。

 

設備改善

プレスの精度向上:長時間の運転や摩耗による精度の低下を防ぐための設備のアップグレードやメンテナンスの強化。
自動供給システムの導入:部材の供給を自動化することで、作業者の負荷を軽減し、生産効率を向上させる。


このようなアプローチを通じて、TPSは組織の持続的な成長と効率の向上を追求している。

動作改善と設備改善は相互に関連しており、一方を無視して他方だけを進めるということは考えにくい。

しかし、TPSの哲学として、まずは人間中心のアプローチ、つまり動作改善を重視することで、全体の生産活動の質と効率を向上させることを目指している。

 

先に設備改善を行った場合のデメリット

高投資リスク:

動作に起因する問題を設備の導入や改善でカバーしようとすると、高額な投資が必要となる。それに対するリターンが確保できない場合、経済的な損失が生じるリスクがある。

 

根本原因の見逃し:

動作改善をせずに設備改善だけを先行させると、問題の根本原因を見逃す恐れがある。

その結果、新しい設備が導入されても同じ問題が再発する可能性がある。

 

人の成長の機会損失:

TPSは人々の成長を重視する文化を持っている。動作改善を通じて作業者自身が問題を認識し、解決策を考える能力を育てることができる。

設備改善だけを先行させると、このような成長の機会を逃す可能性がある。

 

柔軟性の喪失:

早い段階で高額な設備を導入すると、将来の変更や改善が難しくなる可能性がある。

逆に、まず動作改善から始めることで、より柔軟なアプローチを保持できる。

 

持続可能性の問題:

動作の問題を設備で解決しようとすると、短期的には効果があるかもしれないが、長期的な持続可能性が問われる。人の行動や思考の改善を根幹に置くことで、長期的な改善を目指すことができる。

 

このように、設備改善と動作改善はどちらも重要であるが、そのアプローチの順序や取り組み方によって、大きな違いが生まれることが考えられる。

TPSの原則を理解し、それを基に最適な改善アプローチを選択することが重要である。