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トヨタの問題解決:「処置」と「対策」の違いについて

トヨタの問題解決アプローチ

「処置」と「対策」の違い

トヨタの問題解決のプロセスは、その緻密さと体系的なアプローチで知られている。

特に、問題が発生した際の取り組み方には、2つのキーワード「対策」と「処置」が存在する。

これらは、似ているようでありながらも、その目的や時期、方法が異なるため、正確に理解し、適切に実践することが求められる。

 

1.「処置」の意味

「処置」とは、問題や異常が発生した直後に迅速に行う短期的な対応を指す。

これは「応急処置」や「一時的な手当て」とも考えられる。

問題の発生を即座に止めるため、スピードが要求される。

事例:

製造ライン上で突如として機械の故障が発生した場合、その機械を一時的に停止し、他の機械での生産を増やすことで、生産量を確保する。

 

2.「対策」の意味

一方、「対策」とは、問題の根本原因を解明し、再発を防ぐための改善活動や施策を意味する。

こちらは長期的な視点での取り組みであり、根本的な解決を目指す。

事例:

先の機械故障の例で言えば、故障の原因を特定し、それが部品の摩耗によるものであれば、その部品の品質改善や定期的な点検・交換のスケジュールを見直すなどの取り組みが行われる。

 

3.「処置」と「対策」の具体事例

プレス工程
処置の事例:

プレス工程で金属板の成型に不具合が発生した場合、当該のプレス機械を一時的に停止し、該当部品を一時的に他のプレス機で製造する。

対策の事例:

原因分析の結果、金属板の供給の問題が明らかになった場合、供給装置の設定を見直すか、供給のローラー部分を改良する。

 

ボディ組立工程
処置の事例:

ロボットがボディの一部を正確に組み立てないという不具合が発生した場合、該当のロボットを停止し、一時的に手作業で組立を行う。

対策の事例:

原因分析の結果、ロボットのプログラムに誤りがあることが判明した場合、正確な位置情報を持つ新しいプログラムを再度アップロードし、同様の不具合の再発を防ぐ。

 

塗装工程
処置の事例:

塗装の際に、ある部分が均一に塗られていない不具合が確認された場合、不具合の部分を手作業で再塗装する。

対策の事例:

原因分析の結果、エアブラシの圧力不足が原因であることが明らかになった場合、圧力の設定を調整し、またその設定を常時モニタリングするシステムを導入する。

 

これらの事例は、問題が発生した際の短期的な「処置」と、その後の根本的な原因を解決するための「対策」を示すものである。

トヨタの生産現場では、このような具体的なアクションが日常的に取られ、品質の維持と向上が図られている。

 

4. 処置と対策の間にある注意点

スピードと深さ:
処置は速やかな対応が求められるが、対策は時間をかけてでも根本的な原因を探る必要がある。問題解決の際は、この2つのアプローチをバランスよく組み合わせることが重要である。

 

再発のリスク:
処置だけで問題を終わらせると、同じ問題が再び発生するリスクが高まる。対策を適切に行い、再発を防ぐことが求められる。

 

組織全体での取り組み:
問題解決は、関連するすべての部門や担当者が連携して取り組むことが必要である。

処置や対策の内容は、組織全体で共有され、実践されるべきである。

 

5.まとめ

トヨタの問題解決における「対策」と「処置」は、それぞれ異なる目的とアプローチを持つ重要な要素である。

処置は即座の対応を、対策は根本的な解決を目指す。

問題解決の過程で、これら2つのステップを適切に組み合わせ、効果的に実践することで、品質の高い製品やサービスを提供し続けることが可能となる。