MTBF(平均故障間隔)、MTTR(平均修復時間)、MTTF(平均故障寿命)は、システムや機器の信頼性を評価するための重要な指標です。
これらの指標は、機器がどれだけ効率的に稼働し、故障からどれだけ早く復旧できるか、またはどれくらいの期間正常に機能するかを示します。
特に製造業やIT業界において、これらの指標を理解し、適切に活用することで、業務の効率化や顧客満足度の向上が期待できます。
本記事では、これらの指標の定義や計算方法、活用方法について詳しく解説します。
MTBF(平均故障間隔)とは
MTBF(Mean Time Between Failures)は、信頼性工学やメンテナンスの分野で広く用いられる指標で、システムや機器が故障するまでの平均的な動作時間を示します。
日本語では「平均故障間隔」と訳されます。
特に製造業やIT業界で重要な役割を果たし、機器の信頼性を評価するための基準となります。
MTBFは、ある機械やシステムが正常に稼働してから次に故障するまでの平均時間を表していて、その機器やシステムの信頼性を評価するために使用されます。
MTBFは、次の計算式で求めることができます。
総稼働時間:機器が正常に稼働している時間の合計
故障の回数:指定された期間内に発生した故障の回数
具体例:
ある工場で使われる生産機械が毎日24時間稼働しているとします。
この機械が年間に10回の故障を経験し、総稼働時間が8,760時間(24時間×365日)であれば、MTBFは876時間です。
これは約36日ごとに1回の故障が発生することを意味します。
MTBFは修理系(修理しながら使うシステムや機械)で使う指標であり、互いに隣り合う故障期間の動作時間の平均値です。
この数値が大きいほど信頼性の高いシステムであるといえます。
”信頼性”とは、どれだけ故障せずに連続して使用できるかを意味します。
また、MTBFは故障率λ(件/時間)の逆数で表すことができます。
MTBF(平均故障間隔)活用時の注意点
注意点として、MTBFは過去のデータに基づいて算出されるため、予測値に過ぎないという点に注意が必要です。
また、頻繁にメンテナンスが行われるシステムや、時間の経過とともに劣化するシステムに対しては、MTBFだけでは不十分な評価になることがあります。
MTBFは、機械の稼働を安定させ、ダウンタイムを減らすための重要な指標ですが、これを使用する際には、他の信頼性指標と併せてシステム全体のパフォーマンスを評価することが重要です。
MTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修復時間)の違い
MTBFが長いほど、その機械やシステムは長い間正常に動作し、信頼性が高いとされます。
しかし、MTBFは故障の間隔を表すものであり、修理や復旧に要する時間(MTTR:Mean Time To Repair)とは異なる概念です。
したがって、MTBFだけではシステムの運用効率全体を評価することはできず、MTTRと併せて検討することが重要です。
MTTR(平均修復時間)とは
MTTR(Mean Time To Repair)は、故障が発生した際に、システムや機器が復旧するまでの平均的な時間を示す指標です。
システムが故障してから、完全に修復されて再び正常に稼働するまでのプロセスにかかる時間を測定し、その平均値を算出します。
MTTRは、以下のような状況で使われます。
・機械や設備の故障修理
・ITシステムやネットワークの障害対応
・製品のメンテナンス
MTTRが短いほど、故障や障害からの復旧が迅速に行われ、システムのダウンタイムが短く抑えられることを示します。
つまり、MTTRとは故障したときの修理のしやすさの"整備性"を表す指標とも言えます。
MTTRは、次の計算式で求められます。
総修理時間:設備やシステムが故障してから修復完了までの全修理時間の合計
修理の回数:同じ設備やシステムに対する修理が行われた回数
具体例)ある製造工場で使用している機械が、月に5回故障し、それぞれの修理にかかった時間が2時間、3時間、1.5時間、4時間、2.5時間だったとします。
この場合、MTTRは次のように計算されます:
つまり、この機械が故障した際、平均して2.6時間で修理が完了していることがわかります。
MTTR(平均修復時間)の重要性
1. システムの可用性向上:
MTTRが短いほど、システムが故障から迅速に復旧できることを示します。
これにより、システムの可用性が向上し、業務の中断を最小限に抑えることができます。
製造業では、1分でもダウンタイムが長引けば、生産ロスやコストが積み重なります。
MTTRを短縮することで、故障やトラブルからの復旧が早まり、稼働率を高めることができます。
2. メンテナンスの効率化:
MTTRを分析することで、修復プロセスのボトルネックや非効率な作業を特定できます。
これにより、メンテナンス活動の改善が促進され、効率的な修理作業が可能になります。
3. コスト削減:
修理時間が長引くほど、人件費や部品交換費用が増加します。
MTTRの短縮は、修理にかかるコストの削減に直接つながります。
また、早期の修理によって、他の関連する機器への負荷を軽減できる場合もあります。
MTTR(平均修復時間)短縮のための方法
1. 標準化された修理プロセス:
修理手順や対応プロセスを標準化することで、修理時間を短縮できます。
修理マニュアルやトレーニングを徹底し、現場スタッフが迅速かつ正確に作業できるようにすることが重要です。
2. 予防保全の実施:
MTTRの短縮には、そもそも故障の頻度を減らすことも大切です。
定期的なメンテナンスや予防保全を実施し、部品が故障する前に交換や修理を行うことで、ダウンタイムの発生を未然に防ぐことができます。
※予防保全・・・設備の故障を防ぐために定期的な点検や部品交換を計画的に行い、故障リスクを最小化しながら安定した稼働を維持する保全手法のこと
3. 部品やツールの即時調達
修理時に必要な部品やツールがすぐに利用できる体制を整えることも、MTTR短縮には欠かせません。
重要な部品を予備在庫として確保し、修理が必要な際に迅速に対応できるようにしておくことがポイントです。
4. リアルタイム監視システムの導入
センサーやIoT技術を活用して、機械やシステムの状態をリアルタイムで監視することで、故障の兆候を事前にキャッチし、早期に修理を開始することが可能です。
このようなシステムを導入することで、迅速な故障診断と修理対応が実現します。
MTTF(平均故障寿命)とは
MTTF(Mean Time To Failure)は、修理が不可能な製品やシステム(例:単純な部品や消耗品)が故障するまでの平均時間を示す指標です。
MTTFは、主に次のような製品や設備に使用されます。
・電子部品(抵抗、コンデンサなど)
・一回限りの使用が前提の機器や消耗品
・修理できないハードウェア
MTTFは、設備や部品がどれだけ長期間、故障せずに機能するかを示す信頼性の目安です。
MTTFが長いほど、その製品は長寿命であり、信頼性が高いとみなされます。
※修理系ではMTBFを指標として用いるが、非修理アイテム(再生不可能なアイテム、使い捨て品)が故障するまでの平均値は「平均故障寿命(MTTF)」と表現し、同様に耐久性の指標として用いられる。
MTTFは、製品が故障するまでの時間の平均を求めるため、次の計算式が使われます。
合計稼働時間:全ての製品が稼働した合計時間
故障した製品の数:故障が発生した製品や部品の数
具体例)100個の抵抗器をテストし、それぞれの稼働時間が異なるものの、全体での合計稼働時間が50,000時間だったとします。
そのうち20個が故障した場合、MTTFは次のように計算されます。
この場合、1つの抵抗器が平均して2,500時間稼働することがわかります。
MTTF(平均故障寿命)活用時の注意点
1. 全ての故障要因を考慮しない:
MTTFは、主にランダム故障に基づいていますが、現実には設計上の問題や外部環境の影響も考慮する必要があります。
特に過酷な使用条件下では、MTTFが短くなる場合があるため、実際の環境に応じた適切な評価が求められます。
2. 寿命のばらつき:
同じ製品でも、個体差や使用条件により寿命がばらつくことがあります。
MTTFはあくまで平均値であるため、すべての製品がその期間まで故障しないわけではありません。
寿命のばらつきに応じた安全マージンを設けることが重要です。
まとめ
MTBF(平均故障間隔)は、機器やシステムの信頼性を示す重要な指標であり、故障の発生頻度を把握することで運用の効率化が図れます。
しかし、MTBFだけではシステム全体のパフォーマンスを評価するには不十分で、MTTR(平均修復時間)など他の指標と併せて検討することが必要です。
これにより、信頼性の高いシステム運営を実現し、企業の競争力を高めることにつながります。