◆繰返し数が等しい場合の一元配置実験
[例1.2:化学薬品の収率]
ある化学薬品の合成工程がある。いま反応温度(A1:80℃、A2:90℃、A3:100℃、A4:110℃)を因子に取り上げ、収率を高めるための実験を行った。実験は各温度で3回ずつ繰り返して行われ、また、計12回の実験はランダムな順序で行われた。
収率に対する反応温度の効果を解析せよ。
実験で得られたデータ
まずは、反応温度(因子A)各水準での3回ずつの実験データと各水準平均を散布図グラフにプロットする。
各水準の平均(=母平均の点推定値)が最も高いのがA3であることがわかり、A3(反応温度100℃)が最適水準である。
この化学薬品の収率において、反応温度は低すぎても高すぎても良くないことがわかる。反応温度(因子A)の主効果はグラフのプロットから見ても十分にありそうだが、念のため分散分析で検定しておく。
一元配置実験(1要因の分散分析)
まずは、群間/郡内の平方和を計算する。
群間・・・各水準間、ここでは因子A(反応温度)の主効果
郡内・・・各水準内でのデータばらつき、つまり実験誤差
計算した結果を以下に示す。
*ここまでの計算にピンと来ない場合は、以下の記事を参照ください。
平方和が計算できたので、次は分散分析表を完成させる。
自由度について、全体の自由度は全データ数(12)-1=11
群間の自由度は水準数(4)-1=3 である。
計算の結果、F値5.61が求められた。
分子の自由度3、分母の自由度8がクロスするところを読み取ると、
5%有意水準で4.07、1%有意水準で7.59であり、5%で有意である。
*補足
有意水準5%ではF値5.61 > 4.07で棄却域に入り、帰無仮説は棄却され、対立仮説が採択される。帰無仮説は「反応温度による収率の差はない」であり、これが棄却されるので「反応温度によって収率は変わる」ということが検定の結果わかる。
ただし、1%有意水準では5.61 < 7.59で、帰無仮説は棄却されないという反対の結果になる。
母平均の点推定値と信頼区間
次に、最適水準での母平均の点推定値と信頼率90%での信頼区間を求める。
最適水準は、最初に計算した表の各水準の繰り返し3回分データの平均値比較から、A3:91.37だと既にわかっているため、母平均の点推定値は91.37である。
信頼区間は以下の式で計算する。
信頼区間=母平均の点推定値 ± t(φe,0.10) x √(Ve/r)
↑上記の中で赤字にした部分が信頼率を何%と設定するかによって変わる。通常は95%で計算されることが多いが、今回は練習のため90%とする。
t(φe,0.10) x √(Ve/r) = t (8,0.10) x √(0.21/3) = 1.860 x 0.267 = 0.50
よって、90%信頼区間は
下限:91.37 - 0.50 = 90.87
上限:91.37 + 0.50 = 91.87
で、最適水準A3での母平均は90%の確率で90.87~91.87の範囲にあることがわかる。
最適水準の反応温度で合成した時の収率予測
次に、最適水準A3(反応温度:110℃)で合成をした時に得られる収率を予測する。
これを予測区間といい、繰り返し回数が等しい一元配置実験の場合は以下の式で計算する。(95%予測)
予測区間=母平均の点推定値 ± t(φe,0.05) x
実際に計算をしてみると、
t(φe,0.05) x √( (1+1/r) x Ve ) = t(8,0.05) x √((1+1/3)x0.21) = 2.306 x √0.284 = 1.23
よって、95%予測区間は
下限:91.37 - 1.23 = 90.14
上限:91.37 + 1.23 = 92.60 である。
↑例題はこちらのテキストp.12 例1.2:化学薬品の収率を参考にした。